ジャーナリストの櫻井よしこ氏は9日、自民党有志議員でつくる「全ての女性の安心・安全と女子スポーツの公平性等を守る議員連盟」(略称・女性を守る議連)が国会内で開いた会合に出席し、最高裁が戸籍上の性別を変更する上で生殖機能の喪失を要件にした性同一性障害特例法の規定を憲法違反と判断したことについて、強い怒りをにじませた。「国民の動向を知ることなく一方的に下された判断で、日本の在り方を根本から変えてしまう」と述べ、最高裁裁判官の選任見直しの必要性に言及した。発言要旨は以下の通り
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今回の最高裁の判断を見て、これほど国民の動向を知ることなく、理解することなく、一方的に下された判断で、わが国の人間の在り方、暮らし方、さらには家族の在り方まで、根本から変えてしまうような要因を作ってしまったことに対して、私は心底怒りを感じている。
最高裁の判事、裁判官の決定といえば、非常に権威を持っているわけだ。最高裁判断が出た途端、メディアの報じ方は、その方向に沿っての報道が増えた。これは左も右も超えた、日本の在り方だ。このような一方的な判断を示す資格が、最高裁にあるのかどうか。
最高裁の判事の方々、裁判官の方々、15人。国民は正直言って、どなたのことも知らないと思う。この裁判官の選び方そのものが、これを機会に根本的に変えられるべきだろう。ただ、内閣が任命して、その後の衆院選で〇か✖かで判断する。みんな知らないから、〇も✖もつけない人が多いと思うが、つけないと、全部〇になってしまう。こんな奇妙な制度で、15人が権威の衣(ころも)をまとう場所に居続けること自体が許せない。
立法府の皆さまに認識してほしいのは、民主主義というのは立法、行政、司法の3つが、お互いにバランスよく、チェックし合いながら、機能していくものだと思うが、最高裁は立法に対しても、行政に対しても一方的に断ずるわけだ。それに対して、今のシステムでは従うしかない。世論全体が、やはり裁判所というものは、ほんとうに中立で公正なんだと信じている。司法を信じることができない社会は崩壊する。でも、崩壊するような司法になっていることに、大半の人が気が付いていない。だから最高裁の権威というものは、今もすごく強い。われわれが選んだ政治家の皆さんが決めたことが、簡単に否定されてしまう。それに対して立法府は、最高裁判断に従って法改正しないといけないという方向にいくわけだ。
なんで法改正するんですか。このような日本の国柄、国民の価値観にそぐわない方向に、なんで法改正をするんですか。国民1人として、私の心からの怒りだ。私は今回のことで多くのことをしないといけないと思うが、その第一は最高裁判事の、裁判官の選び方を根本的に変えることだと思う。
国会承認人事にした方ががいいが、それは憲法改正を伴い、なかなか進まない。従って、事実上国会で、最高裁裁判官に任命された人は公開の場において、どういう考え方を持つのか、どういう経歴なのか、本当にこの人に、日本の法の在り方を託して良いのか、そのことを吟味するための議論を何時間も何時間もすべきだと思う。
米国は社会が分断されている。その社会の在り方は最高裁が決めるわけだが、最高裁裁判官の選び方は何カ月にわたって、主なメディアが微に入り細に入り論じて、国民の前に、この人を私たちの判断を下す人として選んでいいのか問題提起がなされ、社会全体で議論し考えるわけだ。
わが国はそういうことはちっともない。きわめて不健全で、司法の独裁を許しているのではないか。それによって、今回とんでもない判断が示された。わたしは最高裁15人に、1人1人ほんとうに訴えたい。このようなことであなたがたは日本社会の長い伝統、歴史、価値観、家族の在り方を変えてよいのか。あなた方のどこに、その資格があるのか。そのようなことを訴えたい。
「15人で国の根幹変えてよいのか」