避妊、妊娠、中絶……30代以上の大人世代が自覚すべき、「生殖に関する意識」における世代間格差「性と恋愛」に関する意識調査から明らかになった、若者世代と大人世代とのギャップとは?.世界に遅れる日本の人工妊娠中絶 ~かかりつけ医持とう~5/21(火) 14:00配信.「避妊法」の選択肢が狭すぎる日本、欧州と全く異なる「性への理解」について専門家が解説4/29(月) 19:20配信PDF魚拓


『気が乗らないのに性交渉に応じた経験のある』女性は
若者世代で2人に1人、
大人世代でその割合が増加

「世代間で違いが出たのは、性交渉に関する項目です。『気が乗らないのに性交渉に応じた経験のある』女性は、若者世代で2人に1人(男性は4人に1人)ですが、大人世代でその割合が増加、女性では63.5%にも上りました。

日本は2002年から性教育が衰退していますが、それでも若い世代には少しずつ、セックスをするためには互いの『性的同意』が必要であることへの理解が広まりつつあります。ですが、大人世代にはその意識が低い。『男は』『女は』という無意識の中にあるバイアスが避妊やセックスについての考え方、性的同意、性的自己決定にも影響していることが調査結果からみえてきました」

 世代間ギャップが大きく表れたもうひとつの項目は、「緊急避妊薬(アフターピル)」に関する情報だ。若者世代は9割が認知しており、名前だけでなくどんな薬なのかも知っていると回答した割合は、20代以下の男女では68.3%である一方、30代以上では43.1%。ここでも大きな隔たりが見られる。
まだまだ古い価値観に
とらわれている世代の
影響が大きい。
自分の中に性や恋愛に関する
“刷り込み”や“バイアス”が 
ないか、少しでも気づいて

若い世代は必要性を感じているのに、法整備などの決定権がある大人世代に認知が少ないことが、日本で処方せんなしの市販化を進める際のハードルになっていると思わざるを得ない。

「多様性やジェンダー問題に声を上げる人は増えてきましたが、こういう結果を見ると、まだまだ古い価値観にとらわれている世代の影響が大きい。自分の中に性や恋愛に関する“刷り込み”や“バイアス”がないか、少しでも気づいてもらえればと思うのです」

From Harper's BAZAAR January / February 2022

避妊、妊娠、中絶……30代以上の大人世代が自覚すべき、「生殖に関する意識」における世代間格差

「性と恋愛」に関する意識調査から明らかになった、若者世代と大人世代とのギャップとは?

By Manabi Ito公開日:2022/01/06





経口妊娠中絶薬「メフィーゴパック」の国内承認から1年が経過した。取り扱いを始めた医療機関はまだ限定的で、入手困難な地域もあるなど利用体制が整ったとは言えない。  人口妊娠中絶に詳しい苗穂レディスクリニック(札幌市)の堀本江美院長が、日本の中絶方法がいかに時代遅れだったか、現在の状況下で女性たちにはどのような選択肢があるのかなどを解説する。

 ◇簡略・低リスクの手術法ようやく

堀本院長監訳の「薬剤による妊娠中絶ハンドブック」より

 ―日本では人工妊娠中絶に薬剤を用いる医療機関が限られるということでした。ほとんどは手術ですか。  表のように、欧州では薬剤による人工妊娠中絶が9割を超える国もありますが、日本ではまだ手術がほとんどです。その手術にしても、2016年にソフトチューブを用いた手法が認可されるまでは、搔爬(そうは)法といって、棒状の器具で子宮口を開く前処置を行ってから、金属製の器具を入れて子宮の内容物をかき出す方法が長年行われてきました。  8年前にフランスで中絶手術を見学した時、日本の状況を話すと「今どき、そんなことをしているのか」と笑われました。そして、その時に見たソフトチューブによる吸引法だと、前処置がいらず、局所麻酔で簡単にできることに衝撃を受けました。術後の出血も痛みも掻爬法とは比較にならないほど少ないのです。  経腟分娩(ぶんべん)の経験がある人の子宮口はすぐに開きますが、未産婦あるいは出産経験があっても計画的に帝王切開を行った人の子宮の入り口は硬く、2~3ミリの器具を通すのがやっとという人もいます。このため、掻爬法で器具を子宮内に入れるには、子宮口を広げる前処置が不可欠でした。また、掻爬法では医師が手探りで子宮の内容物をかき出すのですが、子宮のカーブの仕方や方向は個人差が大きく、子宮に穴が開いたり、傷が付いたりして不妊になるケースもありました。  ソフトチューブによる吸引法が行われるようになってからは、そうした合併症のリスクが避けられるようになりました。硬い器具でかき出すよりチューブで吸引した方が、体へのダメージが少ないのは当然といえば当然です。
◇体への負担少ない飲み薬

メフィーゴパックの2種類の薬「ミフェプリストン」と「ミソプロストール」=ラインファーマ社提供

 ―手術と薬剤のメリットとデメリットを教えてください。例えば、費用や体への負担などはどうでしょうか。  日本の場合、人工妊娠中絶は自費負担になるため医療機関によって異なりますが、手術と薬剤の費用は基本的に同程度に設定しているケースが多いようです。国によっては、中絶薬を薬局で購入できたり、無料提供されたりする所もありますが、日本では薬剤による中絶でも、入院設備のある病院で行うといった条件があります。  手術なら局所あるいは全身麻酔が必要ですが、薬剤では麻酔は不要です。また、手術の場合は子宮頸部(けいぶ)裂傷、子宮穿孔(せんこう)などのリスクがあります。体への負担は薬剤の方がはるかに少なくなっています。  中絶できるタイミングは、薬剤は妊娠9週まで、手術は12週まで。12週から22週(21週6日目まで)になると中期中絶と呼び、陣痛を起こして出産形式で行うのが一般的です。  月経の遅れが気になりだした時が5週。もともと月経不順の人は、妊娠に気付かないまま日にちが過ぎてしまいがちです。タイミングが早いほど、体への負担が少ない方法を選択できると知っておきましょう。  ―もっと早く気付いた場合、妊娠を防ぐ方法は人工妊娠中絶以外にもありますか。  避妊の失敗に気付いてから72時間以内であれば、緊急避妊薬(モーニングアフターピル)を用いる方法があります。黄体ホルモン(レボノルゲストレル)の入った薬を服用し、受精卵が子宮内膜に着床する前に妊娠が成立しないようにします。ただし、妊娠を100%防げるわけではなく、効果があったかどうかは服用後すぐには分かりません。数日あるいは数週間後に月経が来たときに、初めて妊娠しなかったと分かります。

 ◇産婦人科に早く相談を

 ―中絶によるダメージを避け、自分の体を守るために、女性は何を知っておくべきですか。  まず、何かあったときに気軽に相談できる産婦人科のかかりつけ医を持つようお勧めします。確実な避妊法として低用量ピルなどを処方してもらえますし、飲み忘れて避妊に失敗したかもしれない場合に緊急避妊薬を処方してもらうこともできます。  避妊だけでなく、月経困難症や子宮筋腫、子宮内膜症など女性特有の婦人科の病気はいろいろあります。晩産化が進むにつれて、こうした病気に悩まされる人は増えていますから、重症化する前に早めに産婦人科で相談することが大切です。  初経を迎える年齢が低下する半面、初産の年齢は遅くなる一方です。第1子の出生時の母の平均年齢は、2015年に30歳を超え、21年には30.9歳になりました。1975年には25.7歳でしたから、この40年で5年も遅くなっているのです。  結果的に、月経が妊娠によって中断されない期間が非常に長くなり、子宮筋腫、子宮内膜症に悩まされる人の増加につながっています。だからといって、病気にならないために早く出産するというわけにはいかないでしょう。  自分が出産したいと思う時まで、健康な状態を保っておきたい。そのためには、月経のコントロ-ル法、性感染症の予防、望まない妊娠を避けるための避妊、人工妊娠中絶による合併症の予防など、できる対策はしておいた方がいいのです。現代を生きる女性の知恵として、自分の体を危険から守り、人生を謳歌(おうか)してほしいと思います。(ジャーナリスト・中山あゆみ)

堀本院長

堀本江美(ほりもと・えみ)  1988年札幌医科大学卒業、94年同大大学院修了、医学博士。99~2016年に同大の非常勤講師などを務める傍ら、02年に医療法人社団ブロッサム苗穂レディスクリニック院長に就任。12年から北海道女性医師の会副会長。  北海道の児童虐待防止プロジェクトや性暴力被害者の支援にも力を注ぎ、18年度の日本女医会荻野吟子賞を受賞した。

世界に遅れる日本の人工妊娠中絶 ~かかりつけ医持とう~

5/21(火) 14:00配信




世界のSRHR(性と生殖に関する健康と権利)の現状を学び、改めて日本を振り返る。問題と向き合い、考えることが第一歩に。意識が高いと言われる欧州諸国からスウェーデンの実情と、国連やWHOのリサーチ結果から現在地を知る。 【写真】彼はあなたを本当に愛してる?パートナーの“ベタ惚れ度”を測る15のサイン 話を伺ったのは…… 福田 和子(KAZUKO FUKUDA)/スウェーデン・ヨーテボリ大学公衆衛生学修士号取得後、国連人口基金ルワンダ事務所に勤務。SRHR、ジェンダー平等を軸に活動を進め、2018年「#なんでないのプロジェクト」を開始。日本でのSRHR普及を始める。

日本で教えられる「避妊法」の選択肢は、狭すぎる

日本では、避妊法の不足、性的同意のない関係性など、セックスをするうえで、安心・安全が担保できないことも...。

「スウェーデンの産婦人科で低用量ピルを処方してもらったときに、『他の避妊法も考えてみた?』と差し出されたパンフレットには、避妊インプラントに避妊パッチなど日本で教育を受けてきた私にとっては見たことがない避妊具ばかり載っていました。留学から帰国すると、スウェーデンで簡単に入手できたものがない。その現実がつらくて、2018年に『#なんでないのプロジェクト』を立ち上げました」いうのは、SRHRアクティビストの福田和子さんだ。 『緊急避妊薬を薬局でプロジェクト』など、世界標準からは大きく後れを取っている日本の現状に対して、講演や政府への働きかけなど、精力的に活動を続けている。 「SRHRは『性と生殖に関する健康と権利』と訳され、難しく感じるかもしれませんが、実はとても身近なことをテーマにしています。性的に病気にならないだけでなく、心も体も社会的にも満たされた状態が守られること。また、子どもを産む・産まないという選択や、自分の性、体に関する決定権が自分にあること。 また、必要なケアや情報に誰もがアクセスできることを目指しています。北欧含め、欧州では東西でグラデーションはあるもののSRHRが整っている国がほとんど。ここ数年でもフランスで緊急避妊薬の無償化、イギリスで低用量ピルの薬局販売など、前進が続いています」 日本は欧州と比べ、避妊薬などの充実度は天地の差がある。 「2019年に開催された性の健康世界学会(World Association for Sexual Health:WAS)で、『セクシュアル・プレジャー宣言』を発出。性体験は暴力を含まず、安全で楽しく幸せであることが権利として明確化しました。SRHRの意識が高い欧州諸国ではセクシュアル・プレジャーも当たり前になってきています。 日本でもフェムテックなどでプレジャーアイテムが増えていますが、本当の意味のセクシュアル・プレジャーを得るためには、安心・安全な環境、関係性、自己決定権がベースにあることが必要です。日本では、避妊法の不足、性的同意のない関係性など、セックスをするうえで、安心・安全が担保できないこともあります。そういった意味からも、ないものを入手できるようになり、性と生殖の分野で自己決定できる社会を目指すことが急務だと感じています」
欧米と日本、圧倒的に異なる避妊方法

※グラフの欧米にはチェコ、フランス、オランダ、フィンランド、ドイツ、ポルトガル、英国、ノルウェー、アメリカが含まれる。

国連発表の「Contraceptive Use by Method 2019」によると日本の低用量ピルの普及率が欧米に比べ、著しく低いことがわかる。 「昨年、欧州諸国のSRHRの現状を視察に行きました。そこで実感したのが、避妊法の豊富さだけでなく、入手のプロセスが圧倒的に簡単ということ。価格も無償な国が多い。日本は10代などの若年層が低用量ピルやアフターピルを入手するための、健康保険証提示や費用などがネックになることも。フランスでは昨年、年齢関係なく全女性、緊急避妊薬が無償化になりました。 一方、政府が少子化を問題視し『人口増強』を口にすると、女性たちが『私たちの体は武器ではない、私たちのもの』と声をあげました。やはり声を上げることは大切です」(福田さん)

「コンドームで避妊は完璧!」ではない

世界保健機関(WHO) リプロダクティブ ヘルスおよび研究局、ジョンズ ホプキンス大学ブルームバーグ公衆衛生大学院/ コミュニケーション プログラム センター(CCP)

1枚目のグラフからも分かる通り、日本では圧倒的に避妊法としてコンドームを選択する人が多い。しかし、実際にコンドームの避妊率は高くない。 「低用量ピルの避妊率は91%。最近、話題になっているミレーナなどのIUDは99%の避妊率といわれています。それに比べるとコンドームは85%程度。しかも、これは最初からきちんとした状態で付けられた場合の話で、男性側に装着させるということから、タイミングが遅れたり、実際には装着してくれなかった、装着が適当で途中で外れてしまうことも。そういった意味からも安心・安全な避妊法とは言えず、性感染症予防にコンドーム、避妊はピルなどで行う“ダブル使用”の意識が欧米では広まっています」(福田さん) 欧州では低用量ピルが一番人気だが、出産希望が当面ない人には、"LARC法"も。LARC法は3~5年単位で使用可能で、子宮内避妊具のIUDやIUS、埋め込み式インプラントがある。 そのほか月単位の注射法、週単位のパッチ法・膣リングなどもあり、PMS改善の副効用等も合わせ自分らしく選択できる。

若者が無料で相談できる、“ユースクリニック”の存在

“ユースクリニック”は、13~25歳の若者が無料で利用できる公的な医療機関

スウェーデン留学時代に、福田さんは“ユースクリニック”に感動したという。 「13~25歳の若者が無料で利用できる公的な医療機関です。スウェーデンの人口は東京23区よりもやや多いくらいですが、そこに約250カ所もユースクリニックが存在しています。 日本の産婦人科は入りづらいと感じる人もいるようですが、ユースクリニックは医師、助産師、カウンセラーや性の専門家であるセクソロジストが常駐していて、『よく来たね!』と出迎えてくれます。 性の悩みのほか、思春期の悩みも気軽に相談可能。18歳以下は避妊具も緊急避妊薬も無償です。地域によっては25歳以下なら自治体の補助があり、避妊の本人負担年間約1000円など支援が充実。日本でもこういった施設を作りたいと思っています」

From Harper's BAZAAR April 2024 Issue

「避妊法」の選択肢が狭すぎる日本、欧州と全く異なる「性への理解」について専門家が解説

4/29(月) 19:20配信