共同親権をめぐる報道まとめ(2024年6月上旬)ありしん@共同親権反対ですありしん@共同親権反対です2024年6月10日 21:10PDF魚拓






親権は、子の利益のために行使しなければならない―。親権の実質は子どもの権利にあることが、より明確に条文に定められた。何よりもそのことを根幹に置いて、制度のあり方に目を向けていく必要がある。

 離婚後も父母が共同で親権を持つことを可能にする民法の改定が国会で成立した。父母が協議し、どちらか一方が持つか、共同とするかを選べるほか、折り合わない場合、家庭裁判所の判断で共同親権とする場合がある。

 双方の合意がないのに共同親権を強制されかねないことに、強い懸念の声が上がっている。虐待やDV(家庭内暴力)の恐れがあると家裁が判断すれば単独親権となるが、虐待やDVの被害は証明するのが難しい場合が多い。

 親権を持つことで加害者が立場を強め、暴力から逃れられなくなる恐れがある。また、協力関係を築けない父母に裁判所が共同親権を強いるような形で、家族のあり方に介入すべきではない。

 双方が合意した場合も、家庭内のいびつな力関係を背景に、本意に反して同意を強いられていることがあり得る。国会で法案が修正され、父母の真意を確認する措置を検討することが付則に定められた。政府は具体化に向けた議論を先送りしてはならない。

 共同親権の導入をめぐっては、法制審議会の部会で3年近く議論を重ねながら、一致して結論を出すに至らない異例の経過をたどった。最終的に法改定の要綱案を多数決で取りまとめている。

 そのことを踏まえても、国会が成立を急いだのは納得しがたい。導入ありきで、丁寧な議論の積み重ねを欠いた。既に多くの案件を抱える家裁の態勢を大幅に拡充する必要があることも、積み残された大きな課題だ。

 親権は、家父長制の下で親の権限を定めた戦前の条文が戦後も残され、ことさらに強い親の権利であるかのように捉えられてきた。子どもに対する「懲戒権」が削除されたのは、2022年になってようやくである。

 今回の改定まで、親権に関する筆頭の条文は「子は父母の親権に服する」と定めていた。その文言を削り、子の利益のために行使することが明記された意義を再確認し、共有する必要がある。

 離婚後の親権を誰が持つかを決めるにあたって、肝心の子どもが意見を述べる機会を確保する規定は置かれていない。国会は、子どもの権利を保障する制度のあり方をさらに議論すべきだ。

〈社説〉離婚後の親権 子の利益を根幹に据えて

2024/06/03 09:31




ありしん@共同親権を廃案に!

@mpiZk0zHT5bdJZe

「共同親権」導入案が国会で成立 2026年施行の見通しも課題山積 (週刊金曜日) "離婚時に「将来のDVの恐れ」がある場合には単独親権になると法務省は説明する。だが、すでに離婚しているケースでDV被害の証拠が残っていない、→

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「共同親権」導入案が国会で成立 2026年施行の見通しも課題山積 | 週刊金曜日オンライン

 離婚後の「共同親権」の導入をめぐる民法改正案が、5月17日に参議院本会議で自民・公明の与党のほか、立憲・維新・国民や、教育無償化...

午後10:28 · 2024年6月3日

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https://x.com/mpiZk0zHT5bdJZe/status/1797621400662061382?ref_src=twsrc%5Etfw%7Ctwcamp%5Etweetembed%7Ctwterm%5E1797621400662061382%7Ctwgr%5E49cfbf96f87590aa29c3fd0d4b6de34e1b246ec6%7Ctwcon%5Es1_&ref_url=https%3A%2F%2Fnote.com%2Farisin%2Fn%2Fn1a914bc36a01


離婚後の「共同親権」の導入をめぐる民法改正案が、5月17日に参議院本会議で自民・公明の与党のほか、立憲・維新・国民や、教育無償化を実現する会などの賛成多数により可決・成立した。
同法案は参議院法務委員会では4月19日から大型連休をはさんで5月16日まで審議された。父母の合意がなくても裁判所の判断で共同親権になり得ることへの懸念が与野党から上がったほか、家庭裁判所がDV(ドメスティック・バイオレンス)を見抜けるかなどについての議論が展開された。可決に際して同委員会は、DVや児童虐待を防止して親子の安全・安心を確保するものになっているか等を不断に検証し、必要に応じて法改正を含む制度の見直しを行なうことなどを盛り込んだ付帯決議を採択した。

 親権がある両親の収入の合算で支給額が判断される教育無償化の支援、両親が合意できない場合の子どものパスポート取得など、子どもの権利をめぐる議論が、衆参を通じて十分に尽くされないままでのスピード成立となった。改正民法は2026年に施行の見通しで、以後は父母の協議により共同親権か単独親権かを決定。双方が合意できない場合は家庭裁判所が判断のうえで決めることになる。すでに離婚した人も適用対象だ。

 離婚時に「将来のDVの恐れ」がある場合には単独親権になると法務省は説明する。だが、すでに離婚しているケースでDV被害の証拠が残っていない、または加害者が反省を申し出ているケースではどうなるのか。その場合に被害者が望まなければ共同親権を避けられる救済策などについては具体的に示されておらず、今後の課題となっている。

 同日の参院法務委での最高裁の馬渡直史・家庭局長と法務省の竹内努・民事局長の答弁で、政府がこの法律によって影響される人数について把握していないことがわかった。

問題点把握できない大臣

 また、DV被害者からは「証拠が残っておらず時間も経っている場合、裁判所で被害者だと認めてもらえるのか」という懸念の声が上がっていることにどう答えるかを出席議員より問われた小泉龍司法務大臣は「真剣に身に起こったこと、過去のことをお話しされれば裁判所に通じると思う」などと曖昧に答弁した。

 離婚後に共同親権となる場合、両親の同意がないと子どもが適切な医療を受けられなくなる恐れが生じるとの指摘もあった。3歳の娘の心臓手術をめぐり説明や同意の手続きがなかったとして、離婚前別居中の父親が滋賀医科大学を提訴のうえ22年に一部勝訴した件(大津事件)は、これまでにも報道や国会審議でも取り上げられ、法務委の審議で具体的な事例として挙げられた。これについて見解を求められた小泉法務大臣は「ちょっと、今、初めて伺った」と述べるにとどまった。

 同日には、共同親権導入に反対する3団体(共同親権の問題について正しく知ってもらいたい弁護士の会ほか)が共同声明を発表。審議の過程において、法務大臣や国会議員らが「現在の家庭裁判所の人的物的体制の不十分さや実務の運用等を正確に把握しているとは考え難いこと」「親権と親子の面会交流に直接の関係はないにもかかわらず関係があるように誤解していること」などが明らかになったと指摘したほか、離婚後の法手続きでは元配偶者に対する嫌がらせが行なわれている実態についても「対応策が準備されていない」と批判した。

 5月19日夜にネットメディア「生活ニュースコモンズ」が開催したオンライン形式のイベントでNPO法人「女のスペース・おん」代表の山崎菊乃さんは、DV被害者保護を最優先するDV防止法の運用体制を見直す必要性を強調。今後の共同親権の運用に向けて、加害性のある親に対応しなければならない自治体職員を守る制度を作ることなどを盛り込んだガイドラインのほか、離婚時の相談機関や弁護士の費用などについての国の経済的支援が必要だと訴えた。

(『週刊金曜日』2024年5月31日号)

【タグ】DV共同親権

「共同親権」導入案が国会で成立 2026年施行の見通しも課題山積

吉永磨美・編集部|2024年6月3日2:11PM




離婚後も両親が共同で子どもの親権を行使する新制度が2026年から始まる。しかし、DVへの対応など課題も山積している。 ■77年ぶりの離婚後の親権の見直し  離婚後も、父と母双方が子どもの親権を持つ「共同親権」の導入を柱とした改正民法などが、5月17日、参議院本会議において賛成多数で可決・成立した。与党や立憲民主党、日本維新の会などが賛成し、77年ぶりの離婚後の親権の見直しとなった。  今の民法では、離婚後は、父母どちらか一方を親権者にする「単独親権」を規定している。親権者は、子どもの利益のために、身の回りの世話や教育を施したり、財産を管理したりする権利と義務を負う。  今回の改正では、離婚時に父母が協議して共同親権か単独親権かを選ぶことができるが、協議で折り合えない場合、「子どもの利益」を害すると家庭裁判所が判断した場合は単独親権とする。例えば、子どもへの虐待(ドメスティックバイオレンス:DV)のおそれがある場合は、その典型的なケースだ。  改正法は2026年に施行される予定で、施行前に離婚した夫婦も共同親権を求めることが可能だ。共同親権を選ぶと子どもの人生の重要な選択を、離婚後も父母が協議して決めることになる。受験や転校、手術、パスポートの取得などにおいて双方の合意が必要になる。意見が対立した場合はその都度、家裁が親権を行使できる人を判断する。  緊急手術やDVからの避難といった「急迫の事情」や日々の食事などの日常的行為は一方の親が判断できる。与野党は法案の修正協議の結果、具体的に何が該当するか周知するガイドラインを政府に求める付帯決議を採択した。 ■裁判所の体制を強化  共同親権を巡っては、離婚の原因が配偶者の暴力の場合、共同親権では相手から逃れにくくなるとの懸念から反対する人がいる。採決で反対した共産党の山添拓参議院議員は「最大の問題は、離婚する父母の合意がなくても裁判所が共同親権を定めうる点だ」と語っており、裁判所の人員や体制が不十分であることを指摘する声は多い。
共同親権を推進する超党派議連の事務局長を務めてきた自民党の三谷英弘衆議院議員は「従来の単独親権では、暴力や虐待がないのに親から引き離される子が少なからずいた」と強調する。 「これまで親権者を決める裁判所の判断基準には『継続性の原則』があり、実際に子どもを抱えている側が親権者争いで勝つ傾向があった。離婚するかもしれないという雰囲気になると、子どもを連れて出ていくというケースも増えた。親権者争いは誰の利益にもならない」(三谷氏)  離婚原因として「身体的・精神的な暴力」を挙げる女性の割合は約3割(令和2年度法務省の協議離婚制度に関する調査研究)であり、DVの深刻さは過小評価すべきではないが、DVと無縁の夫婦7割の親権を制限するのはあまりに均衡が取れていない。  三谷氏は裁判所の体制強化についてこう説明する。「事実認定を裁判官ではなく調査官が差配するような運用がなされ、裁判官による主体的な審理がほとんど行われてこなかった。調査官は子どもがどちらになついているのか判断できても、離婚に至る経緯を含め事実認定に関してはプロではないはずだ。今回の法改正を通じて、裁判所には体制整備を訴えている。具体的には、裁判官と同じ権限で一部の弁護士が調停にあたる『家事調停官』を増やす。非常勤裁判官のような位置づけだ」 ■養育費不払い親に親権?  厚生労働省の「平成28年度全国ひとり親世帯等調査」によれば、養育費を受給できている世帯は2割強に過ぎず、シングルマザー貧困家庭の一因になっている。現行制度では、養育費は離婚後に父母間の取り決めや家裁の調停・審判がないと要求できない。  共同親権になれば養育費を払っていない親にも親権を与えるようになるのか、という批判もあるが、三谷氏はこう反論する。 「養育費不払いは親権者の判断の際に、不利益に取り扱われることは当然だ。他方、今の制度では親権のない親が子育てに関与しづらくなって、養育費不払いなど責任放棄の一因になっていた。共同親権は、積極的に養育費を支払うインセンティブになるはずだ。加えて、今回の法改正では、取り決めがなくても同居親が別居親に最低限の養育費を請求できる『法定養育費制度』や、支払いが滞った場合は他の債権者に優先して財産を差し押さえる権利も創設し、未払いの解消につなげる」
■卓球選手の親権に注目も  親権をめぐっては昨年、卓球選手として活躍した福原愛氏が、元夫の江宏傑氏から子どもを連れ去ったと非難されたことで注目が集まった。21年に離婚が成立した際、台湾で共同親権に合意したが、福原氏が息子とともに日本に帰った後、江氏との連絡を絶ち、息子を台湾に戻すことを拒否したとされる。2人は今年に入り、和解が成立したと発表している。  日本はこれまで、G7(主要7カ国)の中で唯一、共同親権の法的枠組みがなかったため“子の連れ去り”がたびたび国際問題になってきた。 「拉致問題解決のために、日本は『北朝鮮は拉致国家』と海外に働きかけてきたが、その日本が海外から拉致国家だとしばしば批判されてきた」(三谷氏)  見直しが77年ぶりという事実を見てもわかる通り、日本では家族に関する法律(主に民法)を変えるのは至難の業だ。理由は、伝統的な家族観にこだわる保守派国会議員の存在がある。しかし、それがときに国際的なあつれきを生み、ビジネス環境の不備となっている。今回、共同親権の導入により親子の姓が異なることが当たり前の社会となり、「選択的夫婦別姓」の議論が進むか注目される。 (横山渉〈よこやま・わたる〉ジャーナリスト)

「共同親権」成立 離婚後も共同で子どもの親権行使 課題はDVや養育費不払いの対応

6/4(火) 10:06配信



離婚後も父母双方が子の親権を持つ「共同親権」が2026年までに選択可能となる見込みです。新制度では、共同親権選択後も子の進学や引っ越し、手術など重要な決定で父母の意見が一致しない場合、どちらが決めるかを家庭裁判所が判断することになり、その役割は拡大します。  共同親権における両親の合意が必要な例、単独で判断できる例を図解にまとめました。

※この記事、図解は時事通信社の記事を基にYahoo!ニュースが作成したものです。出典記事は「家裁に重責、残る課題 対立激化で長期審理懸念―「定着に30年」の声も・共同親権」「共同親権、何が変わる? 離婚後も父母の同意必要―ニュースQ&A」「共同親権法案、実質審議入り 小泉法相「子の養育多様化」―衆院委」

【図解】共同親権 両親の合意が必要な例と単独で判断できる例

6/5(水) 11:54配信



日本ペンクラブが「国会の空洞化に抗議します」とする声明を発表した。個別の政策や法案などについての声明や意見書はこれまでにも折に触れて発してきたが「国会の空洞化」という政治状況に対して危機感を表明するのは、異例のことだ。作家や詩人など言葉のプロが「言論の府」に突きつけた抗議であり、国会議員にはぜひ傾聴してほしい。

 声明は、会長で作家の桐野夏生さんらが5月9日に会見して発表した。

 5月10日の参院本会議で可決、成立した重要経済安保情報保護・活用法について、秘密の範囲が曖昧で、政府の恣意的(しいてき)な運用により民間人の人権を侵害する恐れがある-などと批判している。

 さらに離婚後の共同親権を導入する民法の改正や、入管難民法の改正案の問題点も指摘した。詳細はホームページで公開中だ。

 批判の核心は、こうした重要な法律や政策の数々が熟議を経ずに決まってしまう状況にあり、「国権の最高機関であり言論の府である国会の空洞化を、これ以上看過できない」などとしている。

 2012年から長く続く自公政権が、臨時国会の召集要求を拒むなど野党や異論を軽視する傾向にはかねて批判があるが、政治的にも多様な立場の表現者ら約1200人でつくるペンクラブが、改めて異を唱えた意味は重い。

 「提案」があり「異論」が出て「議論」がなされ、時に「妥協」や「譲歩」「修正」があって「結論」に至る-というのが民主主義の決定の過程だろう。政府・与党の「提案」がいつでも、すんなり「結論」に結び付くのでは、国会が機能しているとは言い難い。その意味で今回の声明は、この国の民主主義の現状に対する警告とも言えるのではないか。

 かつてペンクラブ会長を務めた作家の故井上ひさしさんは「物書き」を、危険が迫ったらいち早く警鐘を鳴らす存在として「炭坑のカナリア」にたとえた。今回の声明も、時代と人間を見つめ、今起きている問題を言葉で表し、広く伝えることを務めとする人々ならではの義務感の発露だろう。

 有権者も、国会議員が国民の負託にふさわしい議論をしているかどうか、厳しく見守りたい。

<社説>国会の空洞化 「物書きの警鐘」に耳を

2024年6月4日 07時50分


2024.06.05 Wed





1 民法親権規定の改正
2024年5月17日、参議院本会議で離婚後親権について今までの単独親権に共同親権の選択肢を加える改正が成立した。改正法は2026年までに施行される。
この改正には当事者女性をはじめ、離婚事件を多く扱ってきた弁護士など離婚現場の実態から反対の意見が強かった。全国の複数の弁護士会も反対声明を出している。成立までに反対署名は24万筆近くに達した。なぜ、こんなに多くの人が反対したのか、それにも関わらず成立させられてしまったのか。
法制審(法制審議会)の議論をはじめ、問題点が詳しく報道されてきたわけでもなかったので、主な問題点を以下で紹介する。

2 親権とは
 歴史的に見ると家制度の下では父親の単独親権であった。子は家に帰属していたので、親権者は父親であった。そもそも結婚は妻が夫の家に入ることであるから、離婚となれば子どもを父親の下に残し母親が家を出ることになった。
戦後憲法が「人権」という概念を認め、14条は男女平等を規定し、24条1項は「婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない」と定めた。
これにより婚姻中は共同親権となったが、離婚後は単独親権とされた。戦後しばらくは離婚後も父親が単独親権者となり家を出た母に代わって子どもは家にいる父親の母である祖母が育てることが多かった。3世代同居は普通の家族形態であった。
ところが、1970年代に入り母親の単独親権が増え始めた。女性に対する教育の結果として女性の経済力が向上し、母親が子どもを引き取ることができるようになった。3世代家族も減少した。父親には自分の母親等の手助けなしに子どもを一人で育てることは難しいという事情もあり、離婚では母親が子どもを連れて家を出るという形が普通になった。その家族の形態には子と同居して日常的に子育てをする母親の単独親権が実際的であった。
 親権の内容は民法に以下のように定められている。
820条(親権の効力)親権を行うものは、子の利益のために子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う。
821条 子は、親権を行う者が指定した場所に、その居所を定めなければならない。
823条 子は、親権を行う者の許可を得なければ、職業を営むことができない。
824条 親権を行う者は、子の財産を管理し、かつ、その財産に関する法律行為についてその子を代表する。
ところで、親権の「権」という言葉は明治時代(民法は明治31(1898)年制定)からのもの。当時は親権は親の子に対する支配権・管理権を示していたから内容にふさわしい名称でもあった。懲戒権はここから発想されたものであったが2022年に削除された。
今では子のための親の養育義務・責任と再定義されてきており、日常の子育て(監護・養育)を中心とする内容が強調され、身上監護と財産管理がその内容である。
今回の共同親権議論では、「親権」という言葉は大して議論なくそのまま残った。

3 共同親権の選択すると
共同親権を選択すると、原則、親権の内容・効力がすべて共同行使となり、婚姻中と同じである。別居しながら親権に関しては婚姻中と同じとなる。その結果、子どもに関する重要事項(進学先、働く先、転校、受験の願書、医療上の同意、子どもと住む場所(居所指定))などの決定が共同行使(共同で決める)を求められる。
例外的に単独で行使できるのは、「急迫の事態」があるときと「監護及び教育に関する日常の行為」である。何が「急迫の事態」かは国会審議を通じて明確になったわけではない。そのため、相手方と争いがある場合に単独行使すると相手方の親権の侵害として相手方が損害賠償を求めることがありうる。
子どもを連れて逃げた事案で、逃げるように母親に助言した弁護士と母親が損害賠償請求され、1審から最高裁まで敗訴した(離婚成立前なので父親の親権侵害とされた)例があった。今後は明白な単独親権でない限り争いになろう。

① 協議による共同親権
原則は、離婚のときに二人で協議して単独か共同かを合意する。協議で単独と決まれば従来通りとなるが、ここで夫がごり押しして共同親権の「合意」が可能になる。今までの協議離婚の実態からごり押し事案は容易に想像がつく。なぜか離婚となると婚姻中に共同行使の実態がなかった父親でも共同親権者になりたい人は当然それを強く主張するだろうし、婚姻中に共同行使の実績もあまりなかったが、「親権者」というタイトルに固執したい父親はいるだろう。
私の経験した離婚事案でも育てるのはできないし嫌だが「親権者」でありたいとごねる父親がいた。また、養育費を払いたくないのでという理由で親権者に固執する父親もいた。ある事例では父親ははっきりそう主張した。

② 家裁が担えるのか
DVや虐待がある場合は共同親権ではなく単独親権となるという設計であり、合意できなかったときは家裁が決める。
今の家裁が妻や子の権利を尊重できるかについては疑問がある。家裁にそれを担う力があるのか?それが可能な条件は整っているのか、疑問は絶えない。
家裁には、本庁と支部がある。例えば、静岡市にある静岡家庭裁判所(本庁)と沼津市の沼津支部という形になっている。どこの家裁が担当するかは当事者の住所によってあらかじめ決まっている。支部は、単独の建物を持たず、地裁支部の建物に同居している。私がよく行っていた静岡家裁沼津支部は、静岡地裁沼津支部の建物に同居していた。建物が別々になっていないだけではなく、裁判官も地裁の裁判官と兼務であり、専任の裁判官はいない。こういう人的・物理的制約がある。
家裁が暇でないことは明らかなので、そこへ新たに親権者決定という仕事が加わると対応できないのではないか。成年後見の仕事が加わって家裁は多忙になったが、高齢化はますます進行するであろうから、その仕事は増えることはあっても減ることはあるまい。そこへ共同親権決定の仕事が加わる。これはそもそも当事者間で話し合いができない事案であるから成年後見の仕事よりも時間がかかることは目に見えている。
加えてもっと困った問題は、家裁の裁判官は虐待やDVを見抜く力があるのかという心配である。
DVでも身体的暴力で写真やカルテなどの目に見える証拠がある場合はDVと認定できようが、問題は精神的暴力の場合である。実はDV事案では単純な身体的暴力よりは精神的暴力の方が多いのではないか。
私がよく経験した例は、夫が寝るころになって妻を正座させて朝まで延々説教をするという事案だ。夫はたいてい翌日は休みなので睡眠不足を解消できるが妻は翌日も通常勤務であったりすると睡眠不足でフラフラで出勤せざるを得ない。こういう暴力は目に見える証拠は残らない。妻の訴えだけが証拠となるが、裁判官はその訴えを聞いて理解できるだろうか。
  DV防止法上の保護命令に精神的暴力が入ったのは24年4月のことだ。これまでも離婚裁判では精神的DVの主張に対して慰謝料が認められることはまれであり、それだけ裁判官は精神的DVを認めたがらなかったといってもよい。
家裁の裁判官は地裁の民事・刑事の扱いを経て家裁に転勤してくるが、DVなどについて特別の研修を受けているということはないのでは。その成果のようなものに出会ったことはなかった。暴力は支配の問題であるというイロハのイを知っているのだろうか。社会の多くの人もこの認識はほとんどない。
家裁の裁判官も同じではないかと心もとない限りである。家裁事件では民事事件などとは違って代理人が付かないことの方が多い。本人の説明で裁判官はどこまで理解できるのだろうか。弁護士でも、家裁の扱う事件は、民事事件よりは簡単だと誤解している人が多い。何しろ、女・子どもがらみの誰でも経験する「普通の生活の話」だからと誤解されている。家族の関係も社会の人間関係も複雑になっている現代社会では、人間関係の争いは簡単に理解できるものではない面を持っている。
10年前に聞いた記憶だが、アメリカでは家裁で日本の調停委員に当たる仕事をするには人間行動学の修士に相当する資格が必要とか。日本の調停委員の資格は40歳以上で常識のある人程度だ。採用には面接があるようだが、副検事を定年退職した男性の調停委員に あったときは困った。被疑者を尋問するような調子が抜けておらず、隣でいちいち口をさしはさむしかなかった。
家裁の大改革がなければ共同親権の正しい運用は期待できないが、司法予算(裁判所の人件費、施設費、国選弁護人費用などすべて)は国家予算の0.3%程度でしかない現実を見ると、ますます不安になる。予算ゼロでできる改革はない。司法予算は1980年度は0.423%、2018年度には0.329%と減少している。国が軍事予算を増やし続けていることは周知のことだがその勢いの中で司法予算が増えるという話はきかない。
最高裁の戸倉長官は民法改正をめぐる記者会見で「(家裁が)表面的なことだけではなく背後まで見ることができるかが、大きく難しい問題だ」と指摘したと報じられている(東京新聞5月18日)。これは新しい仕事を持ち込まれる裁判所の正直な思いであろう。
弁護士への調査(弁護士ドットコム、新婦人しんぶん24年4月6日号)では家裁が機能するのは無理と答えた人が8割、機能するとしたのはわずかに1%であった。

③ 協議とは何か、その実態
協議と言えるには、二人が対等の立場で十分に意見交換ができることが大前提だ。日本の離婚の9割が協議離婚である実態から見えてくるものはこの前提が無視されていることではないか。
実際には二人が対等平等でなくても協議の外見は作れる。協議離婚では時間と費用がかからない利点がある。話し合っても結局強者(夫)の言い分で押し切られるという現実の前にとにかく離婚という結論を手にしたいと諦めた妻が一刻も早く夫から離れたいと選んでいる例も多い。ジェンダー不平等な社会で平等な関係の夫婦はどれだけいるか?多くは夫が圧倒的に経済的強者であり、すべてにわたり強者になれる。
家裁の裁判官はDVや子どもの虐待に関して特別な訓練を受けているわけではないことを示す出来事があった。私が実際に遭遇したのだが、ある高名な刑事裁判官は次の昇進までの足踏み期間の消化に家裁所長になったとしか思えなかった。彼の審判書は、調査官報告書のコピペのようなものであった。しかもそれは子ども虐待について間違った判断をしたものであった
私は後にこの判断に起因する損害賠償請求事件を担当した。4歳の娘と父親との泊りがけでの面会交流中に父親の性加害の疑いが生じた。母親は娘を精神科医に見せて、その疑いが強いとなり、面会交流の中止を調停委員会が決めた。
以後数年にわたり中止のままであったところ、父親が突然その精神科医に2000万円の損害賠償を請求してきた。彼女が間違った判断をしたために面会交流が長期に中断され、父親は娘と死別させられたも同然の精神的苦痛を被ったというのが理由であった。この事案では、4歳の娘が実父の実家へ泊りがけで行っていた。その時の父と娘の喜々とした交流状況を撮影したビデオが父親側から交流はうまくいっていた証拠として出された。私もビデオを見て困惑した。娘は過剰に“歓待”されていたが、素人目には問題には映らなかった。そのビデオを小児精神科医に検討してもらったところ、不適切交流、ほぼ虐待(maltreatment)と診断された。私も調査官も虐待と判断できなかったどころかうまくいっているとしか思えなかった。小児精神科医の意見書と証言で裁判の結論はこちらの勝訴となった。
その裁判の過程で裁判官による審判書は調査官報告書のコピペの内容であることが判明した。もともと刑事裁判官としての研鑽は積んできた家裁裁判官(所長)には不適切交流とは見抜けなかった。
この問題でも考えさせられたが、調査官の能力は変質しているのではないかということがある。かつては調査官は心理学、社会学出身の人で人間関係調整を学んでいた人が原則であった。今は圧倒的多数が法学部出身と聞く。裁判官ももちろんほとんどが法学部出身である。調査官も裁判官も、人間関係調整の専門家ではなく、「法律」しか知らないといっても過言ではあるまい。
実は、家裁の仕事は裁判の中でも一番難しいのではないか。複雑な人間関係、親子関係の調整を求められる。その技術と知識は、法学部、法科大学院、司法研修所でも教えてない。
私は法科大学院で「ジェンダーと法」を教えたが、司法試験科目ではないので、単位そろえに利用することが起きた。当然と言えば当然だが、試験に出ない分野を勉強する学生は少ないし、私も学生であればきっとそう行動したと思う。合理的思考をする学生を批判できまい。
従来のDV離婚での裁判官を見てきた経験からすれば、彼らは、暴力が支配の問題という基本的構造を知らない。性的DVを見分けることができるか? 刑法「不同意性交罪」への理解は進んでいるのか。性行為の強要で妊娠した場合も、セックスをしていたんだから良好な関係とされかねない。配偶者による強姦は長いこと法律家の間では認められてこなかった事実がある。刑法にそのことが注意的に書き加えられたのはついこの間の事である。

④ 子どもの意見を聞く手続きがない。
このことは多くの指摘がある。
子はこの問題の当事者であり直接不利益を被る存在であるという認識が欠けたままである。

⑤ 父と母の合意ができない(多くはだから離婚したはず)
現場に長期にわたって子どもがさらされることで子供が受ける不利益、精神的苦痛は大きい。

⑥ 単独親権ですでに離婚した人も、改めて共同親権への変更申立ができる。
これの必要性は不明であるし、弊害への無理解に驚く。単独親権で母と(多くの場合)の生活で安定していた子どもの生活が乱される。なぜ、こんな変更が必要か理解に苦しむ。変更手続きの過程で秘匿していた住所や通学している学校などを知られる危険と恐怖が大きい。

⑦ 共同親権になるといままで一人親として受けていた公的な支援(経済的な 問題はどうなるか。
そのまま継続されないのでは(赤旗4月21日、参議院本会議)、一人親でも父母の収入合算されるのではないか。低収入の母子家庭に突然高収入のもう一人の親権者が現れることになる。政府は影響調査をしていないことが国会の審議過程で明らかになっている。

4 そもそも、共同親権はなぜ提唱されたのか
2000年代初めからの、Father’s Rights 運動から始まったようだ。
非親権者で子どもと同居していない父親から、「子どもをとられた」「子どもに会わせてもらえない」との不満が表明されてきた。実際には民法766条で面会交流について家裁で決めてもらえる(調停、審判)のにそれをしてないのではないか。その申し立てをしたのに交流不可となったのであれば、理由があるはずだ。面会に危険が伴うなどだ。
実際に面会交流の場での子殺しや妻殺しが起きている。被害者の母親への圧力、支配の回復としての利用なども憂慮される。
共同親権は家父長的な男性支配家族への回帰を求める勢力の願望ではないか。自民党の推奨する家族の形、家父長制の家族への回帰願望が根源にあり、「新しい戦前」のメンタリテイーの回復を求めているのではないか。
親は離婚しても、子どもは両親に愛されるべき、両親から育てられた方が子どもは幸せに違いないという根拠のない「信仰」がある。「外国ではそうなっている」論がされているが、外国での親子法制に詳しい小川富之大阪経済法科大学教授は、2021年の法制審家族法部会第5回会議で、オーストラリアとイギリスの経験をひきながら、日本と同様の親権、特に離婚後に親権を共有し共同で行使するところはないと説明している。

 5 憲法違反の疑い
子育ては生き方の選択の問題である。それは憲法19条の思想・良心の自由 の問題である。父や夫の支配する家族は憲法24条が否定した家制度である。
  共同親権制度がもたらすものは憲法が保障している基本的人権の否定でもある。今回の共同親権はいったん廃止にして出直すべきである。

2024年6月2日記

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タグ:DV・性暴力・ハラスメント / DV / 離婚 / 家庭裁判所 / 共同親権

共同親権の何が問題か  弁護士 角田由紀子

2024.06.05 Wed




20年7月には欧州議会が、日本人の親による「子供の連れ去り」を懸念し、共同親権に向けた法改正などを求める対日決議を採択。国境を越えた子供の連れ去りが発生した場合は元の居住国に返すことなどを定めたハーグ条約の履行も求めた。

欧米諸国では一方の親が他方の親の同意を得ずに子供の居所を移動させることは誘拐行為で、重大な犯罪だ。しかし、日本では違法な行為とされていないことで批判を浴びた。また日本では離婚後に片親にしか親権が認められないため、別居親は子供に会えないと欧米では理解された。

不勉強な海外マスコミのせい

実際は、親権と子供に会う権利(面会交流権)は別のものだ。家庭裁判所で手続きをすれば面会交流ができると知らないか、知っていても手続きをしなかった外国人の別居親がいる。そうした点が、欧米の人々に対してきちんと説明されなかったことが誤解につながった。

それは完全に海外マスコミのせいだと、私は思うようになった。私も含めて日本の民法について不勉強だったり、文化の違いを理解していない記者が、「日本には共同親権がないから離婚後、別居親と子供の関係が崩れる」と説明してしまった。
日本で共同親権についての議論が本格的に浮上した際、私は反対派の意見をよく聞き、フランスの親権と日本の親権の意味を勉強した。その結果、「日本も共同親権を導入したほうがいい」という私の意見は180度ではないが、一部変わった。日本での共同親権と、われわれ欧米人が思う共同親権の中身が違うからだ。

フランスの場合は「親が別れても親権は変わらない」、つまり共同親権が原則で、単独親権は極めて例外だ。また、別居親の親権には面会交流権も含まれる。そのためDVや虐待を理由に家庭裁判所の判断で親権を失った別居親は、面会交流権も失う。

日本では親権と面会交流権は別々の権利

共同親権があっても行使が困難な場合は、裁判所が日常の親権行使を同居親の単独に制限できる。その際も面会交流権は残るが、子供にとってリスクがある場合は裁判所の判断でその権利を停止する。

日本では、親権と面会交流権は別々の権利だ。それを理解せず、共同親権になれば自動的に面会交流権も得られると考えた外国人が多かったと思われる。だから、日本政府に「共同親権を導入してほしい」という海外からの強い圧力があったのではないか。

5月に成立した改正法はその点に関して曖昧だ。親権に面会交流権が含まれているかどうかが分かりにくいし、そのことで争いが起こるリスクが高い。

共同親権の反対派は、家庭裁判所が共同親権が妥当と判断すれば、離婚後もDVや虐待が継続してしまうことを危惧する。「DVや虐待がある場合は裁判所が単独親権にする」と政府は反論するが、本当にそうなるかは不安だ。ここが主な問題だと思う。DVがあったと証明することは難しいし、実際の状況を判断するために調査が必要だが、日本ではDV対策が明らかに不十分だ。裁判所が間違って判断するリスクを否定できない。
<5月に成立した民法改正法により日本でも26年から離婚後の共同親権が可能になるが、「外圧」による中途半端な制度では誰も得しない>

5月17日に国会で成立した民法改正法により、日本でも離婚後の共同親権が2026年から可能になる予定だ。

この重要な変化の背景には外圧があった。日本人と外国人の国際結婚が増えたことで、国際離婚も増加。日本人の親(主に母親)が外国人の親の同意を得ずに子供を連れ去る例もあり、国際問題になっている。

日本では離婚すれば多くの場合、子供と同居する親が親権を取り、もう一方の親は子供に会えない状況になりがちだ。家庭内暴力(DV)などの理由で逃げる親もいるので、必ずしも子供を連れ出したほうが悪いとは言えないが、海外では「子供を誘拐した日本人の親は犯罪者」と紹介されることが多く、大きな社会問題になっていた。
ここまで説明してきた点の背景には、日本と欧米の社会や文化の無視できない違いがある。同時に日本はG7の一国であり、他の加盟国とさまざまな分野で協力し、ハーグ条約などにも署名した。そうした約束を守らないと、国際社会から批判を受ける。

これはまさにグローバル化の限界だと思う。それぞれの国の文化や社会構成は簡単に変更できないので、国際ルールに賛同する前に十分に国内で議論し、適切なプロセスで法律を改正することが重要だ。国際的批判や外圧を止めるために、不十分な議論に基づいて中途半端な法改正をすれば、誰の利益にもならないリスクがある。

今回、「日本でも共同親権が可能だ」と政府は国際社会に対して言えるようになった。しかし共同親権導入の本当の目的が不明のままで、国内外の賛成派からも反対派からも批判が止まらない可能性が高い。親子の交流などについて、根本的な問題解決につながることもあまり期待できない。

改正法の中身は、親権の共同行使と単独行使の境界などが曖昧すぎるから、これからさまざまな具体的なことを決定していくことになる。その段階では、子供の利益を第一に考えてほしい。

フランス人記者が見た日本の「離婚後共同親権」が危うい理由

2024年6月8日(土)20時28分

西村カリン(ジャーナリスト)



意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「共同親権」です。

子供の利益になっているのか? 熟考が必要。
離婚後も父母の双方が子供の親権を持つ「共同親権」の導入を含んだ、民法改正案が成立しました。1898年の明治民法施行以来の大きな変更になります。これまでは離婚後は単独親権が前提でした。最終的に母親が親権を得ることが圧倒的に多く、父親が子供に会わせてもらえないなどの問題が起きており、改正が求められていました。今後は、単独親権、共同親権のどちらかを選べ、合意できない場合や裁判離婚は家庭裁判所が判断します。

親権とは、子供の利益のために監護や教育、財産管理などをする権利であり、義務です。共同親権を選択すると、引っ越しや進学、手術を受けさせるかどうかなどを別れた夫婦で話し合わなければいけません。しかし、離婚理由が家庭内暴力の場合もあります。暴力から逃げるために住む場所も隠しているのに、暴力を振るう相手と連絡を取らなくてはならなくなるリスクもあり、法案に反対する声も上がっていました。

その家庭にとって共同親権が妥当なのかを裁定するのは家庭裁判所ですが、家裁の調停員も、家庭の実態に踏み込んで審査できる体制にありません。児童相談所や子ども家庭支援センターの職員の方に伺うと、虐待の相談件数は増え続けているが、児相の体制はあまり変わらず、どこまで踏み込んでいいかわからないと話していました。最終的には警察に届けることになりますが、子供と親を引き離して終わり。虐待の背景には貧困や働き方、孤立の問題が引き金になっていることが多いですが、根本的な解決にはならず、対症療法にしかならないのが現状です。

共同親権の論議も親の権利の話ばかりで、子供の権利がなおざりになってはいないでしょうか。どちらが親権を取るかも、子供が選べる環境を整備するべきでは? やはり、理想は「社会で子供を育てる」。どこに住んでいようとごはんを食べられて、教育を受けられ、安心して子供が暮らせる体制作りが必要だと思います。子ども食堂やフードバンクはその一例ですが、民間事業ベースで寄付によって運営されている脆弱なシステムです。“子供ど真ん中”の社会の実現には皆で取り組むことが大事なのではないかと思います。
ほり・じゅん ジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX月〜金曜7:00〜8:30)が放送中。

※『anan』2024年6月12日号より。写真・小笠原真紀 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子

(by anan編集部)

“子供ど真ん中”の社会の実現に向けて…「共同親権」の課題を考える

2024/06/09 21:30




離婚後も子供の親権を父親と母親の双方に認める「共同親権」の導入を盛り込んだ改正民法が5月に国会で成立した。父母が一緒に子育てに責任を持つことで「より子供の利益にかなう」環境整備へ期待がかかる一方で、「共同親権」ではカバーできないケースも現実には残されている。その代表例が、法律上は未婚の「不倫カップル」間で生じる子供をめぐるトラブルだ。 【写真を見る】子供たちの戸籍謄本に記された「認知」の文言と取材に応じた「明里さん」  ***

 77年ぶりの見直しとなった改正民法は2026年までに運用が開始される予定で、現在の父母いずれか一方に親権が認められる「単独親権」から、今後は父母双方が親権を持つことも可能になる。  共同親権は「子供の利益」がいま以上に確保されることを目的の一つに掲げるが、DVや虐待の加害者側が親権を得て“負の連鎖”が続くことを懸念する声もある。しかし、それでも多くの夫婦にとっては「朗報」と受け止められているなか、「制度から取り残された状況で、不安だ」と漏らす女性たちも少なくない。  首都圏に住むシングルマザーの木口明里さん(仮名・40代)もその一人。明里さんがこう語る。 「私には現在、上から高2(長男)、中3(長女)、小6(次男)、小4(三男)の4人の子供がいますが、子供たちの父親であるAさん(60代)は既婚者で、奥さんとの間にはすでに成人した子供(嫡出子)もいます。いわゆる不倫関係に当たりますが、もちろん私もこんな関係をこれほど長く続けるつもりはありませんでした。ただ交際の節目ふしめで彼が約束した『妻とは離婚する』との言葉を信じてしまい……」  不倫相手との間に子供を4人ももうけるというケースだけでも珍しいが、その子供たちをめぐる「現在の状況」がさらに複雑を極めているという。

「妻はいるが、交際してほしい」

 明里さんがA氏との出会いをこう振り返る。 「Aさんと初めて会ったのは約20年前。当時、私は銀座のクラブに勤めていて、そこに彼がお客さんとして来店したのが始まりです。『実家が裕福なエリートサラリーマン』と紹介された彼は、確かに育ちの良さを感じさせる“寡黙な人”というのが第一印象でした。その後、彼が店に通うようになり、徐々に私とも打ち解けた関係に。しばらくすると彼から食事に誘われるようになって、さらにその後、交際を申し込まれるようにもなりました」  ただし、A氏はその前に「俺には妻と子供がいる」と打ち明けていたため、明里さんは当初、付き合う気などまったくなかったという。 「“不倫関係に未来はない”と考えていたからで、それでも彼の紳士的で優しい面には惹かれるところがありました。彼はその後も諦めず『付き合ってほしい』と言ってきて、笑って受け流しながらも彼と食事を重ねるうち、私のなかで彼への“好き”という気持ちが芽生えていった。ついに何度目かの交際申し込みの時、『私にきちんとした彼氏が見つかるまでの間なら』との条件付きで交際を了承したのです」(明里さん)  以降、A氏との間に4人の子供が生まれるが、結局、A氏は妻と離婚することはなかった。そればかりか、子供の「認知」に関しても明里さんを失望させたという。
「酒乱」癖

「彼は子供が生まれるたび、『妻にバレるから』といって認知は一貫して拒否してきました。ただ子供が1人、2人と増えていくたびに、彼が私の家で過ごす時間は増えていき、4人目の子供が生まれた後は、週の大半を私の家で過ごすようになっていました」(明里さん)  A氏との間に最初の子供を身籠もってすぐ、明里さんは銀座のクラブを辞め、以降はシングルマザーとして水商売以外の仕事に就いてきたという。A氏もこの間、明里さん側への経済的援助は欠かさなかったというが、ただ一つ、大きな問題が持ち上がる。 「交際期間が長くなるにつれ、彼の“酒乱”ぶりがひどくなっていったのです。何度も『お酒をやめて』と頼みましたが、しばらくの間は反省して断酒するものの、すぐにまたお酒を飲み始める――の繰り返しでした。最後のほうは酔って暴れたり、私に『死ね』などの罵声を浴びせたりと、子供たちもそんな彼の姿に怯えるようになり……。ついに堪えかねて、彼を家から追い出したのが2年前のことです」(明里さん)  この時に不倫関係は「清算」したが、A氏からの希望で「子供たちと会う機会は時々つくっていた」という。しかし長男と長女はすでに父親を敬遠していたため、会うのはもっぱら下の息子2人だった。

「誘拐」事件として警察に相談

 そんななか、今年2月に事態は急変する。 「2月に入って、Aさんが突然、私が子供たちと暮らすマンションから歩いて10分程度のところに一人で引っ越してきたのです。彼と奥さんの関係は以前から『良くない』とは聞いていて、彼は『明里との関係は妻にバレていない』と言い張っていましたが、夫婦関係悪化の原因の一端が私や子供たちの存在だった可能性は否定できません。今回、奥さんとは別居する形で、“一人暮らしを始めた”と告げた彼は『やっぱり明里とヨリを戻したい』とも言ってきました」  不倫解消から2年以上が経過し、明里さんにはすでに新しい交際者が現れていたこともあり、A氏からの「復縁」要請はきっぱりと断ったという。 「予想外だったのか、彼は拒否されたことが不満だったようで……。すると3月に下の息子2人が彼の家に遊びに行ったところ、そのまま戻ってこなくなってしまったのです。彼を問いただすと『子供たちが“ココにいたい”と言っている』の一点張りで、息子たちを返そうとしない。すぐに警察に『誘拐ではないか?』と相談したのですが、『民事案件なので、われわれは介入できない』と取り合ってもらえませんでした」(明里さん)  そして4月に入り、さらに事態は新たな展開へ――。
十数年越しの「認知」の裏側

「4月下旬、彼の代理人弁護士が私に『(A氏が)4人の子供を認知した』と連絡してきたのです。驚いて子供たちの戸籍謄本を取ってみると、確かに私の知らないうちに彼が子供4人を数日前に認知していたことを確認した。突然の認知が、子供を返さないことを正当化する布石のように映り、怒りを覚えました。奥さんとの関係が冷え切り、私にも復縁を拒絶され、その腹いせや自分の寂しさを埋めるために子供たちを引き取ろうとしているのだとしたら許せません」(明里さん)  明里さんは現在、弁護士に相談してA氏側と子供たちの引き渡しについて交渉中というが、離婚問題に詳しいフラクタル法律事務所の田村勇人弁護士はこう指摘する。 「今回のケースでいえば、子供たちの親権者は明らかに母親(明里さん)であり、子供を認知しただけで男性(A氏)がすぐ親権者となることはありません。男性の行為はすこし強引なものにも映り、母親が弁護士を立てて『子供の引き渡し』を求めて家裁に訴えれば(明里さん側への)引き渡しが認められ、子供たちを取り戻せる可能性は高いと考えます」 「不倫の代償」が子供たちにまで及ぶことがないよう願うばかりだ。 デイリー新潮編集部

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〈「共同親権」の落とし穴〉「15年以上も経ってから不倫相手が突然、子供を認知して“親権”の主張を…」 不倫カップルを襲った前代未聞のトラブルの顛末とは

6/10(月) 6:00配信