AV業界や購買者目線で作られた「AV新法」には反対です!!.風俗で妊娠し、路上で出産した女性を追い詰めたもの.日本に「女性支援」の根拠法ができる!.コロナ禍で戸惑う居場所のない少女たち.バカなフリして生きるのやめた私たちは「買われた」展を終えて想うこと等imidas連載記事PDF魚拓

AV業界や購買者目線で作られた「AV新法」には反対です!!.風俗で妊娠し、路上で出産した女性を追い詰めたもの.日本に「女性支援」の根拠法ができる!.コロナ禍で戸惑う居場所のない少女たち.バカなフリして生きるのやめた私たちは「買われた」展を終えて想うこと等imidas連載記事PDF魚拓









※2016年8月12日にNHK NEWS UPに掲載されたものです。

かつて「売春」を経験したことがある少女たちが、その背景や自分たちの思いを知ってほしいと、写真や手記などを通して訴える「私たちは『買われた』展」が、8月11日から東京・新宿区で開かれています。
インターネット上には、開催の前から、少女たちの訴えを批判・中傷するツイートが多く投稿されていました。
こうした中、開かれた企画展。主催者は何を伝えたかったのでしょうか。

■「そこに至るまでの背景がある」■
企画展は、少女たちを支援する一般社団法人「Colabo」と、北海道から九州までの各地で暮らす14歳から26歳までの女性24人が主催しました。かつて「売春」を経験した24人の体験を再現した写真や手記など、およそ100点が展示されています。
たとえば、振り袖から見える腕に多数のリストカットの痕が残る写真。家族から性的な虐待を受け続け、16歳の時に売春をし、
自傷行為を繰り返した女性が20歳まで生きてきた証しとして撮影したといいます。



15歳の女子中学生の手記には、食べるものもなく、また、親の暴力に怯えながら生活する中、売春するようになった経緯が次のように綴られています。

「母親が家に帰らなかったため、妹と2人で駅前に立ち、食事を与えてくれる人を探した。母親が再婚すると、暴力を振るわれた。
ある日、街で見知らぬ男に『どうしたの?』と声を掛けられ、事情を話すと『お腹すいてるでしょ』と言い、コンビニでおにぎりを買ってくれた。
コンビニを出ると手をつないできて、男の自宅に着いた。抵抗したら殴られると思い、抵抗できなかった。
家に居られないとき、声を掛けてくるのは男の人だけだった。
頼れるのはその人たちしかいなかった」。■ネット上には中傷が■
この企画展の開催を前に、インターネット上には少女たちの訴えを批判・中傷するツイートが多く投稿されました。中には、「自分の意思で売ったんだろ」「被害者面するな」という声もありました。

■「売春」は気軽に??一石を投じたい■
主催した「Colabo」の代表・仁藤夢乃さんが、今回の企画展を開くことにしたのは、少女たちを批判するツイートに象徴されるような、世間のイメージに一石を投じたいと考えたからです。
ある大学で講演をした際、学生たちに売春をする少女のイメージを尋ねたところ、「快楽のため」「その場限りの考えで気軽に」「好きでやっている」という意見が相次いだことがきっかけの1つでした。
仁藤さんは支援する少女たちとの関わりの中で、売春に至るまでには、虐待や貧困など、様々な背景があることを知っていました。
だからこそ、今回のネット上の反応を知り、多くの人に会場に足を運んでもらい、「実態を知って欲しい」と考えています。

■参加した少女たちの思い■
では少女たちは、何を伝えたいと考えているのか。記者が会場で取材したところ、次のように話していました。

すみれさん(仮名・18歳)
「これまで『買われた』過去を隠して生きてきましたが、一生懸命、自分の過去と向き合おうとする他の子を見て、私も向き合いたいと思いました。もっと色んな人に知ってもらいたい」。

なおさん(仮名・16歳)
「暴力や虐待などつらい思いをしている人がいる。好きでやっているのではなく、せざるを得ないこともある。思い出したくないし、怖かったけど、写真を載せることで伝わればいいなと思いました」。

Colaboの仁藤夢乃代表は、
ネット上の批判も、少女たちのことが理解されていない今の社会の現実だと感じています。その上で「自己責任と捉えられることが多いが、彼女たちの責任だけではなく、様々な問題が背景にある。彼女たちの姿を伝えることで、その背景に目を向ける人が増えてほしい」と話しています。
「私たちは『買われた』展」は、8月21日まで、東京・新宿区の「神楽坂セッションハウス」で開かれています。    


投稿者:宮脇 麻樹 | 投稿時間:13時58分

https://www.nhk.or.jp/seikatsu-blog/251174.html
2016年08月24日 (水)『買われた』展 少女の"売春"の背景に何が


https://imidas.jp/bakanafuri/?article_id=l-72-001-16-09-g559





 2016年8月11~21日、女子高生サポートセンターColabo(コラボ)とColaboにつながる中・高校生たちで、「私たちは『買われた』展」という企画展を都内で開催した。北海道から九州まで全国から14~26歳の24人の女性が参加し、写真や文章、日記などを通して、それぞれが「買われる」に至った背景や体験、想いを伝えた。予想以上の反響で、のべ2975人の来場者があり、最終日は入場2時間半待ちとなった。その様子は新聞各社をはじめ、多くのメディアにも取り上げられた。
 家族の暴力から逃れるため裸足で家を出て座り込んだ公園のベンチ、温かさを求めて自動販売機に寄りかかった姿、自分がどこにいるかわからずうつむいて歩いた繁華街の道、リストカットのあとが残る腕、成人するまで生き延びることができたことを伝える写真、虐待や貧困からコンビニの廃棄品を一人で食べ続けtことを伝えたいと書いた日記、知的・精神障がいがあることで差別された経験、虐待や性暴力やいじめなどの被害を学校、児童相談所、役所、警察や福祉施設などに相談した際に受けた不適切な対応などについて伝えるパネルを展示した。
 1年前、この連載エッセーで『少女は気軽に売春に足を踏み入れているのか?』という記事を書いた。このころから、企画展についての構想が、少女たちとの関わりの中から持ち上がっていた。

売春する中・高校生のイメージ

 15年9月、ある大学の授業で「売春する中・高校生について、どんなイメージを持っていますか?」と投げかけると、こんな言葉が返ってきた。
 ――快楽のため。愛情を求めて。その場限りの考えで。孤独で寂しい人がやること。遊ぶお金がほしいから。友だちに誘われて。自分は売春を断った経験があるけど、やる人はやりたくてやっているんだと思う。そんな友だちはいなかったからわからない。正直そんな人と関わりたくない。どうしてそこまでやれるのか理解できない……など。
 学生たちには伝えていなかったが、その授業には大学を見学したいという当事者が同行していた。彼女は家庭や学校で暴力、性的虐待、いじめを受け、家に居場所がないと感じる中で、友だちなどに強要される形で売春させられた経験を持つ。また、Colaboとつながる“売春せざるを得ない状況”を生きてきた少女たちとの関わりから、他の少女たちが売春した経緯や背景についても知っていた。
 学生たちの持つイメージと、私たちが活動を通して出会う中・高校生が経験した売春、児童買春の実態がかけ離れていたことから、私は彼女が傷ついているのではないかと気にして目を向けた。すると、彼女は「そんなもんだよ。世の中の理解なんて。もう、そんなことでは傷つかなくなった(傷つくことすらできなくなった)」と。
 その後、彼女は学生たちの前で自分の体験を語った。そして、多くの学生が自身の持つ極端なイメージや偏見に気づいてくれたことを感じた、と話した。また同じころ、彼女と一緒に慰安婦にされた女性たちを写した写真展に行った。そこで女性たちが伝える姿に、「自分たちも写真などで何か伝えられないか」という、ぼんやりとした話になった。後日、これらのことをColaboにつながる女子たちで共有し、「イメージを変えたい!」と、「私たちは『買われた』展」の企画に至った。“買われた展”というタイトルも、話し合いの中で「売ったというより、買われたという感覚だった」と話したメンバーがいたことから決まった。
「売春=気軽に・遊ぶ金ほしさ」というイメージに一石を投じるとともに、そこにある暴力や、その影響を受けて生きる当事者の姿を伝えることで背景に目を向けさせ、買う側の行為や大人の責任に気づく人を増やせる企画になればと話し合った。初めは18~20歳前後の高校生メンバーが中心だったが、企画の話を聞いて14~15歳の中学生らも参加を申し出た。開催資金を集める寄付サイトに載せたメンバーのメッセージを見て、つながった中・高校生もいる。ここに、そのメッセージを少し紹介したい。

企画展メンバーのメッセージ

「行くところがない時、声をかけてくるのは男の人だけ。体目的の男の人しか自分に関心を持たなかったし、頼れるのはその人たちだけだった。他にご飯を食べさせてくれる人も、泊めてくれる人もいなかった。同じ想いをする子を減らしたい」(17歳)

「“普通はしないことだから、する奴は異常”みたいなイメージがあって、違うのになって思う。それぞれに理由があって、単にさみしいとか、遊ぶ金がほしいとか、そういう簡単な理由じゃないことを知ってもらいたい」(16歳)

「親も頼れる大人もいない、一人で生きていくしかないと思ってた。最近一人暮らしを始めるまで、家っていう感覚がなかった。今でも、そういう小中学生はたくさんいると思うし、そういう子たちが体を差し出す代わりにおにぎりをもらったりしていることを、Colaboに来る年下の子たちを見て思う。だから私もこの企画に参加して、伝えたい」(20歳)

「いろんなきっかけでそうしてた、やめたくてもやめられなくなった子がいる。そういうことを知ってほしい」(19歳)

「Colaboには同じような経験をしたお姉さんたちがいて、そういう女の人から支援が届いているのを知って、自分だけじゃなかったんだって安心した。何か感じてもらうきっかけになったらいい」(15歳)

「私、できる時に(参加)したいんです。今までのこともう一度振り返りたくて。今、過去の行いをものすごく後悔しています。体に不調が出て、怖くて涙が止まりません。この体になって、ますます今の若い子に伝えたいこと多くなりました。だから、参加させてください」(18歳)

 15年10月から、それぞれが伝えたいことを表現した写真の撮影や、展示物の作成が始まり、準備は翌16年7月まで続いた。参加の形は人それぞれ。一人ひとりの状態や、状況に合わせて進めた。ミーティングや合宿には、参加する人もしない人もいた。参加したくても地方に住んでいたり、入院などによってできない人もいたし、自分の精神状態を考えて見送った子もいた。『大人に言われた嫌な言葉』というパネル作品は、ほぼすべてのメンバーが参加する形で作成した。

買う側の存在と、そこにある暴力

 まずは知って、何か感じてもらうことからだと思っての企画だったが、「私たちは『買われた』展」の開催が報じられると、「好きで売ったんだろう」「被害者面するな」「体を売るなんて馬鹿な女だ」などと反射的な中傷がたくさんあった。
 メンバーが伝えたいのは、単に「虐待や貧困があったから売りました。背景を知ってほしいです」ということではない。第一に考えてもらいたいのは、買う側の存在と暴力についてである。
 日本では「援助交際」という言葉で、児童買春が大人から少女への援助であるかのように語られているが、そこに「支配の関係性」があることに目を向ける人が少ないこと。そこで行われる性行為は暴力的なものが多く、弱い立場にある者に対しての暴力が、金を払うということによって正当化されていること。そんな中、少女への性暴力が「売春」という言葉で子どもの自己責任論で片づけられている現状があること。
 さらに、少女が「気軽に」足を踏み入れるというイメージを持つ人が多いのに対し、気軽に子どもを買う大人の存在や、「気軽に」買える状況があることに目を向ける人は少ないこと。金をやるからいいだろう、という大人の多さ。それは「援助」や「交際」ではないこと。買春の被害にあった少女たちは、PTSD(心的外傷後ストレス障害)や解離性障害、男性恐怖症、摂食障害、うつ病など、さまざまな精神疾患やトラウマを抱えて生きていること。そこに対する十分なケアがなされていないこと、なども伝えたいと考えていた。

善人たちは沈黙と無関心

 また参加メンバーの多くは、「買春者にこんなことをされた」と憎んだり責めたりする前に、「頼れるのも声をかけてくるのも、そういう人しかいなかった。そうするしかなかった」という。「買われる」に至るまでの背景には、善人による無関心や無理解があったことを知ってほしい、と話す子が多い。強制的に売らされたり、断れない状況で連れ込まれたり、ホームレス状態で売らざるを得なかった子もいる。貧困や虐待だけでなく、教育熱心な親の期待に応えることに疲れたり、いじめ、障がい、詐欺、病気がきっかけになった子もいる。
 その誰もが、「買われる」に至るまでに、保護者や教員、スクールカウンセラー、相談機関などの大人への相談、暴力や家出、自暴自棄な行動を繰り返す、うつになるなどさまざまな形でSOSを出していた。しかし、学校や児童福祉施設や医療機関や警察などで、適切な対応をされなかった。大人からのあきらめ、大人へのあきらめを感じながら、助けを求めることをやめ、自分が耐えることで生き延びようとした。そんな時、「どうしたの?」「一人?」「お腹すいてない?」と声をかけてきたのは買春者だったという。悪人による暴力以上に、善人の沈黙と無関心に苦しめられてきた、という声が上がった。

 買われるに至るまでの経緯や、買われた経験を通して、トラウマや苦しみを抱えて今も生きている一人ひとりが、もがきながら、それでも伝えようとしている。そこまでして伝えようとするのは、単に自分のことをわかってほしいというだけではない。

「今も同じように苦しんでいる子がいるはず」という想いと、声を上げられない子がいることを知っているからである。ないものにされていることを、知っているからである。「全部わかってもらえる、伝わるなんて思ってない」と、あきらめも感じながら、自分たちが伝えることで何か感じてくれる人や、真剣に考えようとしてくれる人がいるかもしれないと、希望を持とうとしている。

 さまざまな理由から、準備していた作品を展示できなくなった子もいた。そうしたメンバーの想いもしっかりと受け止め、例えば『大人に言われた嫌な言葉』のパネル作品では、遠方にいたり、自分が言われた言葉が辛くて書けないという子については代筆などもしてあげた。私は、こうした企画展メンバーの優しさと強さ、思いやりにも触れてもらえたらと思った。



私たちは『買われた』展を終えて想うこと(2)へ続く。

https://imidas.jp/bakanafuri/?article_id=l-72-001-16-09-g559
バカなフリして生きるのやめた

私たちは「買われた」展を終えて想うこと(1)

"ここがおかしい"

仁藤夢乃

(社会活動家)



https://imidas.jp/bakanafuri/?article_id=l-72-004-16-09-g559



ネットでの中傷

 メディアで企画展の開催が報じられると、ネット上には中傷的なコメントがあふれた。「買われた展」でネットやツイッターを検索すると、その様子がわかるはずだが、中傷コメントは無理解な人がたくさんいることを表していて、企画展の一部のようにも感じられた。
「売った女は罪を償うべき存在だ」というようなコメントに、「私は罪を犯した人間なんだ」と思い、苦しんだ高校生もいた。特定の展示物について、「頭が悪そう」「どうせ障がい者だろ」「買ってもらえただけ感謝しろ」などと中傷するコメントもあり、「気にしないようにしよう。見ないようにしよう」と言っても、彼女たちの多くは「みんながどう思っているか知りたくて、気になって検索してしまう」と話した。これらのコメントに対して、企画に参加していない女の子や、Colaboと直接つながりはないけれど同じように苦しんできた子たちも傷ついているのではと想像した。
 そうしたコメントを目にし、「読んでいてとても悲しい」「凹んだ」「見てもいないのに、ひどい言われよう……」「何も知らないくせに、わかっていないくせにひどいこと言って、理解のない言葉とかめっちゃ嫌だし、傷つくし、悔しいです」などと言いながら、それでも、彼女たちはこんなふうに話した。
「ネットの人たちにも、来て何か感じてほしい」
「私は見に来てくれる人たちの意見、いろいろな声をすごく楽しみにしています」
「生の声だけを信じることにします」
 そうした他のメンバーの言葉を聞いて、「自分も辛い経験をしたのに、生の声を信じようって言えるの、強いね。見たらみんな凹むと思うし、辛くなるし悔しいけど、今日来てくれてた人とか、明日から来てくれる人とかの考えが変われば……と思います」という子もいた
「みんな強くあろうとしている。無理している。また耐えている」と、私は思った。差別的な書き込みに「やるんじゃなかったと思った」という子もいた。希望を見失いそうにもなった子もいた。そんな環境を作っている社会があり、私たち一人ひとりに責任があると考えている。

生の声に励まされる

 実際に展示を見てくれた来場者の声は、この現状に向き合おうとするものが多かった。会場には当事者や元当事者、性被害やDV・虐待などのサバイバーの人、中・高校生、大学生、フリーター、保護者、教育・警察・医療・行政の関係者、児童養護施設や少年院に勤務する人、子ども・女性・困窮者の支援に携わる人、弁護士、政治家、タレントなど、さまざまな立場の人が来場した。ある男子高校生は、彼女に性被害にあったり売春したりした経験があり、気持ちや現状を知りたいと足を運んでくれた。2日連続で来場した男子高校生もいた。
 多くの人が1~2時間じっくりと展示を見て、涙を流しながらアンケートにメッセージを書く人もいた。性別や年齢を問わず、展示の所々に自分の体験と重なることがある、と話してくれた人もいた。アンケート用紙には自身の体験や想いを綴ってくれた人も多く、声にならなかった声が集まっていることを感じた。自分も当事者・元当事者である、と書いてくれた人が100人以上いた。これまで誰にも話せなかったという体験を伝えてくれた人もいる。「今、普通に会社員として働いています」「子どもを育てています」など、過去の体験を隠して「普通に」生活していると書かれたものも複数あった。きっとみなさんのまわりにも、身近な所に似た経験を持つ人がいるだろう。
 開催前日の会場準備には4人のメンバーが参加し、他にも会期中にメンバーが6人、時間外などに会場にやってきて、来場者からのアンケートを一つひとつ読んだ。ネットでの言葉の暴力に傷ついていた子も、生の声に励まされていた。

管理、指導、矯正ではなくケアの視点を

 ネットには「男ばかり責められるのはおかしい。自分で売っておいて被害者ぶるな」というコメントも目立ったが、私は売春に関しての法律や取り締まりは男女不平等であり、実態と合っておらず問題だと考えている。
 第一に、売春防止法第5条の勧誘罪が女性にしか適用されないことである。昨年、ツイッターを介して売春していた16歳の少女が勧誘罪で逮捕された事件では、「少女は遊ぶ金ほしさに売春し、映画を観たり洋服を買ったと証言した」「少女は高校を中退して半年間家に帰らず、居所不明になっていたため任意の事情聴取ができず、逮捕に踏み切ったと警察は説明している」などと、さまざまなメディアが報じた。
 この件で、ある記者に「なぜ少女が軽い気持ちで売春してしまうのか」と聞かれた。私は逮捕された少女のことを直接知らないが、報じられている状況を気軽なものとは思えなかった。半年間も家に帰らず生活するには、食事代や宿代も必要だ。ファミレスで299円のドリアを食べたり、マンガ喫茶でシャワーを浴びたりするなど、売春で得た金を食費や生活費にしていたのではと想像した。映画のチケットや服を買ったというが、生活には娯楽や衣類も必要だろう。
 昨年、中学生を買春した教員が、LINEに残された証拠に対し「買春を持ちかけたが約束の場所には行かなかった」と容疑を否認した事件もあった。街でもネット上でも、買春を持ちかける男性はたくさんいて、アプリやSNSによって密かに子どもたちに声をかけることができる状況もある。今回の企画では、そういう存在や状況に目を向けてほしいという想いもあった。
 また、警察が買春者のふりをして少女に近づき補導する「サイバー補導」では、日本で禁止されているはずの「おとり捜査」のようなことを「補導」の名のもとで行っている。私は、売春や家出などの「非行」といわれる行動をとることは、子どものSOSだと思う。しかし、本来大人の支えを必要とする困難を抱えた子どもが補導されても、家庭や学校に連絡をし、指導・注意をすることが基本的な対応であり、ケアにつなげることはほとんど行われていない。
 特に、虐待や児童買春など暴力の被害にあっている場合では、心身共に傷ついており、医療、福祉、教育的なケアや支援、家庭への介入が必要な場合が多いと考えている。また同時に、親への支援も必要である。私は補導が、子どもへの管理や指導、矯正ではなく、ケアの視点を持ったものになることを望んでいる。また一方で、買い手である大人へのサイバー補導や、注意指導がなされていない状況も改善すべきだ。
 今回の企画展では、メンバーの姿や体験を伝えることに力を入れた。まずは知って、感じてもらい、議論を始めるきっかけになればと考えている。「私たちは『買われた展』」であって、「だから私は『売りました』展」ではないことを、今後も丁寧に説明していきたい。
 日本では児童買春は「少女売春」や「援助交際」などと呼ばれ、少女が主体性をもって行うものだとか、大人から少女への援助であるかのように語られることが多い。金銭のやり取りを介することで、暴力を正当化したり、対等な関係があると主張する人も少なくないが、お金を持つ大人が、社会から孤立した子どもを“買う”という現場にあるのは、「援助」や「交際」ではなく、「支配の関係性」と「暴力」である。
 ブランドものほしさに少女が売春し、それを大人の男性が援助するというイメージを持つ人が多いのは、これまで多くのメディアや論客がそうした視点から児童買春を語り、作られた社会の風潮があるからではないか。
「自分は好きでやっているんだ。お金をこんなにもらえた~」と嬉しそうに話すことで自分を保とうとしていた、と打ち明けた高校生もいる。企画展に参加してなお「売ってしまった自分が悪い」「断れなかった自分が悪い」と、自分を責め続ける中・高校生もいる。中には、小学生の時に被害にあった子もいる。
 彼女たちを軽蔑したり、差別するのではなく、彼女たちがどうしてそういう状況に至ったのか、そうせざるを得ない状況を生き抜いてきたことの意味について、考え、背景を想像できる人が増えてほしい。

https://imidas.jp/bakanafuri/?article_id=l-72-004-16-09-g559
バカなフリして生きるのやめた

私たちは『買われた』展を終えて想うこと(2)

"ここがおかしい"

仁藤夢乃

(社会活動家)

2016/09/22

私たちは『買われた』展を終えて想うこと(1)からの続き。

https://imidas.jp/bakanafuri/?article_id=l-72-001-23-08-g559





風俗店に勤める女性が客との間で妊娠し、子どもを遺棄したというニュースが報じられた。こうした事件は後を絶たず、女性を責める声ばかりが大きくなっている。中には路上で出産せざるを得ないまでの状況に、女性たちを追い詰めたのは誰か? 風俗で子ども妊娠するとはどういうことなのか?

赤ちゃん遺体遺棄事件の裏にあったのは?

 2023年7月21日、愛知県常滑市で今年4月にマンションの共用トイレ内で出産した赤ちゃんの遺体を実家の庭に埋めた罪に問われた29歳の女性に対し、名古屋地方裁判所が有罪判決を言い渡した。

 報道によると、法廷の中で裁判官は「風俗店で避妊をせずに妊娠したうえ、出産後周囲に相談もしていない。短絡的な犯行と指摘せざるを得ず、酌むべき事情はない」と指摘。他にも「遺体をタオルに包んだだけで、ごく浅い穴を掘って埋めた行為はみずから産んだ赤ちゃんを弔う気持ちがない」(裁判官)、「無責任で、悪質というほかない」(検察官)といった意見もあったという。

 しかし、それらはあまりにも彼女が置かれた状況に理解がない言葉だと言わざるを得ない。被告人の女性は大学を出て保育士をしていたが、人間関係のもつれから退職。その後は風俗店で働くようになった。避妊せずに性行為をすることもあり、そうするうちに妊娠したという。彼女は一人暮らしで、メンズ地下アイドル(メン地下)に月100万円貢いでいたとの情報もあり、5~6年前からいわゆる「推し」の応援に金を使い、自らは携帯代や光熱費すら払えず、家の電気を止められたことが何度もあった。一人暮らしをしていた場所も、その「推し」の活動場所の近くだったようだ。

 メンズ地下アイドルらは、ホストクラブの従業員のように女性たちに色恋営業(本気で恋愛しているように思い込ませて女性に金を使わせる手法)をかけて金を使わせたうえ、中には一人のファンにCDを1000枚購入させたり、チェキ撮影会などの名目で利益を上げたりすることもある。そんなメン地下が色恋営業で女性に近づき、親元や友だちから引き離して近くに住まわせること、将来一緒に暮らそうなどと言って期待させておいて、風俗店などでより多くの金を稼いでくるように働きかけることはよくある話だ。

女性から金を巻き上げる「メンズコンカフェ」

 さらにメンズ地下アイドルのマネジメント事務所は、JKビジネスの規制後に登場した「コンカフェ」(コンセプトカフェ : 特定のコンセプトに合わせた衣装や内装で、女性従業員が飲食以外のサービスも提供する店)や風俗店とつながっていることが少なくない。なぜなら少女や女性に所属のメン地下に貢がせたり、「メンズコンカフェ」(メン地下たちがホスト役をつとめるコンセプトカフェ)で多額の金を使わせたりしたうえで、コンカフェや風俗店を紹介して彼女らを働かせるというのが新たな性搾取の手口の一つだからである。

 23年4月、東京・新宿歌舞伎町にあるメンズコンカフェの従業員の男が、風俗営業法違反で逮捕された。男は18歳の少女2人に声をかけてつながり、一人の少女は性売買で稼いだ9カ月分の売り上げ約50万円を、もう一人の少女は約5カ月間で30万円のシャンパンを含む約33万円をこの店で使わされていた。この店は21年7月にオープン以降、月々1000万円ほどの売り上げがあり、警察はそのうち8割程度を20歳未満への酒類提供などによるものとみている。

 5月に摘発された歌舞伎町の別の店では、16歳の女子高校生を2度にわたって午後10時以降に入店させ、1本40万円のシャンパンを頼ませるなどして、約85万円を請求したことで店長や従業員が逮捕された。

 また、1月にはメンズ地下アイドルの男2人が警視庁に逮捕される事件もあった。彼らはそれぞれのファンだという2人の17歳少女に対し、18歳未満と知りつつわいせつな行為をした疑いをもたれている。被害は複数回にわたり、少女2人はどちらも自分が「推す」容疑者に恋愛感情を抱き、「推し活」としてグッズ購入などに約50万円、約300万円を使ったと報じられている。

 このように少女たちへの性加害に対して、警察も少しずつ動くようになってはいる。とはいえ中学生の少女がメンズコンカフェで50万円を使わされ、その支払いのため性売買させられていた事件でも店の男は「少女と性行為をした罪」でしか起訴されず、未成年者と知りつつ多額の金を使わせたり、色恋営業で詐欺を働いたり、性売買に誘導したりということでは捕まえられていない。少女たちが体を売ったり、大金を使うことも「彼女たちが自分の意思でやったこと」と責任のがれができる構造を、メン地下やコンカフェ経営者、性売買業者らが作っているのだ。

 今回の事件においても、当のメンズ地下アイドルやその所属事務所が警察から事情聴取を受けた。しかし、特に問題にはならなかったとのことである。

お金がないと彼との関係を維持できない

 常滑市の事件で被告人の女性は妊娠に気づかず、「毎年夏バテするので、今回も夏バテかなと思っていた」と供述したという。妊娠に気づくこともできない状態だった彼女が、共用トイレの中で一人きりで出産した。どれだけ怖く、孤独だったか想像するだけで胸が痛む。

 そうして生まれた赤ちゃんは死産だった。捜査関係者によると、赤ちゃんの体重は2000~2500gと新生児の平均体重より軽く、早産だった可能性もあったという。「生理が来ないな」と思った時に、いち早く病院へ行けていたら女性は産む/産まないの選択ができ、赤ちゃんも亡くならずに済んだ可能性もある。でも彼女には病院へ行けるだけの金も、健康保険証もなかったという。

 法廷での「誰かに連絡しようとは思いませんでしたか?」との問いに、「自分の中でも何が起こっているか分からず、携帯料金も支払えていなくて、連絡できる状況ではありませんでした」と答えた彼女。病院を受診することもできず、相談できる人もいない中、突然の出産で死産となってしまった。彼女は死体遺棄で有罪となり、決して赤ちゃんを殺害したわけではないけれど、ネット上では「子どもを殺した」と誹謗中傷されている。

 当時の生活状況について、「自分の趣味にお金を使い、電気やガスも止まっていた」とも答えている。そうした彼女の金銭感覚を責める声も多く上がっているが、その前に背景にも目を向ける必要がある。

 ホストやメン地下などに色恋営業をかけられ、「キミのことが好き」「大事だよ」などと騙される中で、女性が「お金を使わないと彼との関係を維持できない」「もっと頑張らないと彼に嫌われてしまう」と考えたり、その男性を応援することだけが自分の生きがいのように感じたりすることはよくある。彼女についても、自分の生活より「推し」の男に金を使うことを最優先しなければという思考になっていたのかもしれない。

 本人は「趣味」と言ったとしても、本当にそうなのだろうか? ホストクラブやメン地下、メンズコンカフェなどでの散財を「推し活」「趣味」とメディアも報じることで、少女や女性たちに「趣味だから」「好きでやっていることだから」と納得させ、自己責任を内面化して性売買に自ら向かうよう誘導する。これは、洗脳による搾取の手口でもある。

彼女は「流されて」犯行におよんだのか?

 虐待があったり、頼れる家族がいなかったり、生活費がなかったり、とさまざまな事情を抱えて性売買せざるを得ない状況にある女性は多くいる。そして、性売買に染まると「癒しが必要だ」とホストクラブやメンズコンカフェに誘われる機会も多くなる。性売買に関わっていなくても、初めは「お金を使わなくていいから」「初回は1000円だけだから」などと、街やSNSで業者の男たちが女性に声をかけてくる。
そこで女性に借金を背負わせたり、男性を応援するのに金が必要だと思わせたりしていく。彼女らはより多くの金を性売買で稼げるようにと美容整形や豊胸を勧められ、さらに借金がふくらんでいく。すると今度は闇金業者や買春者らが、借金の返済や生活苦に乗じて近づき、「お金を貸す」と言って見返りにさらなる性売買を行わせる。

 やがて電気やガスが止まり、家賃滞納で住居も失うと、「うちに住めばよい」と言って住まいを提供して逃げられなくする。そうして返済が滞ると、「家族や友人にばらすぞ」などと暴力や言葉で脅しをかけ取り立てる。中には障害を持っていたり、貧困や虐待などを背景に、性売買するしか選択肢がない女性もたくさんいる。

 再び常滑市の事件に話を戻すと、彼女は死児を出産した後、マンションの自室に戻り赤ちゃんの遺体を浴室に置いたという。「現実を受け止めきれず、視界に入れたくないと思った。見えなくなればどこでも良かった」と供述している。その後、母親に相談しようと実家へと向かったが、家族と顔を合わせたら「怒られるのでは……」と思って話せなかったという。そもそも相談できる人がどこにもなかったから、ここまできてしまったのだ。

 彼女は赤ちゃんを実家の花壇に埋める際、くるんでいたタオルを取ることができず、顔も見られず、「私でごめんね……育ててあげられなくてごめんね……」と罪悪感を覚えたという。直視できないというのは、その現実の重さを感じていたからではないだろうか。

 裁判官は「出産した時、自分の部屋に戻った時、実家に行った時……やり直す機会はいくらでもあった。目の前の現実を見たくない気持ちは分からなくもないが、流されすぎではないか」「心配なのはこれから。また状況に流されて楽な方を選んでしまうのではないか?」と問いかけたという。

 私は、彼女が「流された」「楽な方を選んだ」とは思えない。彼女は一人で耐えること、自分だけで問題解決することを選ばされた。それしか選択肢がなく、ずっと一人で抱えてきたのではないか。女性を貧困に陥らせて、一人ぼっちにさせて性売買に追いやり、心身を傷つけて、今回のように犯罪者にする。そういう社会構造がこの国にはある。むしろ何も考えていないのは、彼女を妊娠させた男だが、その責任が問われることはない。

女性を妊娠させ、孤立させた社会の闇

 性売買をする女性たちは、毎日複数の男性たちからレイプされ続けるような状況の中で生きている。金にものを言わせた性行為は、一番簡単な支配方法なので、買春者はここぞとばかりに無理な要求をつきつける。「生」(コンドームなどを使わない性交)や「中出し」(生挿入のまま膣内射精すること)などはその典型例だ。

 裁判官は「風俗店で避妊をせずに妊娠した」と言う。しかし性売買の現場を見ると、妊娠経験のない人のほうが少ないのではないかと思うほど、中絶や妊娠出産を繰り返している女性は多い。それも1度や2度ではない――といううこともよくある。

 性売買によって妊娠しても、誰にも相談できずにいる女性は多い。経済的な理由で病院にも行けない。そうして妊娠したことを受け止められないまま、路上で出産に至る女性が多いことも私たちは知っている。妊娠について正しい知識を教わる機会のないまま性搾取されていたり、避妊薬が買えなくて悩んでいたりする、そんな女性たちに「ピルをやるから中出しさせろ」と言ってレイプする男性もいるが、彼女たちはむしろそのことに感謝してしまうほど孤立している。

 出産したての赤ちゃんを施設に預け、路上に戻って来て性売買をしている女性と出会うこともある。借金があるから、家賃を払わないといけないから、男に渡さないといけないから、それしか自分にはできることがないから――と、すぐに戻ってくる。男たちも気にしないどころか、妊婦風俗や母乳風俗で働かせる。お腹の大きい妊婦をレイプしたり、母乳を飲んだり、それすら売り物になるのが今の日本社会だ。

 確かに日本社会は、売春防止法でいわゆる「本番行為」を禁止している。しかしそれは建前であり、たくさんの女性が性売買で妊娠している。買春者のほうも、責任を問われないことを知っているから「生」「中出し」をする。スカウトなどの斡旋者や斡旋業者の責任も問われない。勝手に女性が「本番」をしたのだと言い逃れし、自分たちは知らなかったと被害者面できるようになっている。

 それを警察も司法もわかっていて、女性だけが批判されたり処罰されたりすることが繰り返されている。売春防止法の「勧誘罪」でも、捕まるのは常に女性だけである。私はある警察官から「警察は女性を捕まえることしかできない。だから、あなたたち支援者の活動に頼るしかない」と、はっきり言われたこともある。



 そうして、似たような事件は今も全国で繰り返し起きている。

 23年1月、大阪市で住居不定・風俗店従業員の33歳の女が、路上で出産した女児の遺体をかばんに入れてコインロッカーに遺棄したとして逮捕、起訴された。彼女はビジネスホテルを転々としつつ毎月約35万円の給料をホストクラブで使い、交際していたホストにも借金があった。これまでに死産を含めて12回出産し、子どもを施設に預けているが、今回は家がなく保険証も切れていて病院に行けなかったという。

 札幌でも、風俗店で妊娠した女性が子どもを遺棄する事件があった。この女性は22年5月に札幌市内のホテルで赤ちゃんを出産し、直後に湯を張った浴槽に沈めて窒息死させたうえ、遺体をクーラーボックスに入れてコインロッカーに放置。殺人と死体遺棄の罪に問われ、懲役5年の実刑判決が出た。彼女の弁護団は「風俗店で男性客に無理やり性行為をされ妊娠。生まれた赤ちゃんを目の当たりにして混乱し、極度に疲弊した状態で、自分をコントロールする能力が低下していた」「ADHDグレーゾーンなどの被告の知的能力の影響で誰にも相談できずにいた」と主張しているそうだ。

 これ以上、こうした悲劇を繰り返さないためには、性売買に関わる女性に自己責任を押し付けるのではなく、背景にある性搾取の構造を理解して、それらを変えるよう行動することである。まずは買春者や業者を処罰する法律などを整備し、性売買せざるを得ない状況にある女性たちにそこから抜け出すための具体的な選択肢を提示して、関係を作り、支えることが必要だ。



【参考資料】

「風俗店勤務で妊娠 赤ちゃんの遺体を実家の庭に埋めた29歳の女『私でごめんね・・・』共用トイレでたった1人で出産…死体遺棄事件で執行猶予付き判決」(CBCニュース、2023年7月22日)

「赤ちゃんの遺体遺棄の罪 母親に有罪判決」(NHKニュース、2023年7月21日)

「『私でごめんね…』赤ちゃんの遺体を実家の庭に埋めた29歳の女 風俗店勤務で妊娠 共用トイレでたった1人で出産… 裁判で見えた『人生』」(CBCニュース、2023年7月8日)

「愛知・我が子の遺体を庭に埋めた元保育士『月100万円貢いでいた』メンズ地下アイドルの“闇”」(週刊女性PRIME、2023年4月28日)
「少女2人にシャンパン提供、80万円売上か 歌舞伎町コンカフェ摘発」(朝日新聞デジタル、2023年4月3日)

「メン地下アイドル、ファンにわいせつ容疑 300万円使った被害者も」(朝日新聞デジタル、2023年1月31日)

「『お金ないし誰の子どもかわからない』路上で赤ちゃん出産…傍聴から見えた女の半生『風俗店勤務でホテル転々…給料の大半はホスト通いに』『過去12回の出産』『妊娠を相談する人がいなかった』」(MBSニュース、2023年7月4日)

「『男と遊び暮らしを続けるため…』検察側が指摘 女は起訴内容認める JR千歳駅コインロッカーに殺害した赤ちゃん放置」(北海道ニュースUHB、2023年1月31日)

https://imidas.jp/bakanafuri/?article_id=l-72-001-23-08-g559
バカなフリして生きるのやめた

風俗で妊娠し、路上で出産した女性を追い詰めたもの

“ここがおかしい”

仁藤夢乃

(社会活動家)

2023/08/08

https://imidas.jp/bakanafuri/?article_id=l-72-001-22-05-g559





「性交」を契約上の業務として国が公認!?

 アダルトビデオ(AV)の規制に関する新たな法案(性行為映像作品出演被害の防止等に関する法律)が今国会において、とんでもないスピードで採決されようとしている。

 もともとこの法案は2022年4月から施行された「成年年齢引き下げ」に伴い、成人に組み入れられた18〜19歳の若者が、AV出演契約で民法の「未成年者取り消し権」にあたる権利を今まで通り行使できるよう求めた被害者や支援団体の声に応えて検討が始まった。が、いつのまにか内容を変え、これまでAV撮影で建前上「演技」として行われてきた性交シーンが、出演者との契約合意があれば「本番行為」であっても問題なしとされ、AV制作・販売業者(以下、AV業者)に大変都合のいい法案となってしまった。

 このままでは「性交のビジネス化」を国が法に定め、AVを公(おおやけ)に認めることになる。売春防止法にも反しており、大変な問題を抱えた立法と言えるだろう。

 今回、この動きに気づいた人がヒアリングの場を設けるよう働きかけ、22年5月9日に与党と各党の実務者会議に民間の女性支援団体が呼ばれ、Colabo(コラボ)を代表して私も参加した。しかし、それは私たちに与えられた「最初で最後の」公聴会だった。もしもこの場を設ける働きかけがなかったら、AV出演被害の当事者や支援団体からのヒアリングすら行わずに、新しい法律をつくろうとしていたのだから驚きだ。

 私が出席した各党実務者会議によるヒアリングには、AV業界の発展と健全化のために設立されたという任意団体の「AV人権倫理機構」も呼ばれていた。同機構は「中立機関」と言いながら多数のAV業者が加盟しており、業界と深く通じていると私は感じている。彼らはどんなことを話すのだろう? 議員たちはその話をどう聞くのだろう? と思っていたが、同機構の資料には「出演強要はほぼなかった」「非常に儲かるから続けたい」と書かれていた。そして機構側出席者の説明にも「当機構に加盟する会社が制作した“適正AV”においては、19年以降は出演強要は1件もなかった」とあった。

 さらに「女性たちは自らの意思で“女優”になっている」「19年以降も言葉巧みに意に反して撮影させられた、させられそうになった例は少数あった可能性があるが、販売が継続されているケースはほぼ存在しない」と、私たちが見てきた現実とは全く違う主張をした。

 私たち女性支援団体は、AV出演被害に遭った女性に日々出会っており、AV業者の悪質な手口も把握している。被害の実態について当事者たちも声をあげており、政府も無視できない状況であるはずなのに、どうして業界側ともとれる団体を被害者や支援団体と同等に扱い、話を聞くのだろう? と憤りを感じた。

人身取引を「ビジネス」として正当化

 ヒアリングの席で、AV人権倫理機構は「AVは3000億円の市場であり、厳しい法規制がかかるとAV業界がつぶれ、そこで働いている人が食べていけなくなる。AV業界はグレーゾーンで生きている人の“サンクチュアリ”であり、大企業体でもあり、ビジネスとしてやっている。業界で『稼げた』という人は最低でも1億円は稼いでおり、スカウトも2000万円は稼いでいる。AV制作には工場も必要なく、元手もかからず簡単にできてしまうので、国内で厳しい規制がかかればそれだけの市場が海外に流れることになるかもしれない」などとAV業界の実態を紹介していた。

 女性を性搾取し、女性の人権を踏みにじって成り立つ「ビジネス」は人身取引行為だと思うが、彼らにもその認識があるらしく「かつてのAV業界は人身売買そのものだった。今も3000億円のうちの2%しか“女優”には支払われていないので、人身売買と言われても仕方ないと思い、報酬をアップするように考えている」と話した。

 ユニセフ(UNICEF 国連児童基金)によると、人身売買(人身取引)とは「弱い立場にある人々を搾取する目的で、強制的な手段や暴力、脅迫、誘拐、詐欺行為を用いて又は脆弱な立場に乗じて、人を獲得・輸送・受け渡ししたり、労働を強いたり、奴隷化したりすること」とある。被害者に手渡される金額が高ければ人身売買でなくなるということでは全くない。

 しかし、出席した議員から「単体女優」「企画もの」といった業界人やユーザーだけに通用するような用語を交えて出演料の質問が出たり、AV人権倫理機構も議論の焦点は「人権」ではなく「ビジネス」の問題であるかのように発言したりと、論点はずらされていった。

 さらに別の議員からは、「AV人権倫理機構がつくる自主規制を骨子案作成の参考にした」という発言もあった。私たち支援者側へのヒアリングは一度きりなのに、AV業者側からはよく話を聞いてこの法案を作ったのかなと私は思った。

 AV人権倫理機構側は「自分たちは“中立な機関”であり、被害者からの相談も受けている」と主張していたが、AV出演の被害者支援を行っている支援団体に「AV人権倫理機構に相談しても何もしてもらえなかった」という被害者からの相談が相次いでいると聞いている。そうなると、彼らの言う「相談支援」もAV業者の「ビジネス」を正当化するためのものではないか。

 ちなみに、この法案の一番の問題点は、AVを含めた性売買や性搾取が「構造的な暴力」であることを認識していないどころか、主に女性を中心とする被害者に「自由意思」という言い方で責任を押し付けようとし、それらを「契約」の名のもとで合法化していることだ。
 AV出演被害者の相談支援活動を行っているNPO法人「ぱっぷす」副理事長の中里見博(なかさとみ・ひろし)さんは、この法案について「AV被害の根源は、性交を含む実際の性行為が“撮影”で行なわれることから生じており、この法案は“カメラを回すこと”で実際に性交を伴う契約を“合法”と認めるものだ。これまでAV出演は、裁判所により公衆道徳上有害な業務であると認定されていることと相容れない」と指摘する。1994年の東京地方裁判所判決では、「(AVに出演する女性は)あてがわれた男優を相手に、被写体として性交あるいは口淫等の性戯の場面を露骨に演じ、その場面が撮影されるのを業務内容とする」「(AV出演は)社会共同生活において守られるべき性道徳を著しく害するもの」とされている。

 中里見さんは「この法案が通れば、金銭でセックスを買うことを積極的に合法化する日本で最初の法律になる」と危惧している。

私が指摘した「AV新法の問題点」と要望

 2022年5月9日、性暴力被害者を支援する民間支援6団体は「この骨子案のままでは到底、受け入れられない」との要望書を提出した。私は法案の詳細以前に、そこに書かれた「目的」や「定義」からすでに問題だらけであると感じ、以下のことを強く主張した。

 まず、法案に「目的」として書かれた「出演する者の自由な意思決定を確保」するという文言は、AV出演被害を矮小化し、被害者が声をあげることを妨げるものであるため削除する。AVの撮影に関する加害行為は、性暴力と同じように「断われない」「抵抗できない」状況や関係性を利用して行われ、対等ではない関係性がAV業者と女性たちの間にあるからだ。

 性暴力被害者は、被害体験を再演しようとする「トラウマ反応」によって、AVに出演被害に遭うことも少なくない。AV業者はそれも熟知したうえで利用し、女性たちに自らの意思で出演を選択したかのように思い込ませ、誘導するようなことを日々行っている。「脅し」「暴行」「強要」を用いずとも、相手を出演させることは可能なのだ。

 このまま新法が成立すると、AV出演は「本人の意思に基づくもの」とAV業者側が主張できることとなってしまう。そもそも、この法案ではAV業者と被写体になる女性が対等であることが前提になっているが、その道に長けているAV業者と、右も左もわからない十代の女性が対等な関係にあるわけがない。そのため「(出演する者の)自由な意思決定を確保」という文言を、「被写体となる者の尊厳または人権を確保」と修正することも必要だ(これについては、ヒアリング後に「個人の人格を尊重」へと修正された。「人権」ではなく「人格」としたため、人権保障の視点ではなく個人に自己責任を押し付けるようにも読める)。

 さらに法案の中で「AVの定義」に書かれた「契約」の対象となる行為に「性交」が含まれることで、「撮影」の名目なら「本番行為」の金銭取引が可能となり、売春防止法で禁止されているはずの行為も合法となってしまう。金銭を介した「性交」が法律で認められると、AV出演以外の性売買被害者の人権侵害をも助長することに繋がる。

 また、最近のAVで多く見られる、排泄物や吐しゃ物を食べさせる、水中に沈めて息をさせない、ろうそくや花火等で火傷させる、殴る蹴る、首を絞めるなどの虐待・暴力行為さえも容認されている。そうした「撮影名目による暴力行為」の合法化も問題だ。

 多くのAVでは女性が屈辱や性的対象物、商品、見せ物として非人間的に描かれており、苦痛を楽しんでいるかのように見せたり、強姦やその他の性暴力そのものを見せたりすることも少なくない。つまり昨今のAVは、女性を性的に支配するストーリーを楽しむ加害映像と言うことができ、その背景には女性蔑視や女性差別がある。法案の「全体として専ら性欲を興奮させ又は刺激するもの」という「AVの定義」が、ユーザーやAV業者側に立った言葉であることも問題だ。

 そこで、私たちは要望書で以下のことを求めた。(1)性交および暴行陵虐行為を目的とする契約は禁止すべきであり、その前提で定義を変更すること。(2)法律名の「性行為映像作品」を「性行為画像記録」とすること。(3)「性行為画像記録」の定義を、「人が性交若しくは性交類似行為を演じる姿態又は性器等を触り、若しくは触らせる行為、および暴行凌辱・残虐行為等を演じる姿態が撮影された映像を含む記録であって、主に女性を性的に支配し、性的対象物として暴力的に扱うものをいう」とすること。(4)性器を露出した画像記録は許されないので、削除すること。

 こうした民間支援団体からの要望を受けて連日法案が修正されていったが、この文章を書いている現在に至るまで「性交を合法化する」という根幹の部分は修正されていない。

被害者の人権保障の観点から

 AV出演被害者の人権・生活保障、尊厳の回復と、被害に遭わずに生活できるよう未然の支援策も重要だ。

 そもそも妊娠や性感染症のリスクがある行為が、法的に「仕事」や「契約によって有効なもの」として認められること自体が問題だが、現状ではAV出演や性売買に関わる女性たちが妊娠したり性感染症になったりしてもAV業者や相手の男性は責任を負わず、女性自身が治療費や治療の間の生活費を工面しなければならない状況がある。そのため妊娠や性感染症について、また現実に生じている精神疾患などの影響についてもAV撮影の被写体となる女性の自己責任ではないこと、AV業者や相手の男性にも責任を負う義務があることを明確にすることも必要だと思う。

 法の目的には、被写体となる女性の「性と生殖の健康と権利の保護」を入れ、男女間の「性交」は「生殖行為」であるため、AV業者の義務として被写体となる女性の「性と生殖の健康と権利の保護」もしくは、せめて「身体的・精神的・性的安全と健康の確保」を入れるべきである。被写体となる者の「生命・身体に重大な危険を及ぼす行為」「心身の安全・健康に影響を及ぼす行為」の禁止規定も必要だ。そうして「罰則がなければ、この新法が実効性のないものとなることは確実」とも訴えた。

 コロナ禍で、障害や性暴力被害だけでなく、貧困などからAV出演被害に追い込まれる女性もこれまで以上に増えている。他に選択肢がない、またはそう思い込まされる社会の状況の中で、私たちはAV出演や性売買を選択させられている女性と、毎日のように出会っている。こうした状況の背景には、女性が生きづらい男女不平等社会があり、この法案はそうした根本的な問題に蓋をするものだ。

 要望書提出後の5月13日に示された法案には「性行為映像制作物の制作公表により出演者の心身及び私生活に将来にわたって取り返しの付かない重大な被害が生ずるおそれがあり、また、現に生じている」とあった。この法案の起案者も、出演者たちに重大な被害が生じることを認識しているのだ。

 そのため、「出演に係る被害の発生及び拡大の防止を図り、並びにその被害を受けた出演者の救済に資するために徹底した対策を講ずること」を目的として、「出演契約の締結及び履行等に当たっての(中略)義務、出演契約の効力の制限及び解除並びに差止請求権の創設等の厳格な規制を定める」とされた。「生殖機能の保護」という言葉もさらに付け加えられた。
 しかし、そもそも、将来にわたって取り返しのつかない重大な被害が発生する恐れがあること、生殖機能の保護が必要なことをなぜ契約に含まれるものと認めるのか。

「心身及び私生活に将来にわたって取り返しの付かない重大な被害が生ずるおそれがある」こと、また、現に生じていることを認めるのであれば、その原因となるAVの制作をさせないことが必要なのではないか。そうでなければ被害を防ぐことはできない。契約方法や制作行為に対する規制が足りないから被害が起きているのではないし、法案にある通り「相談体制」を整備したとしても、被害者が相談するのは被害に遭った後であり、この法案では被害の拡大を防ぐことも不可能だ。

 さらに罰則規定として、説明書面や契約書等を交付せず、虚偽の書面を交付した場合は処罰の対象になると書かれている。これはまさにAV業者が現在も行っている「自主規制」を参考にしたものだ。AV業者は契約の際に脅しや強制がないことを証明するため、契約の様子を録画していると話していた。前述したようにAV業者と被害者には対等な関係性はなく、「契約書」や「説明」もAV業者が自身の正当性を主張するためのものである。

 AV業者がもしも「将来にわたって取り返しのつかない重大な被害が発生する恐れがあること」を丁寧にしっかりと書面で説明したとして、出演交渉を受けるのは男女不平等社会の中で性売買に追い込まれる女性たちである。AV業者との決して対等でない関係性の中で同意せざるを得ない状況にあっても、「本人が同意した」ということで「本番行為」も契約に入れられてしまう。つまり、この法案では実際に今も起きているそのような被害が防げず、それどころか女性たちに自己責任を押し付けるものになっている。

 私は、要望書のすべてが反映されないのであれば、この新法はないほうがよく、あっても被害者救済につながらないどころか、被害を拡大し、さらなる女性差別や人権侵害が生じることになると考えている。「まずは作って、後からよいものにしていけば?」と簡単に言う人もいるが、日本では法律は一旦通れば改正は簡単ではない。

 まずは18〜19歳を救済する「取り消し権」の特例法を作り、AV全体の問題については議論の積み重ねが必要だ。AV業者や購買者、消費者の目線で書かれた法案がこのまま成立してしまえば、事実上のAV合法化に繋がり、AV業者に自身の正当性を主張するために使われることは確実だ。

 5月22日に東京・新宿で実施された「AV業界に有利なAV新法に反対する緊急アクション」は、大きな反響を呼んで国会も注視している。市民で反対の声をあげ、世論を高めることが必要だ。

https://imidas.jp/bakanafuri/?article_id=l-72-001-22-05-g559
AV業界や購買者目線で作られた「AV新法」には反対です!!

“ここがおかしい”

仁藤夢乃

(社会活動家)

2022/05/24

「性交」を契約上の業務として国が公認!?


https://imidas.jp/bakanafuri/?article_id=l-72-001-22-01-g559




「ステイホーム」できない少女たち

「非常時には子どもや女性への暴力が深刻化する」と国連も注意喚起しているが、埼玉県警察はコロナ禍の中、SNSで居場所を探す少女たちを狙った誘拐事件が増加したと発表。私たちColabo(コラボ)でも、2020年2月末に当時の安倍晋三政権が全国の小中高校に臨時休校要請を行ったことで、虐待や生活困窮のリスクが高まり相談が急増した。

 19年度の相談者は591人だったが、20年3月から5月までに300人以上からの相談があり、20年度は前年比2.5倍以上の約1500人に関わることとなった。一方で、SNSで「#家出」「#泊めて」などと投稿する少女たちに、私たちの応援者の方々が「知らない男のところに泊まるくらいならColaboに連絡してみたら?」と案内してくれたことからColaboへ繋がった少女たちもいる。

 安心して過ごせる「ホーム」を持たない人たちは、「ステイホーム」の呼びかけから排除されている。路上や知らない人の家を転々としたり、ネットカフェに寝泊まりしたりするなど、感染リスクの高い生活をせざるを得ない少女たちを受け入れる中で、Colaboのシェルターでも新型コロナの感染者が出た。風呂、キッチン、トイレが共用のため、入居している女の子たちが濃厚接触者となった。精神的にもつらい2週間の自宅隔離生活を過ごし、施設内の消毒なども自分たちで行わなければならなかった。

 必要な人に、どのように安心安全に過ごせるところを用意するかを考えていた時、宿泊客が減った複数の民間ホテルが、経営も大変な状況の中で協力を申し出てくれた。ホテルの客室をシェルターとして活用できることになり、20年度は約100人の女性に770泊を超える緊急宿泊支援を行うことができた。

貧困が急速に拡大している

 新型コロナの影響が出始めてから2年経った今も相談者は増え続け、私は休みのないまま活動を続けているが、他の困窮者支援団体も同様で、東京では21〜22年の年末年始数日間で民間団体や市民による炊き出しを2000人以上が利用したという。菅義偉政権は「自助、共助」を国民に繰り返し求めたが、とっくに自助や共助では限界だ。そもそも公助が機能していないから、これだけの人が困窮しているのだ。

 女性の失業率や自殺率も非常に高まっており、支援の現場では虐待や性搾取の深刻化、孤立や貧困の広がりを実感している。女性や子どもが日本社会でいかに大切にされてこなかったか、ということを痛感せざるを得ない2年間だった。

 従来Colaboでは、それまでの傷つきや経験から大人や支援機関を信用できず、自分でなんとかしようとした結果、頼れる大人がいない中で家を出て、性搾取の被害にあいながらも自分を責めるなどし、自分から助けを求められない状況にある少女たちに繋がるための活動をしてきた。しかし、コロナ禍で自ら助けを求めて連絡してくる人が急増し、対応に追われた。そのため「助けて」と声を上げられない状況にある少女たちと出会い、丁寧に関わる時間をどう作るかが課題となっている。

 自分から助けを求められる状況にある少女たちの多くは、今まで家で心から安心して過ごせないまでも、学校に行ったりアルバイトに行ったり、そのお金で食事に行ったりと気分転換しながら家にいる時間を減らし、家族と良い距離感を保って生活してきたという。しかし、新型コロナの影響で学校の授業が減り、親もリモートワークで家にいたり、アルバイト先も休業したりして家族と一緒に家にいなければならない時間が増え、虐待のリスクが増して「もう耐えられない」と連絡をくれる。

 そうした少女たちは、公的支援が周知され機能していれば、必要な支援を受けることができるはずなのだ。が、若年女性に対して適切に対応できる機関があまりにも少なく、学校や児童相談所、警察、役所などで不適切な対応をされたことからColaboに助けを求めてくる場合も多くある。

 虐待などを背景に家で安心して過ごせない人にとって、自粛要請によって家にいる時間が長くなることは、暴力や性虐待を受けるリスクが高まり精神的な負担も増大することにつながる。アルバイト代で自身の生活費や学費を稼いで生活している少女たちも、新型コロナの影響で収入が激減している。

 家にいられない、帰れない、帰りたくない状況の中で仕事もできず、その日食べるお金もない少女たちはネットカフェなどに滞在することも難しくなり、居場所をなくしている。コロナ禍で学校との繋がりも薄れ、身近に頼れる大人が普段以上にいなくなり、子どもたちも一層孤立し、追い詰められやすい状況になっている。

 私たちが夜の渋谷や新宿歌舞伎町で開催している無料のバスカフェでも「お菓子よりも、お米」「コスメよりも、下着や靴下」など、生活必需品を希望する人が多くなった。オープン前から行列ができ、ひと晩で50人以上の少女たちが利用するほどだった。近年、日本で「生理の貧困」というワードが知られるようになったが、Colaboの活動でも少女たちに一番もらわれていくのは生理用品だ。生理用品さえ買えないほど困窮が増しているということである。

 バスカフェは本来、夜の街をさまよい、助けを求めようと考えることもなく性搾取の被害にあいながら過ごしている少女たちに出会うために始めた取り組みだった。しかし「ここに行けば良いものがもらえるし、相談にも乗ってもらえる」と口コミで少女たちに広まり、自ら助けを求めてやってくる人たちであふれる事態となってしまった。

 私たちもその状況にとにかく対応しようと必死だったが、自ら助けを求めて来る人が多く集まる場になることで、夜の街で過ごしている少女たちが来づらい雰囲気になってしまった。そこで自ら連絡をくれる少女たちには別の方法で対応することとし、去年の夏からバスカフェは開催時間を深夜0時~朝5時に変更するなどして活動を続けてきた。
「世帯主へ」とされた特別給付金

 20年、政府は一人あたり10万円の特別定額給付金を「世帯ごと、世帯主への給付」とし、そこでも個人が尊重されない政治のあり方を実感した。私たちは、そのやり方では虐待から逃れている子どもたちが受け取れないと訴えた。この問題は国会でも取り上げられ、配偶者やその他親族からの暴力や、性暴力被害、貧困その 他の理由が複合的に重なる等して避難している事例における特例給付要件に「親族からの暴力等を理由に避難している者が自宅には帰れない事情を抱えているもの」という条項が加えられ、政府から各自治体へ通達された。

 ところが複数の自治体で、少女たちの申請が拒否される事態が多発。申請窓口で「自分でもらうと親が怒ると思うよ」「居場所を探されたらどうするの?」と受け付けてもらえなかったり、「国から特別に認められたDVじゃない限りは、原則世帯主に給付することになる」「親が先にもらっていたら受け取れない」などと誤った説明をされたりした。また、虐待の状況を申告する確認書の作成を嫌がった児童相談所が、「父親に確認する」とか「どうしても自分で受け取りたいのであれば弁護士に相談して」と対応したこともあった。

 さらに、21年末に支給された子育て世帯への臨時給付金についても、政府は一部例外を除き9月時点で児童手当を受給している世帯を支給対象とした。それだと9月以降に両親が離婚した場合、元妻・元夫のどちらが子どもを引き取っても、当時世帯主だったほうに給付金が振り込まれてしまう。離婚して母子家庭になった世帯が、給付金を元夫にとられてしまう可能性もあることから支援団体等が抗議している。

 そもそも「個人」ではなく「世帯主」へ給付するという考え方は、妻や子どもが夫や父親の所有物=「家」のモノとして扱われてきた時代に根ざしており、今の社会もその延長線上にあることを考えさせられた。

虐待から逃れた子にも給付型奨学金を

 新型コロナ関連以外の支援も続いている。Colaboと繋がる少女たちの多くは学校もあまり行けておらず最終学歴は中卒か高校中退だが、先ごろ初めて大学や専門学校に通うメンバーが出た。そうした中で彼女らが奨学金を申請したところ、児童福祉施設で保護されていない18歳までの人は保護者がいるとみなされ、親との同居や支援がない状況でも「独立生計者」として認められないとわかった。

 この問題も私たちが提起したことで国会で取り上げられ、虐待から逃れて自身で生計を立てている人も「独立生計者」として認められ、給付型の奨学金や無利子の奨学金を申請できるようになった。文部科学省の説明では、大学が本人から聞き取りなどを行い、虐待の事実を確認できれば第三者からの事情書は必要ない。しかし、これについても大学側が「本当に暴力を受けているかわからない」「証拠がない」と、奨学金申請を諦めさせようとするケースが複数起きている。大学には学生を守ることを第一に考え、事情書を必要とする場合でも学内のカウンセラーなどへの相談でOKとするなど、被害を受けた学生への負担を軽減するべきだ。

 このことを知った大学関係者や支援者等から「同じ状況の学生がいるが、どうしたらよいか?」との問い合わせもあった。Colaboで暮らしながら進学したメンバーが、悔し涙を流しながらも諦めずに声を上げ道を切り開いてくれたのだ。

 やっとの思いで虐待から逃れた学生が、親に住所を隠す公的な手続きもして生活を始めていると何度も大学に伝えていたのに、事務局から「奨学金の書類は保護者宛に送るルールだ」と言われたり、新しい住所の入った書類を実家に送られてしまったケースもあった。そこには彼女の保証人となった私の名前や自宅の住所も書かれていた。これに抗議をするため、私たちは弁護士に高い費用を支払い、大学へ内容証明を送ることになった。すべての学校は、親から逃げざるを得ない学生に対して、親から問い合わせがあっても居場所や住まいを教えないなど、被害者を守るためのルールを整備するべきだ。

 日々の活動が煩雑になる中で、こうした問題を一つひとつ丁寧に言葉にすることができていなかったが、今後はまた日々直面する「ここがおかしい」問題を言葉にし、みなさんと共に考えていきたい

https://imidas.jp/bakanafuri/?article_id=l-72-001-22-01-g559
コロナ禍で戸惑う居場所のない少女たち

“ここがおかしい”

仁藤夢乃

(社会活動家)







https://imidas.jp/bakanafuri/?article_id=l-72-001-22-03-g559





これまでなかった女性支援の砦

 2022年2月16日、困難な問題を抱える女性を支援する新法制定のための超党派勉強会が参議院で開かれた。私もこの法律の制定に向けて、19年に厚生労働省の検討会の構成員として活動し、「売春防止法に代わる新たな枠組みが必要」とする中間まとめを公表した。その後、民間支援団体などの有識者で集った「女性支援新法制定を促進する会」のメンバーとして、新法制定に向けて要望書を作成し議員らに伝えるなどの活動をしていて、16日の勉強会にも参加した。

 この日は法の骨子案が示された。朝日新聞の記事には〈目的や基本理念に女性の福祉の増進や人権の尊重、男女平等の実現を掲げ、これまで支援の根拠法とされた売春防止法(売防法)からの脱却を図る。(略)骨子案によると、女性の福祉の増進のために、人権が尊重され、安心して自立して暮らせる社会を実現することを目的としている。必要な施策の実施を国と地方自治体の責務とし、国に基本方針を、都道府県には基本計画を定めることを義務づけた。〉とある(「問題抱える女性支援目指し 新法骨子案判明 『売防法から脱却を』」22年2月16日、朝日新聞デジタル)。

 東京新聞にも〈女性の保護事業は現在も都道府県が実施しているが、根拠法の売春防止法は、女性の「更生」や「収容」を明記する一方、福祉の視点が欠けているとして一部を廃止し、新法に置き換える狙いだ。法案の骨子では、性的被害や家庭状況の事情で、日常生活や社会生活が困難になった女性を支援対象として定義。本人の意思を尊重し、回復や自立に必要な包括的支援を行うことを明記した。〉と紹介されている(「貧困やDV被害 居場所がない女性の包括支援 超党派議員が新法案を提出へ 売春防止法から脱却目指す」22年2月16日、東京新聞Tokyo web)。
売春防止法とはどんなもの?

 さらに先の東京新聞の記事は、〈1956年制定の売防法は、売春を助長する行為の処罰と、売春する恐れのある女性の補導・保護更生が目的。都道府県は今も同法に基づき、相談や一時保護を担う「婦人相談所」、中長期的に保護する「婦人保護施設」を運営している。保護対象はDVやストーカー被害者にも広がったが、少ない人員配置や専門職員の不足、民間団体との連携不足が課題。支援関係者は長年、「困難の責任を女性に負わせ、蔑視的な表現が残る売防法こそ問題だ」と、新たな根拠法を求めていた。〉と締めくくられている。

 売春防止法は「売春」に「転落」する女性や「売春を行うおそれのある女子」を社会を乱すものとして扱い、「補導」「保護」「更生」の対象に位置づけている。こんなに差別的な法律が制定から66年間、一度も根本的に改正されていないのだ。そして、そうした女性たちが「収容」される「婦人保護施設」は、その名前すらほとんどの人には知られていない。「婦人保護」という名称自体にも深い女性差別を感じざるを得ないが、女性を公的に支援する唯一の施設である。その「婦人保護施設」は「売春のおそれのある女子」を指導の対象としてみる差別的な売春防止法を根拠としていたのだ。

 私たちColabo(コラボ)の活動は、既存の「支援」が機能していないために、「ないのなら自分たちで作ろう」と始めたものだったが、法律や制度のことを知れば知るほど、これまで日本社会には「女性福祉」はなかったのだとわかっていった。

 01年にDV防止法ができてからは、国はお金をかけず女性たちを「保護」する場所として、入所者が少なくなっていた婦人保護施設に着目し、そこからDV被害女性やストーカー被害女性も同施設で保護されることとなった。すると、緊急的に女性を保護する一時保護所だけでなく、それまで地域に開かれていた婦人保護施設も、DVやストーカーの加害者から入所者を守るため看板を下ろして所在地を隠し、通信機器の利用などにも厳しいルールが課せられるようになった。

 また、「措置」の仕組みの問題などで入所のハードルが高く、婦人保護施設は困っている女性たちから「利用したい」と思われる場所ではなくなった。利用率はものすごく低く定員の2~3割という施設もある。Colaboでは18年度から、本来は性売買・性搾取の被害にあった女性の生活を保障する場であるはずの婦人保護施設について、女性たちが「利用したいと思って利用できる場」になるよう働きかけ、少しずつ道が開けてきている。施設自体も、少女や成人女性の人権を保障するために変化しようとしているところだ。そうした現場の活動を通して、今回の新法の必要性も議員らに理解してもらえるようになってきた。

女性差別的な法律が66年間続いている

 売春防止法は戦後、女性の福祉や人権保障のために活動してきた多くの女性たちの運動によってできた法律だが、その時代の人権意識を反映しているともいえる。それが66年間も変わらずにきたことは、日本社会の女性に対する意識が戦後から進歩していないことを示す残念なことだ。

 売春防止法では、女性が「補導」の対象にされる一方で、買春を持ちかける男性側は受動的な存在として位置づけられ、第5条の「勧誘等」の罪は女性にしか適用されない。そもそも「売春」という言葉自体が買春男性側からの視点でつくられた女性差別的なものであり、性売買・性搾取の実態を覆い隠している。

 16年9月22日の本連載「私たちは『買われた』展を終えて想うこと」でも書いたが、15年にはSNSを通して買春相手を探して生活していた少女が勧誘罪で逮捕される事件もあった。「少女は遊ぶ金ほしさに売春し、映画を観たり洋服を買ったと証言した」「少女は高校を中退して半年間家に帰らず、居所不明になっていたため任意の事情聴取ができず、逮捕に踏み切ったと警察は説明している」などと、さまざまなメディアが報じたが、半年間も家に帰らずに生活しなければならなかったのにはきっと理由があるはずだ。そして、彼女はきっと「売春」で得たお金で宿に泊まったり、ネットカフェでシャワーを浴びたり、食費や生活費にしていたのではないかと、私が出会ってきた少女たちの現状から想像した。
この年から、Colaboでは児童買春をテーマにした「私たちは『買われた』展」を企画し、活動を通して性搾取の実態を伝え、理解者が増えたことが新法制定に向けた力にもなっている。

数年前までは現状調査さえもなかった

 私たちは活動を始めた時から、行政に支援を求めても「自殺対策なら枠があるが、女性や若い少女たちを支援する枠組みはない」とはっきり言われてきた。「そういう子はどこにいるのか? 何人いるのか? こちらでは把握していない」と言われ、現状を知ろうとしない、調査をしようとしない行政の態度に憤りを感じながら、実際の活動を通して困難を抱えた少女や女性がたくさんいることを伝え続けてきた。こうした活動を10年続けることができたのは、周囲の方々からの寄付など具体的な応援や支えがあってのことだった。

 既存の「支援窓口」には足を向けない、こちらから出向かなければ会えない少女や女性たちがいることから、そうした人たちがいる場所へ出向き、つながるために働きかけを行うこと(アウトリーチ)の必要性を訴え、そのことを国も認識して18年に「東京都若年被害女性等支援モデル事業」が始まりColaboも受託した。アウトリーチの強化は必要だが、支援を必要とする人に出会ったところで公的な受け皿がないため、Colaboでは自主事業としてシェルターやシェアハウスなどで住まいの提供をしている。

 しかし民間団体の資金では限界があり、圧倒的に不足していることを繰り返し指摘し、「出会ったあとの責任が取れない、受け皿の拡充を!」と要請したら「まずは自助努力でお願いします。制度は後からついてくるものです」と東京都に言われた。そのため、Colaboは市民から寄付を募り、シェアハウスを5物件15部屋に拡大し、22年3月にはアパートタイプの住まいも8部屋開設するが、年間1500人以上の少女たちから相談がある中ではまったく足りていない。

公的支援の道をようやくこじ開けた

 モデル事業が始まり、女の子たちが婦人保護施設を利用できるようになるかと期待したのだが、「措置」の仕組みの問題により施設に入れた女の子は一人もいなかった。女性に選択権はなく、見学やお試し入所もさせてもらえないまま「措置」されるという仕組みそのものが、本人主体の支援のあり方ではなく、管理・指導的な目線によるものだが、今もこうした支援が続いている。

 この問題をさまざまな政党の都議会議員に伝えたところ、東京都は20年度末に2人の女の子を初めて婦人保護施設に繋いでくれた。東京都と連携して若年者支援のモデル事業を行った3年間(Colaboが活動を始めてからだと9年間)で、たった2人だけである。

 しかし、そこから婦人保護施設利用の道が切り開けた。これまで婦人保護施設は、若年女性を受け入れてきていなかったので、改善してもらわなければならないところもまだまだある。それでもまずは、若年女性が公的な支援を使えるということが、ようやく始まった(というかこじ開けた)ところだ。

 未だに入所のハードルが高かったり、女性たちの生活やニーズに合った対応ができていないため、抱えている困難が大きかったり、見守りが必要な人ほど、公的支援を利用できず、アパートで一人暮らしせざるを得なくなることが続いている。

女性支援を加速させる新法への期待

 公的機関で唯一、積極的なアウトリーチを行っている(補導という形になるのでケアではない)警察からは「売春防止法で女性を補導することしかできない」と言われ続けてきた。ここまでも大変だったし、これからも大変なことばかりなのだろうとは思うが、この新法が今国会で成立したら、日本社会にようやく女性支援の根拠法ができる! これまでなかったという事実も、多くの人に知ってほしい。

 全国各地にColaboのような活動のできる人を増やしたい、そのためにも国に予算をつけさせたいと思い、18年にColaboは東京都のモデル事業を受託して活動することを決めた。モデル事業の内容は、アウトリーチ、一時保護、自立支援と、Colaboがつくってきた活動そのものだったので、実績を作り必要性を訴えることで予算化され、全国に広がるようにと願って取り組んだ。

 今年度からこれが本事業化され、来年度はさらに予算も増え(それでも必要な活動を補うには足りないが、支援の根拠法もない中で予算がついたことは画期的)、これから全国に広がっていく段階だ。全国でColaboのような活動が必要だと考え、繋がってきたみなさんと、それぞれの場所で一緒に取り組む時がいよいよ来る。そのためにできることは何でもしたいし、力を合わせて、これからの女性支援をつくっていきたいと思っている。

 今はとにかくこの法案を、議員の方に超党派で力を合わせて国会で通していただくべく、市民の声を高めていく必要がある。

「自立」ではなく「人権と生活」を目的に

 しかし、16日に提示された骨子案をみて、次のことを懸念している。これまで私は「自立を目的とせず、人権保障・生活保障を目的とすること」を要望してきたが、「自立」を目的にするかのような書かれ方をしていること。また、婦人保護施設が「女性自立支援施設」という名称になる案が出されていることはとても残念だ。

 自立とは、職業的・経済的な自立を意味して使われ、生活保護の利用者に対して厳しい「自立指導」を行う自治体もある。また児童自立支援施設など、子どもたちにとって「入所させられる」「更生指導される」施設でも使われている言葉である。「自立させる」という考え方自体が当事者に対する上から目線であり、それでは「売春に転落した女性を更生指導する」というこれまでの婦人保護の考えから脱却できないと考える。

 そうした少女や女性たちが進学するためには大きな壁があり、生活保護を受給しながらでは大学や専門学校への進学は認められていないため、この新法を根拠に資格取得や、専門学校や大学進学のための学費や生活費などの力強い経済的な支援までするつもりで、そのために「自立」と書いているということではないだろう。

 また、女性の人権・生活保障を本当に考えるなら、婦人保護施設は「女性自立支援施設」ではなく「女性生活支援施設」などとするべきだ。骨子案では、「当事者を尊重」と繰り返されているが、この名称を当事者が聞いたら、どう思うか少しは考えてほしい。行きたいと思わないのではないか。「婦人保護」もひどいと思ってきたが、意味がわからない「婦人保護」より「自立支援施設」の方はさらに嫌かもしれない。これは当事者抜きで決められた言葉だろう。このような上から目線の名称では施設のスタッフの利用者への目線もそういうものになってしまうのではないか。

あくまで責任逃れをしたがる大人たち

 私は女性支援や児童福祉の現場で、「当事者の意思を尊重する」と言いながら、それを盾に「本人が支援を拒んだ」などと決めつけて、必要な選択肢も提示することのないまま厳しい管理者都合での条件やルールを押し付けるような支援を毎日のように見てきた。「本人の意思」を支援者側の都合の良い言い訳に利用して、責任逃れをするということを繰り返すのだ。そのため、骨子案にあるような理念が「支援をしない言い訳」に利用されないようにしていかなければならない。

 法律の名前も「女性包括支援法」などになることを願っているが、「女性自立支援法」などとなりそうな流れなのではと心配している。また、売春防止法では「売春のおそれのある女子」を対象とされていたところに、新法では「性売買・性搾取の被害にあった女性に対する支援を行うこと」と明記してほしいとも要望していたが、骨子案には「性的な被害」と一言だけしか書かれていないのも気になっている。
それでも、新法に人権を尊重し、福祉の増進を行うなどと書かれていることは、この日本では画期的だ。また、シェルターなどの活動のほとんどを支えてきた民間団体も、女性支援の担い手として法律に明記されることになり、それも画期的だ。しかし、民間団体を行政の請負のような扱いで安く使うのではなく、対等な協働先として、しっかりとした財政支援がつくものにしないといけないが、そこがまだ不十分だ。

 このように、細かいけれど大切なこと、指摘しておかなければならないことはたくさんあるが、それでもまず今国会でこの法が成立することが大切であり、それは大きな一歩である。

 長引くコロナの影響もあり、女性たちはこれまでにないほど困窮し、性搾取の被害にもあいやすくなっている。そうした女性たちの人権と生活を保障し、支援を届けるために今国会での女性新法の成立を願っている。そのためにも、多くの市民にこの新法に関心を寄せていただき、制定を願う声を共に上げ、大きくしていただきたい。そして、現場の活動に生かされる、実効性のある法律になるように働きかけていきたい。

https://imidas.jp/bakanafuri/?article_id=l-72-001-22-03-g559
日本に「女性支援」の根拠法ができる!

“ここがおかしい”

仁藤夢乃

(社会活動家)


https://drive.google.com/file/d/1c3v6yhgPNK4pAGBW8ngpD7bwvseEy4PX/view?usp=sharing


 超党派の国会議員有志が16日、国会内で勉強会を開き、貧困やドメスティックバイオレンス(DV)などで居場所を失った女性を支えるための新法「困難女性支援法案」を、今国会に共同提出する方針で一致した。女性の保護事業は現在も都道府県が実施しているが、根拠法の売春防止法は、女性の「更生」や「収容」を明記する一方、福祉の視点が欠けているとして一部を廃止し、新法に置き換える狙いだ。(大野暢子、坂田奈央)

◆福祉の視点抜けた売防法

 法案の骨子では、性的被害や家庭状況の事情で、日常生活や社会生活が困難になった女性を支援対象として定義。本人の意思を尊重し、回復や自立に必要な包括的支援を行うことを明記した。

 会合では、自民、立憲民主など6党の議員が骨子を示し、識者らでつくる「女性支援新法制定を促進する会」(会長・戒能民江(かいのうたみえ)お茶の水女子大名誉教授)のメンバーらと意見交換した。
女性支援のための新法制定に向けた超党派勉強会であいさつするお茶の水女子大の戒能民江名誉教授㊥=16日、国会で

 自民党の上川陽子幹事長代理は「通常国会で何としても売防法から脱却して新法を作り、しっかりと動かしていく」と表明。戒能氏は「現場は長い間、新しい仕組みが必要だと訴えてきた。具体化すると聞き、感慨無量だ」と歓迎した。

 1956年制定の売防法は、売春を助長する行為の処罰と、売春する恐れのある女性の補導・保護更生が目的。都道府県は今も同法に基づき、相談や一時保護を担う「婦人相談所」、中長期的に保護する「婦人保護施設」を運営している。

 保護対象はDVやストーカー被害者にも広がったが、少ない人員配置や専門職員の不足、民間団体との連携不足が課題。支援関係者は長年、「困難の責任を女性に負わせ、蔑視的な表現が残る売防法こそ問題だ」と、新たな根拠法を求めていた。

【関連記事】女性は議員になりたくても…半数近く「家事・育児と両立困難」で断念 内閣府調査

https://www.tokyo-np.co.jp/article/160654
貧困やDV被害 居場所がない女性の包括支援 超党派議員が新法案を提出へ 売春防止法から脱却目指す

2022年2月16日 20時39分




 秋までに実施される衆院選は、政党に男女均等の候補者擁立を促す「政治分野における男女共同参画推進法」の施行後初となる。衆院議員中の女性比率9.9%(1日現在)に象徴されるように、女性議員が少ない理由を探った内閣府の調査では、家事や育児との両立が困難と考える女性の割合の多さが、その背景にあることがデータで示された。(柚木まり)

次の衆院選で女性候補者の大幅増を訴える「クオータ制を推進する会」のメンバーら=国会内で

◆男女同数義務化 盛り込めず

 「クオータ制を想起させる法改正は、(自民党)全体の空気として厳しい」

 女性議員増に取り組む超党派議連が15日に開いた会合で、自民党参院議員は、議連が目指す女性候補者数の目標設定を各党に義務付ける法改正について、党内の理解を得ることは難しいとの立場を示した。

 推進法が促す男女均等の候補者擁立は、政党の努力義務。現職議員が多い自民党は女性候補を新たに増やすことに必ずしも積極的でなく、議連は国会で提出を目指す改正案に義務化を盛り込まないことにした。

 女性の政治参加に関する意識に関して、内閣府は昨年6月から今年3月にかけて調査を実施。国会や地方議会選挙で立候補を取りやめた人への調査では、994人(女性494人)が回答した。

 断念の理由については、女性からはプライバシーの確保、当選後の家事や育児との両立が困難との回答がともに40%を超えた。旧姓を含む通称使用ができないとの回答も30%近かった。
◆現職の34%「セクハラ被害」

 議員になっても、女性は同様の課題に苦しむ。同じ調査では、現職の地方議員5513人(女性2164人)も回答。「家事・育児との両立が難しい」とした女性の割合は男性の2倍以上で、「性別に基づく差別やセクハラ」を挙げた女性は34・8%。男性の2・2%と大きくかけ離れた。

 政府は、クオータ制など実質的な機会均等を果たす「ポジティブ・アクション」と呼ばれる取り組みを進めるが、この調査では女性議員を増やすのに有効と考える男性の割合は、女性よりも大幅に少なかった。

◆男性中心の候補者選び、脱却を

 椙山女学園大の大木直子講師(ジェンダーと政治)は「立候補前だけでなく当選後も、女性が男性以上に性差別やハラスメントをストレスに感じていることが数字に表れた」と分析。「男性中心の候補者選びでは人材確保が難しい。ハラスメントの相談窓口に加え、議会運営のあり方も見直す時だ」と指摘する。

 早稲田大の尾野嘉邦教授(政治行動論)が有権者約3000人に行った実験では、参院の権限が衆院より弱いと強調すると、参院選で女性候補を選ぶ傾向が高まった。尾野氏は「有権者は女性が権力的な地位に就くことを嫌う傾向にある。政治家は選挙で有権者に投票をお願いする立場になり、男性よりハラスメントを受けやすい女性は立候補の際に恐怖を感じることも多いのではないか」と話す。

https://www.tokyo-np.co.jp/article/99801
女性は議員になりたくても…半数近く「家事・育児と両立困難」で断念 内閣府調査

2021年4月22日 18時00分


https://www.jil.go.jp/kokunai/blt/backnumber/2014/12/048-057.pdf

https://www.city.kiyose.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/008/655/ms98p3.pdf





韓国の性産業に従事していた女性たちによる「性売買経験当事者ネットワーク・ムンチ」のメンバーが7月、来日した。ムンチの活動の中核は、性売買に反対する立場から体験を語る「トークコンサート」だ。韓国各地で開かれてきたコンサートが、初めて東京と大阪で実現した。日本有数の歓楽地である大阪・飛田新地にほど近い会場で開かれた大阪コンサートで彼女たちは、日本人客の実態や、日本で目の当たりにした性売買の現状への驚きを語った。会場はどう受け止めたのか。(共同通信=中田祐恵)



7月に大阪市で開かれた「トークコンサート」で、出版した「無限発話」を掲げるムンチのメンバー4人



日本語版「無限発話 買われた私たちが語る性売買の現場」(梨の木舎)



大阪トークコンサートに集まった観客たち



ムンチのメンバーが7月の来日時に撮影した風俗店が集まる新宿・歌舞伎町の様子(ムンチ提供)



大阪コンサートの会場には、日本各地から寄せられたムンチへの連帯のメッセージが書かれた手形が掲示された



新宿・歌舞伎町で、韓国語で「私たちの存在が実践だ」と書かれた布を掲げるムンチのメンバー(ムンチ提供)



ネオンの中、多くの人が行き交う新宿・歌舞伎町



ムンチのメンバーが、新宿・歌舞伎町で撮影した風俗店の看板(ムンチ提供)

 ▽素顔のままで
 来日は、彼女たちが暴力や搾取の体験を告発した「無限発話 買われた私たちが語る性売買の現場」の日本語版出版を機に企画された。
 大阪で約80人の聴衆を前に壇上に上がったのは4人のメンバー。ジウム、ペクチ、MK、ジンと活動名を使う。素顔のまま最初に語ったのは、性売買に従事したきっかけと、抜け出した後の体験だ。(※個人の特定を避けるため、記事では顔写真を出さず、体験と個人が結びつかないように表現しています)
 最初のメンバーが語ったのはこうだ。
 「家出をして路上にいたら、働かないかと近寄ってくる人がいた。寝るところも食べるところもなかったので、暮らせるのであればどこでもいいと思った。そこが性売買の店で、4年間いた」
 「性売買から抜け出した後、最初に入ったシェルターには厳しいルールがあり、電話は使えず外泊もできなかった。私が役に立つ場所は性売買の店しかないのではと悩んだ。自分は価値がある人間だと考えられる機会がなかった」
 集結地(韓国の性売買事業所が集まる地域)に19歳で売られたメンバーは、こう振り返った。
 「10年間、1日20時間くらい働いた。頑張ってお金をためたが、どうしても前払い金(借金)が返せない。死のうと思って、最後に女性団体に電話をした。死ぬのは正直怖かった」
 「そのまま脱・性売買したが、出た瞬間から戻りたいと思った。社会は美しいところだと思っていたが、出てみたら、クソみたいな場所だった。それでも、性売買の現場がいかに非人間的で暴力的なところか今は分かるので、戻ることはない」
 20代で性売買の店に入ったメンバーの語りはこうだ。
 「友人が具合が悪くて出勤できない時、男性2人が家にやってきて『おまえが代わりに行け』と言われた。包丁で脅したわけではないが、男たちが家にいることが怖かった」
 「脱・性売買した後、これから何をして生きていくのか、何年も店で働いていたので、履歴書を書くこともできなかった。お金もないし、店に戻ろうかと何度も考えた」
 ドメスティックバイオレンス(DV)を受けて、家出したメンバーもいる。
 「友達と暮らし、お金もないので、野宿もした。自然に条件デート(援助交際)をするようになった。性売買が悪いとか搾取だとかは知らなかった。小学生の頃からお金で性的行為を要求してくる人がいたので、性売買は当然に流れていく場所だった。どういうものか分からなくても、買春者の態度から恥ずかしい仕事とは感じていた」
 「シェルターに入り、関心を持って話を聞いてくれる大人と初めて出会えた。高卒の資格を取り、暮らすための基盤をつくり、今の自分になるまで6、7年かかった。長い時間をかけて、支えてくれる人が必要だ」
 ▽口だけ「ごめんね」
 トークコンサートでは、親しみやすい雰囲気作りを大切にしている。時に笑いも誘う。だが、実際に語られたのは、耳をふさぎたくなるような体験や、グロテスクな暴力だ。
 ソウルの有名な集結地は日本の観光ガイドにも載っており、長期休暇の時期にはセーラー服など制服姿で客を引く女性であふれるという。
 日本人男性客の姿をこう告発する。「『すいません』と言って入ってきて『ごめんね、ごめんね』と言いながら変態のような行動を要求する。それから『ごめんね』と言って帰っていく。親切でマナーのある人のように見せかけながら、言葉だけだった」
 日本人客の二面性は、ビジネスマン風の日本人が多く訪れたルームサロン(個室型の店)でも同じだった。「お酒を飲んで雰囲気を盛り上げ、とても丁寧で紳士的。お酒をつがなくてもいいと言って、女性にもお酒を勧めなかった」
 しかし態度が一変する。「部屋に移動すると、AVのような姿勢の変態的な行為を求められた。これ以上無理だと伝えると『金を返せ』と言われた。私たちの間で、日本人は『けち』『変態』と呼ばれ、嫌がられていた」
 ▽あふれる買春者
 ムンチのメンバーは来日後、東京の新宿・歌舞伎町を見学したという。男性たちが人目も気にせず未成年らしき少女と歩き、裏路地では買春の順番を待っていた。「性売買が当たり前になっている」。その恐怖や憤りをコンサートの聴衆に投げかけた。
 「一番驚いたのは、少女に声をかける男性たちを誰も止めなかったことだ。なぜみんな見て見ぬふりをするのか」とジウムさん。ジンさんも「路上は買春者であふれていて、街全体が女性を狙っているようだった。『性売買はお金がたくさん稼げる』と車で宣伝していた」と困惑していた。
 ▽ひとりではない
 韓国では2000年と02年、性売買に従事していた女性が多数死亡する火災が続いたことなどから、2004年に性売買に関する新法を制定した。買春者や業者への処罰を強化し、被害者の保護を定めている。
 「一致団結」を意味する韓国語から「ムンチ」と名付けた当事者ネットワークが結成されたのは2006年。メンバーにとって体験を語ることは「性売買の経験の再解釈」だという。どういうことか。
 創立メンバーのジウムさんは「当事者間で話すことで解放感があった。語ることで、性売買の経験はこれ以上、傷や足かせにならないと感じられた」と回想する。ペクチさんは「ムンチは深く根を張った木のようだ。堅く、強く、根ざしている木になってこそ、当事者たちが新たに訪れることができる」と自負する。
 ムンチの活動を見て、当事者が顔を出してしゃべれるんだと知ったというジンさんは「メディアや研究者のインタビューはあまりいい経験ではなかったが、ムンチが話すのを見て、私も話したいと思った。オンニ(お姉さん)に会えば、どこでも言えなかった経験や痛みを語ることができて、完全になれる。ありのままでいられると感じる」と打ち明けた。
 インターネット上などでは、メンバーの家族まで引き合いに出して、トークコンサートを批判する声も上がっている。活動を続けるか否か迷った時、メンバーが気付いたのは「攻撃をしてくるのは、買春者や業者だ」ということだった。
 「口をふさごうとする人たちには、私たちが話し続けることで反撃をしようと思った。彼らの隠したがる秘密を私たちはよく知っている。それを暴露し続ける」。ジウムさんの決意は固い。
 「攻撃に耐えられたのは、私たちがひとりではなく、ムンチというみんなの力があったから。サポートをしてくれる人もいた」
 ▽女性たちは語れる
 ジウムさんはコンサート前の取材に、日本社会をこう分析していた。
 「日本は法整備が不十分で、性売買にとても寛大な社会だ。買春者や業者の声しか市民に届かない。女性が話せるムードがなく、受動的で見えない存在になっている」
 来日や体験記の出版を通じて伝えたいことを問うと、こう答えた。
 「買春者は『女性は喜んでいる。お金も稼げるし、セックスを楽しんでいる』と言う。私たちは、当事者の声で『そうではない』と語る。日本でも、女性たちは語れると伝えたい」
 大阪コンサートの最終盤に、日本の性売買経験当事者ネットワーク「灯火(とうか)」の女性がマイクを握った。10代の頃から両親の暴力を受け、14歳で初めてネットで知り合った男性に性を売ったと告白。「生きていく上ではそうするしかなかった」と振り返った。
 女性は声を詰まらせながらも、語った。「皆さんが、もし今日のムンチの話を聞いて、日本ではそんなことは起きていないと思うなら、それは知ろうとしないで来たから。日本でも韓国でも性売買が女性に対する暴力であることは変わりません」。語り終えると、ムンチのメンバーを始め、会場から拍手が湧いた。
※現代韓国の性売買を研究する東京外国語大の金富子名誉教授によると、韓国では売る側の女性だけを問題にする「売春」という言葉を批判し、買う側や性産業の取引の側面を強調させるため「性売買」という言葉が広がっている。

https://www.at-s.com/news/article/national/1334171.html
「日本人客は『ごめんね』と言いながら変態のような行動を要求する」韓国の性売買当事者が明かした実体験 新宿・歌舞伎町では驚きも 「痛み」を語り社会を変える

2023.10.11







 この暴力を誰にも経験してほしくない―。韓国で性売買に従事していた女性たちが、搾取の構造や実態を告発した体験記「無限発話 買われた私たちが語る性売買の現場」の日本語版が6月末、梨の木舎から出版された。女性らは7月、来日して東京と大阪で講演。「当たり前になっている日本社会の性売買への認識を変えたい」と訴えた。

 「逃げられないんです」「おまえも楽しむつもりだったんだろうが」。体験記では、女性たちの心の声や買春者らから投げつけられた言葉が大きな吹き出しで描かれている。女性たちは2006年、一致団結の韓国語に由来する「ムンチ」と名付けた自助ネットワークを結成。各地で開いてきた性売買に反対する立場から体験を語る「トークコンサート」の内容を本にまとめた。

 韓国では00年と02年、性売買に従事していた女性が多数死亡する火災が続いたことなどから、04年に性売買に関する新法を制定。買春者や業者への処罰を強化し、被害者の保護を定めた。

 大阪で開かれたトークコンサートでは、東京の歌舞伎町を訪れたというムンチのメンバーのジウムさんが「驚いたのは、買春者が10代に見える女性に声をかけても、誰も止めなかったことだ。なぜ見て見ないふりをするのか」と憤った。家庭内暴力のため10代で家を出て、援助交際を経験したというジンさんは「小学生の頃からお金で性的行為を要求してくる人がいた。家を出ると何をするにもお金がいる。性売買は当然流れていく場所だった」と語った。

https://www.at-s.com/news/article/national/1296131.html?news=1334171
韓国の性売買、女性が語る 「日本の認識変えたい」

2023.8.11