女性支援団体Colaboの会計に不正はなし2023年03月20日(月)15時57分.人道支援団体を根拠なく攻撃してなぜか儲かる「誹謗中傷ビジネス」7/29(月) 5:30配信ニューズウィーク日本版<訴えられて損害賠償を命じられてもペイするというビジネスモデルの背後にいるのは誰か>NewsweekPDF魚拓



<女性支援団体Colaboに対するバッシングやハラスメントは社会が止めなくてはならない>

昨年末から、女性支援団体Colaboへの悪意ある攻撃が続いている。Colaboは主に性暴力やDV等で悩みを抱えているティーンエイジャーの女性たちに対して、「相談、食事提供、シェルターでの宿泊支援、シェアハウスの運営、10代の女性たちによる活動、講演・啓発活動」などを行っているが、そのColaboが「公金」を不正に着服している「貧困ビジネス」であるなどといった根拠のないデマを公然と流され、アウトリーチ活動も妨害されているのだ。

東京都の監査結果によれば、Colaboが公金を着服しているという主張は退けられた。しかし、Colaboの会計に不正があると考えている人は未だに多く、マスコミはしっかりと事実を報道すべきだ。

行き場のない少女たちの居場所づくり

Colaboは、虐待などで家にいることができず、街に出て、売買春業者等の被害に遭ってしまうような少女たちに対する支援活動を、代表を務める仁藤夢乃氏自らの体験もふまえながら行っている。

たとえば定期的に行っている「バスカフェ」では、食料品や日用品、生理用品などを提供しながら、支援を必要とする少女たちとつながり、ケースに応じてシェルターでの保護や生活保護の受給手続き、就労支援なども行う。

Colaboに対する攻撃が激しくなり始めたのは、昨年の秋頃だ。「暇空茜」というハンドルネームのTwitterアカウントが、このColaboという団体は「タコ部屋」に女性たちを集めて生活保護を不正受給させている「貧困ビジネス」であると主張し、SNSで話題を集めたのだ。それは、Colaboが公開している断片的な写真や資料などを基にした推論にすぎなかったのだが、暇空氏はColabo が東京都若年被害女性等支援事業を委託されていることに目を付け、この団体は車両費や通信費など東京都の委託費を不正に受給しているという「根拠」を次々と披露し、都の監査委員に対して住民監査請求を行った。

一方Colaboは弁護団を結成し、記者会見およびホームページで、数々の「疑惑」なるものに回答した。

住民監査請求が通り監査が行われたが、昨年12月に出た監査結果では、監査委員の見解はColabo 側の説明をほぼ認めるもので、公金を不当に横領しているという暇空氏の主張は一蹴されている。ただ監査の過程でいくつかの経理上の問題が指摘され、委託費の再調査が行われることになった。2月末に終わった再調査では、会計ミスや見解の違いによりColaboの経費は192万円が認められなかったものの、そもそもColaboは約300万円を自主財源から持ち出しでこの事業に充てているので、返金などの措置は必要がないと判断された。

一方、監査委員によって新たに指摘された幾つかの問題は、書類のミスや見解の違いを問うものであった。たとえば人件費の按分の問題や、年数回の高額の食費、名前や住所をマスキングされた領収書などがある。このうち高額の食費については、一部報道での一人8000円という金額がクローズアップされているが、それは一年間で一度あっただけであり、保護された少女に対する誕生会のために使われたものであった。

Colaboで保護している少女たちは、DVやネグレクトで誕生日など全く祝われたことがない場合もある。せめて誕生日にはこうした盛大な祝い事をすることで、極めて危険な水準まで低下してしまっている本人の自己肯定感を高めることも事業には必要だ──Colaboの主張は認められ、経費として認められた。一方、領収書のマスキングについては、DVなどで逃げた少女を保護している性質上、個人情報を保護しなければならないというColabo側の主張は監査委員によって理解を示されたものの、経費としては認められなかった。

不正があったと誤認させる報道

この監査結果を受けてマスコミ各社でもこの話題が取り上げられたが、記事の見出しや本文で、Colaboに何か大きな問題があったと誤認させるような内容のものがあったのは問題だ。たとえば再調査の結果を受けた記事では、東京新聞の見出しは「「Colabo」192万円分の経費認めず 都の再調査結果 委託料の返還請求はなし」であり、朝日新聞は「女性支援事業の経費、192万円認めず 東京都、返還請求はなし」であった。

だが重要なのは、Colaboの会計に不正がなかった、ということだ。Colaboは「貧困ビジネス」だ、というレッテルが事実誤認だったことをこそ報じるべきだった。経費として認められなかった192万円についても、そもそもColaboは委託費2600万円を使い切り、なお持ち出しで300万円を支出している事実が確認されたのだから、委託費を不正に着服せしめたような印象を与える見出しは不適切だろう。

さらにこれらの記事の本文ではColabo が一部の領収書の提出を拒んだことが強調され、Colaboが192万円、あるいは全ての支出の領収書の提出を拒んだと誤解した人もいる。これは先述の通り個人情報保護のためそれに関連する一部の領収書にマスキングをしたのであり、個人情報の保護については、経費として認めるかはともかく、監査委員も理解を示していたことを説明するべきだった。

異常な状況に終止符を

Colaboの会計に不正はなかったことが監査によって明らかになったのちも、Colabo は激しい攻撃に晒されており、特にアウトリーチ活動である「バスカフェ」は迷惑系YouTuberらによって物理的な妨害を受けており、最も悪質な男性について接近・妨害を禁止する仮処分が出るほどになった。にもかかわらず、東京都・新宿区は混乱の収拾を目的としてColabo側にバスカフェの一時中断を要請している。しかし本来であれば、行政の委託事業が悪質な妨害を受けているのだから、行政が責任をもって遂行可能な環境をつくるべきだろう。この異常な状況を終息させるためにも、マスメディアはしっかりと経緯や事実を報道してほしい。

女性支援団体Colaboの会計に不正はなし

2023年03月20日(月)15時57分





<訴えられて損害賠償を命じられてもペイするというビジネスモデルの背後にいるのは誰か>

暇空茜氏は都知事選に立候補し、一度も公に姿を表さないまま11万票を集めた(7月6日、東京銀座) Damon Coulter / SOPA Images via Reuters Connect

一昨年から始まる「不正会計」デマをきっかけとして、貧困やDVなどの困難を抱えた10代女性を支援する団体Colaboが様々な誹謗中傷を受けている問題で、7月18日、誹謗中傷のきっかけをつくった「暇空茜」を名乗る人物に対して損害賠償を求めた裁判で、暇空氏に220万円の賠償と投稿の削除を命じる判決が出た。昨年3月に出た、Colaboの会計に不正はなしとした東京都の監査結果と合わせて、暇空氏のデマによって女性支援団体の活動が妨害されたという事実が、公的に認められたことになる。【藤崎剛人(ブロガー、ドイツ思想史)】 【動画】台湾の地下鉄で、ナイフを手に「無差別」に襲い掛かる男...スマホ映像が捉えた「密室の恐怖」と、乗客の勇気ある反撃 しかしこれで問題が決着したわけではない。暇空氏とその支持者はColabo以外にも様々な社会福祉団体を攻撃してきたが、今回の判決が出た後も、貧困児童を支援するNPO団体を根拠なく攻撃し、「炎上」させている。暇空氏は「ひまそらあかね」の名前で都知事選に立候補し、11万票を集めた。貧困層やマイノリティなどを支援する団体に対する誹謗中傷は、それが儲かるビジネスにもなり、ますます深刻な社会問題になりつつある。 <名誉棄損裁判はColaboの勝利> 7月18日に判決が出た裁判は、インターネット上で暇空茜を称する男性(本名:水原清晃)が女性支援団体Colaboに対して、この団体は女性たちを「タコ部屋」に住まわせて生活保護を受給させ、毎月一人6万5000円ずつ徴収する「生活保護ビジネス」を行っているというデマを流したことに対してColabo側が訴えたもの。弁護団によれば、この判決で暇空側の主張は一つも認められなかったという。 また弁護団も主張しているように、判決文の「被告(暇空)が自らの好む漫画やアニメなどのコンテンツを批判する原告仁藤(Colabo代表・仁藤夢乃氏)に対し強い敵意を抱き、原告らを批判する動機がそのような点にあることを自認しているもので、上記活動報告書等の記載をあえて曲解している可能性を否定できない」という箇所は重要だ。つまり裁判所は、暇空氏が自分の気に入らない主張をしている仁藤氏を攻撃することを目的として、悪意をもってデマを流した可能性があると認定しているのだ。暇空氏はこの裁判以外にもColabo関係者との訴訟を抱えており、その帰趨にこの判決文が影響する可能性もある。
敗訴でも反省なし

仁藤氏は裁判後の記者会見で、この間の支援活動妨害による被害の甚大さについて述べた。中でも深刻なのは、支援対象そのものへの被害だ。支援している少女たちが不安になったり、生活を壊されたり、また本来繋がることができたはずの少女が、デマを理由に連絡を躊躇しているうちに、取り返しのつかない事態にまで発展した事例もあったという。こうした被害は、裁判での勝利によって回復できるものではない。 さらに暇空氏とその同調者は、こうした裁判での敗北に反省することなく、新たな攻撃対象を見つけて、Colaboのときと同じように活動を妨害しようとしている。そのターゲットとなった団体の一つが、貧困児童への支援活動を行っているNPO法人「キッズドア」だ。 <標的は「公金チューチュースキーム」> NPO法人「キッズドア」は、給食がなくなる夏休みの「緊急食料支援」として、申込みがあった家庭に、米や乾麺、レトルト食品といった食料を一括・無料で送り届けるプロジェクトを行っている。寄付等で賄われるその費用は、一世帯あたり税・送料込みで8000円だという。このプロジェクトで支援された食料の写真をこの団体の理事長である渡辺由美子氏がSNSにアップしたところ、「もっと安くできるはずだ」「中抜きだ」などといった批判が集まり、炎上した。 なぜ「キッズドア」が狙われたのか。暇空氏はColabo攻撃以降、様々な社会福祉系のNPOや社団法人をColabo同様に攻撃し続けている。暇空氏には、こうした公と連携して活動を行う福祉系の団体は、裏で補助金を不正に獲得するノウハウを共有しており、様々な政党や地方自治体、諸官庁と共謀し、「公金チューチュースキーム」を形成しているという持論がある。実際は彼が様々な自治体や団体に対して行った住民監査請求や開示請求で不正が見つかったことは一度もないのだが、彼はその持論を保ち続けており、今回新たにターゲットとなったのが「キッズドア」だった
誹謗中傷の再生産

裁判で敗訴しても、また同じようなNPO攻撃が行われてしまうのは、先般のコラムで扱った「誹謗中傷ビジネス」の問題がある。Colaboとの裁判で、暇空氏には220万円の損害賠償が命じられた。しかし、暇空氏はColaboに関係する訴訟を目的として、その同調者たちからおよそ1億円以上のカンパ金を集めたといわれており、その他にこの裁判をネタにした動画配信やnote記事を流すことによる収益もある。したがって数百万円程度の損害賠償では歯止めにはならないのだ。 重要なのは、「誹謗中傷ビジネスの」手法は、このやり方にうんざりすることなく、積極的に応援する同調者がいなければ成り立たないということだ。その点、暇空氏は前述の通り、先の東京都知事選に出馬し11万票を集めているのだ。 <最大の被害者は支援対象者> 名誉毀損裁判での敗訴を経ても止まらない、困窮者への支援活動を行っているNPO団体などへの攻撃で、最も被害を受けるのは、仁藤氏が会見で明らかにしたように、困難を抱えている当事者に他ならない。Colaboが対象とする行き場のない女性たちや、「キッズドア」が対象とする困窮家庭の子どもたちが、活動への妨害によって十分に支援されない状況が生じてしまう。 名誉毀損裁判での敗北も顧みない「誹謗中傷ビジネス」とその同調者を止めることは容易ではない。しかしこのまま放置すればますます支援の現場は疲弊するだろう。僅かな希望があるとすれば、今回の名誉毀損裁判は多くのメディアが報じたことだ。昨年Colaboの会計に不正はなしと報じたメディアは少数だった。これ以上の被害を出さないためには、こうして社会の問題意識を少しずつ高めていくほかはない。

人道支援団体を根拠なく攻撃してなぜか儲かる「誹謗中傷ビジネス」

7/29(月) 5:30配信