「身辺調査」の結果は上司に筒抜け…不利益はないのか 「経済安保」法案、岸田首相「今後検討する」連発2024年3月20日 06時00分.米英仏では「秘密指定」廃止の流れ 経済安保情報保護法案 なぜ今さら日本に?指摘される「最大の不備」は2024年3月31日 06時00分.統一教会系団体が推した「スパイ法」と相似形…閣議決定された経済安保情報保護法案の背後に何が2024年3月5日 12時00分等PDF魚拓



今回の法案では「サイバー」「規制制度」「調査・分析・研究開発」「国際協力」の4分野で、漏えいすると安全保障に「支障」の恐れがある情報を「重要経済安保情報」に新たに指定。特定秘密と同じように適性評価を実施するが、対象は防衛産業以外の幅広い民間事業者や大学を含む研究者などになる。漏えい時の罰則は、最長5年の拘禁刑とする。政府・与党は今国会での成立を目指す。

◆どういう情報を想定?「まともな回答はなかった」

 特定秘密保護法は、特定秘密の定義が曖昧で国民の知る権利を侵害しかねないと批判されてきた。重要経済安保情報も同様に定義が曖昧になることが懸念される。7日の自民党会合の出席者は「政府にどういう情報を想定しているのか聞いたが、まともな回答はなかった」と語った。

 適性評価のための身辺調査は本人の同意を得た上で行うが、飲酒や経済状況、家族や同居人の国籍なども調べられる可能性があり、プライバシー侵害につながりかねない。また、共同研究に参画したい企業や研究機関に所属する人にとって、適性評価が事実上の強制になる恐れもある。調査を拒否したり、不適格と認定された研究者らがその後、不利な扱いを被る恐れも否定できない。

 東北大の井原聡名誉教授(科学史)は「特定秘密とは比べものにならないほど指定情報が増える。適性評価を受ける民間人も増える」と指摘。軍事転用可能な技術開発をする研究者や政府の仕事を受注したいベンチャー企業などを念頭に「運用次第では企業秘密を政府に吸い上げられる危険性もあり、企業の国家統制の入り口になりかねない。この制度の狙いは軍拡政策を支える産業づくりにある」と懸念を示した。

政府が大量の民間人を「適性評価」、秘密を漏らしたら最長5年の拘禁刑 経済安保情報保護法案の概要

2024年2月8日 06時00分


◆範囲の明確化は法が成立してから

 自民党や立憲民主党などからは、国が指定する重要インフラや重要物資の供給網などに関する重要経済安保情報が「あいまいだ」との指摘があった。首相は「恣意(しい)的指定とならないよう、今後(法成立後)、外部有識者の意見もふまえて作成する運用基準で範囲を明確化する」と答弁。ただ、具体例は示さず、指定情報の件数なども「今後の検討の中で精査する」と述べるにとどまった。



衆院本会議で立憲民主党の森山浩行氏(手前)の質問を聞く岸田首相(中央)

 特定秘密保護法と異なり、今回の法案では、企業などの法人が漏えいの罰則対象に新たに加わった。首相は、「重要経済安保情報の経済的価値にかんがみれば、情報の不正取得や漏えいが組織的に行われる恐れがないとは言えない」と理由を説明した。

◆「規定を守るよう事業者に求める」

 また政府の身辺調査による「セキュリティー・クリアランス(適性評価)」を断った場合に配置転換や給与査定などがあるのか、公明党や野党各党が質問。首相は「法案の規定で不利益な取り扱いは明確に禁止されている。規定の順守を事業者にも求めるなどの措置を講じたい」と答えた。

 廃案を求めている共産党の塩川鉄也氏は、特定秘密に指定される経済安保情報もあることから「秘密保護法の適用を拡大するものでは」などと質問したが、首相は「指摘は当たらない」と繰り返した。立民の森山浩行氏は「国民から政府への信頼がなければ、個人情報を託したり秘密指定を任せることはできない」と強調した。(大杉はるか)

  ◇  ◇

 19日の衆院本会議で審議入りした「重要経済安保情報保護法案」は、経済安保上の機密情報を国が指定し、管理を厳格化することが目的です。2013年に世論を二分する状況で成立させた特定秘密保護法を経済分野に拡大する内容で、国民の知る権利やプライバシーの侵害が懸念されます。どんな法案なのでしょうか。

◆「同盟国」「準同盟国」と協力強化のため

Q なぜ法案をつくったの。

A 政府は同盟国の米国や、インド太平洋地域で連携する英国、オーストラリアといった「準同盟国」と軍事だけでなく、サイバーや宇宙、人工知能(AI)など科学技術分野での協力強化を目指しています。各国と機密情報を共有し、管理を強化することで、中国や北朝鮮などへの流出を防ぐ狙いもあります。

Q どうやって情報を管理するの。

A 重要インフラや半導体など重要物資の供給網を守るために国が保有する情報のうち、流出すると安全保障に支障が出る恐れがあるものを「重要経済安保情報」に指定。情報を扱う公務員のほか、民間企業や研究所など政府が認定した「適合事業者」の従業員らの身辺調査を行い、情報を漏らす恐れがないか、セキュリティー・クリアランス(適性評価)をします。

◆適性評価は事実上の強制になる懸念

 Q 適性評価って。

A 政府から本人の犯罪・懲戒歴、借金の状況などを聞かれるほか、家族や同居人の名前、国籍も確認されます。上司への聞き取りや、官公署への照会も想定しています。特定秘密保護法で導入され、22年末時点では防衛や外交、テロ・スパイ防止分野の情報を扱う約13万人が対象で、97%が公務員です。今回は経済安保情報のため、対象が民間に拡大します。



3面「経済安保情報保護法案」Q&A用

Q 調査は断れないの。

A 本人の同意が前提ですが、会社から指示されれば断りづらく、事実上の強制になる懸念があります。適否の結果は上司に知られるほか、個人情報の漏えいの恐れもあります。

◆漏えいすれば拘禁刑などが科される

Q 他の懸念は。

A 漏えいすれば、5年以下の拘禁刑などが科され、企業も罰則対象になり得るにもかかわらず、重要経済安保情報の指定基準が曖昧な点です。経済界は法律の必要性を認めながらも「国家として厳格に保全すべき情報に限定すべきだ」(経団連)「指定範囲を明確にすることは重要」(経済同友会)とくぎを刺しています。(川田篤志)

「身辺調査」の結果は上司に筒抜け…不利益はないのか 「経済安保」法案、岸田首相「今後検討する」連発

2024年3月20日 06時00分


今回の「重要経済安保情報保護・活用法案」は、防衛・外交・スパイ防止・テロ防止の4分野の情報保全を目的にした2014年施行の特定秘密保護法の仕組みを拡大する趣旨だ。

 国が保有する経済分野の情報のうち、他国に流出すると安全保障に支障が出る恐れがある分を、所管省庁が「重要経済安保情報」に指定する。この情報を扱う人物を限定するため、民間人を含めて国が事前に調べて認定する「セキュリティー・クリアランス(適性評価)」制度も導入する。漏洩した場合には5年以下の拘禁刑などを科す。

◆「本当の狙いは対中国」親中的な人を排除?

 日本は主要7カ国(G7)で唯一、経済安保の適性評価制度がなく、日本企業が国際的な共同開発などに参加できないこともあったという。適性評価の導入で「同じスタートラインに立ってビジネスができる」(高市氏)と期待する。その適性評価は、対象者の同意を前提に犯罪歴や飲酒の節度、借金の状況などを調べ、秘密を守ることができる人物か確認する。

 今回の法案の成立後、秘密を守る仕組みを持つ国々の輪に入り、経済分野の機密情報を企業間などで共有、活用する—という意図が語られるようだが、ジャーナリストの斎藤貴男氏は「本当の狙いは対中国であることは明白」とみる。

 半導体やその材料の輸出規制強化で米中の対立が深まる中で「日本も米国と一体となり、軍事に転用されそうな民間技術や半導体などのサプライチェーンから中国を排除する動きの一環」と説き、こう懸念する。

 「適性評価が恣意(しい)的に運用されれば、中国と関わりがある、もしくは親中的な考えのある人をあぶり出し、排除することが許されてしまう。思想信条の自由を妨げるだけでなく、企業がそうした人を採用から排除する『就職差別』にもつながりかねない」



閣議に臨む(左から)鈴木財務相、岸田首相、高市経済安保相

 ただ、どんな情報が秘匿の対象として指定されるのか、肝心の運用基準は曖昧なままだ。冒頭の会見で高市氏は具体例や想定件数について「分からない」と繰り返した。

 一方、適性評価が既に導入されている特定秘密保護法では、秘密を取り扱う人は約13万人おり、うち97%が公務員だ。しかし経済安保の適性評価は、民間人も幅広く対象となりうる。

 東北大の井原聡名誉教授(科学技術史)は「基幹インフラをはじめ半導体や原子力、人工知能(AI)、宇宙、海洋、量子など、軍事転用が可能な先端分野を含め、対象者は数十万人規模になるのでは」と指摘。政府との共同研究の名の下に「幅広い分野の研究成果やベンチャー企業のユニークな技術が防衛目的以外に使えなくなる恐れがある。適性評価を通じた研究者の色分けや企業の国家統制にも道を開く」と危ぶむ。

◆最高刑は死刑だったスパイ防止法、旗振り役は

 今回の法案は、産業スパイによる情報流出を警戒する名目で、適性評価と称した監視、さらに罰則を盛り込んだようにも思える。そんな中で頭をよぎるのが「スパイ防止法」だ。

 自民党は1985年に関係法案を国会に提出。防衛や外交に関する機密情報を国家秘密と定義し、外国に漏らすなど違反した場合の最高刑は死刑とした。



国家秘密法案(スパイ防止法案)に反対し、名古屋市内でデモ行進した弁護士ら=1985年

 スパイ防止法の旗振り役となったのが、岸信介氏。57年に首相として訪米した際、米側から秘密保護に関する新法制定の要請を受けていた。84年に「スパイ防止のための法律制定促進議員・有識者懇談会」が発足すると会長に就いた。

 スパイ防止法を求めたのは、旧統一教会系の政治団体「国際勝共連合」もだ。会長は79年にできた「スパイ防止法制定促進国民会議」の発起人に名を連ねた。勝共連合の機関紙「思想新聞」では何度となくスパイ防止法の制定を主張。岸氏の孫、安倍晋三氏が首相に就くと、北朝鮮のミサイル発射や中国の軍拡などを背景に国内でのスパイ活動が活発化しているとし「制定急げ」と論陣を張った。

 ジャーナリストの鈴木エイト氏は「勝共連合は反共産主義を掲げる団体。冷戦時代における旧ソ連の脅威から日本を守るとし、米国からの法整備の要請も背景にスパイ防止法制定を一貫して訴えてきた」と語る。「冷戦後も諦めていないのは、その主張に呼応する保守政治家との連携が念頭にあるのかもしれない」



思想新聞のコピー。「スパイ防止法」の見出しが頻繁に登場する

 80年代のスパイ防止法は世論や野党の反発に加え、自民党内にも慎重論があり、日の目を見ることはなかった。とはいえ最近でも、スパイ防止法に言及する議員はいる。

 例えば今回の法案の所管大臣である高市氏。自民の政調会長だった2022年、テレビ番組で「スパイ防止法に近いものを経済安保推進法に入れ込んでいくことが大事だ」と発言している。日本維新の会の馬場伸幸代表も国会で質問に立った際、岸田文雄首相に制定への見解を求めた。

 保守色の濃い面々が推してきたスパイ防止法。情報流出を念頭に置く以外に今回の法案との共通点をどう考えるべきか。名古屋学院大の飯島滋明教授(憲法学)は「公権力からの監視が強まり、プライバシー侵害の危険性も高まる。背景に米国の要請があるのも共通する」と説く。

 今回の法案は「経済活動に関する規制」と語る一方、これを端緒に今後、スパイ防止を名目にして監視や罰則の強化に拍車がかかることも危惧する。

 「幸福追求権が脅かされ、戦前のようになりかねない危険性がある」

◆現行法では本当に間に合わないのか

 日弁連で秘密保護法・共謀罪法対策本部副本部長を務める岩村智文弁護士も「政府は防衛費増など、日本の軍事化を進めている」と指摘した上、今回の法案が「情報規制し、国民全体を監視する流れにつながる。問題意識を持たないとまずい」と訴える。

 「特定秘密保護法からの切れ目のない統制につながりかねない。経済安保の概念も不明瞭で、農業などを含め将来、政府の都合のいいように次々に統制が広がる可能性は十分ある」

 経済分野での情報流出を防ぐという点に関しては「不正競争防止法など現行法では間に合わないのか議論されていない。労働者の人権や労働権、中小企業の経済活動への影響などについて、国会で細かく議論する必要がある」と断じる。

 その上で立憲民主党に言葉を向ける。2年前の経済安保推進法案の採決で賛成に回ったが「特定秘密保護法の時のように腰を据えて与党に対峙(たいじ)するかどうかに懸かっている」と訴える。

◆デスクメモ

 世間の目は裏金疑惑に向くが、経済安保の保護法案も重要だ。市民生活に多大な影響が及びうる。身辺調査を通じた監視。「日本経済を守る」と言えば聞こえがいいが、文中にあるように国家統制が強まる危惧が。私たちが他に気を取られていると、国の思うツボになりかねない。(榊)

統一教会系団体が推した「スパイ法」と相似形…閣議決定された経済安保情報保護法案の背後に何が

2024年3月5日 12時00分


情報を漏えいすれば、最長5年の拘禁刑が科されるが、何が「重要経済安保情報」に当たるのかの基準はあいまいなままだ。法案を担当する高市早苗経済安保担当相は27日の記者会見で、具体例や想定される指定件数について「まだ分からない」と繰り返した。

 重要経済安保情報 国民生活や経済活動にとって重要なインフラや物資のサプライチェーン(供給網)に関し、(1)外部行為から保護する措置や研究(2)脆弱(ぜいじゃく)性や革新的技術(3)保護措置について外国や国際機関から収集した情報-などのうち、公になっておらず、漏えいが国の安全保障に支障を与える恐れのあるもの。指定期間は5年以内だが、30年まで延長でき、さらに内閣の承認があれば60年まで延長できる。

◆飲酒の節度も犯罪歴も家族の国籍も調べられる

 適性評価は、本人の同意の上で、飲酒の節度や経済状況、犯罪歴のほか家族の国籍などを調べられ、公務員のほか、民間企業の従業員も幅広く対象となるが、どれほど膨らむか「積算は現時点で難しい」(政府関係者)という。

 情報の指定や解除、適性評価の認定基準は、同法成立後に政府が定めるため、法案審議を通じても明らかにならない恐れがある。さらに、指定や適性評価の実施状況は国会に報告されない。適切かどうかの監視は内閣府の独立公文書管理監が担うが、行政組織内でのチェックにとどまる。

 政府はこれまで与党に対し、指定されるのは政府が保有する情報に限るとしてきたが、民間事業者が独自に発見したサイバー攻撃に関する情報などが国に提供されれば、対象になり得るとの見解も示した。

  ◇

 政府は、経済安全保障に関する機密情報の管理を厳格化する「重要経済安保情報保護・活用法案」について、今国会で成立を図る構えだ。10年前に施行した特定秘密保護法を経済分野に拡大する内容で、情報を取り扱う民間事業者が政府による身辺調査の対象になる。法案の必要性や懸念について、政府の有識者会議で座長代理を務めた東京大公共政策大学院の鈴木一人教授と、日弁連の情報問題対策委員会委員の三宅弘弁護士に聞いた。

◆鈴木一人教授「外国との共同研究、参加に必要」

 —法案の背景は。

 「特定秘密保護法では防衛、外交、スパイ・テロ防止の4分野に関する情報を特定秘密に指定し、それにアクセスできる人を限定してきた。だが、最近では宇宙など防衛に近いが防衛ではない分野、デュアルユース(軍民両用)分野がたくさん出てきて、欧米と共同研究をする場合、同等のセキュリティー・クリアランス(適性評価)がないと参加できない。情報流通の制約を取り払い、外国との最先端の共同研究に参加する『免許証』となる適性評価制度が必要とされている」

 —仕事で適性評価が事実上強制になるのでは。



東京大公共政策大学院の鈴木一人教授(本人提供)

 「本人の同意が前提だ。有識者会議でも入社前に適性評価が必要になることを告知するなど対応策を提言した。それでも組織から不利益な取り扱いを受けた場合、異議申し立てができる仕組みも設けるべきだ」

 —政府が新たに指定する重要経済安保情報は。

 「まず民間の情報をいきなり政府が指定することはないし、学術研究で公知のものも対象にならない。政府のお金や委託で開発した技術関連など、政府が保有する情報が前提になる」

 —例えばどんな情報か。

 「サイバー攻撃の攻撃元や手口に関する政府保有の情報は、民間のサイバーセキュリティー会社にとって対策上重要で、適性評価を受けた人に提供される。半導体や宇宙、原子力など重要物資の規制や守るべき技術に関する情報も入る。中国は、半導体の素材に使う希少金属のガリウムやゲルマニウムを輸出規制している。代わりの調達先など日本政府の調査分析で得られた情報は、半導体関連企業にとって必要になる」

 —特定秘密と異なり、指定状況の国会報告がない。

 「米議会では、適性評価を受けた議員だけで構成する委員会に限って報告する。日本の国会議員は情報漏えいのリスクでもあり、一切外に出さないなら国会報告はあってもいい」(聞き手・川田篤志)

 鈴木一人(すずき・かずと) 1970年、長野県生まれ。専門は国際政治経済学、科学技術政策論。著書に『宇宙開発と国際政治』(岩波書店)など。政府の「経済安全保障分野におけるセキュリティー・クリアランス制度等に関する有識者会議」の座長代理。

◆三宅弘弁護士「首相の下に個人情報が集約される」

 —法案をどう見るか。

 「政府が指定する重要経済安保情報の範囲が曖昧だ。軍民両面で利用可能なデュアルユース技術などに秘密保護の網をかけていくと、外縁が際限なく広がるのではないかと危惧(きぐ)する。指定や解除の運用基準を定めるというが、法的拘束力はない。2022年に成立し、セキュリティー・クリアランス(適性評価)制度導入の前提となった経済安保推進法でも『経済安全保障』の定義がそもそもなく、詳細は政府が決める政省令に委ねられている」

 —企業への影響は。



インタビューに答える三宅弘弁護士=東京都新宿区

 「法律で指定の範囲や基準がはっきりしなければ、企業にとっては何が重要経済安保情報に当たるか分からないまま、処罰規定に触れてしまう可能性もある。(軍事転用可能な装置を不正輸出した疑いをかけられたが、捜査の違法性を東京地裁が認定した)大川原化工機事件のような冤罪(えんざい)が起こりかねず、営業の自由の侵害にも関わる問題だ」

 —適性評価を受ける民間人が増えると見込まれる。

 「家族や同居人の国籍、薬物乱用や精神疾患、飲酒の節度など適性評価で調べる項目はかなり広い。調査は首相や省庁など行政機関の長が行う。首相の下に個人情報が集約されることの是非も議論した方がいい」

 —特定秘密保護法と一体的に運用されるが違いは。

 「特定秘密の運用に課題は残されているが、衆参両院の情報監視審査会が指定状況などを一応は審査する仕組みがある。だが、今回の法案には重要経済安保情報について同様の報告義務は盛り込まれていない。国会軽視ではないか」

 —どうすべきか。

 「国会のチェックが及ばなければ、運用基準の適用が独り歩きする恐れもある。漏えいに実刑が科される重い情報を国会がスルーしていいとは思わない。政府は機密度が低いから報告はいらないという姿勢ではなく、正々堂々と報告すべきだ」(聞き手・近藤統義)

 三宅弘(みやけ・ひろし) 1953年、福井県生まれ。専門は情報公開法。2010〜18年、内閣府の公文書管理委員会委員。委員長代理も務めた。著書に「知る権利と情報公開の憲法政策論—日本の情報公開法制における知る権利の生成・展開と課題」(日本評論社)など。

高市早苗担当大臣も「まだ分からない」連発なのに…「経済安保情報保護法案」を閣議決定 識者の見方は?

2024年2月28日 06時00分


続々と明るみに出る国会議員と世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の関係。ただ、そもそもの話をお忘れではないか。安倍晋三元首相のケースだ。読み解くカギになるのが、いわゆる「スパイ防止法」。法制定を巡る経過をたどると、祖父の岸信介元首相、父の安倍晋太郎元外相、そして当人までの3代にわたり、教団系の政治団体「国際勝共連合」と共同歩調を取った過去が浮かんできた。政権中枢が絡んだ闇の深さこそ、目を向けるべきだ。(特別報道部・木原育子、中沢佳子)

◆岸信介氏「あるときは内密に…」

 「岸元首相は、本連合設立当初から勝共運動に理解を示し、陰に陽に支援、助言を行ってきた」

 勝共連合の機関紙「思想新聞」の1987年8月16日付1面には、同月7日に亡くなった信介氏の評伝が掲載され、先の一文がつづられた。広辞苑によると、「陰に陽に」とは「あるときは内密に、あるときは公然と」の意。親密ぶりがうかがえる。評伝はこう続く。「スパイ防止法制定運動の先頭に立ってきた…」

 この法律は、防衛と外交の機密情報を外国勢力に漏らせば厳罰を下す内容だ。信介氏は並々ならぬ思いを持っていたようだ。

 57年に首相として訪米した際、米側から秘密保護に関する新法制定の要請を受けて「いずれ立法措置を」と応じていた。晩年の84年に「スパイ防止のための法律制定促進議員・有識者懇談会」が発足すると、会長に就いた。

◆岸氏、勝共連合、そしてCIA

 勝共連合の「本気度」もすさまじかった。思想新聞によれば、78年には「3000万人署名」を行い、久保木修己会長は元検事総長や元最高裁判事、元韓国大使らとともに79年発足の「スパイ防止法制定促進国民会議」に参加。以後、勝共連合は全都道府県に下部組織をつくり、地方議会への請願運動を展開した。

 思想新聞も連日、「国会への圧力を強めていこう」などと喧伝(けんでん)。87年の元日紙面では漫画で同法を解説しており、左派と想定した人物を博士風の男性が論破する流れになっていた。



岸信介氏と安倍晋太郎氏の訃報を伝える国際勝共連合の機関紙「思想新聞」のコピー

 日本のトップだった信介氏、韓国発祥の教団の流れをくむ勝共連合。スパイ防止法を求めたのはなぜか。

 「根本的にはCIA(米中央情報局)」と話し始めたのは、御年89歳の政治評論家、森田実さんだ。「アメリカの政策は今も昔も変わらない。反共で韓国と日本の手を結ばせ、アジアを分断しながら戦いを挑ませる手法だ」

 信介氏は「米共和党に最も近い人物」といい、旧ソ連と向き合う上で「日本の関連法制では整備が不十分という米側の意向をくもうとした」。勝共連合の方は「権力や金のために日本に食い込むには米側に取り入るのが一番早かった」。

◆晋太郎氏「自信たっぷりの笑顔で…」

 スパイ防止法を巡り、勝共連合と共同歩調を取ったのは晋太郎氏もだった。

 85年6月に自民党議員が法案を提出した時には外相で、このころの参院外務委員会では「審議について関心を持っている。そういう方向を打ち出すことも理解できる」と踏み込んだ。

 思想新聞を読むと、勝共連合関連の会合に党代表や来賓として再三参加しており、「自信たっぷりの笑顔で『スパイ防止法成立に積極的に取り組みたい』と述べました」と報じられた。

 その晋太郎氏は韓国と深い縁を持っていたようだ。

 「安倍三代」の著者でジャーナリストの青木理氏によると、晋太郎氏の地元、山口県下関市は古くから朝鮮半島との交流の要衝だった。釜山行きのフェリーが行き交い、今も韓国との玄関口。在日コリアンが多く暮らし、地元の有力な韓国系の実業家も晋太郎氏を支援してきた。
◆全ては朝鮮半島との関係の中に

 青木氏は「勝共連合の結び付きと土地柄は切り離して考えるべきだ」と念押ししつつ、「時代背景もあり、反共というイデオロギーを核に岸さんと旧統一教会が結び付き、晋太郎氏もそのまま引き継いだ事実は間違いない。戦前から戦中、戦後に続く朝鮮半島との関係の中に全てはある」と指摘する。

 晋太郎氏は1991年に亡くなった。信介氏の時と同じように、思想新聞は1面で評伝を掲載した。やはり、この言葉で悼んだ。

 「安倍氏はまた、故岸信介元首相や福田元首相と同様、陰に陽に本連合に対し支援、助言を行ってきた」

 85年提案のスパイ防止法案は野党の強い反発などもあり、このころに成立することはなかった。

 「世界情勢は成立へと推し進める流れになかった」。政治評論家の小林吉弥氏はそう話す。冷戦の終結や旧ソ連の崩壊があり「急いで成立させる必要性は薄れた」。信介氏が87年、晋太郎氏も91年と相次いで亡くなり、旗振り役が消えたのも一因という。

 晋太郎氏に関しては、力を振るいにくい状況もあった。「外相こそ務めたが、当時首相だった中曽根康弘氏とは党総裁選で競った間。田中派に担がれた中曽根政権で、福田派の晋太郎氏はさほど重きを置かれず、政権中枢と距離があった」(小林氏)

◆晋三氏の登場と「特定秘密保護法」

 晋太郎氏の死から15年たった2006年、晋三氏は首相に就いた。思想新聞はここぞとばかりに「スパイ防止法制定急げ」「法の再上程を」と必要性を訴える見出しを付けた。



国会議事堂前で特定秘密保護法に反対した人たち=2013年12月

 安倍晋三政権は07年、海上自衛隊の情報流出疑惑を機に、「軍事情報包括保護協定(GSOMIA)」を米国と結んだ。米国と協定を交わした国が秘密軍事情報を共有する際、米国と同レベルの秘密保護が求められる。

 短命の第1次政権後、晋三氏は12年末に返り咲いた。翌13年7月の参院選で衆参ねじれ国会が解消したのを受け、力に任せた政権運営を展開。衆参両院で採決を強行して成立させたのが「特定秘密保護法」だ。

 防衛や外交の機密情報の漏洩(ろうえい)を厳罰化する同法は当時、スパイ防止法との類似点が指摘された。知る権利を侵す危うさをはらむが、思想新聞は「安保体制が大きく前進した」と持ち上げた。その一方、諜報(ちょうほう)活動をより強く取り締まる内容を盛り込んだスパイ防止法を制定するよう促した。

◆「教団系は自民党のいたるところに」

 「晋三氏が秘密保護法を成立させたがったのは祖父、信介氏への思いの強さ、教団との関係性からかもしれない」

 旧統一教会に詳しいジャーナリストの鈴木エイト氏はそう推し量る。

 ただ、教団と必ずしも考えが完全一致していないとも。「秘密保護法は政府が探られたくないことを追及されないようにした。一方、教団がスパイ防止法で求めるのはより踏み込んだ内容。両者の関係はまだ分からないことが多い。さらなる解明が必要だ」と語る。

 名古屋学院大の飯島滋明教授(憲法学)は、晋三氏が対米関係を考え、秘密保護法制定に動いたとみる。「スパイ防止法も秘密保護法も、政府による情報隠しを可能にし、戦争できる国づくりのための法。一気に進めると反発が大きいので、規制できる言動の範囲が限られる秘密保護法を足掛かりとしたのだろう」

 共同歩調が浮き彫りになった安倍家と教団系の過去。右派色の強い教団と一国の首相との関わりに、飯島氏は警鐘を鳴らす。

 「スパイ防止法が制定されれば、情報の入手はさらに制約される。基地監視はスパイ活動とされ、反基地運動が抑え込まれかねない。教団は自民党のいたるところに食い込んでいる。たださなければ、過去と似た動きが繰り返される」

◆デスクメモ

 陰に陽に勝共連合を支援したという晋太郎氏。死去から2年後、同じ山口県の選挙区から立候補したのが晋三氏だ。東京育ちで、選挙区との関わりは希薄。初当選を支えたのは父と縁深い面々だろう。では、勝共連合はどうか。恩返しのごとく、陰に陽に動いたのか。どうにも気になる。(榊)

旧統一教会系と歩んだ安倍氏「3代」…スパイ防止法を巡る歴史から闇を読み解く

2022年8月17日 06時00分


◆岸一族と教団、関係の源流は「勝共連合」後押しした岸信介元首相

 「選挙というのは、まさに戦。手の内を明かすようなことはしたくない。適切に判断をし、対処したい」

 29日の会見でそう述べたのは岸防衛相だ。3日前には、教団に所属する人物から過去の選挙で支援を受けたと明かしたが、今後については曖昧に語った。

 兄の安倍氏の銃撃事件以降、同氏と旧統一教会の関係が取り沙汰されてきた。源流をたどると、教団の日本進出のほか、反共産主義を掲げる政治団体「国際勝共連合」の設立を冷戦下に後押しした祖父の故・岸信介元首相に行き着く。

 「反共」を名目に接点を持った岸一族と教団。両者の関係を考える上で気になる存在がある。共産主義を掲げて誕生した北朝鮮だ。教団は冷戦末期から同国とつながりを深めてきたからだ。

 教団のサイトによると、教祖の故・文鮮明氏は現在の北朝鮮・平安北道出身。1954年に韓国で教団を創立して信者を増やした一方、91年に北朝鮮側の招きに応じて電撃訪問。文氏は主席の金日成(キムイルソン)氏と会談し、南北の離散家族を捜す事業の推進などで合意した。

 その後、金正日(キムジョンイル)、金正恩(キムジョンウン)両氏ら後継指導者とも関係を築いた。2012年9月に文氏が死去した際は、正恩氏が「民族の和解と団結、国の統一と世界平和のために傾けた先生の努力と功績は長く伝えられる」と弔文を遺族に送った。一周忌を前にした13年8月にも追悼メッセージを出すなど、教団への配慮を見せた。

◆教団と北朝鮮、南北統一や資金面で相互にメリットか

 反共を掲げる教団が北朝鮮と接近したのはなぜか。文氏訪朝時に教団系の日刊紙「世界日報」記者だった元信者で、金沢大の仲正昌樹教授(思想史)は「文氏には祖国統一の理念があった。教会としても、訪朝目的は北朝鮮が共産主義を克服するために指導者に働きかけ、悔い改めさせるとの理屈が成り立つ」と語る。

 教団とつながりを持つことは北朝鮮にもメリットがあったとみる。「教会信者の経営する会社が北朝鮮に協力するなどし、利益をもたらした面はある」

 朝鮮半島問題の専門誌「コリア・レポート」の辺真一編集長は「一九八九年にベルリンの壁が崩壊してから東西陣営の緊張緩和が進み、反共一辺倒だった統一教会の姿勢も変わった」と指摘。「北朝鮮は統一教会の資金力に加え、米共和党へのコネクションを利用する思惑もあった。北に強硬姿勢だった同党との関係を改善しようとしたからだ」

◆安倍氏ら、教団の北朝鮮とのパイプを重視か

 一方で岸一族、特に首相時代の安倍氏は、北朝鮮と教団のつながりをどう捉えていたのだろうか。先の仲正氏は「教会は北朝鮮にいろいろなパイプがある。拉致や安全保障を巡る問題を抱えていた安倍氏らは北の情報を得るため、同国と教会との関係は黙認したのだろう」と推し量る。

 教団側は、社会的認知度を上げるために安倍氏らとの関係は重視しつつも、信者になってもらうのはハードルが高いと考えていたと仲正氏は見立てており、「賛同を得られる範囲で接点をつくり、両者は『ウィンウィン』の関係を続けたのだろう」と解説した。
◆教団を介した北朝鮮との接点、国民に不信・不安招く

 「保守」を名乗る面々には、教団側がもたらす北朝鮮絡みの情報に関心を抱く向きもある。

 ジャーナリストの桜井よしこ氏は「週刊新潮」今月7日号の連載コラムで、旧統一教会系の日刊紙「世界日報」の掲載記事を「特ダネ」と持ち上げたうえ、日本人拉致被害者の生存情報を引用して伝えた。

 防衛相である岸氏は、北の情報を得る上で教団に価値を見いだすことはあるのか。つながるとしても別の理由があるのか。

 「教団は植民地支配への恨みを解くとして、日本で献金を募った。保守の政治家と相いれないのに、多くの自民保守系議員に教団側の息がかかっている。人手や票など、目先の利益を求めたのだろう」。英軍事専門誌の元東京特派員で、国際ジャーナリストの高橋浩祐氏はそう語る。

 29日の岸氏の会見に出席し、教団との関係を改めてただした高橋氏は「終始歯切れが悪い。岸一族に脈々と続くつながりが深過ぎて、手を切れないんだと感じた」と振り返る。

 教団側を介した防衛相と北朝鮮の接点はむしろ、リスクが潜むと懸念を語る。

 「実際には情報漏洩などがないとしても『何か起こるのでは』と疑念を抱かせる。国防の根幹は国民の安心感なのに、国民の不信と不安を招く」

◆教団側が政治家をコントロールしうる立場に



28日、韓国・ソウルで、米韓両国への対決姿勢を鮮明にした北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記のニュースを見る市民ら=AP

 山口大の纐纈(こうけつ)厚名誉教授(政治学)は「岸氏や兄の安倍氏の選挙区がある山口県は、朝鮮半島に近い。岸一族はさまざまな『半島ルート』を持っている」と語る。その力を思わせる一件として、2002年の拉致被害者5人の一時帰国を挙げる。当時、官房副長官として小泉純一郎首相の訪朝に同行したのは安倍氏だ。

 「北朝鮮との公式なパイプが細っている今、外交、国防、拉致問題の解決といった問題には、私的ルートを頼らざるをえない。ただ、それを持つ人物が防衛相だと、安全保障上、大いに問題だ」と纐纈氏は話す。

 「教団側はさまざまな政治家とパイプを持ち、政治家をコントロールしうる立場にある。そんな集団と防衛相が近しいと、日本を危機に追い込みかねない」

 岸氏はこれまでの会見で、選挙で手伝いをした教団所属の人物が「(投票を呼びかける)電話作戦などはあったと思う」と明かした。お膝元の選挙区は、米軍と海上自衛隊が共同使用する岩国基地のある山口県岩国市が含まれている。「教団関係者が電話作戦をしたのなら、岸氏の事務所から支持者名簿が教団に渡っていないか。それがどこまで流れたのか、検証しなくては」と纐纈氏は訴える。

◆「関係を切る」と明言しないことが問題 野党は解明を

 教団と政治家の関係は複雑に入り組み、闇が深い。

 千葉商科大の田中信一郎准教授(政治学)は教団との結び付きを追及された政治家たちが「関係を切る」と明言しないことを問題視する。

 「岸氏は防衛相の前に国会議員として不適任。そんな人物が与党にいる。そもそも自民党は税金や権限、政治を私物化する利権集団に支えられて政治の舞台に出てきた人々の集まり。教団との関係も悪いと考えていないのだろう」

 一方で野党には、教団と政界の闇を解明する動きが広がっている。立憲民主党は被害対策本部、共産党は追及チームを設置。社民党も教団と自民の関わりを調べようとしている。ただ、歩調はバラバラだ。

 田中氏は「本来は合同ヒアリングをするべきだが、野党にも教団側と接点を持つ議員がおり、足並みをそろえるのは難しい。まずは政党ごとでも解明に動くことが大切。どこまで取り組むかは、その党と教団の結び付きの見極めにもなる」と語っている。

◆デスクメモ

 岸田首相は岸防衛相と教団、北朝鮮の関係をどう捉えてきたのか。北につながるパイプがあれば北の情報が入りやすくなるが、逆に漏れ出るリスクもある。危うさをはらむ岸氏を防衛相に任命すべきだったのか。事情を知りながら登用したのか。首相の認識と責任も問わねばならない。(榊)

旧統一教会と岸一族と北朝鮮 この奇妙な三角関係をどう考えるべきか

2022年7月30日 17時30分


安倍晋三元首相銃撃事件で注目が集まる宗教団体「世界平和統一家庭連合(旧統一教会)」と、自民党国会議員の接点が次々と明らかになっている。現職閣僚も選挙の支援を受けたり、教団関係者にパーティー券を購入してもらったりだ。野党は、旧統一教会と政治との関わりや霊感商法の実態調査に乗り出した。ここが関係を断ち切るチャンスにも思えるが、自民の腰は重い。これだけつながりが多いと政策はゆがまないのか。関係を断てないわけとは。(特別報道部・宮畑譲、山田祐一郎)

◆「派閥の長」が組織票の割り振り示唆



二之湯智国家公安委員長

 自民党の青山繁晴参院議員が18日、ブログで「自由民主党の立候補者と(旧)統一教会の関係をめぐって、わたしが参院選の前に行動したこと」と題し、文章を書き込んだ。

 ある「派閥の長」が青山氏に対し、「各業界団体の票だけでは足りない議員については、旧統一教会が認めてくれれば、その票を割り振ることがある」と話したというのだ。さらに、旧統一教会の支援を受けていることを明らかにしないのは問題だと指摘すると、「業界団体の票だけでは届かない議員は、別の手段も考える。選挙が意外に弱い候補者が多いからね」と言い放ったという。



末松信介文科相

 青山氏は旧統一教会との関係を「見直すべきです」と進言したが、派閥の長は具体的に答えなかった。「(派閥の長は)やむを得ないとは、最後まで仰(おっしゃ)いませんでしたが、そういう趣旨だと考えます」と推測した。

 ブログの内容が事実であれば、旧統一教会が自民党の候補者に組織票を配分していたことにもなる。

 あらためて青山氏に話を聞こうと事務所に問い合わせたが、「ブログに書き込んだことが全て。その件については取材を断っている」と答えた。しかし、青山氏はブログの投稿直後は、複数の民放テレビのインタビューを受けている。断るようになった理由について、党内で圧力があったのではないか。事務所の担当者は「本人から聞いていないので分からない」という。

◆岸防衛相「ボランティアとしてお力を頂いた」



岸信夫防衛相

 いずれにしても、銃撃事件後、自民党議員と旧統一教会との接点が次々と明らかになっている。中には現役閣僚も含まれる。

 安倍氏の実弟の岸信夫防衛相は、教団所属の人物から選挙の手伝いを受けたと認め、「ボランティアとしてお力を頂いた。(投票を呼び掛ける)電話作戦などはあったと思う」と話した。二之湯智・国家公安委員長も関連団体のイベントの実行委員長を務めた。末松信介文部科学相は教団関係者にパーティー券を購入してもらったことを認めた。

 工藤彰三衆院議員(愛知4区)は関連団体から選挙の応援を受けてきたことを認めたが、「破壊的なカルトや反社(反社会勢力)と認定されている団体なら付き合わないが、決してそういうわけではない」と述べ、今後も付き合いを続ける意向を示した。

 さらに、第1次安倍政権で政務秘書官を務め、10日の参院選の比例代表で当選した井上義行氏は、教団の「賛同会員」だ。事務所によると、教団の信条と掲げる政策が一致したことを理由に挙げる。ただ、会費や寄付は互いになく、選挙での動員もないという。

 野党もわずかだが、関係が明らかになった。立憲民主党の複数議員も教団や関連団体が開いた会合に祝電を送り、国民民主党の玉木雄一郎代表は、教団と関係が深いとされる会社の元社長から寄付を受けていた。

 なぜ教団は政治家と接点を持とうとするのか。旧統一教会に取材すると、広報担当者は「宗教法人として特定の候補者に組織的に関与したり、応援したりすることはない。友好団体との関係は当該団体に問い合わせてほしい」と答えた。
◆自民・茂木幹事長「党としては一切関係ない」

 他にも、加藤勝信前官房長官や下村博文元文科相ら、驚くほど多くの自民議員と旧統一教会関連の接点が明らかになりつつあるが、政策に影響があったのかは気になる。全容解明はなされるのだろうか。

 野党では、立民や日本維新の会が教団と議員の関係を調査する。共産党は政界との関係を解明する「追及チーム」を設置した。

 一方の与党である。宗教団体の創価学会が支持母体の公明党はこちら特報部の取材に「旧統一教会と議員の関係の有無を確認する予定」とし、政府に何らかの調査を求める考えは「現時点でない」とした。最も調査が必要なはずの自民党は消極的だ。茂木敏充幹事長は26日の会見で「党としては一切関係がない。各議員には厳正、慎重な対応をするよう注意を促していく」と述べるにとどめた。

◆超党派で徹底調査しなければうみは出せない

 旧統一教会の問題に詳しいジャーナリストの鈴木エイト氏は「このまま幕引きを図りたいのだろう。反社会的な団体との関係があったのなら、検証すべき問題。超党派で徹底的に調査しなければうみは出せない」と強調する。

 鈴木氏の独自調査によると、旧統一教会と関連がある国会議員は100人を超える。このうち約9割が自民議員という。「祝電を送るだけの関係から、教団関連団体の会費を払ったり、献金を受けるなどさまざま。双方が隠しながら関係が広がっている」と指摘する。



自民党に食い込む世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の本部=28日、東京都渋谷区で

 全国霊感商法対策弁護士連絡会(全国弁連)は2018年と19年、全国会議員に対し、「反社会的団体の違法活動にお墨付きを与えかねない」として旧統一教会関連のイベント参加やメッセージの送付、選挙で信者らの支援を受けるなどしないよう要望していた。

 鈴木氏は、当時の旧統一教会側の反応について「要望書を出した直後に全国弁連に『要望書を回収しろ』とクレームがあり、その反応の速さに驚いた。議員事務所内に関係者がいるということだろう」と振り返る。それだけでなく「議員に対するブリーフィングやセミナーで原理教育を刷り込むなど、かなり深く入り込んでいた」と説く。

 旧統一教会との関係が明らかになっても、議員の一部からは開き直りとも取れる発言もある。関係を断ち切れないのはなぜか。

◆調査に腰重いのは「使えるから」



安倍元首相のひつぎを乗せた車(手前中央)の車列が通過した自民党本部=12日、東京都千代田区で

 「要するに『使えるから』に尽きるのだろう」。こう話すのは、北海道大大学院の桜井義秀教授(宗教社会学)。「選挙応援や私設秘書の派遣といった無償の労働力は献金などと違って外から見えない形で使えるので、政治家にとってありがたい」と説明し、旧統一教会にとって「政治家が祝辞や賛同メッセージを送ることは、教団の信頼を高めることになるし、結果的に勧誘に協力することになる」とメリットを強調する。

 これだけ自民党内に関係が広がっていれば、政策がゆがめられる恐れはないのか。「霊感商法により、1980、90年代に問題視されても、国会で野党から批判があっても免れてきた。結局、もみ消されているということだ」

 政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏は「議員は選挙に勝つため。教団は政治とのパイプをつくるため。互いにウィンウィンで付き合っていた」と両者の関係を言い表す。「表立った利益誘導などはないだろうが、教団の関連団体はかなり多く、問題が潜んでいるかもしれない」とみる。

 教団と関係がある議員に対し、桜井氏は「労働組合や業界団体などと同じ感覚で付き合うのとは違う。教団によって、泣いている人や自己破産している人もいる。このような団体から支援されているということを公表した上で、国民の判断を仰ぐべきだ」と説く。

◆デスクメモ

 青山氏が指摘した旧統一教会の票を候補者に差配していた「派閥の長」とは誰なのだろうか。旧統一教会の裏側には、霊感商法などの多くの被害者がいる。その上に成り立つ自民党政治だとすれば、問題は深刻だ。自民は党として、調査すべきことがたくさんありそうなんだけどな。(六)

旧統一教会と自民党国会議員、接点次々と明らかに…関係を断てないワケとは

2022年7月29日 06時00分


自民党は20日の総務会で、国が指定した経済安全保障上の機密情報を扱う人を認定する「セキュリティー・クリアランス(適性評価)」制度の導入を盛り込んだ重要経済安全保障情報保護・活用法案を了承した。公明党も同日、了承。週内には与党内手続きを終え、2月末にも閣議決定される見通しだ。機密指定の基準があいまいで、国民の知る権利や企業の営業の自由が侵害される恐れが指摘される法案だが、与党では議論を尽くさないまま、審議の舞台は国会に移る。





 自民党の法案審査を担当した部会のメンバーは「機密情報の指定基準など細かい点は国会で議論すればよい」と語った。

 米欧などでは機密度に応じて情報を「機密(トップシークレット)」など3段階に区分する。新たな法案は政府が保有する「秘」級の経済安保情報を保全対象に。具体的にはインフラや物資の供給網など「重要経済基盤」に関する情報のうち、漏れると安全保障に「支障」を及ぼす恐れがあるものを「重要経済安保情報」に指定し、漏えいに最長5年の拘禁刑を科す。

 安全保障に「著しい支障」の恐れがある「機密」や「極秘」級の情報は特定秘密保護法の指定対象とし、漏えいには懲役10年以下の罰則を科す。

◆「特定秘密保護法のような世論にならないように」

 自民党では「(強い反発を受けた)特定秘密保護法の時のような世論形成にならないように」「情報漏えいの罰則は10年にすべきだ」などの意見が上がったが、法案自体への異論はなかった。公明党でも目立った懸念の声は出なかった。

 適性評価は民間企業の従業員や公務員が対象で、本人の同意の上で犯罪歴や家族の国籍などを調べる。評価の有効期間は10年。2022年成立の経済安保推進法に盛り込む方針だったが、慎重論を受けて見送り、付帯決議で「必要な措置を講ずる」としていた。(近藤統義)

経済安保「機密情報の指定基準などは国会で議論すればよい」 議論を尽くさず法案を了承してしまった与党

2024年2月21日 06時00分


日弁連は13日、政府が今国会への提出を目指す経済安保情報保護法案の問題点を考える勉強会を国会内で開いた。法案は国家機密の取り扱いを有資格者に限る「セキュリティー・クリアランス(適性評価)」制度を経済安全保障に関わる情報にも広げることが柱。出席者からは、国民の知る権利や企業の営業の自由が侵害されることへの懸念が相次いだ。





閣議に臨む岸田首相(左)と高市経済安保相=13日

 勉強会にはオンラインを含め、国会議員や市民団体の関係者ら約120人が参加。日弁連の秘密保護法・共謀罪法対策本部長代行を務める三宅弘弁護士は「そもそも経済安保の定義が曖昧。何が秘密に当たるのか分からない」と指摘。東北大の井原聡名誉教授(科学史)も「適性評価で資格を得られないと職場を追われかねない」と危惧(きぐ)した。

 法案概要によると、サイバーや重要インフラに関わる分野で政府が重要情報を指定し、公務員のほか民間企業の従業員や研究者らを幅広く適性評価の対象とする見込み。情報漏えいには最長5年の拘禁刑などを科す。 (近藤統義)

経済安保は「そもそも定義があいまい」 政府が提出目指す法案に日弁連の勉強会で相次いだ「懸念」

2024年2月13日 20時21分


参院で審議中の経済安全保障推進法案を巡り、軍事研究の加速につながるとの観測が出ている。法案によると、政府は先端技術開発に協力する研究者を募り、多額の国費を投じて、官民一体で軍民両用(デュアルユース)可能な技術開発に取り組むことができる内容。識者は国民に見えないところで軍事研究が進む恐れがあると危惧する。(曽田晋太郎)

【関連記事】<社説>国際卓越研究大 学問への介入が心配だ



 法案は重要物資の供給網強化や基幹インフラへのサイバー攻撃排除など4本柱で、政府が今国会に提出した。柱の一つである先端技術開発の官民協力で軍事研究の加速が指摘されている。研究対象として、軍事分野でも重視される量子やAI(人工知能)、宇宙などが想定されるからだ。

 岸田文雄首相は国会審議で「民生利用や公的利用への幅広い活用を目指す」として、軍事研究の意図はないと強調してきた。ただ、小林鷹之経済安保担当相は国会審議で「(研究)成果は防衛省の判断によって、防衛装備品に活用されうる」と認めた。

◆研究者に守秘義務、罰則も付け

 法案では他国依存のリスクが高い技術を特定重要技術と定義。政府はその研究開発を図るため、個別のプロジェクトごとに政府関係者と研究者らで構成する「官民協議会」を設置する。特定重要技術の開発を進めるため、基金を設置し、政府が基金に資金を補助できるとした。政府は2021年度補正予算で既に、2500億円の基金を創設。将来的には5000億円まで増額させる計画だ。

 協議会の参加者には「機微情報」の守秘義務があり、違反した場合は1年以下の懲役か50万円以下の罰金が科される。

 東北大の井原聡名誉教授(科学史・技術史)は「防衛直結の先端技術や研究者を協議会で囲い込み、見えないところで軍事研究が進む恐れがある」と指摘する。

◆資金てこに学術界から協力者、政府に思惑か

 政府が官民連携の強化を目指す背景には、日本学術会議が戦後3回にわたり、軍事研究への反対声明を発出したことがある。政府は潤沢な資金をてこに、軍事研究と距離を置く学術界内部から協力者を取り込む思惑もあるとみられる。

 政府は官民協議会への参加や離脱は任意だとする。しかし、研究者は研究開発に携わった後に協議会を抜けたとしても、守秘義務によってその後の研究活動に制約がかかりかねない。

 衆院の法案採決では立憲民主党なども賛成に回ったが、弁護士らでつくる市民団体「経済安保法案に異議ありキャンペーン」は「企業活動や学術研究の自由を侵害するおそれが強い」として、参院審議で抜本的な見直しを要求している。

 また、法案は重要物資やインフラ設備の対象など138項目を政省令に委ねている。その理由について、政府は「あらゆる事項をすべて法律に規定することは困難」とするが、政府の判断だけで決まり、国会は関与できない。

経済安保推進法案で軍事研究加速か 「見えないところで進む」識者危惧

2022年4月25日 19時05分


政府が複数の大学を「国際卓越研究大学」に認定し、投資信託(ファンド)の運用益で支援する法案が、衆院の委員会で審議中だ。

 研究費の拡充に異論はないが、大学を選択して集中的に支援することが大学の自治を損ない、大学間格差を広げないか。「学問の自由」への介入を懸念する。

 日本の研究力低下が語られて久しい。今回の構想は、自然科学系の「注目論文」数が主要七カ国中最低の理由を大学の資金力の差に求め、十兆円規模のファンドの運用益で資金不足を補うものだ。

 ファンドは文部科学省所管の科学技術振興機構(JST)が管理し、運用は外部機関に委託する。約十兆円の財源の大半は財政投融資で、五年以内に年三千億円の運用益を見込み、一校当たり年数百億円を支援する、という。

 ただ対象校の認定には学外者が半数以上を占め、学長選考や経営方針などを策定する最高機関「法人総合戦略会議」の新設、企業からの助成などによる年3%の事業成長などの条件が課せられる。

 最大の懸念は大学自治や学問の自由への影響だ。対象校の選定には閣僚も関与し、戦略会議には政財界出身者らが起用される見通しだ。政権により会員任命が拒否された日本学術会議と同様、学問への政治介入は生じないのか。

 大学間の格差が拡大する懸念もある。対象校には大都市の国立大が選ばれる可能性が高い。その場合、国全体の研究水準の底上げにはつながらず、地方との教育格差をさらに広げかねない。

 そもそも大学に事業成長を求めることが妥当なのか。成長は民間からの集金調達力を意味するが、目先の収益に結び付かない学問分野が軽視される傾向に拍車がかからないか懸念は拭えない。

 ファンドの運用を不安視する声もある。この超低金利時代に高水準の運用益が見込めるのか。一部の官民ファンドは数百億円規模で累積損失を生んでおり、失敗すれば、負担は国民に転嫁される。

 研究力の低下は、二〇〇四年の国立大学法人化と軌を一にしている。各大学に配られる運営費交付金が削られ、研究費を得るための膨大な事務手続きで教員は研究時間が圧迫された。

 国際卓越研究大構想は同じ轍(てつ)を踏むことになるのではないか。研究力を上げるための施策を、この際、徹底的に議論すべきである。

<社説>国際卓越研究大 学問への介入が心配だ

2022年4月22日 07時45分


◆市民情報を一元的に収集「日本の歴史上初めて」

 「多くの市民の機微情報を国の機関が一元的に収集する制度は日本の歴史上初めてだ。権限行使の乱用を防ぐ仕組みが全く議論されていない」

 日弁連の斎藤裕副会長はこう発言した。内閣府が実施する適性評価のための身辺調査は、情報を扱う民間企業の社員や研究者らの経済状況、家族の国籍など広く個人情報を集めるが、法案には目的外利用などをチェックする仕組みがない。斎藤氏は「監督するところをつくり、罰則も設けなければならない」と指摘した。



 身辺調査を拒否した社員に対して、企業側が不利益な取り扱いをしても罰則はない。法案作成に向けた政府有識者会議座長の渡部俊也・東京大副学長は「制度を支える貴重な人材の処遇や雇用に不具合があってはならない」と強調した。

 法案ではどんな情報が機密情報に指定されるか基準がはっきりしていない。そのため、政府が恣意的(しいてき)に指定していないかチェックするため、特定秘密と同様に国会の情報監視審査会の対象とするよう求める意見が相次いだ。政府の公文書管理委員会で委員長代理を務めた三宅弘弁護士は「この法案の最大の不備だ」と批判した。

◆アメリカでも当局が指定廃止勧告

 法案はインフラや重要物資の供給網に関する情報のうち、漏えいが安全保障に支障を与える恐れがあるものを「重要経済安保情報」に指定。政府はその情報の機微度をコンフィデンシャル(秘)級としており、より高いトップシークレット(機密)やシークレット(極秘)級を対象とする特定秘密保護法と区分する。



国会議事堂。手前が衆院、奥が参院

 政府は先進7カ国(G7)でコンフィデンシャル級を含め情報保全制度がないのは日本だけだとし、法案の必要性を強調している。渡部氏は理解を示したが、斎藤氏は「コンフィデンシャル級の秘密指定は英仏で廃止され、米国も情報保全監督局が廃止を勧告している。非常にニッチな情報を保護する法律をなぜ作らなければならないのか」と疑問を呈した。

米英仏では「秘密指定」廃止の流れ 経済安保情報保護法案 なぜ今さら日本に?指摘される「最大の不備」は

2024年3月31日 06時00分


国が指定した経済安全保障上の機密情報を扱う民間事業者らの身辺調査導入などを柱とする「重要経済安保情報保護法案」の審議が27日、衆院内閣委員会で行われた。野党議員は、国会の情報監視審査会で重要経済安保情報の指定状況をチェックできるよう関連法案の修正を要求。高市早苗経済安保担当相は同審査会のチェックについて「不都合はない。国会で決めていただくことだ」と述べた。

◆特定秘密保護法を実質的に拡大する内容



衆院内閣委で質問を聞く高市経済安保相(千葉一成撮影)

 法案によると、重要経済安保情報は、漏えいすると日本の安全保障に支障を与える恐れがあるインフラや重要物資の供給網に関する情報で、扱う人は身辺調査を受け、セキュリティー・クリアランス(適性評価)で認定を受ける必要がある。より機密度が高い「特定秘密」の扱いを定めた特定秘密保護法を実質的に拡大する内容だ。

 特定秘密については、政府による恣意(しい)的な指定が行われていないかなどを情報監視審査会でチェックする仕組みがあるが、重要経済安保情報は対象ではない。また、情報の指定や解除、適性評価の実施状況に関する国会への報告や公表についても規定がない。

 立憲民主党の後藤祐一氏は「諸外国と比べてもおかしい。重要経済安保情報を審査会の対象にすると不都合があるのか」と質問。高市氏は「(国会で)特定秘密と同様の措置を講じれば、重要経済安保情報を(国会に)提供することになる」と明言した。



◆セキュリティー・クリアランスを拒否しても不利益はない?

 適性評価を巡っては、拒否した人に対し、不利益処分の対象になることを懸念する声がある。

 立民の山岸一生氏は特定秘密保護法の施行以降、適性評価の実施に同意しなかった公務員が67人に上ると指摘し、不利益な取り扱いを受けていないか問うた。内閣官房の担当者によると、追跡できた44人で処分を受けた例はなく、約半数が通常の人事により翌年度末までに異動、5人が退職したという。

 高市氏は「今回の法案では不利益取り扱い防止の措置をより徹底する。実効性を担保するため、今後閣議決定する運用基準で禁止行為を明示し、相談窓口を設けることも検討する」と説明した。(近藤統義)

 情報監視審査会 政府による特定秘密の恣意的な運用や適性評価の実施状況を監視するため、衆参両院に置かれた常設機関。各8人の議員で構成する。審査は非公開の秘密会形式で行い、内容を漏らした議員は懲罰の対象となる。審査結果に関する報告書を毎年1回、両院の議長に提出する。特定秘密の提示も要求できるが、政府は安全保障上の理由などで拒否することが可能なため、限界が指摘されている。

国会によるチェックの仕組みを野党が要求 経済安保情報保護法案 高市早苗担当相「不都合はない」

2024年3月28日 06時00分