今回の法案では「サイバー」「規制制度」「調査・分析・研究開発」「国際協力」の4分野で、漏えいすると安全保障に「支障」の恐れがある情報を「重要経済安保情報」に新たに指定。特定秘密と同じように適性評価を実施するが、対象は防衛産業以外の幅広い民間事業者や大学を含む研究者などになる。漏えい時の罰則は、最長5年の拘禁刑とする。政府・与党は今国会での成立を目指す。
◆どういう情報を想定?「まともな回答はなかった」
特定秘密保護法は、特定秘密の定義が曖昧で国民の知る権利を侵害しかねないと批判されてきた。重要経済安保情報も同様に定義が曖昧になることが懸念される。7日の自民党会合の出席者は「政府にどういう情報を想定しているのか聞いたが、まともな回答はなかった」と語った。
適性評価のための身辺調査は本人の同意を得た上で行うが、飲酒や経済状況、家族や同居人の国籍なども調べられる可能性があり、プライバシー侵害につながりかねない。また、共同研究に参画したい企業や研究機関に所属する人にとって、適性評価が事実上の強制になる恐れもある。調査を拒否したり、不適格と認定された研究者らがその後、不利な扱いを被る恐れも否定できない。
東北大の井原聡名誉教授(科学史)は「特定秘密とは比べものにならないほど指定情報が増える。適性評価を受ける民間人も増える」と指摘。軍事転用可能な技術開発をする研究者や政府の仕事を受注したいベンチャー企業などを念頭に「運用次第では企業秘密を政府に吸い上げられる危険性もあり、企業の国家統制の入り口になりかねない。この制度の狙いは軍拡政策を支える産業づくりにある」と懸念を示した。