TEAM NACS『Paramushir』(2018/4/1於イオンシネマ松本)

2月の名古屋公演のチケットを取ってもらっていたのだけど、インフルエンザに罹って出かけられず涙をのんだ。
で、行けないとなるとどうしても観たくなるというもので、病床の中、千秋楽パブリックビューイングのチケットを申し込み、春を待つことしばし。

タイトルはロシア語で「パラムシル」と読む。現在ロシア領である、千島列島北部の島。日本の一部だったころは幌筵島と表記され、作中でも日本兵たちは「ポロモシル」と言っていた。
1945年終戦直後の8月17日~21日、日本を守るため戦い、散った命。ここに、史実あり。

大戦直後の混乱に乗じて、旧ソ連軍が千島列島と北海道を手に入れようと攻め入った、その戦いがあったのが占守島と幌筵島。あのとき戦った兵士たちがいなければ、今の北海道はなかったかもしれない、その史実を伝えたい、という森崎リーダーのメッセージが込められた作品だった。
史実について詳しくはこのへん
http://murasaki-syoumeidan.com/syumusyu/

作中、兵士たちが戦いに赴く動機付けも「自分たちの愛する人が居る北海道・千島を守りたい」という対ヒト愛に裏打ちされた、THE・北海道愛。今となっては全国区で名が知れたNACSのメンバーではあるけれど、やはり彼らは北海道のひとたちなんだよな。北海道を代表する劇団として、10万人以上の人たちに教科書に載っていない史実を伝えた。
兵士それぞれのこれまでの人生が見えたし、戦争がなければ生きていたはずの別の人生が見えた。40を越え、それぞれが家庭を持った彼らだから演れた、今のNACSの芝居。アンサンブルの力を借りながらも、愛にあふれていて、真っ直ぐなメッセージがあった。

くーーっ、、もうね、やっぱりね、かっこいいんだわ。参りました。

安田さんの怪演ぶりはいつにも増して凄まじかった。彼の場合、台詞とか言葉と言うより、祈りとか魂の咆哮といったほうがいいかもしれないし、それを引き出しているのは森崎リーダーの演出なのだと思う。あれだけ凄まじい芝居しておいて、カーテンコールではシモネタで〆る。安田さんがあの振り幅を出せるのは、TEAMNACSの一員であることにリラックスして居られるからなのでしょう。

初のパブリックビューイングは、想像以上に引きが少なく、台詞を語る登場人物のアップが多かった。そのためにはカメラ割りなど準備しつくされていて、画像も音声も損なわず、イマドキのライブ配信の技術に驚いた。これは確かにひとつの演劇の鑑賞の仕方だと思う。反面、やっぱりこの目で直に見たい、拍手を届けたい、と思った。そうしてから、もう一度映像を通じ、自分のお気に入りの人物に焦点を当てて鑑賞するなどできたら良いだろうなぁと。

史実を扱うために脚本は外部委託で、でも演出は森崎リーダー自身で熱く。
森崎さんはこれを「新しいチャレンジ」と言っていたので、これからもいろんな新しい舞台を見せてもらえると思う。
次回作、楽しみにしています。