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日本的共創マネジメント066:「サムライPM」〜武道と士道の系譜 (武田信玄)~

武道と士道の系譜 (その2)

2.武道としての武士道
【余話 ①】 武田信玄「名言」
 武田信玄の言葉として、多くの「名言」が残されています。その中から、P2M(プログラム & プロジェクトマネジメント)にも関連しそうなものを掲げると、下記のようなものがあります。

・ 「風林火山」
 「疾如風、徐如林、侵掠如火、不動如山」の句は、『孫子』軍争篇第七で、軍隊の進退についての文章を、部分的に引用したものです。すなわち、「故其疾如風、其徐如林、侵掠如火、難知如陰、不動如山、動如雷霆。(故に其の疾きこと風の如く、其の徐(しず)かなること林の如く、侵掠(しんりゃく)すること火の如く、知りがたきこと陰の如く、動かざること山の如く、動くこと雷霆(らいてい)の如し)」からの引用です。

風林火山

移動(進軍)するときは風のように速く、静止(待つ)するときは林のように静かに、攻撃するときは火のように激しく、居座る(守る)ときは山のように悠然と、つまり、戦況に応じて「静」と「動」を的確に使い分けるという意ですが、「風林火山」という言葉は後代の創作のようです。
何故「孫子」からの引用かについては、「自分たちは孫子を知っているということを誇示し、敵を恐れさせるために孫子の旗を作ったのだろう」という説もあります。が、定かではありません。

・ 「人は城、人は石垣、人は堀、情けは味方、仇は敵なり」
 この言葉は、『甲陽軍鑑』品第三十九に「信玄公の御歌」として記されているものです。「人材こそが強固な守りになる、情けは人の心をつなぐ事が出来る、しかし仇が多ければ結局は国を滅ぼす事になる」の意で、人の力がないと城があっても役に立たない。信頼できる「人」の集まりは 強固な「城」に匹敵すると考えていたようです。極めて伝統的、日本的、家族的な集団主義を端的に表現したものだと思います。

・ 「甘柿も渋柿も、ともに役立てよ」
 信玄は大将(プログラムマネジャー)として成功する条件として、「人材を見分ける能力」をあげています。渋柿は干せば干し柿として甘くなる。自国の弱みや嫌な部下も使い方によっては良くも悪くもなる。人はその性質に沿って使うことが大事であるという趣旨です。

・ 「我、人を使うにあらず。その業を使うにあり」
 そして「(自分は)決して人をつかうのではない。わざ(意欲)を使うのである。(その人の持ち味である)能力を殺すことがないように人をつかってこそ、心地がよい」といっています。

・ 「信頼してこそ、人は尽くしてくれるもの」
 信玄は、自分から先に「人」を信じようと心がけたそうです。信頼し対話することで、家臣の士気も上がったに違いありません。部下からの信頼があれば、率先してリーダーのため、会社のために動いてくれます。企業にとっての財産はそこに集う一人一人です。

・ 「為せば成る、為さねば成らぬ、成る業を成らぬと捨つる人の儚さ」
 強い意志を持って取り組めば必ず実現できる。一方、取り組まなければ何事も実現できない。努力すればできることであっても、最初から無理だと諦めてしまうところに、人の弱さがある。

・ 「一生懸命だと知恵が出る、中途半端だと愚痴が出る、いい加減だと言い訳が出る」
 一生懸命か中途半端かいい加減な状態かを表す解かりやすく含蓄ある言葉だと思います。

・ 「百人のうち九十九人に誉めらるるは、善き者にあらず」
 一見、誰もが評価する人材こそ、信用してはならない、疑いの目を持たねばならない。同じような内容で孔子の「真の善人とは、十人のうち五人がけなし、五人がほめる人物」という名言もあります。責任が増えていくほど、他人から批判される覚悟がいるようです。

・ 「戦に勝つということは、五分を上とし、七分を中とし、十分を下とする」
 五分の勝ちであれば今後に対して励みの気持ちが生じ、七分の勝ちなら怠り心が生じ、十分つまり完璧に勝ってしまうと、敵を侮り驕(おご)りの気持ちが生まれる。

・ 「一人働きは無用である」
 独りよがりの行動をとれば、チームワークは乱れ、味方の勝利を失うことになる。

・ 「組織はまず管理者が自分を管理せよ」
 組織の長が自らを律することが大切であるという趣旨

・ 「能く、戦う者は死なず」
 この言葉の意味は、「敵味方の動静を良く見極めたうえで、自分の力を発揮する事だ」という意味。これは孫子の兵法の奥義であり、死地に入って活を得る境地を説いたもの。

・ 「自分のしたいことより、嫌なことを先にせよ」
 成功したければ、他人の嫌がることを進んでやることで、周りからの評価を高め、他人と差をつけることができる。この心構えさえあれば、道の途中で挫折したり、身を滅ぼしたりするようなことはないはずだ。

・ 「負けまじき軍に負け、亡ぶまじき家の亡ぶるを、人みな天命と言う。それがしに於いては天命とは思はず、みな仕様の悪しきが故と思うなり」
 人はよく、負けるはずのない戦に負けたり、あるいは滅びるはずのない家が亡びると、それは天の命だという。自分はそういう場合は天命ではなく、いままでのやり方が悪かったためと思っている。という意味。

・ 「晴信(信玄)が定めや法度以下において、違反しているようなことがあったなれば、身分の高い低いを問わず、目安(投書)をもって申すべし。時と場合によって自らその覚悟をする」
 法を家臣や領民だけに押し付けるのではなく、国主である自分もまた、その束縛を受けることを、明文化して世間に告知した。

・ 「老人には経験という宝物がある」
 「老人には皺と皺の隙間に経験という大切な宝物が潜んでいる。どうかその宝物を、私のような後に続く世代に役立てていただきたい」と、信玄はわざわざ隠居した武将に会いにいって、経験談を聞き全て書き留めたといいます。経験談にはいろいろな良いことがあります。例えば、
  物事の本質が理解しやすくなる。
  根本的で大切なことがわかる。
  実践主義の具体的な話がきける。
  昔と変わらず今も習慣として残っているものを教えてくれる。
など、自分が経験して覚える時間を大幅に短縮できます。長年の経験で身に着けた知恵を持っていますので、次の時代に引き継がれないことはもったいないことです。

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