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日本的共創マネジメント032:「マイプログラム」~自己革新のシナリオ(No.1)~

「マイプログラム」~自己革新のシナリオ(No.1)~:

 
 私事で恐縮ですが、40歳になる直前に、「自己革新のシナリオ」というものをまとめたことがあります。当時担当していたプロジェクトの一環として、私的にまとめたものですが、これがその後の人生に少なからず影響を与えたように思います。
 まとめるに際しては、結構時間を掛け、ゼロベースで振り返り、真剣に記述した記憶があります。今読み返してみても、左程陳腐化した印象はありません。その後、必ずしもこのシナリオ通りに推移した訳ではありませんが、悩んだとき、迷ったときには、常に「道標(みちしるべ)」として私自身を導いてくれたように思います。当時は、P3M(Profiling, Program and Project Management)もプロファイリングという概念も存在していなかった訳ですが、今になって思えば、これは私なりの「マイプログラム」のプロファイリングであったと思います。

 P3Mの導入に際して、プログラムとりわけプロファイリングが理解しづらいという声が多く寄せられます。そのような方には、先ず自分自身の「マイプログラム」をプロファイリングし、見える形で記述してみることをお勧めしています。自らの方向付けにもなりますし、プロファイリングの具体的な実践ともなります。体験したことは何よりも強い説得力を持ちます。それにより、P3Mをもっと身近に感じてもらえるはずです。

「5年後の設計を考える」~自己革新のシナリオ~
1989年2月8日

 私は現在、コーポレートプロジェクトである設計改革プロジェクトに籍を置いている。設計改革プロジェクトへのミッションは、厳しい環境変化に即応できる開発・設計体質の確立を狙って、「設計効率2倍」「世界一流の設計品質」を旗印に事業のリストラクチャリングを断行することである。
プロジェクトの諮問機関である「5年後の設計を考える分科会」は、先に「ネットワーク」というコンセプトに基づき、インフラの面についての設計環境のあるべき姿の答申を行った。(第1次「答申書」)
しかし、これに対応するマネジメントに関しては、未だ充分に議論されたとはいえない。このシナリオは「自己革新」という観点から、この面での補強を試みる私的答申である。

(本文)
1.社会的背景
 21世紀に向けて、先の読みづらい状況にある。例えば、急激な円高と共に、ハイテク化、ソフト化、ネットワーク化が進行し、産業の多様化、多角化、業際化、グローバル化で業種の境はなくなりつつある。一方、高齢化社会の到来がじわじわと確実に押し寄せ、社員の高齢化で中高年労働者(45~64歳)の割合が、社員全体の4割近くを占めるようになっている。国家レベルでも、60歳で辞めた人に年金を支給していたら、国の経済は破綻するということから、年金支給年齢を65歳あるいは70歳へ引き上げようという議論も出始めた。
 このような状況下で生き残るためには、企業レベルでも個人レベルでも、戦略的思考が求められ、あらゆる業種で環境に適合する為の業態の変革が進められている。つまり、「変化を取り込む」為に、インフラの面からと、マネジメントの面から自己変革することが迫られているのである。
コンピューター技術をベースにした情報技術の発達は、ネットワーク社会という情報インフラを現実のものとした。しかし、「ネットワーク」という概念は基本的には、従来の「ハイアラキー型マネジメント」とは相容れ難い概念であり、この点にこの時代の改革の葛藤と困難さがある。恐竜と化した大企業は21世紀も生き残れるか、という議論が現実味をおびてきた訳である。つまり、ハイアラキー型組織として巨大化した大企業の中にネットワークというインフラのみでなく、それを実体あるものにするマネジメント(ネットワーク型マネジメント)まで取り込み、定着させうるかどうかが問われているのである。そして、これを止揚し解決しえる企業のみが、21世紀型企業としての資格を得ることになるのであろう・・・。

2.「情報資源」と「人的資源」、それをつなぐ「ネットワーク」
 急激な環境変化は、職場のいたるところで「従来のやり方」の限界を露呈しつつあるが、それに「代わる姿」というものはまだ見えていない。唯「情報資源」、「人的資源」、それをつなぐ「ネットワーク」がキーワードとして浮かび上がっている。
情報資源というのは、インフォメーションリソースとして、情報を資源として捉えることである。そのためには、コンピューターリテラシーとか情報リテラシーといった情報武装能力(インフォメーションパワー)を高め、戦略的情報システムなど、コンピューターの力を有効に使っていくことが不可欠となりつつある。
それと共に、ネットワークの中で、より立体的でオープンなコミュニケーションが可能になるので、組織の情報を共有し、その中で上と下の円滑なコミュニケーション、意思伝達を促進していく風土づくりが重要になってきた。
また、より現実的な問題としては、確実に不足するソフトウエア技術者(SE)をどう確保するかということもクローズアップされている。
 人的資源というのは、従来のマンパワー(労働者)という捉え方から、人材は貴重なリソースであり、それをうまく開発していかなければ、企業の生き残り戦略に十分対応できないという考え方で、「人的資源の開発(HRD:Human Resource Development)」を積極的におこなっていこうというものである。
情報を上手に活用することで「差別化」を図っていくのは、結局、人間の問題であるから、マンパワーを知的労働者として再育成していく課題が、極めて深刻な様相を示してきているというのは、ある意味では当然な帰結ともいえる。
これに社員の高齢化に伴い、中高年労働者にも知的労働者として、第一線で機能してもらう以外にないことも考え合わせると、「マネジメントの再構築」が最重要テーマに掲げられるのも頷けることだ。

3.知的労働者のウェイト増大
 以上の状況から、情報を操作する知的労働者のウェイトがますます増大してきている。ここでいう知的労働者とは、所謂情報処理技術者、各種のエンジニア、研究開発者、マーケティング要員などセールスエンジニア、経営企画スタッフ等を指すが、要するに膨大な情報、データベースの中から、自分の意思決定、判断、問題解決に必要な情報を選択する能力、それを処理加工する能力、加工したものを自分の意思決定、判断、問題解決に適切有効に活用する能力、処理加工をして付加価値がついた情報を、自分だけの仕事に使うのではなく、ネットワークを通じて、必要な相手に伝達する能力等を身に付けた人材のことである。
このような知的労働者のウェイトが高まるにつれ、価値観にも従来とは異なる変化が表れている。それは創造的でありたい、あるいは想像力を発揮する場を得たいということであり、また厳格に管理されコントロールされることをきらい、自律性や自主性を強く求める傾向であり、新しいことを学びたがる、自己実現を図りたがる傾向として表れている。このようなことにも組織として対応していかなければならない状況になってきた。

4.これからの人材像
 人的資源の開発に於いて、これからの人材像として期待されるのは、経営的発想を持ち、創造性開発力に富み、コミュニケーション能力を武器に、チームプレイを推進し、ニーズを感知できる人材ということになる。そのためのスキルとしては、システムズアプローチ能力、システムズエンジニアリング能力、プロジェクトマネジメント能力、等を身に付ける必要が出てきた。
また業務がネットワークの中で行われるようになるにつれ、ますます「人的なつながり」が重要なファクターとして浮上し、リーダーシップや指導力といった「対人能力」というものもクローズアップされてきた。
他にも、ユーザーの抱えている問題を解決してやるという発想での顧客志向(カスタマーサティスファクション)及びニーズへの感知力が求められ、また当たり前のことができない人材が増えたということから当たり前のことがチャンとできる能力とかの訓練も必要になってきた。企業が躾の肩代わりからやらなければならない状況になってきたという訳だ。

5.自己革新のシナリオ
 5年後の具体的な職種設定までは困難であるが、自己革新の方向を「ネットワーク時代のビジネスプランナー」を目指すというところにおき、それを実現する手段として、「WBN (Work Breakdown Network)手法」の開発取得を中心とすることにした。

自己革新のシナリオ

     (注)WBNとは、WBS/PERTの概念より、階層性を排し、ネット
        ワーク概念を取り込み発展させた、ネットワーク型プロジ
        ェクトマネジメント手法である。物事の本質は階層制では
        なくネットワークであることから、ネットワーク組織に適
        合する概念と期待している。

 ビジネスプランニングは基本的には「情報への関わり方」如何である。これを変化の中で的確に捉えるためには、固定的なものではなく動的にとらえる必要がある。
この場合、構造化とネットワーク化で物事を認識できるWBN手法は、業務なり情報の把握に於いて威力を発揮し、マネジメントツールとしてもコミュニケーションツールとしても不可欠なものとなるであろう。
 その他、「情報の関わり方」ということにかんしては、情報を上手く活用すること、絶えず新しいものの見方をすること、掘り下げて考えること、知恵を引っ張り出すこと、全体最適化を図ること、システム化思考をすること、つなぎ合わせの技術を身に付けること、問題解決につなげること、変化対応力をつけること、といったサイクルを念頭において自己啓発に努める。

6.組織への期待
 今後10年間は、「自己革新」も含めて「マネジメントの革新」が最大のテーマになると思われるので、組織として総合的なHRD(Human Resource Development)のプログラムを開発する必要がある。そこでのテーマは、コンピューターリテラシーから創造性開発まで知的創造経営に必要なあらゆる人的資源の開発に関するものが対象になる。
職種転換に迫られるケースも増えるが、むしろ職種転換は新しい自己の発見であったと歓迎される位の内容のあるサポートシステムを開発すべきである。時代はマルチキャリア化することで、新たな創造性を求めているのだから、それをビジネスにする位の取組みを期待したい。
また事業部運営では、極力フラットな小事業部制中心の機能別マネジメントを実現する体制としての「P3M(Project, Product, and Process Management)」と、各機能を有機的に最適化を求めてつなぐ手法としての「WBN(Work Breakdown Network)」を開発導入し、スタンダードとして定着させる必要があると考える。
           (2011年11月「PMAJオンラインジャーナル」投稿)

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