日本的共創マネジメント013:「PMの日本化」~文化と文明~
「PMの日本化」~文化と文明~:
文化と文明という言葉があります。そして「企業文化」「組織文化」という言い方をしますが、「企業文明」「組織文明」という言い方はしません。この違いは何でしょうか?
文化(Culture)とは:
①原義は「都市(城)を築く」という意味
②人類が生みだしたもの全て、特に都市が生みだしたもの
③衣食住をはじめ技術・学問・芸術・道徳・宗教・政治など生活様式一般。
④人間の精神的生活にかかわるもの、思想・道徳・芸術などの精神的所産
⑤どちらかと言えば、無形、精神的なもので、ソフトウエア側を指す
文明(civilization)とは:
①原義は「都市化」という意味
②技術の発展のこと、特に建築の技術が象徴的である
③技術の向上によってもたらされた「道具」や「機械」「インフラ」等
④文化の中で優越した文化が他の文化にまで影響を与えるようになったもの
⑤どちらかと言えば、有形、物質的なもので、ハードウエア側を指す
文化とは、地域で暮らす人々の間で生まれた、土地特有の生活様式(生活の仕方や行動の仕方)のことであり、それには、生き方、習慣、技術、科学、思想、宗教、芸術、法律、政治制度その他であり、料理も、育児も、教育も、遊戯も、排泄も、そのあり方のすべてを含みます。従って、地域に根差した民族のアイデンティティにかかわる、内面的なものであり、特定の集団においてのみ通用する特殊なものです。不合理で、普遍性を持たない、民族のソフトの遺伝子というべきものです。(注:中国語の「文化」とは「文徳で民を教化する」という意味で、Cultureとは異なる)
一方文明とは、元々固有の文化であったものが、他の文化に浸透したものです。例えば「技術」です。「鉄」を利用する生産技術・加工技術・利用技術は文化の違いを超えて普及し、鉄文明を形成しました。この「技術」には、統治のための制度やその運用方法(例えば律令制や資本主義のシステムetc)なども含んでいます。その時代の支配的な文化のことで、文化的なアイデンティティの最上位の概念と言えます。
先ず文化があり、その中から突出した要素(例えば、技術や制度等)が、文化的な枠組みを超えて、他の文化に普及したものが文明です。 別な言い方をすれば、ローカルなものが文化で、その中でグローバル化したものが文明と言えると思います。その意味で、現代はアメリカ文明であり、資本主義文明という表現は許されるでしょう。翻って日本は、日本文明ではなく日本文化でしょう。同様に企業も組織もローカルに閉じている範囲では、「企業文化」「組織文化」という表現でよいことになります。この観点から、日本企業のマネジメントと欧米企業のそれとを比較してみました。
日本企業は「文化」指向であり、欧米企業は「文明」指向である、それも意図した文明指向であるということが分かります。
今後、「文化」と「文明」の棲み分けはどのように推移していくのでしょうか? 一極集中の文明に収斂するのか、多様な文化に基づく多極分散になるのか? それとも、文明と文化併存の統合分散になるのか? 恐らく、第3の道だと思いますが、その場合はそのバランスが重要だと思います。何を残し、何を捨てるか、そして何を文明として発信するか。プロダクトか、サービスか、それともライフスタイルか、はたまたマネジメントか・・・?
「文化」と「文明」いずれが優位かということではなく、そのバランスは「PMの日本化」を議論する上で、押さえておくべきポイントだと考えています。 (2010年2月「PMAJオンラインジャーナル」投稿)