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日本的共創マネジメント053:「PMの日本化」~おもてなし~

おもてなし

1.おもてなしとは
日本には「おもてなしの文化」があると言われます。「おもてなし」とは、 “ treatment, hospitality, reception, entertainment, service”という英訳があるように、「心から歓迎する気持ちを込めて、相手を丁重に扱う意。客を歓迎する態度自体をいう」という意味があります。
ネットで「おもてなし」を検索すると、下記のような情報に出合います。
「おもてなし」とは、「もてなし」に丁寧語「お」を付けた言葉である。「もてなし」の語源は「モノを持って成し遂げる」という意味です。お客様に応対する扱い、待遇とも言われます。「おもてなし」のもう一つの語源は「表裏なし」です。つまり表裏のない「心」でお客様をお迎えするという意味になります。
「おもてなし」には、目に見える「モノ」と、目に見えない「コト」があると言われます。この「モノ」と「コト」を、茶道の世界で例えると「お客様」をおもてなしする際に、季節感のある生花、お客様に合わせた掛け軸、絵、茶器、匂い(御香)など具体的に身体に感じ、目に見えるものを「モノ」と言い、瞬時に消えてしまう言葉、表情、仕草など、目に見えない心を「コト」と言います。日本の懐石料理での「モノ」には、上記以外に、飲み物、料理やお菓子(デザート)が加えられ、接客時にもお客様の五感を取り巻く全ての「モノ」の知識(グラス、器、料理内容、素材、デザート等々) と共に、お客様の状態を素早く察知し、手配り、身配りなどの動作で応える気遣い、お料理を楽しんで頂く会話や日本文化のわびさびの余韻を与えるなど多々あります。要約すれば「三味一体」でお客様の五感と心に満足、感動と余韻を与えることが「おもてなし」と言えます。「三味一体」とは人の味、料理の味、店の味ということです。このように、おもてなしとは「思い遣り」を出来る限りの「モノ」と「コト」で、表裏の無い心で誠実に伝えることです。これは茶道の【一期一会】にも通じます。

2.おもてなしとサービス
また、「おもてなし」と「サービス」には下記のような違いがあると言われます。「サービス」の語源はラテン語の servitorsであり、servitorsには「奴隷」というニュアンスが含まれ、提供する側とされる側に主従関係が発生します。お客様が上、スタッフ側が下と上下関係がはっきりするものと言われています。
ホテルで提供されるサービスとは、お客様がある一定の対応を受ける(=目的)のに主従関係を発生させるために、サービスチャージやチップが存在すると考えることができます。対して、「おもてなし(ホスピタリティ)」の語源はラテン語のhopesであり、ホスピタリティは病院(Hospital)と語源を共にし、かつて交通機関や宿が整備されていない時代、危険と隣り合わせに巡礼する異邦人を歓待することを意味します。家族と接するように、表裏の無い心で見返りを求めない対応と言われています。旅館で提供されるおもてなしとは、自分の家に訪ねてくる人(=お客様)をお迎え・お世話することなので、当然対価や見返りを求めない自然発生的な対応と認識することができます。

3.事例
石川県の和倉温泉に「加賀屋」という旅館があります。創業は1906年。「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」で長らく1位の座を獲得しており、日本を代表する旅館と言っても過言ではありません。なぜ加賀屋はこれ程の評価を受けているのでしょうか? 最初に言えるのは先代の女将、小田孝さんの信条から生まれた「おもてなし」でしょう。加賀屋では「おもてなし」を「宿泊客が求めていることを、求められる前に提供すること」と定義しています。つまりこれは、「顧客ニーズに先回りして応える」という事になります。サービスの基本としてどこに集中するかを明確に定めているのです。
そこで、加賀屋ではこの「おもてなし」のサービスを実現する為にハード・ソフト両面で様々な工夫がなされています。客室係に裁量を与えるだけでなく、彼女たちが接客に十分な時間を割けるように食事の「自動搬送システム」を構築、さらには精神的負担を軽減するために企業内保育園「カンガルーハウス」の設置・・・などなど。
またきめ細やかなサービスを実現するために担当部署間で調整が発生する際は、客室係が自ら行なうのではなくフロント(客室センター)が調整を代行します。これも客室係が接客に集中できる環境を作るために行なっていることで、すべての仕組みが最前線に立つ客室係を支援するために組み上がっているのです。旅館において「おもてなし」をもっとも表現できる機会を持っているのは、他ならぬ客室係です。「おもてなし」=「宿泊客が求めている事をいかに早く察知するか」ですので、そのためには少しでも長く宿泊客のそばにいる時間を作ることが必要であるとしてこのようなシステムが構築されているのです。
「おもてなし」を実現するために意識改革や情報共有は重要です。ただそれよりも最初に決めるべきは、自分たちにとっての「おもてなし」の定義です。ここが曖昧なまま、「お客さんのためにベストを尽くしましょう」と言っても現場は動きません。そしてそれをサポートする仕組み。システムに加えて、組織の体制づくりが非常に重要になってきます。

『人を喜ばせる事は嬉しいわけだから、みんなで「喜ばせっこ」をすれば世の中うまくいくはずなんだけど・・・。でもそうじゃない人がいるっていうのが不思議なんだよねぇ』(by やなせたかし)
あなたの回りは、「喜ばせっこ」中心ですか、「いじめっこ」中心ですか・・・。

                                         (2013年7月「PMAJオンラインジャーナル」寄稿)

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