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日本的共創マネジメント029:「マイプログラム」~仕事のプロを目指す~

「マイプログラム」~仕事のプロを目指す~:


仕事のプロを目指す
Work is ART (Activity Reviewing Technique)

1.仕事のプロとは
プロ(PRO)とアマ(AMA)の違いとは何でしょうか?
辞書によると、PRO、PROFESS、PROFESSION、PROFESSIONALのように変化し、PROFESSという動詞には「~の知識(技能)があると主張する」という意味があります。
人前で「自分は~で飯を食っているぞ!」と宣言できるのがプロということになります。言い換えると「行為(Activity)」の代償として、収入を得ることができる人です。「XX会社XX部門のXXです」と、所属先を名乗って自己紹介するのではなく、「XXが専門のXXです。今、XX会社に勤務しています」とやれる人が本当のプロなのでしょう。
これからは自律したプロ社員が求められる時代です。そのためには、代償を得るに相応しい「価値ある行為(Value Added Activity)」を生み出すスキルを身に付けなければなりません。特に若い方々に、その道のりの一端をご紹介したいと思います。

2.QUICKNOTE
以前「働き方改革(ホワイトカラー生産性向上)」プロジェクトを担当していた頃、図のようなQUICKNOTEといったものを社内部門に導入したことを思い出します。

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このノートは、IN/OUTの2つの円からなり、その間にActivityを記入する欄があるのみの、非常にシンプルなものです。毎朝仕事を開始する前に、やるべきことをすべて書き出します。それらが必要で価値を生み出すアクティビティなのか、優先順位はどうなのか等をレビューし、素早く実行するための道具です。2つの「IN」「OUT」の○には、アクティビティの開始日と完了予定日を記入し、日付印を押すことで完了日も分かるようになっています。

3.ART(Activity Reviewing Technique)
ART(Activity Reviewing Technique)として、このQUICKNOTEを使いますが、仕事の成果を素早く出すためには、それぞれの「行為(Activity)」を下記の事柄に照らして、常に見直すこと(Reviewing)がキーとなります。

・Plan Do See:計画、実行、評価
・3S:素早く、正確、親切
・5S:整理、整頓、清潔、清掃、躾
・ほうれんそう:報告、連絡、相談
・3GEN:ムリ、ムダ、ムラ
・5W1H:誰が、何を、いつ、どこで、なぜ、どのように

その「行為(Activity)」は、果たして代償を得るに相応しい「価値ある行為(Value Added Activity)」なのかどうかを、自問自答し、個人の意識・行動の変革を促す訳です。詰まりは、セルフマネジメントのためのツールです。

多くの場合、問題のある組織・個人というものは「遅い、不正確、不親切」という傾向を持ちます。これを「3S(素早く、正確、親切)」に変えていくためにQUIKNOTEを使います。特に、この中で「素早く」という日本語には、「スピード(Speed)+柔軟性(Flexibility)+機敏さ(Agility)」という意味合いが含まれていますので、そのような「素早い」組織文化を醸成していこうという訳です。

3.1 仕事の生まれ方
我々の仕事の生まれ方は、下記のように表わすことができます。
①目的・目標を定める(Targeting) 
     →P3M(Profiling,Program & Project Management)
②仕事を扱える大きさに分ける(Breakdown) 
     →WBS(Work Breakdown Structure)
③自分の仕事としてアクティビティ化する(Writing)
     →QUICKNOTEに書き出す
④仕事の内容を明確にする(Defining)
     →5W1Hを明確にする
⑤調整する(Redefining)→書き直す
⑥実行する(Doing)→集中する
⑦結果を評価する(reviewing)→味わう

このように、最もプリミティブレベルでの価値要素は「行為(Activity)」であることが分かります。従って、代償を得るに相応しい価値を生み出すには、価値増幅の瞬間としての「行為(Activity)」に注目し続ける必要がある訳です。

一方、見える管理とは、
   ・現在の状況がわかり、
   ・問題点がわかり、
   ・対策を打っていることがわかり、
   ・行動計画(実行)に反映されていることがわかり、
   ・次のノウハウとして蓄積している、
という状態が維持されていることですが、QUICKNOTEに「行為(Activity)」を記録し続けることでそれは実現されます。

3.2 「行為(Activity)」分析の例
経験的に、一日の「行為(Activity)」数は概ね10~20個で、1カ月で200~300個程度になります。それをまとめて分析し、具体的に自分のやっていることが下記のどのエリアに集中するかを自己評価します。それによって、自分の仕事が価値を生んでいるか否かを客観的な数字として把握できます。

「仕事のプロ」を目指すには、「D」の比率を高めていくしかありません。また、「行為(Activity)」には下記のような様々なレベルがありますので、その観点から評価し、「行為(Activity)」のレベルアップを図ることも「仕事のプロ」につながります。

   ・レベル-①:機械的な反復作業 
        →例えば、データを入力する等
   ・レベル-②:日常的な約束事に基づく作業 
        →例えば、電話等の問い合わせに応える等
   ・レベル-③:How(どのように)に工夫を加える
        →3S(素早さ、正確、親切)という視点から、
         どのようにやるか工夫する
   ・レベル-④:What(何を)を見直す
        →3S(素早さ、正確、親切)という視点から、
         何をやり、何をやらないかを見直す
   ・レベル-⑤:Why(何故)を問い直す
        →3S(素早さ、正確、親切)という視点から、
         何故行うかの理由を問い直す

4.QUICKNOTEの意義
ART(Activity Reviewing Technique)のツールとしてのQUICKNOTEは、

   ・誰にでも簡単に理解できる、
   ・すぐに導入できる、
   ・組織の文化に合うやり方で、
   ・多くの人に影響を与えることができる。

という特長を持ちます。それにより、
下記のような効果を生み出すことが期待できます。

   ①書き出すことで、自分のやるべき仕事が明確になります
   ②指示・命令に対して、モレ・忘れがなくなります
   ③頭の中が整理され、スッキリして良く眠れます
   ④自然に3S(素早さ、正確、親切)が身に付きます
   ⑤3T(つまらない、疲れる、つらい)が、
        →New 3T(ターゲット、達成感、楽しい)に変わります
   ⑥コミュニケーションが活発になります
   ⑦自然に企画力や創造性が身に付きます
   ⑧業務報告等の基礎データとして使えます
   ⑨プロセスやサービスのリ・デザイン(Re-Design)に使えます

導入に先立っての「動機づけのセミナー」では、
下記のような反応が寄せられました。

   ・どうせ書かないよ
   ・とんでもない、何でも「クイック・クイック」は反対だ
   ・私はこんな方法(ポストイット等)でやっているよ
   ・紙がもったいないし、コストもかかるから
   ・強制するのではなく、自主的にやるべき・・・

一方、導入後の評価では、
下記のような反応が寄せられました。

   ・もやもやしていた個人レベルの仕事の進め方が具体的に提案され、
    何かを掴んだという気持ちです
   ・個人が自分の仕事を進めていく上で、
    もれのないように自分を正しく見つめて行くことができる
   ・上司と部下のコミュニケーションに役立つと思います
   ・アクティビティの簡単な整理と実行による業務改善、
    そこから生まれる「素早さ」を部内に広め、
    カルチャーとして醸成できるようにしていきます
   ・業務報告にQUICKNOTEを導入して、事実の報告をして
    意見と予定を追加するような方法が良いのではないか
   ・導入には、動機づけが必要だ・・・

5.まとめ
随分昔の、しかもローテクの手法をご紹介しましたが、その本質は今も変わらないと思います。プロファイリング&プログラム&プロジェクト(P3M)で正しい構想計画・行動計画を描くことが重要ですが、それが末端での正しい「行為(Activity)」まで整合性を持ってリンクされないことには、正しい価値を生むことができません。

また自分を変えていくためには、先ず、自分を知るところからスタートしなければなりません。自分とは何者かを知りたければ、自分に問うしかないのです。日々の具体的な「行為(Activity)」を書き出すことで、ミラー効果として、それが可能になります。それが「仕事のプロ」への第一歩であり、その継続の中に未来があるのです。

         思い付くことがCreativityであり、
      思い付いた事を実行するのがInnovationである 
             (P.F.Drucker)

                                       (2011年10月「PMAJオンラインジャーナル」投稿)

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