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今年も私はマリンに帰って来た。

春が来た。昼間は暑い。
今日のような天気なら昼間の海風は最高だ。
試合も今日のような試合ならビールも進む。心地よく酔える。

しかし世の中そんな美味い話ばかりではない。
いや、美味い話をこの空間に期待するとたいがい裏切られる。
冷たい雨、打てない打線、ここぞとばかりに打たれる投手。

強風に煽られながら、やけっぱちで飲むビールくらいまずいものはない。
それでも飲む。
なぜ交通費を割いてまでここに座っているのかを考えないために飲む。

もしかしたら、逆転するかもしれない。
謎の力が働くかもしれない。

決して安くはない交通費とチケット代と、猫と遊ぶはずの数時間を費やしてでもマリンにいる選択をしたのである。
途中で帰ったことを後悔したくないために「試合終了でございます」と谷保さんの声がするまでマリンにとどまる。

今年も海浜幕張駅で帰りの電車を待つ半年が始まった。
上りホームから見える、ツインタワーもグリーンホテルも変わらぬ姿のままである。

今年は何回、海浜幕張に帰って来れるだろう。
ホームで喜びを1人噛み締める時は何回あるだろうか。

そして、終電までには帰れるように試合を終わらせてください。お願いします何でもしますから。