彼女は未来人

「ごめんね、急に呼び出して
 でも、君にはちゃんとお別れを言っておきたくて」

お別れ?急に何を言い出すんですか、るる先輩

「ごめんなさい、でも私もう、ここには、いいえ、この時代にはいられないの」

一体どういう……

「私は今から400年後の未来から来たの」

未来?な、何を言ってるんですか。あ、わかりましたよ、先輩のいつもの悪ふざけだ。僕のことをからかっているんでしょう?

「もうそろそろ迎えの時間が来る。そしたら君の中から私の記憶は消えてしまう」

そんな馬鹿な話があるはず……

「やっぱり、すぐには信じてもらえないか……」

僕をからかうのもいい加減にしてくださいよ!
冗談にも程度ってものが……

「迎えの時間になっちゃった」

何ですか、この光
まさか、先輩本当に未来から……

「やっと信じてもらえた?これで本当に君とはバイバイだね」

そんな……

「一緒に行った夏祭り覚えてる?あの時、君ったら綿飴を水洗いしちゃってさ。あはは」

「あれもこれもぜ〜んぶ大事な思い出なの。一緒に海に行った時、私が日焼け止めを塗ろうって言ったら、『どうせ流れるんで』の一点張りでさ。ウォータープルーフという概念を一切認めようとしなかったよね」

先輩……

「君のお母さんにはびっくりしちゃった。君のお母さん、家庭菜園でバナナ育ててるんだものね」

先輩、上から消えるんですか?
こういうのって普通は足元からとか、全体の濃度が低下するとか

「……」

口が早々に消えちゃったじゃないですか
もう消化試合じゃないですか

「……」

みじろぎ一つしないんですね
せめて身振り手振りできたら、って思いますけど
転送中はじっとしててくれみたいなことですか

「……」

待ち時間どうしたらいいんですか、僕
ていうかこんなプリンターの印刷みたいに上から直線的に消えてくんですね
足とかぽてって倒れちゃいそうですけど

「……」

あれ、僕はいったいここで何を……?
というかこの蚊柱みたいなのは?



使用した画像:https://www.pakutaso.com/photo/35357.html


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