美咲の脳内に恐ろしい想定が浮かぶ
「私が悪かった。二重の虹 山吹沙綾 コスプレ衣装何でもねーんだ。余計なこと言ったこと謝るから」「別に怒ってないって。それより説明が欲しいんだけど」「そろそろ帰らないとだから」「戸山さん待ってるって言ってたじゃん」六時間目の授業終わりに交わした会話から得た情報だ。お互い、いつもなら直ぐに帰ろうとするはずなのに席に座って動かなかった。美咲がそれを問えば、有咲は先生に呼び出された戸山香澄を待ってのことだと言った。有咲がそれを問えば、美咲は部長会議に参加している弦巻こころをまってのことだと言った。そして話は、美咲と美咲が待っているこころの交際についてになっている。有咲は諦めたようなため息を吐いて、改めて後ろの席の美咲に振り返って向き直る。「……説明も何も、そうだと思ってたから、きいただけだぞ」「思ってたって、なんで? ていうかいつから?」問答を重ねると、有咲は眉間に皺を寄せた。「なんで、は置いとくとして、いつからは……いつからだっけな。結構前からな気するけど」「結構前って……全然、あたし知らなかったんだけど」そんなふうに思われていたなんて、少なくとも当事者の美咲は露知らずといった具合だ。同じく当事者のこころもだろう。夜行性ハイズ 戸山香澄 コス衣装「私としてはなんで奥沢さん何も気づかなかったんだよ、って感じなんだけどな」「市ヶ谷さんがあたしとこころのこと、どう思ってるかなんて分かるわけないでしょ?」美咲がそう返すと、有咲は何やら言いづらそうな顔をした。それから「あー……そうだな」とやたらぎこちない返事をする。まさか━━━。美咲の脳内に恐ろしい想定が浮かぶ。「もしかして、結構噂になってたりする?」「…………」有咲は答えない。しかし、この場合の沈黙が肯定を意味することを、美咲は充分にわかっていた。美咲はため息をついて、ガックリ肩を落とす。「……広まってる、みたいだね」「…まあな」続けての質問は、出来れば知りたくない事だった。「……どれくらい?」「少なくとも、このクラスには満遍なく」美咲が二度目のため息をつく。面倒くさいことになってるな、という意味合いを孕んだため息。それから、恨めしい気持ちを含めて教室内を睥睨する。放課後、大半の生徒が部活か下校をしている時間であるため、この教室には美咲と有咲しかいなかった。だから、恨み言は有咲に言うしかない。「市ヶ谷さん、なんで違うよって言ってくれなかったの」「私も、普通に付き合ってると思ってたからだよ」当たり前だろ、みたいな顔で有咲は言う。そういえばそこの問題が片付いていなかったな、と美咲は思い出した。「そもそも、どうして『付き合ってる』なんて噂が立ったの?」先程、答えてもらえなかった問いを再度投げかける。
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