迷い込む

セカイへ繋がる曲を再生すると、辿り着いたのは見知らぬ路地裏だった。
こはね達がよく知るストリートのセカイも道を1本逸れると路地裏になるが、ゴミの一つも落ちていなかったり鮮やかなストリートアートが描かれていたり意外と綺麗だ。しかし今立っているこの場所は煙草の吸殻や割れたワインの瓶が散乱している。壁に落書きは無い。目の前の壁には扉が外されたらしき出入口があり、がらんどうな建物の中が見えた。

「何ここ…どうなってんの?」CHILDREN RECORD (チルドレンレコード) 白石杏 コスプレ衣装
「オレら『Ready Steady』を再生したはずだよな…?」
「見覚えのない場所だし、セカイなことには変わりないだろうが…」
「ねぇ、元の世界に帰れないよ…!」

こはねの発言に3人は各々のスマホを操作する。再生中の音楽はどこをタップしても止まらない。通信表示は圏外、音楽ファイルの詳細画面から移動もできなくなっている。冬弥が電源ボタンを押す。スリープモードにはなるものの、ロック画面から緊急連絡ボタンも消えていた。

「なにこれ…スマホ動かないし…!」
「曲は止められない、連絡を取ることもできない。スマホには頼れなさそうだ」
「じゃあ自力で出口を探すしかねぇな」

彰人は周囲をグルリと見回して小さく溜め息を吐いた。バーチャルシンガーが1人でもいれば心強いことだろうに。バーチャルシンガーでなくとも、ここの地理を分かっている人が来てくれればいいのだが。残念ながら人っ子一人見当たらない。

「とりあえず路地裏抜けるぞ」CHILDREN RECORD (チルドレンレコード) 東雲彰人 コスプレ衣装
「えっと、移動しちゃっていいのかな…?」
「じゃお前はずっとここにいんのか?」
「そ、それは…、」
「ちょっと! 不安だからってこはねに強く当たんないでくださーい」
「不安じゃねーし」

団体行動では、一人でも難色を示したなら全員が納得するよう話し合いが必要だ。こはね達は4人という少人数だが。今すぐにでも動き出そうとしていた彰人は壁に背をもたれ、こはねの話を聞く姿勢になる。

「一度動いちゃうと、ここに戻ってくるのは難しくなるよね。せめて最初にいた場所がわかるように目印とか付けたらどうかなって」
「目印ったって何すんだよ」
「うーん…帽子置いておこうかな?」
「私の髪飾りにしとく? たくさんあるし万が一持って帰れなくても大丈夫なやつ」
「白石のは小さすぎて目印にならないと思うが…」
「あっ、確かに」

目印にできるほどの大きさで、万が一持って帰れなくても構わないもの。パッと思い付くものがなく、こはねと杏は途方に暮れる。彰人はふと目の前の壁を見て、その下に落ちている石を見つけた。CHILDREN RECORD (チルドレンレコード) 青柳冬弥 コスプレ衣装

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