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手繰り寄せる地獄 | 舞台 憂国のモリアーティ感想

1月16日 19時 
EX THEATER ROPPONGI
脚本・演出 西田大輔

ミュージカルに続き舞台も見てきました。
ミュージカルが面白くて流れで漫画を全巻揃えたので、今回はどの巻の話なのか幼馴染みに聞かなくても理解しました。笑

というか、ミュージカルとは上演する話をガラッと変えてきましたね。印象が大きく変わって面白いなと思いました。

最近、ストレートプレイもミュージカルもやるという作品が増えているんでしょうか?
でも色んなアプローチで作品観れるのは面白いですね。

そんなストレートプレイ版憂国のモリアーティ。
こないだデカダンの感想で書きましたが、私あんまり西田さんの脚演出が好きじゃないです。ただ、今回は予習もしっかりしてある状態だったので、話がわからないとなることもなく、主演の荒牧さんがおっしゃっていた「すごく画作りにこだわりがある」を実感して見ることができました。

最初のシーンで、ウィルが階段を上ってキメになるところ。
そこから物語が動くとか、要所要所にあるキメの部分がしっかりあって見応えがありました。キメをしっかり実感できる演出好きなので嬉しいです。

比較してどちらかを貶める意図は全くないのですが、ミュージカルとストレートプレイ版の印象が結構変わりました。
話が違うのももちろん要因ではあるんですが、心情に対して曲で盛り上がりを作っていくミュージカルに対して、心情よりも関係性やストーリーをしっかり見せてきた舞台版という印象がつよいです。
これ何が変わるかというと、ミュージカルの雰囲気は絶望の中にウィルだけが救世主に見えるようなピカレスクロマンって感じが強いんですが、今作はもう少し静かにそっと張り巡らされた糸を紡いでくような感じで、感情というよりは理性とか論理とかで考えさせるような感じです。脳の使ってる場所が違うイメージです。

お話としては共通だった最初の話。
ミュージカルでは労働階級の子供を亡くした夫妻の無念絶望憎しみに寄り添って、一筋の救いのような罪をウィルが示すという感じでしたが、今作では最後までウィルの手の内をあかさないような感じで、感情面より、推理小説を読んでいるかのような感覚でした。
ざっくりいうと感情面での起伏はあっさりしてるなって感じです。

でも最初の曲の始まりから、1話の話の流れで余計なことを考えずにウィルが行う「こと」に焦点が当たっていたので、後半のお話でキャラクターの動きがすごくわかりやすいなと思いました。

最初の登場のときに思ったんですが、やっぱスーツいいですね…!
スリーピースのスーツが好きなので、3兄弟の衣装がすごく好きです。あと金髪だけど布被っていない荒牧さんを観ました。なんか貴重なものを見た気分になりました。
ああいう髪型似合いますね…。

次のアヘンに狂った学生の話、この話ミュージカルではないんですよね。貴重なフレッドとモランの初登場に話ですね。フレッドは女装してるのかな?2回席かつオペラグラスを忘れてしまったので、細いとこまで見れてないのがちょっと悔しいです。

この話で階級社会のことを示すのがいいですね。
最初の貴族に虐げられるという目線ではなく、貴族とうまく付き合っているようにみえても埋められない溝がある感じ。
だからこそ、ウィルの貴族社会を壊したいというのに説得力が増しますね。

このお話の水没して亡くなるシーンの映像の使い方が綺麗なのと、装置の使い方が面白いなと思います。というか、パネルも階段もものすごく良く動きますね。
装置もたくさんで、これ動かしている人たちすごいなと感心です。あと映像演出も綺麗でした。曲がクラシックのような静かに荘厳な曲や、謎を煽るような曲だったので世界観への入り方が面白かったです。お洒落な感じで、いい意味で映画っぽいなと思いました。
私が観に行った時はまだまだ公演が始まったばかりの時で、たまに装置と照明、役者と音響が噛み合ってないところがあったんですが、あれだけ複雑に動いてるものは確かに難しいですよね。

あと、この話はモランがバスタオルで銃撃ってるのいいなって思いました。
そういえばモランはミュージカルでもストレートプレイでも「ゆうき」さんが演じるんですね。なんかそういうの面白いな。

ここらへんで過去に少し触れましたね。
舞台版わかりやすくウィルに焦点が当たっていたので、ルイスとウィル、アルバートの出会いまではなかったのですが、幼少ウィルが子供たちに貴族を殺せと教えてるシーンはゾクッとなりました。
笑顔で、無邪気に恐ろしいこと言ってるあのシーンがおそらくアルバートにとって、ウィルに手を取り貴族社会を壊す始まりでもあるんだろうなと思います。
あのシーン、シャーロック役のきたむーさんいましたよね。声がしました。可愛かった。

2幕になってアイリーンの話。
ここでシャーロックが出てきますね。ミュージカルでは豪華客船の話をしていたので、シャーロックが初めて出た話ではなくアイリーンの話でシャーロックを登場させて絡ませるのは結構思い切ったなと思いました。
ワトソンとの出会いや、お兄さんとの関係、そしてロンドンの名探偵としてウィルが目をつけたあとという軸なので、そこも見たかったなとちょっと思ったり…

ウィルとシャーロックが一緒に喋るシーンないんですよね。舞台版。
原作でも少ないですが、ウィルはシャーロックを気づいてるし、シャーロックはウィルが犯罪卿だとは思ってないけど、頭が切れるやつだと一目置いているという関係性の掛け合いが面白いので、正直会話をしっかり見せるのが醍醐味である舞台版に期待してました。
これはまた今度ですかね。楽しみにしてます。

アイリーンに振り回されるシャーロックの傍ら、スラム街の子供達を狩場で惨殺する貴族をフレッドが見つけて対処しにいく。
この話、ウィル、モラン、フレッド、ルイスそれぞれの思惑と関係性が観れるので楽しいです。

ウィルのモランへの信頼感や、モランとウィルのフレッドの優しさを大事にして欲しい気持ちとか、ルイスの決意とウィルのエゴとか。
血生臭い話ではあるんですが、それぞれがそれぞれの意思で成し遂げたいものとかが少し見えるので、ウィルの元に集まる彼らの内面が見れますね。

あと、このシーン殺陣があって楽しかった。
ウィルのステッキ振り回すの楽しいですね。荒牧さん剣舞が上手な方なので殺陣の心配ないので待ってましたって感じでした。
殺陣のことがよくわかっていない人の意見ですが、荒牧さんの殺陣の重心が結構高い位置にあるなってことが多くて(多分そう見せてるだけだと思うのですが)、レイピアとか持ってみて欲しいなと思っていたので、今回の殺陣は楽しかったです。

あと、この話といえばルイスのもう置いていかないで欲しいという願いと、綺麗なままでいて欲しいウィルがお互いの思いを話して共に歩くことを改めて決意するシーンですね。
私ウィルの1番最初の味方はルイスだろうなって思っているので、ウィルの大切に汚したくないという気持ちもわかるし、仲間が増えるにつれ兄との距離が離れてしまったと感じるルイスの気持ちもわかるのでどういう選択をしたらいいのか、すごく悩んでしまうなと思いました。
そんな彼らが選んだ選択が、望むべき結末に行けるものだろいいなと思います。

その後の、ルイスの火傷ってのシーン、怖いんですよね。
身を持って知ってるぞ、からのお前にも喰らわせてやる感。
ルイスの怖いところというかウィルが危惧しているところはここなんじゃないかな。純粋に純真に兄であるウィルの目的のために、悪気もなくコトを行えてしまうあやうさ。
その危うさがいつかルイスを飲み込んでしまいそうだから、ウィルはあまり関わらせたくなかったんじゃないかなって思います。

糸川くんが坦々とコトを遂行するのがすごい雰囲気でしたね。

そんな暗く重たいモリアーティ陣営の反対側では女性が2人もいてめっちゃ華やかでしたね。いいな。
ワトソンとハドソンさんの2人のわちゃわちゃいいですよね。そこに入るアイリーン。
またいうんですけどアイリーンの話はアルバートがMI6を立ち上げる話と絡むのと、シャーロックのお兄さんの立場もあるので、このタイミングでやるとは思ってなかった。びっくり。

ただ、シャーロックの謎という自身の好奇心と、人を助けるという理性の間に揺れるというのがこの作品の面白さの一つだと思っているので、この話でよかったなという気持ちもあります。

茶目っ気たっぷりでなかなか本心を見せないアイリーンと、わかった上で踊らされるシャーロックの紳士っぷり。

あんまりああいう粗暴な感じの北村さん見たことないので新鮮でした。
あんなにシャツ開けてるきたむーさん初めてだよ。顔がいいですね。

謎と思惑が交差する中で、教会のシーンでアイリーンの手をそっと止めるシャーロック。
教会のシーン照明が綺麗でしたね。神々しいというか神に願う感じがして良いなと思いました。

アイリーンという女性は、根っこが強い人ですよね。雑草根性が見え隠れするのが良いです。結構シャーロックと根は似てそうな感じがしますね。
そんなアイリーンに振り回されるシャーロックと、アイリーンの外堀を埋めつつアイリーンごとシャーロックを踊らせるウィル。

ミュージカルのw主演感と違って、舞台版のw主演ではあるけれど軸にしっかりとウィルを置いた構成だったのが面白いなと思いました。多角的に見るよりも見せたいところから見せるみたいな感じ。

全体的にウィルを立てていた話なのですが、今後どう見せていくのかなと気になりました。

そんな感じで楽しく見ていた舞台版憂国のモリアーティ。
今後がどうつながっていくのかも気になるし、考えながら見るのが楽しそうな作品になっていてそういう目線で見れたらいいなって思いました。でも原作は読みたい。

次は夏にミュージカルですね。
こちらも楽しみです。