CFRPを使うということ(CFRPの設計の概念)
CFRPには、大きく分けて、市販されているアルミ板のような物性が明らかな材料を買ってきてものを作るようなわかりやすい使用方法と、使用する材料自体を設計して、最適な量を、最適な構造、コストでものを作るような、わかりにくい使用方法の2種類があります。
一般的にCFRPの設計でつまずくのは、後者の場合が多いように感じます。
例えば、木材という材料は自然の産物なので、選択はできますが、それ自体を設計することはできません。
一方で、CFRPなどの複合材料は、材料自体を設計することができますので、制限はありますが、任意の物性を持ったものを設計することができます。
これはエンジニアリングの自由度を拡大する効果があり、ほかの材料では成立しなかった最適な構造を実現することができるポテンシャルを有するということです。
現在は、ウェブなどからも、特定の条件で設計され、成形されたCFRPの板やパイプが購入できます。
これは、ホームセンターで木材を買ってくるタイプのものづくりと似ているため、かなり感覚的に設計・加工・組み立てを行うことができます。この使い方をするときは、CFRPの強度が過剰な場合や、ポテンシャルを有効に発揮出来ていないケースなどが多くあります。
これで成立するものづくりは、この作り方でなんら問題ないのですが、もしも、そこに限界があり、それ以上を求めたいという場合や、そもそも市販されている形状ではなく、ほかの形状も考えたいという場合には、材料設計から取り組むことが効果的です。
CFRPは、それ単体で製品になるケースは少なく、なんらかの組み合わせによって製品になることがほとんどです。そのため、どこにどのような力がかかるか、どのような環境で使用されるか、どのような機能が欲しいのか等のような情報をまとめて、材料の設計によって、その実現方法を考えて行きます。
ところで、CFRPが他の材料と異なる点として、異方性という性質があります。端的に言えば、木材などのように、方向によって強度が異なる性質のことです。(異方性の対義語は等方性で、金属などのような方向性による強度の差異が小さい性質のことです。)
CFRPは名前の通り、炭素繊維で強化したプラスチックなので、プラスチックの中に炭素繊維が入っています。
引用:CFRPの実体を捉える
炭素繊維単体ではただの糸であり、構造材料に使えないため、繊維の束をプラスチックで接着して、その引っ張り強度が発現する状態に成形することによって、軽量高強度を実現しています。
炭素繊維が長手方向にまっすぐ入っているCFRPの板があった時、その方向に引っ張ると、最大の強度を呈し、長手方向に対して直角に繊維が入っている時、最低の強度を呈します。(直角の時は、繊維が効かないので、ほとんどプラスチックの強度です)
斜めに入っている時は、直角に入っている時と比較してそこそこ強度がありますが、まっすぐに入っている時と比較すると、かなり強度の発現率が落ちてしまいます。
なので、CFRPの中の繊維の方向性をどのようにするかによって、強度を変えることができます。同じ繊維含有量で、同じ重量のCFRPであっても、どこに使用されるかによって、強度を満たせない場合があるということです。
強度の必要なところに繊維が入っていない場合、「CFRPを使っているのに弱い」ということが起こってしまうのです。
これが、異方性です。
極端な繊維配向(プラスチックの中の繊維の配置・方向)のCFRPは、強い方向にはとことん強いが、弱い方向にはとことん弱い(プラスチック程度の強度)という状態になります。
つまり、材料として使用するCFRPのどこに、どのような強度や物性が発現するかということを加味しなければ、強度や物性のわかっていない材料を使っている状態に等しいため、正確な設計ができません。(市販品を購入する場合は、それが明らかなので、そこそこ簡単に設計することができます。)
逆に言えば、そこさえ抑えてしまえば、これまでに実現できなかった構造を実現できることもあり、非常にポテンシャルがあると言えます。
CFRPの設計(材料と構造の設計)をするときには、何にどのように、どのような理由で使用するか、ということを併せて検討する必要があります。
その際、癖のある材料であるため、他の要素は変えられない設計の中の一部をCFRPにしたい、と考えると、あまりポテンシャルを発揮できないこともありますので、CFRPを使用する周辺構造まで含めて検討することが、有意義にCFRPを使用することに繋がります。
これからCFRPも使ったものづくりに挑戦される方は、何かテーマを持って具体的な設計の実現のためにCFRPを利用する中で、積層設計に挑戦し、狙いの効果が得られることを確認するプロセスで学習を進めることが効果的であると考えます。コンポジットセンターは、ハードルを下げることを目的として活動していますので、ものづくりに生かすためのサポートすることも可能です。「繋がりがなく、どこに頼れば良いかわからない。」という場合には、是非コンポジットセンターへお問い合わせください。
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