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病人だって人間だもの

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日常の中にある「病」をテーマとしてまとめたマガジンです。自らの体験をベースとしたショートストーリー集。
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#手術

記憶の片隅に残る絶好調でハイな気分

「肥満だから無理だな」 医師の言葉は唐突だった。 肥満なのは承知している。けれども、私はドギマギした。話の流れが想定外すぎると感じたからだ。 ◇ 全身麻酔の危険因子「肥満ゆえの血栓ができる危険性」について説明を受けた。術後には、血液をサラサラにするお薬を体に入れることを優先するから、硬膜外麻酔は使えないというのだ。 硬膜外麻酔とは背面の腰のあたりから管を入れる麻酔のこと。揮発した麻酔薬が持続的に体内に入る仕組みだという。 以前の開腹オペでは硬膜外麻酔を使ったから、

オムライスが「ゴール」だったあの頃

おそらく私は「何かの目標」を立てることが得意なのだろう。 自分を上手に騙してその気にさせ、「うっかり頑張らせる」ことが得意なのだ。 ◇ 目標の立て方にはコツがある。 目標を達成する前に小さなご褒美をあげること。目標を達成するためのゴールを明確にすること。 だが、このコツには、それほど拘りもない。 ただ、「漠然と楽しみ」を感じることに向かって進むとき、その道を進み切る「理由」を「目標」という言葉に換えているだけ。「目標だから」といい切って、辛い気持ちや苦しみを和らげ