ガーディナーを聴いた

ブリュッセルはいいところですね、大きい団体がヨーロッパツアーをするときにはだいたいブリュッセルに寄ってくれる。
ということでガーディナー×イングリッシュバロックソロイスツのロ短調ミサを聴きました。ガーディナー80歳記念ツアーらしいというのをどっかで見ましたが本当かはわかりません、裏取りとかしない系ゆるゆるnoteなのでね。が、せっかくなので、このnoteはガーディナーの80歳の誕生日である4月20日に出します。今日です!お誕生日おめでとう!!

私の初ガーディナーは、高校2年のときに聴いたマタイ受難曲のCD(モンテヴェルディコア)でした。実はこの音源が当時どうにも好きになれなくて😂、その後10年以上なんとなーくずっとガーディナーに対して薄めの苦手意識というか、ざらつきのようなものを感じていたのですけど、でもバッハの宗教カンタータ全曲録音をした人間というのはどんな人であろうとめちゃめちゃすごいので、熱心には聴いてこなかったけど、新しいカンタータをやるときには一度は必ず聴く、というくらいの距離感でした。そしてそれを激しく後悔することになった衝撃の一夜だったわけですよ。

なんていうんですかね、具体的にここが良かった、みたいなふうに細かく書くこともできるんですけど、そんな次元じゃない演奏でした。私、ロ短調は本当にたくさん弾いてきたし、聴いたし、多分暗譜でコンティヌオ弾けるけど、私ってば本当にロ短調の上澄みの上澄みしか摂取してこなかったんだなぁと思わされました。もうあの2時間のうちのどこの1小節をとっても、ガーディナーより解像度高く楽譜を見ているって自信を持って言える箇所、ないですね。どんなに意地悪に聴いてみても、隅の隅、端っこの端っこまでぜーんぶにガーディナーの意思が行き渡っていて、でもそれがいっさい神経質じゃない。なのに惰性みたいなところも、雰囲気だけのところも一瞬もなくて、でもそれが厳格に管理されてる感もないんですよ。私は指揮者じゃないしオケマンでもないから、指揮のこともオケのこともよくわからないけど、もし自分がガーディナーの指揮でEBSの中にいたら、あれだけのことを要求されたら多分早めに根を上げるし、多分そこまで音楽を知れていなかったことに理不尽にキレてもう「参りました」ってなりそうなもんですけど笑、全部に応えているEBSもすごいし、それならどんなリハをしているのか、パート譜に何が書かれているのか、めちゃめちゃ気になります。(なるほどもしこれだけのことを老舗のモダンオケでやったら…とかちょっと思ったりもした。)

ここまで書いておいてすごく表面的なことに触れますと、まずガーディナー、暗譜でした。意味わからん。私はオケマンじゃないので詳しくはわかりませんが、コンティヌ弾き目線から見ている分には振り間違えみたいなのはなかったし、全部のそこ振ってほしいポイントは全部振ってたし、まじで全てが頭に入ってるんだなって感じでした。ほんで、休憩なしでした。は???
この前ヘレヴェッヘ×コレギウムヴォカーレゲントのヨハネを聴いたときも休憩なかったけど、それは百歩譲ってまあわかるんですよ、前半短いし。けどロ短調休憩なしは、私は最後まで体力が持つ自信がないですね、、、79歳のガーディナーは最後までピンピンしてましたけど。私は音楽するよりも前にマラソンとかスイミングとかしたほうがいいのかなあ。

あとちょっとその演出盗みたいなって思ったのは、最初のKyrie eleisonの4小節、合唱も暗譜だったやつ。5小節目でオーボエのテーマが始まってから楽譜オープンでした。そらまああの最初の4小節で楽譜見る人は確かにあまりいないだろうけど、あの最初の特別な4小節を、目で見てもわかる特別感み。

そうですね、合唱めっちゃ上手でした。全部で35人くらいのロ短調にしてはわりと大きめの編成(7×5、ソリストも合唱歌う)で、迫力満点系で来るのかと思いきやそんなことなかったすごかった。それこそ隅々までガーディナーに統制されてるはずなのに、全然それが窮屈じゃなくて、やらされてる感も従わされてる感もないっていう、でも隅々までガーディナーエッセンス満載で、いやー意味がわからなかった。必要に応じて爆発もできるし縮こまることもできるし、自由自在。でオケはもっと変幻自在でした。自由すぎる。でも外しちゃいけないところは一箇所たりとも外さない。ロ短調ってこのクオリティで演奏できるんだ、ってことを見せつけられた気がしました。

いやなんか書けば書くほど私の感想が陳腐すぎてよくない気がしてきたな。とにもかくにもすごかったです。

ちょっと前にガーディナーに関するとあるツイートが波紋を読んでいまして、それの引リツやらでガーディナーを叩く声や、だからなんとかってオケでも降ろされるんだとかなんとか、いろいろマイナスな意見も見てしまって、そういうの見ると自分に関係ない話題でも結構へこんじゃう系繊細人間の私は勝手に傷ついたりしてたんですけど、もうそんなんどうでもいいですね、ガーディナーはすごい、ほんとうにすごいです。私はリスペクトが増したし、生身のガーディナーに触れられてとてもよかったと思っています。また聴けたらいいなぁ。てことでお誕生日おめでとう!!

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