ヨーロッパ伝統音楽の特徴

ヨーロッパ各地の伝統音楽を俯瞰すると、楽器やダンスの種類、レパートリーや音楽の社会的な在り方など多くの要素がそれぞれ異なりますが、一方で共通する特徴を多く見出すことができます。

(1) 伝承
伝統音楽の最も重要な性質は、人から人へと伝承されることによって、空間的・時間的に広がってゆくことです。それは過去に誰かが作った旋律が、その地域の誰もが知る曲になり、それが何十年もの時を経て伝わるということを表します。現代においては楽譜・音源・映像資料を介して伝承されることが多いとはいえ、それにより「耳から」習得することの重要性が損なわれるわけではありません。

(2) 曲名の不在
多くの曲には曲名が存在しません。たとえばブルターニュ音楽では多くの旋律には名前がなく、ガボットとかロンドといった舞曲の種類を曲名の代わりとしています。アイルランド音楽はそれと比較して広く認知された曲名があります。しかしそれは記号として便宜上つけられた名前です。つまり曲名と曲の雰囲気には関連がありません。また曲名は流動的で、一つの曲に複数の曲名が存在する場合があります。

(3) 無名性
多くの曲において、いつ・誰が作曲した曲なのかという曲の背景が知られていません。近年作曲された曲も、人から人へと伝わるうちにやがて名前や作曲者のことが忘れられ、伝統曲のレパートリーの海に流れ込みます。

(4) 流動性
伝統音楽の旋律には決まった形がありません。1つの曲の旋律を構成する大まかな構成、反復、フレーズ、和声進行などがあるのみで、その詳細は固定されたものではありません。そのため同じ曲であっても演奏者によってわずかに旋律が異なったり、また意図的かそうでないかを問わず演奏のたびに変化したりします。

(5) 楽譜の不在
上記の性質から、伝統音楽には本来、楽譜が存在しません。伝統音楽においては、楽譜が音楽よりも先に存在しているのはなく、すでに存在している音楽を大まかにスケッチしただけのものが楽譜なのです。

(6) ユニゾン
伝統音楽では、様々な種類の楽器が演奏されますが、全員が同じ旋律を同時に演奏します。これをユニゾンといいます。

(7) 反復性
伝統音楽ではひとつの旋律を複数回、繰り返して演奏します。反復の際には、旋律の細部や装飾音などが変化することが一般的です。

(8)パート
伝統音楽の曲は、短いひとくぎりの旋律の集合によって構成されています。これを「パート」とよび、それぞれのパートを通常は繰り返して2回演奏します。

(9) メドレー
今回収録した3つの地域(ウェールズ、ブルターニュ、アイルランド)の伝統音楽では、ダンス曲では1つの曲だけではなく、複数の曲をメドレー形式にして演奏します。

※書きかけの原稿です。他にも思いつくことがあれば、教えてください


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