ゴッシーが行くvol.5『スパゲティに針金1本入れないでくれ』

スパゲティの中に針金1本入れないでくれ
シリーズ指揮者名言集
その1     G.シノポリ

1987年の事だったと思う

世界中のオーケストラプレーヤーで
編成される
ワールドオーケストラの
第一回目の東京公演に私は参加していて


練習の時シノポリが言った

スパゲティに針金1本入れないでくれ

要するに硬い音で弾かないで 
皆と同じ良い音で弾いてくれという
意味だが
オーケストラのメンバンーが笑って
すなわちリラックス出来て
素晴らしいアドバイスだったと思う




当時私はN響入団まだ6年目

血眼になって修行していた最中で
自分の演奏技術を全て一新して
世界のレベルに追い付こうとしていた



私がバックステージで弾いていたら
イスラエルフィルのコンサートマスターが声をかけてくれて

「お前、何年オーケストラで弾いてる
  ?」

 6年です

「そうか6年でその弾き方が出来るのは     
  なかなか良いぞ」

と言われ、ほんとに嬉しかった
しかし
その後の修行は更に困難を極め
世界のレベルに対してコンプレックスが無くなるにはあと10年必要だった


良い音とよく言われる

必要な良い音は

今までに聞いた事もないような特別に素晴らしい音ではなく
モーツァルト、シューベルト、
に使える音で弾けるかどうかだ

その為には300年に渡って 
先人の音楽家たちが伝えてきた
貴重な技術を理解して再現出来るかにかかっている


針金ではなくスパゲティ

モーツァルト、シューベルトに必要な音は針金では無理でスパゲティでも困る

鈴の音にニスがかかった真珠のような音が必要なのだ


この年、ワールドオーケストラには
世界中から素晴らしいプレイヤーが
来ていてた

コンサートマスターの隣に座っている
フォワシュピーラーが
蝶ネクタイの結び方が抜群で 

本番でカーテンコールの時
マエストロがマーラの1番で
ソロがあったチェコフィルの
コントラバスを立たせるのを忘れてるのを
流石ベテラン
マエストロ!コントラバス!
コントラバス! と囁いて 
マエストロをサポートしていた

よく覚えているのは

特にフルート、ピッコロ、が素晴らしく
芸術的で
私はこのレベルを目指すのだと
目が覚めた

圧巻は左右に配置された確か
ボストンのトロンボーンと
フランスのフレンチホルン

負けないよ、本気で行くからね、
という緊張感があり

それが

ステージの左右からやり取りされるので
まさに国際試合

凄い迫力だった

曲は
マーラの1番と
ラヴェルのラ.ヴァルス、
それに、シチリア島の夕べの祈り序曲
だったと思う


国技館でのGPの1コマ

ヴェルディ、シチリア島の夕べの祈り
の序曲で指揮者のシノポリが 
冒頭、スネア(小太鼓)にもって小さく
やり直して2回目更にもっと小さく
と注文
やり直した3回目
今叩かなかっただろう! 全員爆笑


私は修行中ではあるが
やっと音楽家として
スタートした時だったと思う



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?