見出し画像

n百日後に眼が死ぬワイ~序章

網膜色素変性症という名前の、だんだん眼が見えなくなる病気を患っています。
この先、いまの仕事や生活に支障が出るほど病気が進行したときに、多少の文才があれば何かの役に立つような気がしたので、そのトレーニングのためにnoteをもうすこし頻繁に更新していこうとおもいます。


どんな病気なのか

Wikipedia見れ。
嘘です。

網膜色素変性症は遺伝性の眼の病気で、眼球の奥にある光を感じる細胞「網膜」が徐々に使い物にならなくなっていく病気です。
カメラでいうとレンズではなくフィルムやセンサ部分の不具合です。
一般的な「目が悪い」という状態はレンズ部分の不具合のことが多く、その不具合を補完するためのメガネを使用すれば、ある程度見え方が回復しますが、センサ部分である網膜の不具合だとメガネでは解決できないのです。
網膜剥離のようにセンサ自体は生きている病気であれば手術で治ったりもするようですが、センサが片っ端からどんどん死んでいくというような病気なので、現在のところ有効な薬や治療法は発見されていません。いわゆる難病です。
現在のところはiPS細胞で網膜の細胞自体を新しくしてしまおうというのが最も有効的な治療法とされるようで、近年研究が始まりましたが、まずは全く見えなくなった人が、ゼロから1だけでも見えるように(光を感じられるように)という段階からのようで、ある程度見えている自分のが治療してもらえるようになるには、寿命とどちらが早いのかな、というレベルなのだろうと予想しています。

盲目色素編成症は(基本的には)遺伝性の病気で、多くの方は親や祖父母に同じ病気があるそうなんですが、私の親族に同じ病気の人はいないんです。
ただ、私がこの病気に罹患しているとわかる以前に亡くなっている祖父が、症状が似ている緑内障で失明しており、もしかすると祖父が緑内障ではなく網膜色素変性症だったのかもしれません。もちろん単なる単発での発症なのかもしれませんし、そこはもう確かめようはないです。
個人的には、祖父が亡くなってから十数年後に罹患が発覚したというのが、どこか「じいちゃんが僕だけにこっそりくれた置き土産」のようで、そちらであってほしいかなとおもっています。

現在の見えかた

中心視野5~10度というのが数字上の「見え方」です。これでわかってくれる人は眼科関係者か同じく視野に不具合がある方だけかとおもうので、もう少しわかりやすく説明すると、

トイレットペーパーやラップの芯から世界をのぞいているような見え方

です。
そして、その周囲の部分は全く見えていない暗闇というわけではなく(私の場合は)、全く見えていない所となんとなく見えている所が混在しているような状態です。

たとえば普段の生活の中で、スマホの動画を集中して見ていると、スマホ画面以外の場所に何があるか、何が起きているかよくわからない、みたいなことありませんか?
私は常にそんな見え方です。
こんどトイレットペーパーが切れたときにでも、少しの間、芯から覗きながら行動してみて「世の中にはこんな状態で生活している人がいるんだ」と思いを馳せてもらえると嬉しいです。

そして、その中心の「見えている」部分が、徐々に小さくなっていっています。私の場合はその小さくなっていくスピードが比較的遅いようで、急激に視野が狭くなったと実感することもなく、今のところ生活にそれほど支障も出ていません。ただこれはラッキーな方で、同じ病気を持っている方の中には、早くに失明してしまう方も多くいらっしゃいます。

視野が狭くなっていく他に、暗い場所だと更に見えづらくなる夜盲の症状もあります。
たとえば夕方から夜にかけては、薄暗い状態でも私は暗くて見えづらいと感じ始め、徐々に暗くなるにつれて見えている中心部分がどんどん狭くなり、最終的には中心もほとんど見えなくなります。夜道に出ると、街頭で直接照らされている場所だけはなんとなくモノの判別はつきますが、それ以外は漆黒の暗闇という感じです。

いまのところ白杖は使用していません。
日中の明るいときは杖は不要、というか、おそらく周りから私の行動を見ても、まさか目が見えていないとは思えない普通の行動をしています(と自分ではおもっています)。
暗くなると上で書いたようによく見えてはいないのですが、(自分で言うのもナンですが)土地勘や方向感覚にたいへん優れている体質のため、一度歩いたことがある場所であれば、暗くてよく見えなくても記憶と感覚でウロウロできます。暗くなった状態で初めての場所をウロウロすることが多くなれば白杖は必要になるとおもいますが、いまのところそんな状況になってないし、なりそうもないので、とりあえずしばらく白杖を使う予定もないです。
あとメガネも使用していません。上にも書いたとおり、この病気とメガネはあまり関係がなく、中心の視力は裸眼で1.0ほどあります。

今後のこと

残念ながら(?)「朝起きたら見えなくなっていた!鬱だしのう…」ということは(おそらく)起こり得ない病気なので、「目が見えない人の記録」としては迫力不足になります。そういうのが読みたい人は他をあたってください。ただ長く付き合っていただければ「目が見えなくなっていく人の記録」として、徐々に視野が狭くなっていく経過を目の当たりにしていただけるのではないかとはおもいます。
そんな中で私がどう行動できるのか、何もできないのか。そんなのを腰を据えて見たいという稀有な方はぜひどうぞ。
ひとりの網膜色素変性症罹患者の記録として、いま同じ病気を持って生活している人へというよりも、将来この病気を持っていると宣告されてしまった人が、変に心配しすぎないように、何らかの助けになれば良いな、という方向性で書いていこうとおもいます。

もしよろしければ長くお付き合いいただけたら嬉しいです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?