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成人式に期待して大失恋した話

 成人式での再会を期待している君!甘い。甘いよ。とっても甘い。

 中学、高校の頃好きだった彼、彼女。その人にはきっと今、素敵なパートナーがいる。期待しない方がいい。そして私は残念ながら、期待してしまっていた側の人間だ。

 今日はそんなお話をしよう。

 忘れもしない成人式。私はあの日確かに失恋した。長岡花火の記事で書いたSくん(呼び捨てにすると、文字上で気持ちが悪い。一度も「くん」なんていったことなんかない)に、私は多分6年間片思いしていた。さらに交際して別れるまでの半年と、別れて成人式で再会し、本格的に失恋するまでの約2年。つまりは約10年、Sくんのことが好きだった。

 あらかじめいっておくが、今未練の気持ちは一ミクロンだってない。メールアドレス、電話番号、ライン、インスタ、一切知らない。知りたくもない。教えてあげようか?と仲の良かった共通の男の子の友人に聞かれたけれど、興味がなくて断った。それなのに、どうして今こんなことを語ろうかと思ったかといえば、単純になんとなく、noteに書く話題がこれくらいだったからだ。はじめてみたnoteに何か書きたくて仕方がないので、綴ってみようかと思っただけだ。

 Sくんを好きになったのは、小学生の終わり頃だった。一緒のクラブに入っていたことが理由だった。あと、クラスが一緒だった。背が小さくて笑顔がかわいかった。仲も良かった。どうしてこんなにも長い間、青春のほとんどを彼を想うことに捧げてしまったのかというと、単純だ。失恋しなかったから。ただそれだけの理由でも、特に男の子と多く関わる訳でもなかった当時の私には十分だった。仲が良くて、私だけにちょっぴりいじわる。性格もそこまで悪くなかった。恋愛になんとなく憧れていた私が、恋に恋するには十分な理由だった。

 前の記事でも言ったが、キスもせず手もつながない清いお付き合いを半年くらい続けて、そして別れた。今思うと手くらいつなげよ、という話である。多分Sくんは私のこと好きじゃなかった。これも今だからわかる話。全体的に青い。

 デートも学校の帰りに一緒になるだけだったし。いや、明らかにおかしい。当時の自分は馬鹿だったと書いていて気がつく。騙されてるよ。

 今だからいえる話はたくさんあるが、当時の私はこんなSくんとキスとかしなくてほんとよかった。ナイス判断自分、である。

 Sくんはメッセージの返信がやけに遅い人だった。私に対してだけかもしれないが。そんな彼は私にクリスマスプレゼントのヘアピンをくれたっきり、返信を返さなくなった。今もまだ、返ってきていない。

 いつも返信が遅かったから、三日くらいは平気で待った。一週間たって、私は改めてSくんにメッセージを送った。いや、送ってないで同じ高校だったのなら、クラスに行って直接会いなさいよ、という話なのだが、当時の私にはそれができなかった。

 で、そのメッセージにも返信はなかった。

 ついにしびれをきらして私はSくんのクラスへ直接会いにいった。

「どういうつもり?」

放課後、彼は机の上に青チャートを開いて勉強していた。声をかけた私には目もくれずに。

「聞いてんの」

これにも無視を決め通した。ここまで来ると彼のクラスメイトも何かを察したように教室を去った。

「別に」

Sくんはそれだけ言うと、チャートを鞄にしまって席を立った。私は呆然として、彼が教室から出て行くのを見ているしかできなかった。でもその後なんとか追っかけて「馬鹿!クソ!もうおまえなんかどうでもいい!!」それだけ廊下で大声で叫んだ。これが私の破局エピソードだ。

その後高校を卒業し、成人式で彼に再会した。大学はバラバラだったし、合う理由もなかったから、成人式ではじめての再会。なんだかんだ確執があったけど、結局6年間好きだったSくんのことはなかなかふっきることができなくて。再会に期待していたことは事実だ。何かあるんじゃない?

 ドキドキしていた。お気に入りの香水をワンプッシュと、かわいいドレスを着て。お化粧もした。今思えばこれも完全に馬鹿だが、仕方ない。

 仲のよかった友人の女の子とSくんと、私の三人で話す機会があった。

「ねえ、知ってる?S、今彼女いるんだって!」

「へえ!マジ?いいね~」

まあ、想定内。なんだかんだ顔は悪くなかったし、大学生にもなれば彼女の一人くらいいてもおかしくない。私の小さな期待は簡単に敗れ去ったけど。少し傷付きはしたけれど、そこまでダメージは食らわなかった。次のSくんの発言を聞くまでは。

「うん。初めて俺、人をちゃんと好きになった」

私、絶句。

「へ、へえ」

 しかいえなくなった。いやいやいや。なんで?????高校の時じゃあなんで付き合ってくれてた?あと、もしそうであったとして、なんで元カノである私の前でそんなこといえたの?

 彼の親友であったYくんは「Sにおまえ(私)と付き合ってた話は後から聞いたけど、あのときいってくれれば協力したのに」と、私に成人式で語った。このことから推測するに(推測しなくてもわかるが)、少なくともSくんの中でも私と付き合っていた事実はあったようだ。なおさらたちが悪い。

 なんだかんだで私はピュアだったから、ここまで言われて完全に落ち込んだ。家に帰ってボロボロに泣いた。高校の時に流れなかった涙がぼろっくそにながれた。その日、はじめて失恋を知った。

 でも、あのときちゃんと失恋をしておいてよかったと思う。Sくんがあんな発言をしなかったら、私はもしかしたらずっと思いを気持ち悪くひきずり続け、そこら中にあるチャンスを見逃してしまったかもしれない。

 Sくんはとんでもない人だったが、きらきらとした青春の一部であったことは確かだ。酒の肴になってくれているし。過ぎ去りしあの頃の思い出だけに存在する人がいたって、いいんじゃないかな。

 でも、過去は過去。これを読んでいる新成人。期待はしちゃダメ。思い出は、思い出なのだから。未来に生きよう。


 

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