銀行預金と暗号通貨のシステムの違い

注意すべきこと

ここでいう暗号通貨システムとは、取引所等の、暗号通貨の預かりサービスを言うのではなく、分散されたノードによってブロックチェーンを管理するシステムを指します。

共通点

  • システムがコンピュータ化されている。

  • 財産的価値が電磁的記録で表現される。

  • システムの機能によって財産的価値を移転することができる。

相違点

管理者の有無

  • 銀行預金システムの管理者は銀行である。

  • 暗号通貨システムには管理者がいない。

名義

  • 銀行預金システムの残高は口座に紐づき、口座には名義人が存在する。

    • 管理者である銀行が、名義人以外が名義人の許諾を得ずに口座を利用することを禁止している。

  • 暗号通貨システムの残高はアドレスに紐づくが、アドレスには名義の概念が存在しない。

    • システムはアドレスを誰が利用しているかを問題としていない。

残高の意味

  • 銀行預金システムの残高は、預金者と銀行の間の預金債権(預金者が銀行に払い戻しを請求できる権利)を示している。

  • 暗号通貨の残高は、利用者の権利等、システム外の何かが反映されたものではない。暗号通貨の残高に対応するシステム外の事物は存在しない。残高に応じてシステムが利用者に何かを「払い戻す」ことはない。

利用手段喪失時の対応

  • 銀行預金システムにおいて、利用者は、通帳やキャッシュカードを喪失した場合でも、自らが口座名義人であることを銀行に証明できれば、引き続きシステムを利用できる。

    • 通帳、カードは預金契約を管理するための道具でしかなく、これらが失われても銀行と預金者の間の預金契約は依然有効だからである。

  • 暗号通貨システムでは、利用者が残高を利用するための秘密鍵を喪失してしまった場合、二度と残高を利用することはできなくなる。

    • 暗号通貨システムの「管理者」はいないし、利用者は「契約」しているわけでもない。秘密鍵は財産を利用するための道具というより財産そのものである。

規制

  • 銀行預金システムは、その銀行が存在する国の法律に縛られる。

  • 暗号通貨は、システムが全世界にわたり、特定の国の法律、規範に従って設計されているわけではない。

    • 「Code is Law」の原則があり、利用者のシステム利用を限界づけるのは現実世界の法律、規範ではなく、ソースコードである(参考)。

まとめ

銀行預金と暗号通貨のシステムは、移転可能な財産的価値を扱うコンピュータシステムであるという点は共通しているが、管理者の有無、名義人の有無、残高の意味、システムが想定している規制など、あらゆる点において差異があり、完全に別物と言ってよい。


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