読書ノート 『江戸の銭勘定』

『江戸の銭勘定』 洋泉社 山本博文監修 ほか執筆者3名
ハードカバーの専門書ではなく、ハンディタイプの新書です。
以下に面白かった所を拾います。

◎定量金貨に始まるが…
江戸時代の金貨は質と大きさの面でも変化が続いたようです。
家康時代に通貨統一がされ、流通する金貨いわゆる小判の正味は金15g相当でした。それが無計画な支出による財政難のやりくりとして金を含有量を2/3に減らしつつ、そのまま1両として流通させています。この錬金術的政策を主導したのがかの荻原重秀ですね。何度も本で目につく方なんですが、この人に関しては有能なのか適当なのかいまでもよくわかんないです。
幕末期にはいわゆる国際レートの関係でどんどんお金が流出していく~という事情がありまして、国際水準に合わすために小判のサイズ時代を20%ほどに小型化。金の含有量は家康時代の慶長小判の13%相当に落ちたそうです。それでも1両のままだったとか。
◎4の倍数の社会
金銀とは別に、安価で大量に必要とされる銭について。
金銀はいわずもがな、銭の地金である銅も不足するなかで導入されたのが4文銭のようです。銭なので4文といっても1文銭の4倍のサイズや実質価値にする必要はないですからね。現代人だと5文銭とか10文銭と考えるところを、当時の方は4文銭が一番適切だと判断したとのこと。
1文銭しか流通していなかった頃、お団子は5文で5本だったところが4文銭の流通で4文4本という価格設定がなされたとか。そばはよく聞きますが16文ですね、4文単位できっちり払えるように価格がデザイン修正されたってことでしょう。面白いです。
◎不便さにじみでる江戸暮らし
専門書ではなくいわゆる雑学系の新書だったので中身は民衆の暮らしの話が中心でした。町民の経済力は、健康であれば暮らしが成り立つレベル。照明はあるにはあるが値段が高い上に豆電球並み、井戸は充実しているとはいっても水道で通されるタイプにはごみが浮いており夏はぬるい。堀井戸の水の売り歩きが商売として成立するってことはそういうことです。他にも自分なりに使えそうなネタをまとめているのですがこのへんで。

■まとめ
雑学のtipsとしては良かったです。ただ本としての内容の正しさを信じ切る気にはなれないですね。監修の方は東大史料編纂所の教員をされてた方のようなので間違いないんですが、残りの執筆者3名のプロフィールが明記されておらず、どの記事を誰が書いたのかも明記が見当たりませんでした。文責というのは重要だなーと感じました。
そして通貨のシステム自体がやはり相当難しいです。創作に落とし込むにしても、生半可な知識で設定を詰めてしまうと物語が破綻しかねません。

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