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犬派時代

幼少期は犬派でした。

猫は、いつも同じ表情をしているし、目が合うと物陰に隠れてしまうし、正直何を考えているか分からないなぁ、と思っていました。

母が動物好きではなく、私の犬を飼いたいサインをスルーしていました。

思春期の子どもにペットを与えることが情操教育に繋がると考えたのか、小学6年生のときに母は犬を飼うことに、やっと賛同してくれました。

父は、もともと動物好きでしたので、とても喜びましたが、父のタイプは中型から大型の犬。家族でペットショップに下見に行き、柴犬の仔犬を抱っこさせてもらいましたが、子供にとっては、かなりの重量でした。

しばらくして、姉が学校から帰ってきて、家族に報告しました。

「ちょうど私の友達の家で仔犬が生まれたよ。血統書付きだから、ペットショップだと高いけど、気に入ったら、ただであげるよ、って。」

仔犬!

早速見に行きました。

ミニチュア・ピンシャー(ミニピン)という小型犬でした。選択肢は、単色のレッドと、ツートンカラーのブラックタンの2種類。

私は、しわくちゃで、グニャグニャして、頼りなさげなレッドのオス、を気に入りました。

家に帰って父に報告すると、僕は柴犬が良いなあ、と主張されました。その当時、父に反論することはタブーでしたので、私は黙ってしまいました。

母はれいこが飼いたいんだから、れいこが選んだら、と言いました。ミニピンが小さくて可愛かったので、ミニピンが良いなあ、と伝え、母経由で父からの承諾を取り付けました。

思うようにならず、父がムスッとしました。貰いに行く日も、僕は家で待っているよ、と父は拗ねたままでした。

いよいよ当日。ミニピンは、片手でヒョイッと簡単に捕まえることができて、抱っこして、タクシーに乗りました。

家族と引き離された仔犬はポロポロと涙をこぼして、悲痛な声で鳴き続けます。その時の様子は一生忘れられません。

家に帰ると、父はそっぽを向いていましたが、犬を近づけると、パーっと目を輝かせて、うわーーー小さくて可愛いねえ、お腹が空いているんじゃないの、ミルクをあげようか、と子どものようにはしゃぎます。

ミルクを飲む仔犬を見て、父は、
「ほら!ミルクを上手に飲んでいるよ!この子は賢い子だねえ!」
と大はしゃぎ。

それからというものの、犬が家族の中心になりました。

末っ子のワタシに始めて出来た可愛い弟。お散歩が大好きで、夜は私の布団に潜り込んで一緒に寝ていました。

一生家族のはずだったのに。

3年で別れは訪れました。