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心配していた人が道を踏み外していたんですよ。

かつて、はじけたエッセイと陰りのある小説で一世を風靡した小説家の原田宗典さん。

人間の心のひだを繊細に描いた小説も好きでしたし、ちょっとダメダメなご自身をフルで活躍させたハイテンションなエッセイも大好きで、新刊が出ると楽しみに読んでいたものです。

今の住まいになってから書店難民で、なかなか頻繁に本屋さんをのぞくことが無くなってしまい、しばらく原田さんの著作を目にしていなかったのです。

ただ、愛読していた当時から、青年のままのもろくも見える小説での繊細さと、それを恥じて振りちぎるようなぶっとんだエッセイの内容の両極端さに、この人、無理していないかなぁとなんとなく心配だったんですね。


そして今日たまたまAmazonで本を探していたら、「メメント・モリ」というタイトルの著作を最近出されていることに気が付きました。

「メメント・モリ」   死を想え。

タイトルに「えっ!」とビックリしてレビューを見たら、しばらく姿を見ない間にずいぶんと生きることに苦労されたようです。

著作での印象通り、双極性障害であることでも苦しまれたようでした。

大人気のさなかの原田さんの小説とエッセイでそれぞれ見せる異なった人格は、私の想像ですが、素の部分は小説の持つ静かな暗さ、表に見せたい脅迫的な願望で作り上げたともいえるのが無茶苦茶ハジけたエッセイの中のご自身像だった。それがだんだん無理が祟って、ご自分を壊していったのかと思います。

ちょうど原田さんがブームになったのはバブルの時期とも重なります。世の中はアグレッシヴなまでの明るさやタフさが要求されていました。

こうならなければ!という時代が要求したキャラクターに無理やり自分を押し込めたことで、あとあと破綻してしまったのかなと思います。


明るくあることは素晴らしいことでありますが、無理して身の丈に合わないことは自身を蝕む。

ひとそれぞれが自分の持ち味を尊重して生きていっても無理のない社会になると良いのですけど。





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