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良いものとはどんなものであるか。

アパレル系の仕事が長いせいか、服に対して「お客様が感じる良さ」の意味は奥深いものがあるなぁと思うのです。

例えば「良い服」ってどんな服でしょう?

素材が良い?縫製(作り)が良い?

素材が良いについては、カシミアなんて上質素材の代名詞のようです。カシミアヤギからとれる繊細な繊維で光沢があり、軽く暖かい。

良いじゃない、カシミア、最高じゃない!?

そう思います??

実は繊細ゆえにお手入れを怠ると毛玉になりやすかったり、風合いを損ねないためにおうちでは洗わないほうが無難。というか、手洗い不可になっているものがほとんどです。しかも、お値段もかなり張ります。

例えば小さいお子さんがいる一般的なママ。

お子さんの世話でお洋服は簡単なケアで済むものがいい。どうせ汚れちゃうから安いもので十分だわ。と思っているとしたら?

カシミアが良いのはわかるけど、自分のライフスタイルには合わない素材で、都合は良くない。

では、縫製が良いについては、びっしり繊細なカットワークを一糸乱れず入れた豪華なブラウス。これは、なかなか縫製の技術が高くないと作れません。やはりお洗濯はドライクリーニングが無難です。当然お値段が張ります。ちょっと無理な力がかかると破れてしまうでしょう。

高ければ良いもの。なんか当たり前に聞こえますが、じゃあ、良いものってなんでしょう?


私、結構ラグジュアリー系の服を扱ってきたので、以下はよくあったクレームです。

「ちょっと着ただけなのに毛玉だらけになった!素材が悪い!」

「引っかけたらすぐに裂けた!素材と縫製が悪い!」

「値段が高いから丈夫だと思って洗濯したら縮んだ!!高いのにどういうことなの!?」


服だからこそのクレームなのかなぁと思います。

なぜなら、服は基本的には必需品だから。裸でいるわけにはいきませんからね。
その必需品に、おしゃれとか個性とか高級感とかが盛り込まれているのがラグジュアリーブランドだと思うんですが、根が必需品ゆえにやっぱり機能性を求められてしまう。

ラグジュアリーをそのまま受け入れられるのは、本当にお金持ちだけだと思うんですよね。自分で服のケアをする必要も無いような。


このコロナ禍で、アパレルはどこもECサイトを発達させた会社が生き残っているようですが、ECサイトって結構お客様レビューとか見れるのですよね。
なので、レビューを読んでいると、一般的に良い服って思われてるのは要は「(自分にとって)都合のいい服」なんだなぁとしみじみ思います。

これからは、いかにお客様にとって都合のいい服を作るか。というところにアパレルの生き残りがかかっているような気がします。

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