あの人

「ねぇ優子、あんた最近彼とどうなの?」
『まぁ、ぼちぼちって感じよ。そんなこと言ってる由美はどうなのよ。』
「私はもう全然。優子羨ましいって思ってるわよ。」
『早く出会えるといいね。』
「ほんとそれ、カッコよくて、お金持ちで、頭が良くて、優しい人。」
『いいなぁ私も出会いたい。』
「優子には彼がいるじゃない。」
『そんないい人がいるならその人とも付き合う。』
「まぁそんな人いないんだけどねー。」
『まぁねー。
あっ飲み物なくなったね。何がいい?由美の分まで注いできてあげる。』
「ありがとう。えー、じゃあジャスミンティー。」
『はーい。』

「えっ、あれ、」

『お待たせ。はい。』
「ありがとう。ねぇ優子あれって、」
『うん。』
「ねぇちょっと待って優子、これジャスミンティーじゃなくて、ダージリンティーじゃない!?」
『ばれた?ふふふ。』
「やめてよ。プチドッキリ。まぁいいんだけど。通りで自分から汲んでくるって。」
『で、さっき何言おうとしたの?』
「あ、そう。あそこにいる人見て。」
『え、どこ?』
「ほら、そこの端の席に1人で座ってる人。」
『あの人?』
「うん。」
『あの人がどうしたの?』
「あれ多分、北村リュウイチよ。さっきチラッと顔が見えたのよ。」
『北村リュウイチ?』
「北村リュウイチ知らないの?優子あれ観てない?11人の侍。」
『11人の侍?観たかな?』
「ほら11人の侍の9人目のサムライがお腹空いてた時に、中がラズベリーのジャムパンをあげた人。」
『ちょっと分かんない。』
「でも他の作品にも色々出てるから見たらわかると思うんだよね。こっち向いてくれないかな。」
『ね。あっ、飲み物全部飲んだ。飲み物取り行くんじゃない?』
「ほんとだ。」
『あっ、来た。見えた。えっ?』
「どう?北村リュウイチだよね?」
『いやあの人、上岡ケンジじゃない?』
「上岡ケンジ?」
『うん。あの、"全員が犯人シリーズ"の"事件はキャンプで起きてるんだ!編"に出てた、ほらキャンプ場にバイクで犬連れてきてた人だよ。』
「ごめん、観てないかも。」
『嘘でしょ、観てないの?あれは上岡ケンジだよ。』
「いやあの人、北村リュウイチにそっくりなんだって。」
『じゃあ聞いてこようか?』
「えっ、いける?」
『うん。だってこのままだとモヤモヤするんじゃん』
「すごいね優子。」
『じゃあ聞いてくる。』
「お願い。」

「あっ、聞いてる。」

『お待たせ。』
「聞いてたね。」
『聞いたよ。』
「で、どうだったの?」
『まず、すいません、テレビに出てる人ですか?って聞いたの。』
「うん。」
『そうしたら、そうです。って言ったの。』
「ほら!やっぱり絶対そうだって。」
『で、すいません。失礼なんですけど名前ど忘れしちゃって聞いてもいいですか?言ったの。』
「うん。そうしたら?」
『そうしたら、あっ、全然いいですよ。
   沖ともやです。って。』
「えっ、誰?」
『分かんない。全然知らない人だった。』

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