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月の光はあたたかいか、つめたいか—「ファミレスを享受せよ」

何でこのゲームの名前を知ったのか思い出せない。
まぁ例によってツイッターだと思うけど。
(私は決してXなどと呼びはしない。)

名前は憶えていて、ある日ふと思い出してSwitchで検索したらあったので買った。
1500円。そうだね、心が疲れてる人におすすめ。

……なんか文章が影響受けてる気がするな。まあいいや。

ざっくり言うとアドベンチャーゲームというやつです。
画面をクリックしたり、キャラクターと話題を選んで会話しながら進める。
この手の作品はだいたい、ゲーム性というよりお話を読むことがメインだと思う。
けれどそれが読書と違うのは、自分が能動的に行動することでよりお話に入り込みやすくなることだ。
それに絵と音楽があるというのは読書と大きく違う。
このゲームはそのバランスがとてもいい。

お話は主人公がファミレスに行くところから始まる。
「普通のファミレス」に行ったはずなのに、気が付いたら奇妙なファミレスにいる。
ファミレスの名前は「ムーンパレス」。
そこには店員はおらず、数人の風変わりな客がいる。
そして「ここからは出られない」と告げられる。

登場人物たちはすでにそこから出ることをあきらめているようなのだけど、
自分はそうはいかない。なぜなら「プレイヤー」だから。
あがくためにここにいるのである。

体験としては「読書」なので、ここからは「やってみて」という感じではあるのだが。

登場人物たちはバックグラウンドも謎、言っていることがどのくらいほんとうかも謎。
でも私には彼らしかいないのだ。だから少しずつ会話して知っていく。
彼らはみんな一人で座っている。
永遠の時を過ごしてきた人たちは、誰もけだるげだ。
何か困ったことがあったら協力はするけど、お互いを深追いしない。
そこをプレイヤーが掘り返し、つなげていく。

そのうちに、彼らが大切に想っていたものを知る。
だがここに、出られない永遠のファミレスにいるということは、それを失った状態なのだ。
長い長い時間を、気を紛らわす方法もなく、繰り返し想いながら座っているのだと知る。
窓の外は暗闇に大きな丸い月だけ。それを見るとはなしに見つめながら。

ゲームのエンディングは2つ、と公式サイト(https://www.wakuwakugames.com/enjoythediner)で明かされている。
お話のすべてが明かされるエンディングにたどり着いた時、
あなたは登場人物全員の幸せを祈ると思う。

そして、ちょっと人間が嫌いじゃなくなるんじゃないかな。

※写真は5月のスウェーデンの公園。冬の厳しい国だからか、人々は遅い時間まで外で食事をしたりして暖かい季節を楽しんでいました。みんな英語が上手くて親切だったし、もう一度行けるといいな…。

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