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Broken "GEAR"

解析中.........…

....…

復元完了

【銃声音】
"今日はいい日になると思っていた"
【人や金属物が倒れる音次々と響く】
"雨が降り....." 
【救護シップの音】
「あれだ!見つけたぞ!降りろ降りろ!
"天気も悪い"
【複数人の足音】
「おい!急げ急げ!早く回収しろ!心肺停止だ!」
"憂鬱な日だ。"
「死人が多い!封鎖しろ!急げ急げ急げ!民間人を入れるな!」
"その理由は"
「G.C.C.の本部に連絡しろ! 」
"今日"
「クロム様が.....死亡した..... !

Broken "GEAR"

G.C.C.本社
ある昼下がり、渡辺がオフィスの窓から外を眺めている。
"......."
「あら、渡辺さんこんなところにいらっしゃったんですね。探しましたよ」
声の方向に渡辺が振り向く
声の主はG.C.C.の幹部であり渡辺の命の恩人でもあるクロムだった。
「今日も外を眺めてたんですね、何かいい物は見つかりましたか?」
渡辺が頷く
「相変わらず無口ですねぇ、ここには誰も居ないから喋ってもいいんですよ」
.
.
.
.
「ふふ、まぁ大丈夫ですよ。今日はいい天気なので仕事が終わったらお散歩にでも出かけようと思うんですけどご一緒しますか?」
渡辺は頷く
「では決定ですね。本日の16:00頃にいつもの場所で」
再び渡辺は頷く
「決定ですね、今日も何か好きな物を買ってあげますよ。それではこれを伝えたかった
だけですのでお仕事頑張ってくださいね」
そう言うとクロムは部屋から出て言った。

"....."
渡辺が窓を見ていると、次第に過去の記憶がフラッシュバックする。

「お前は今日で処分だな」
「殺さないで....?こいつもしかして」
「こいつ俺を突き飛ばしたぞ! 」
「B1が逃げ出したッ!捕獲しろ! 」
「例の変異体だ!許可が出ている!ぶっ壊.............................

.....ん。...辺さん...渡辺さん ? 」

"......!"
背後にはクロムが立っていた

「どうしました?頭を抱えていましたけど、大丈夫ですか」
渡辺は激しく頷く
「本当ですか...?あまり無理しないでくださいね。」

「.....すまない」
クロムは少し驚いたが落ち着いた声で話した
「あら、やっと話してくれたんですね。いつもみたいに気軽に話しましょうよ、渡辺さん」
渡辺は頷く
「では、私は忘れ物を取りに戻ってきたので、そろそろ仕事の方に戻りますね。先程も言いましたが、あまり無理なさらず。もし何かあれば、いつでも伝えてくださいね」
"......"
"クロムさんは今まで出会った人間の中で一番優しい人だった。
私のような機械に対して分け隔てなく接してくれる。
この社内にいる人間はみんな機械を道具として見ている。
そんな中でもクロムは異質だった。
私もそろそろ仕事に戻ろないといけない。
救ってもらった恩人のためにも"

午後15:50 "例の場所"にて

"......"
コツッコツッ
渡辺が足音に気づき振り向く
「あら、渡辺さん。もう着いてたんですか?早いですねぇ」
クロムが奥から歩いてきた。
「誰かに見られていませんよね?護衛や監視がいると自由に動けませんからね」
渡辺は頷く
「ではいつも通りお散歩に行きましょうか」

散歩に出かけた後は沢山の店を回りいつもの日常を過した、時間もあっという間にすぎた夕暮れの時、
帰路を歩いてる途中渡辺はふと疑問に思う。

"どうしてクロムさんは私に対してこのような扱いをするんだろう。
クロムは定期的に散歩やツーリングに誘ってくれる。
本来であれば、機械とツーリングや散歩などは異常行為と思われるだろう、感情を持たない、プログラムされている機械と遊ぶのは一方通行でしかないからだ。
しかし彼は私が感情の持つ機械だと言うこと理解しているから誘っているのかもしれない。何か裏があるのかもしれない"
「クロムさん」
「どうしました?渡辺さん」
「貴方は何故私を散歩に連れていったり遊んでくれたりするのですか?」
クロムは仮面越しでもわかるように驚いていた。そしていつも通り落ち着いた口調で話し始めた
「それは貴方といて楽しいからですよ。
それに貴方と遊ぶのもとても楽しいですし」
「私は機械です。それにそのような行動を取るのは合理的じゃないと思います」
「ふふふ....そんな固いこと言わないでくださいの私は貴方という人間に救われたんですよ」
「私に...ですか?それに私は人間じゃ――
「いいえ、私にとってあなたは一人の人間ですよ。喜び、怒り、そして恐怖する。趣味を見つけ、それに没頭する。正しく一人の人間じゃないですか。少なくとも私はあなたを1人人間だと認識してますよ」
"私が...人間..."
「ありがとう....ございます」
「それに、私も貴方と出会って色々変わりました、貴方という共に過ごせる友人が出来たので、とても人生というものを楽しんでいますよ。それに .....どこか貴方が昔の友人に似ている所もあって懐かしい気持ちにもなるんですよ」
「友人...貴方がここの社員になる前の親友ですか」
「ええ....そうですよ...無口なところまでそっくりです。
渡辺さん、これからも多数の困難や仕事がやってきます。しかし、これからも友人として仲間として協力していきましょうね」
「勿論....それは貴方への恩返しですから」
「では約束ですよ。渡辺さ──
その時ドンッと銃声がした
この場を空気を引き裂くような銃声が響き渡った後目の前でクロムの胸に血判が広がった。
一瞬の出来事だった。
咄嗟に渡辺は銃を構えようとするか何者かによって瞬時に腕が切断される。
"ッ.....! "
「あらら〜案外反応良くてビックリしちゃった」
笠を被った覆面の人間が自分の後ろで喋る。甲高く音声変換装置で喋ってるような女の声だ。
「あたしの姿、見えないでしょ。所詮は機械だからねぇ〜高性能なカメラを積んでても見えないよっ....てよく見たら旧型の機械じゃん」
舐めたような態度で女は喋る
「なんかいいなよ、喋れないの?まぁ、無理もないか」
「動くなッ!」
気づいた時には女の後ろにはクロム監視用のG.C.C.諜報員が立っていた
「あらら〜背後を取られちゃった。よく私の姿が見えるねぇ、それに気づかれずに動くのもうま──」
「黙れッ!もうすぐ救急隊員やG.C.C.部隊が来る、それまで幹部クロムの保護の為お前の身柄を拘束する」
「身柄を拘束〜?面白い話だねぇあたしを捕まえられると思ってるのかい?現にあんたら後ろにいる彼らに気づいてないじゃない」
「後ろ...?何ッ」
背後を取っていた諜報員が振り向こうとした時
パスパスッと軽い音が響き諜報員が倒れる。
「あんた、遅いよ〜」
女がそう言うと女の仲間がクロークを解除し姿を現す
「遅くなりましたキャプテン」
「たく、仕事を増やさないでよ〜
まぁ狙撃の腕は上手かったからいいや、
うちらの仕事はこれで終わりだよね?」
女はそう言いながら倒れたクロムに電子機器を近づける
「カデシュ会員番号22番
商業部門幹部クロム、間違いないね。」
「"キャプテン"この機械はどうしますか?」
「ん〜適当にぶっ壊しといて〜」
「了解です。」
"破壊され助けて貰ってここまで来たのに、また破壊されるのか。
いや、クロムさんのためにもここで死ぬ訳には行かない。"
仲間が銃を向けたその瞬間
渡辺は片腕で刀を取りだし目の前の敵を斬り伏せた。
「ッ...!」
仲間はそのまま倒れ込む。
倒れ込んだのと同時に渡辺の腕がもう一本破壊される
「あんた....なかなかやるねぇ、けどウチの仲間殺されちゃぁ困るんだわ。さっさと死んでもらえる?」
そう言うと女は渡辺を頭をナイフで刺しそのままショートさせ投げ捨てた。
「はぁ〜だる〜ほら刀で切られたくらいで歩けないなんて言わないでね?行くよ〜」
「はいッ....了解ですッ....」
「さて、痕跡でも残しておくか、G.C.C.やカデシュにも刺激を与えてあげないとだからねぇ〜」
女はそうブツブツ言いながらタギングを残した

"Non CREDIT"と

「こちら"テン"、仕事が片付いたから一旦帰還するね〜あ、あと負傷者1名だからその辺よろしく〜」
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"先日未明クロムが死亡した"
原因は国際テロ組織による行為であると判明しカデシュなどと連携しさらなる調査が進められている。

     救急隊員はクロムの心拍を遠隔で監視していたところ異常が発生したため即座に出動したが目的地は異常な電波による通信の乱れが生じ発見がおくれ15分後に到着した。

    司法解剖に居合わせたドクター2Vによるとクロムは既に心臓を撃ち抜かれた後に即死、居合わせた職員も頭を撃ち抜かれ即死している。

    現場で破壊されていた渡辺は損傷が激しかったがブラックボックスや一部損傷した記憶回路により破損寸前の1歩手前で何とか復旧が出来た。

    修復された渡辺だったがクロム死亡によりメンタルプログラムに異常を来たし休暇を取ることとなった。

    護衛不備等の責任追及やクロムの庇護が無くなったことにより社内での立場が無くなった渡辺は全記憶の削除または破壊が望まれたが、情報部門幹部補佐のW.A.R.D.E.N.の意向により情報部門諜報課に配属が決まった後表では退職したことになり
裏では諜報員として働き続けることとなった。

今回の出来事は社内において多大な被害を受け混乱をもたらした。

渡辺の心は壊れ、我々の優秀な歯車が壊れてしまったのだから

Broken "GEAR"

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