社会人日記 社会人10日目、天気:雪

今日の業務も疲れた。午前中は会議だった。
午後はいくつか事務書類の作業をしたあと、ひたすらにはんこを押す仕事をした。うちの職場のいちばんえらい人のはんこを契約書に押しまくった。
私ははんこを押す機械と化し、無心で30分くらい押し続けた。そのうち、自分は何か特別な版画作品でも作っているような気がした。小学校の図工の時間を思い出した。特に思い出したい記憶というわけでもなかった。

はんこを使った版画作品、作品というか、その行為、インスタレーションは、アイロニーのある作品である。私ははんこ文化があまり好きではないからだ。というか嫌いである。そんな人間がはんこをひたすら押しているなんて、それだけで何か皮肉めいたものがあるではないか。
職場に置かれたファイルには「令和元年」と書かれていた。自分が今いったい何をしているのかわからない。制服を着てひたすら書類を作っている。
タイムスリップしてきたと思いたかった。令和の時代にはまだ労働もはんこ文化も残っていたのです。いまでは信じられないことですね。押印は効率の悪さから今は使われておらず、全てデジタル化されています。朱肉とゴム印や当時のはんこ本体ははんこ博物館で見られます。
労働ほど我々の時間と健康を蝕み続けてきたものはありませんでした。労働により自分の居場所を見つける人々が多くいました。やりがい
YarigaiI、過労死Karoshiこれらの言葉は死語ですが、当時のビジネス書や新聞を見てみれば、これらの単語が頻出していることがわかります。

という時代から来たことにならないだろうか。
そんなことを思いながら、はんこを押しおわり、長くてさむい廊下を歩いた。
季節外れの雪が降っていた。桜と雪の写真を撮ってインスタにアップしたらバズらないかなと思った。そもそも仕事中だからそんなことはできないが。
単純にその景色は珍しく、そして美しいだろうと郵便を運びながら思った。

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