[DQ3]30タフ作成の成功率算出の復習 ~実は応用範囲が広く、RTAへの応用につなげる構想も~

1.はじめに

 第2回DQ五輪('22/1)で、前代未聞の競技が開催され、界隈を震撼させました。
 成功条件:DQ3の登録所で、体力30以上のタフガイのキャラを作成する
 大会ルール:ひとり1回のみ挑戦可能、動画を配信すること
(かつてはhttps://com.nicovideo.jp/community/co106941に説明があったようです)

低確率の事象を引くまで単純作業をひたすら繰り返す類のものです。多くの人が(自分も含めて)長時間の挑戦を経てリタイアされましたが、達成者も現れました。

2.本調査の意味

 種目の枠を超えて、様々な場面で類似の現象が登場します
『出るまで続ける、平均何回目で出ますか?』の類の現象は、同様の計算式で計算でできます

2.1 実はソシャゲのガチャも、本質的に同じ

 「出るまで続ける」ものに対しては、同じ議論が適用できます。

2.2 DQ3登録所の分析に使え、RTAへの応用も

 他の職業も同様のルーチンで体力などのパラメータが決定される。中にはRTAに役立ちそうな分析もできそう
 ※これを執筆したいがために、まずは30タフの分析を思い出しつつ、ついでに記事にした次第です

2.3 ゲームに限らずほかの分野にも

 例えば、「故障率が一定の電球が壊れるまでの時間」「コールセンターで次の電話がかかってくるまでの時間」や、「放射性元素の半減期」など、ランダムな現象の起こる時間間隔は、同様の分析が可能です
 数学的な説明は、とりあえず後回しにします

3.先に結論

 ・体力30以上の男戦士タフガイは、概算で期待値は95338人に1人
 ・1時間に1000回試行すると、試行時間の期待値は95.3時間程度のと予想される
 ・ただし、期待値の1/10程度の時間で引ける人が1割程度存在するが、平均の2倍の時間をかけても引けない人も1割強存在する

 割合としては、甲府市(人口19万人)の男性に一人いるかどうか…くらいです。競技としては、運が良い場合も悪い場合もひっくるめて平均すると、100時間程度が期待値になります。

4.この種目は何を教えてくれるか

4.1 DQ3のMMO化

 集団で1つの課題に挑む点が、実はエンタメ的にも数学的にもこの種目の本質です。大勢で寄ってたかってボスを倒すイメージです。
 数学的観点では『自分ひとりが達成する可能性は低いが、全員で十分な試行回数をこなせば、誰かが達成する可能性が高い』タスクです。
 実際、平均100時間、運が悪くても200時間あれば高確率で達成できるため、10時間プレイできる人を20人集めれば、それなりの確率で達成できます。

4.2 課題設定のセンスの参考に

 期待値100時間も絶妙にハードルの高い設定で、プレイヤーを30人くらい集めれば達成できる公算が高いです。

4.3 『出るまでやる』タスクのこなし方

 人間は単純作業が苦痛に感じる傾向にあります。中にはチャットしながら競技を行うような方々もいました。実務的には、この手のタスクは試行する人間の心理面まで含めて、やり方を設定するのが重要です。

5.具体的な計算方法について

5.1 達成率の計算手順

キャラクターの職業のパラメータの決定手順から、以下の計算をします
①初期ステータスの算出
②種の上昇値の算出
③タフガイになる確率の算出
④①~③を総合した確率の算出
⑤指数分布にあてはめ、結果の解釈

5.2 各ステップの仕様

①は下記の仕様のようです。男戦士の初期体力は9で、ランダムで追加されることになります。『ランダム』はここでは全て1/5で計算します(実際は、51/256か52/256と推定されますが、詳細不明のため一律1/5で概算します)

職業・性別ごとに決められた初期ステータスに対し、2~10個ランダムで「力」「素早さ」「体力」「賢さ」「運の良さ」のどれかを+1上昇させる

twitterのフォロワーさんに教わりました。1次ソースは不明です

②は、全てスタミナの種で体力を上昇させるものとし、種の個数は63/64で5個、1/64で6個とします(ソース多数。下記一例)。上昇値は1,2,3で等確率とします。
https://gcgx.games/dq3/luida.html

③は、戦士の体力が十分高い場合、性格は「タフガイ」と「てつじん」の二択です。等間隔と推定します。(ソースの一例)
http://riverport.s27.xrea.com/data/20051221

5.3 初期ステータスの算出

 下記が一例です。たいていは9~11、何回かに1回12、13以上はレアな部類です。

数式は下記になります

5.4 種の上昇値の算出

5種の場合と、6種の場合があります。各々の確率分布を表示します

具体的な計算式ですが、5種の場合を例にすると、下記のように考えていくのが簡易なやり方です。場合の数合計が243になることをチェックします。
 体力5上昇=上昇量がすべて1のとき(1通り)
 体力6上昇=上昇量が1つだけ2のとき(5通り)
 体力7上昇=上昇量が2つ2のとき、または1つ3のとき
・・・

5.5 トータルの確率算出

 以上より、「体力が〇〇以上の戦士」の確率が得られます。
タフガイに限定される場合、確率はこの半分なので、95338人に一人程度の割合になります。

6.RTAへの応用(構想)

 実は、5.2, 5.3の仕様は、他の職業や性別でもおそらく同じです
(もしかしたら5.2の2~10回のところは変動するかもしれません)
ということは、仲間の採用基準を設定したとき、どの程度の実時間でgetできるか、期待値を算出することが可能です。これはRTAに応用できる可能性があります。





★texコード(念のため)
\displaystyle P(9 + k) = \sum_{m=2}^{10}\left(\frac{1}{9}\right) {}_m \mathrm{C}_k\left(\frac{1}{5}\right)^k\left(\frac{4}{5}\right)^{m-k}


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