日中韓FTAについて

トランプ氏が米国の大統領に就任すると自由貿易と保護貿易に関する議論が一段と賑やかになるようになりました。その中で自由主義を維持すべきだという声が高まる一方で、トランプ大統領はTPPからも脱退し、さらに自由貿易主義から遠ざかるような発言を次々としました。そこで今回は自由貿易協定FTAについて自分の見解を共有したいなと思います。ただ今回は自分の関心のあるアジアについてFTAとはどういうものなのかを紹介しながら日中韓FTAを書きたいと思います。

1 FTAとは何か

FTAとは「Free trade Agreement」の略で、日本語では「自由貿易協定」と訳される。簡単に言うと「FTAとは、2つ以上の国や地域の経済をできるだけ統一化し、規模のメリットを追求すると言う経済効果協定である」。そしてFTAが目指す世界としては①関税の撤廃②サービスへの外資規制撤廃③投資規制の撤廃、投資ルールの整備④知的財産制度、競争政策の調和⑤人的交流の拡大⑥各分野での協力が挙げられる。そしてこれらが達成されることで人、モノ、金の行き来の障壁を低くすることができる。

FTAには締結国に対するメリット(経済上、政治上)とデメリットがある。経済的メリットとしては貿易創造・市場拡大効果、競争促進・経済活性化効果、争条件の改善(貿易転換効果への対応)、ルールに基づく紛争処理(政治摩擦の最小化)、そして制度の拡大がある。また、政治上のメリットとしては経済分野での外交政策遂行上の戦略的柔軟性の確保、経済的相互依存と政治的連携の強化、そしてグローバルな外交的影響力・利益の拡大がある。一方で、デメリットとしては食料自給率やエネルギー自給率が低くなる可能性がある、条件次第では不平等条約のように感じることがある、そして海外企業に国内のシェアを奪われる可能性があるといったことがある。

2 日中韓FTAへの期待

世界貿易機構(WTO)の新ラウンド交渉が停滞している今日、世界ではこれを補完するものとして、FTAによる地域協力の動きが拡がっている。WTOに登録されたFTA は、1990年末の27から2010年7月末には474に増加し、こうした流れを先導する形で、東アジア地域ではFTAなどの動きが活発に展開されてきた。しかし、北東アジア地域ではこれまでFTAの空白地域であったが、最近そこに新しい展開が見られることは画期的なことである。日中韓3国の間では2010年5月から政府間で共同研究が進められ、2011年12月26日その報告書が発表された。それによれば、日中韓FTAは、3国のFTAは3国の貿易投資を促進するのみならず、幅広い三国間協力を発展させ、更にはアジア太平洋地域における経済統合のプロセスを進展に寄与するとの認識を明確にした。そして、指針的原則として、①包括的かつ高いレベルのFTAを目指す、②WTOルールと整合的である、 ③バランスの取れた成果を目指す、4センシティフブ分野に然るべき配慮をしつつ建設的かつ積極的に交渉を行う、という4点を明らかにした。

実際に数字で見ても、日中韓FTAは三国間にとって利点の多い枠組みであると言える。例えば仮に日中韓FTAが成立した場合、日本の輸出純増額は593億ドルに上る。これが実現と、日本のGDPを約1.1%押し上げる計算となる。そのほとんどを中国から得ており、中国への輸出額は613億ドルに上る。そして中国の輸入純増はGDPの約0.4%に相当する253億ドルに上る。さらに韓国は189億ドルの輸出純増を得ると推計された。これにより韓国のGDPは約1.9%を押し上げられ、国内経済へのインパクトの観点からは韓国の得るメリットは小さくない。

3 日中韓FTAを促進する要因

まず、地理的な優位性である。EU、NAFTA、そして ASEAN のように「成功」と呼ばれる地域連携経済組織は、そのほとんどが国境を接している国々から構成されるという共通点がある。日本、中国、韓国は、EU諸国やアメリカ・カナダ・メキシコのように陸続きの接点はないものの、わずか数百海里の距離の海で繋がれている。その海は、見方を変えれば、海運という国際間貿易の物流の主軸をなすことができ、陸上輸送や空輸と比較して大幅に安い運送コストで、商品を提供できる可能性を有している。

次に、資源と労働力の相互依存性、補完性も重要で促進要素である。まず、自然資源の状況を考えると日本と韓国は狭い国土面積に山地が多いという特徴があり、自然資源や原材料の多くを基本的に輸入に頼らざるを得ない。日本の資源エネルギーの対外依存度は85%にものぼり、韓国も同様に開発可能な鉱産物資源が限られ、共に輸入に大きく依存している。中国は資源の自己消費量が多いものの、日本や韓国に比して資源の提供総量はけた違いに多い。日中韓 FTA の締結は、中国の資源の日韓へ安定供給に貢献すると考えられる。

さらに、もう一つの要素として3 国の産 業の補完性と成長余力である。日本は産業集積の度合いが高く、資本集約型およびハイテク型産業が幅広く分布する。韓国は新興工業国家で、特定分野ではIT関連産業が発達している。一方で中国は、工業化に踏み出した発展途上国であり産業集積の水準は相対的に低いことに加え、農業と労働集約型産業が比較優位を持っている。したがって、3ヵ国は産業の補完性があり、それぞれの比較優位を生かした産業を発展させる国際分業の経済効果が得られると考えられる。

4 日中韓FTAの経済に与えるデメリット

一方で日中韓FTAにはデメリットも存在する。日本や韓国においては、日中韓FTAが成立すれば、農業部門への打撃が大きいと予測されている。これは主に中国からの農産物輸入が原因だと言われている。それに対して、中国は主に製造業(自動車産業、ハイテク製造業、石油化学産業)に与える打撃が予想されている。これは日本や韓国から中国への輸出による結果である。

5 日中韓FTA締結を阻む要因

日本としてはTPPを優先させ、米国とともに中国の台頭をけん制、またTPPで合意した高い水準の成果を日中韓FTAに活かし、主導権を握りたいと考えている。また中国と韓国との歴史問題により日中韓FTAの締結を阻害している。

一方で日中韓FTAを阻む要因として日中韓三国間に亀裂が生じているだけではなく、外部国のアメリカも近年中国の台頭に対抗し、東アジアにおける米国の地政学的な影響力を回復させたいと考えているため、TPPをもって米国抜きの日中韓FTAやRCEPに対抗したいと考えている。しかし、なんといっても日中韓FTAがなかなか促進されないのは日中韓三ヶ国の間の歴史問題が根元原因ではないかと考える。日中間は第二次世界大戦後国交を回復し、日本が巨額のODAなど中国への経済支援を行なっているにもかかわらず、底辺では反日感情が完全に払しょくされたとは言い難い状況が続いている。そして日韓間も日中間と同じような問題を抱えているため、反日デモなどが局所的にあるとはいえ、やはり日中韓FTA交渉に暗い影を投げかけている。さらに、中韓間は最近のTHAAD問題で関係を悪くしているため、すでに両国が署名した中韓FTAの実行が難航していることから日中韓FTA交渉においてTHAAD問題は交渉促進の足かせになる可能性が高いと考える。

6 日中韓FTAのこれから

日中韓FTAに対する期待の声は大きいが、同時に課題もたくさんあるのが現状である。トランプ氏(TPPから脱退すると宣言)によるアメリカ選挙当選を背景に、もともと日本として期待の高かったTPPもアメリカ抜きになる可能性が高いということを踏まえ、日本や韓国が再び日中韓FTAを最重視するのかといった見解もある。そして日中韓FTAが本当にTPPをとって替わるのか、それとも日中韓FTAよりもRCEP方を優先するのか、これらのことを予見することはできない。ただ、日中韓FTAを阻害している大きな原因の一つとしてあげた歴史問題は今後日中韓FTAの交渉だけではなく、三国がこれから様々な枠組みや国際協力をする上で潜在的なリスクとなることが考えられる。(現に韓国が朴政権で日本政府と合意した慰安婦問題において、韓国側が両国の合意を再び覆そうとしており、これが原因で一度は関係が回復すると予想された日韓関係に影がかかるようになった)そこで、こういったリスクが顕在化する前に三国間での歴史問題の解決に向けて取り組まなければいけないと感じた。そのために三国政府は進んで会話をする場を設け、お互いの考えていること素直にぶつけ合うことが大事である。そしてその中でお互いが相手側と合意できるような事項を見つけ、それらを今後の日中韓三国が協力できるような分野になるようにすることが三国間の歴史問題を解決する上で重要なことではないかと考える。また、政府間だけで対応するのではなく、できるだけこれから三国間の将来を担う若者世代が交流を深化できるような機会を増やすことも重要だと考える。

いかがでしたか?日中韓FTAの話題はかなり前からありましたが、最近の三国間の政治関係が悪くなったことが原因で日中韓FTAの先が不透明になっています。僕としては早く三国間で合意し日中韓FTAのメリットをより早く三国が享受し、そしてアジア全体にも日中韓FTAのプラス効果を与えて欲しいと思っていますが、なかなか国際関係というのは一筋縄ではいかないものですね。だから今は文章の最後でも書きましたが、なんでもいいからとりあえず三ヶ国の首脳が毎年一つの場所に集まり、同じ場所にの空気を吸って、話し合うことが一番重要だと考えています。以上でした〜

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