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ペーパーコンサベーションについて


ペーパーコンサベーションとは

ペーパーコンサベーション(紙の保存修復)とは
紙を支持体とした作品や資料の本来の姿(現在の状態)を維持し、
活用を考慮しながら、長く保存することがその役割だと考えています。
そしてそれを実施するのがコンサバターで、保護、保存に重きを置き、
実際の修復処置はその一部として捉えられています。

保存修復家(ペーパーコンサバター)は
調査・保存管理を行ったり、アドバイスをしたり、
実際に損傷を持つ作品に修復処置を行ったりしています。

紙作品と紙資料

上で述べたようにペーパーコンサベーションというのは、
紙支持体とした作品や資料を保存修復することです。
紙作品と紙資料には、違いがあるのでしょうか。
紙を支持体としたモノという括りでもいいとは思うのですが、
あえて意味を考えると以下のように考えられています

紙作品とは
紙を支持体とした絵画作品
(版画、水彩画、ドローイング、日本画など)
 
紙資料とは
紙を支持体として情報を載せたもの
(書籍、文書、地図、新聞、図面、ポスターなど)
 

なぜ、ここでこの意味にこだわったのかと言えば、
「修復」の目的を考える際のヒントになるからです。

修復と修理のちがい

「修復」とは、建造物などの、傷んだ箇所を直して、もとのようにすること
「修理」とは、壊れたり傷んだりした部分に手を加えて、再び使用できるようにすること
                       『デジタル大辞泉』より
 
この二つの言葉は、似ているようで微妙に異なります。
もとのようにすること、すなわち現状維持をすること。これ以上損傷を広げないようにすることが「修復」

再び使用することができるようにすること。つまり、使える状態にすることが「修理」

私は、絵画作品と情報を載せた資料の処置の違いを説明するときに次のように話しています。
「絵画作品を利用する、というのは鑑賞する、展示することで、
資料を利用するというのは、その情報を読み取れるようにすること。
見るものと使うものと考えた時、元の状態に戻す必要があるのは鑑賞するものであり、使える状態にする必要があるのは情報を利用するものである」と。

そのため、絵画作品には「修復」すると言い、紙資料には「修理」するということが多いです。
けれども、紙資料にもポスターのように絵画作品になりうるものもあり、
書籍でも内容だけでなく装幀が美しいモノなどもあるため、完全に区別できるわけではありません。

「修復」と「修理」の違いは、最終目的が「元の状態に戻すこと」と
「使用できるように直すこと」ということではないかと考えています。

言葉の微妙なニュアンスをいろいろ考えすぎて、「修復」とか「修理」ではなく、「処置」するという言い方をすることが多くなってきてしまいました。
私の変なこだわりですので、一般的には「修復」するとか「修理」するという言い方で問題ないと思います。

「修復」でも「修理」でも、壊れたものを直すことは同じです。
修復家の仕事は、「壊れたから直す」ことだと考えられてきました。
しかし、現在の修復家の仕事は「壊れないように予防する」ことです。

次回は、「壊れないように予防する」ことについてお話したいと思います。

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