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保存額装をおすすめ

「保存額装」とは、
物理的に弱い紙作品(紙を使用した作品)や紙資料に対し、作品や資料に悪影響を与えない材料や技法で額装し、作品・資料の保存を行いながらその公開や展示を果たす方法のことを言います。

そもそも額装は、作品の美的、芸術的効果を視覚的に高める役割があります。
作品をきれいに見せるために見た目を整えることは大事なことです。
長期保存ではなく、展示のための一時的な額装をすることもあると思います。

ここで、額装における問題点を考えてみます。
額装された作品が変色してしまったり、額から開けてみたらマット部分が
変色していたり、作品にシワが発生したり。こういう現象を見かけたことがある方もいると思います。
こうした現象は、保存環境、展示環境があまりよくない場合や使用されている材料が作品に悪い影響を与えている場合、もしくは両方が原因だと考えられます。
一時的な展示の場合、作品に劣化が起こる前に適切な方法に取り替えることができます。(直射日光があたるとか、エアコンの真下とかは一時的であっても避けた方がよいですが)
しかし、数か月、数年に及び展示や保管をする場合、不適切な材料や保管環境は劣化を発生させ、修復を行わなくてはいけない状態にしてしまいます。

作品の長期保存、長期利用を考えるコンサバターとしては、やはり材料にこだわり額装をすることを勧めています。

材料にこだわるとともに、作品に負担を書けないマッティング方法も大事です。
作品に直接粘着テープを使用して固定する、というのは中性テープであっても避けた方がよいでしょう。

作品をテープで固定。お勧めしません。


テープを剥がす際に本紙を破いてしまう恐れがあります。
また作品を窓マットに固定するのも作品の安全な取扱いができません。
両面を窓マットにし、表・裏ともに見せる展示というような特殊な場合を除き、作品は台紙マットに固定しましょう。

作品の固定には、和紙としょうふ糊(またはメチルセルロース)を使用することで長期保存とともに何かあったときに問題なく取り除くことができます。
資料保存の原則については以前の記事「予防保存をする」でも書きましたが、
安全性と可逆性を考えて保存修復処置を行います。


修復対象であっても新しく作られた作品であっても、作品を長く良い状態で
保存、利用できるようにする気持ちを忘れずに仕事をしたいと思います。

窓マットの色を選択中。
これらも中性紙です。


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