アメリカかぶれ

まえがき

なぜ50年も前のアメリカが今気になるんだろうという思いがあった。1960年代に育った僕たちはみんなアメリカに憧れていた。でも歳を重ねるにつれていつのまにかその憧れは忘れられていく。けれども初めてのアメリカ旅行は間違いなく僕の人生を変えたのだ。アメリカは僕の先生だった。日本も気が付けばアメリカの後をついて行っている現実に気がついた。あの50年前に見た光景はその後20年経った日本そのものであった。僕は50年前に日本の将来の景色を見ていたのだ。旅はタイムマシンだった。
とすると現在僕が住んでいるアメリカは20年後の日本なのか?
そうだとすれば明るい未来だ。デジタル社会が完成しているアメリカとこれからデジタル社会を作ろうととしている日本。素晴らしい国になること間違いなしだ。
アメリカは僕たちの先生である。

第一章

人生は旅である
旅に真実がある
これを実感したのは多分初めてのアメリカ旅行だった。
1974年8月僕は羽田からアラスカ経由でサンフランシスコに降りた。初めてみるアメリカの風景はまったく想像を超えた世界だった。全てが新鮮で素敵だった。
バスで宿泊地のバークレーに向かう。Durant Hotelはカリフォルニア州立大学バークレー校のすぐ近くにある。もう日が暮れていて17時間の旅に疲れていた僕は泥のように眠った。
 
朝目が覚めると見知らぬ人が隣のベッドで寝ていた。
ここはどこだ?ようやくここはアメリカで昨日着いて団体旅行で一緒だったルームメイトが隣で寝ていたことを思い出した。
熱いシャワーを浴びてドアを開けるとルームメイトが「おはよう」と言ってニコニコしていた。外はもう日が高い。さっそくアメリカ探検スタートだ。
 
アメリカ上陸第1日の朝はホットドッグだった。ホテルの前にホットドッグ屋があったのだ。初めて英語を使ったらすぐに通じて嬉しかった。ワンホットドッグプリーズと言えば通じるのは当たり前だけどやっぱり不安だった。
自分でケチャップとマスタードをつけてほおばる!美味い最高だ。これがアメリカの味かと感動した。

十分な朝食の後は散歩だ。ホテルの前の道路はDurant通りその道を左に進むとテレグラフアベニューに突き当たる。カリフォルニア州立大学バークレー校正門から伸びるこのテレグラフアベニューはヒッピーみたいな格好のちょっと怪しい人たちがいっぱいいたけどよく見ると全部学生でしかも僕と同じような年齢に見えた。サイモンとガーファンクルのサウンドオブサイレンスで有名な映画「卒業」で観た大学生とはまるで違っていた。
「卒業」の中のダスティンホフマンはアイビーでバッチリ決めてたからあまりのイメージの違いに驚きちょっとガッカリした。

映画「卒業」はこのカリフォルニア州立大学バークレー校が舞台だ。最後のシーンで結婚式に無理矢理押しかけて教会からキャサリンロスを奪って2人で逃げるシーンがラストだけど、あの教会はバークレー校の中だったのかと思って校内をうろちょろしてたら生協に行き着いた。すごく大きなCO-OP
にびっくりなんでもある。赤ちゃんのよだれかけはUCLAのロゴ付きだ。学生結婚をしたカップルのためものか?でもノート2冊とBERKELEY と胸のところにプリントされた青いティーシャツを買った。

今回の最大の目的は買い物である。日本ではアメ横でしか手に入らないMade in USAをしこたま買い込むことこれが一番の使命だった。リーバイス、NIKE、Brooks Brothers それとレッドウイングだ。しかしどこに売ってるのかまったくわからない。ここバークレーにはジーパン屋があってリーバイスは簡単に見つけられた。NIKEも大学の側の店で見つけた。けどそれだけではダメだ。そうだサンフランシスコまで行ってみようと思いついた。

サンフランシスコまでは2種類の行き方がある。バスと地下鉄だ。地下鉄はバート(Burt)と言っていわゆる通勤電車である。すごい事に日曜日は休みである。でも速いのでバートを使ってサンフランシスコまで出てみた。ユニバーシティアベニューを北の方に15分ぐらい歩くと駅がある。自動販売機で切符を買ってホームで待つ。なんとこの電車無人化されていて運転手がいないのにまたびっくり‼️けっこうガラガラの車内で時差ぼけのため居眠りしているうちに終点のサンフランシスコに着いた。
サンフランシスコの中心の場所はユニオンスクエアである。その近くのパウエルストリートとマーケットストリートの交差点がバートの駅である。ユニオンスクエアの周りは高級デパートや高級ホテルがあって僕たちには必要なし。少し危険な匂いのするマーケットストリートを探索し始めた。

しかし寒い。8月なのにこの寒さはなんだ。毛皮のコートを着ている女性を見かけた。でもティーシャツの人もいる日本の常識では考えられない風景だ。これがアメリカか?まず寒さしのぎに何か上着を買わなきゃとマーケットストリートを北の方向に歩き出した。どんどん怪しい雰囲気が増してくる。まずいぞ、これは来ちゃいけない場所か?と思ったらアーミーネイビーと看板が掛かったお店を発見して恐る恐る入ってみた。宝の山だ!アメ横の100倍の量が積み上がっていた。なんでもある。これはすごいぞ。感動した。でも店員がいないと思ったら奥から老夫婦がニコニコして出てきた。僕はすかさずハンガーにかかっていたLeeのストームライダーを見せてくださいと指で指すと僕をみてこれかなというふうにサイズ38のストームライダーを出してくれた。アメ横でも売ってたけど高くて買えなかったからHow much?と聞くとnineteenと聞こえた。通じるぞ僕の英語。そして安いアメ横の半額だ。僕はストームライダーを着てこの店を後にした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?