土曜午後のピアノ教室
また、土曜日がやって来る。わたしにとってここ最近の土曜日は、恐怖の土曜日だ。
何故なら、5歳の中間子(以外、中子)のピアノ弾き禁止令が出されたからだ。
それは、先週のことじゃった。
と、茶化して書かないと、母としては心中穏やかでいらないので、物語風に書く。
A子は子どもから大人まで精神発達をサポートする心理士である。A子には3人の子どもがいて、小学生の長子、保育園年長の中子、年少の未子がいる。A子の夫は家事や育児をA子と共同してよくやるが、夕方から夜まではほぼA子のワンオペで家庭を切り盛りしている。A子の子どもたちは、心理士の目線で見ても、知的発達、情緒発達ともに問題はない。しかし、中子と未子の保育園チームは、まぁまぁ多動傾向が見られるような、脳機能上の過活動タイプだ。それでも、発達外来に受診させ、診断を受けるレベルではなく、年齢とともに成熟してくるだろうと思われ、A子は気にもとめなかった。但し、保育園の先生たちとは、そのような傾向があることは情報共有し、特に中子のクラスは多動傾向が強いクラス文化があることも把握している。
物語風でなく、事例検討風になったが、まぁよいだろう。あくまでも、この事例はモデルケースである。
そんなA子は、いつも通り、ワンオペなので、子ども3人を引き連れて、ピアノ教室に行った。この週は、A子が単独で海外旅行に行ったためA子の夫がワンオペ主夫であった。そのため、長子と中子のピアノ練習にA子は付き合えず、ダレた雰囲気と母への甘えと置いて行きやがってこのヤローの反発もあり、ピアノ教室への道のりには不穏な空気が流れていた。
そして、やはり、その不安は的中した。中子はピアノ教室の椅子に座ってはみたものの、ふざけて弾いて、全く先生の指示が入らない。勝手に鍵盤を強打する。
いつもは優しく丁寧なベテランのおばあちゃん先生も、コレにはキレた。
「この子が自分から弾きたいと、言いだすまで、ピアノには触らせません。ワークブックをやらせます」と、静かにおっしゃった。
という経緯で、ピアノ教室出入り禁止令ではないが、ピアノ弾くな令が出たわけ。
ちなみに、長子は小さい頃から、全く多動傾向はなく、道路への飛び出しもない、行動抑制の聞いた子どもだ。
なので、別のピアノ教室でピアノを5歳から習い始めているが、全く、このような多動傾向ゆえのダラけ、おふざけはなかった。
同じ両親から産まれたとしても、遺伝子と環境の影響は半々だから、きょうだいでも個体差はかなりあるのが興味深い。性別の差もあるが、出生順位もあるし、子育てというのは、発達研究者にとって、かなり、エキサイティングな事例研究と言える。