見出し画像

自分ファーストの意味違ってない?

なにかのきっかけで、とあるママのブログを読む機会があった。そのママとの面識はないし、普通に暮らしていたら全く接点はない。

けれども、SNSというものは本来混じり合わない関係性を軽々と超えて、生活の一部を曝す。一部だから、ほかの部分は想像の域なのだけど、それを差し引いても、あまりにも無計画で自分本意過ぎると思われる子育てをなさっている。

だもので、発達を科学する研究者としてはびっくり。

そのママは第3子を妊娠中に離婚して、都会のタワーマンションからある地方へ子ども2人を連れて旅に出る。そして、その場でその場に移住を決めたという。まぁ、ここまではわかる。

だって、わたしも妊娠中に子どもを連れて母子移住したから。子育て最優先なので、その頃わたしが住んでいたところでは、わたしの思うような環境を子どもに与えられないと考えたからだ。

そう、子どもを育てるには、環境が大事なのだ。人の知能や性格など、その人を作るものは遺伝子と環境の相乗効果で作られる。

その比率は、個人ごと、分野ごとに違うのだけど、知能であれば環境は3〜5割、遺伝子は5〜7割と言われて、研究によってその比率は前後するが概ねこんな感じだ。

だから、人が育つ上で、環境というものはとても大事という合意が心理学をはじめとした人間科学にはある。

まぁ、固いことは置いといて。

わたしがびっくりしたのが、ママのその移住のコンセプトが自分ファーストであることだった。

え?子育て環境を優先じゃないの?自分がとあるスピリチュアル系イベントに出て、そこで出会ったグル(スピリチュアルコミュニティのヘッド)に感化され、すぐに移住を決めたという。

うん、そこもわかる。わたしもスピリチュアルは好きだし、感化されやすいから。

でもさ、子育てってもっと大事だよ?人を育てるって、感性だけで進むのはアウトだよ?自分の感情に流されていたら、感情で子どもを叱ったり、可愛がったりしちゃうよ?

なんのために子育てへの科学的研究がなされているのだろう?

と、余計なお世話ながら思ってしまった。

そのママの育児コンセプトは、自分ファーストなので、移住先の家も決まらないまま子どもたちを連れて移住し、家を二転三転引越したという。

え?家を決めて引越しじゃないの?
ひょー?すごすぎる!

家を借りるなり、買うなりそれは、経済活動で、いきなり無職の妊婦で子連れには貸さないと思うよ〜。

そして、その仕事も自分がその移住までの道のりをライブ配信したもので収益を得るそうだ。え?仕事、これから作るの?

なんでも、存在がアートらしい。
そ、そうですか。
アーティストなんだね。

ここまではまぁ、わかる。
大人だし、好きにしたらよいと思う。

だけど、子どもは違う。

youtubeは好きなだけ?

ママは楽ちんが一番?

え?それ、自分に都合が良すぎるよ?

都合をよくしたいのはわかる。だって、子育ては大変だもん。だけどね、自分の好きな時に可愛がり、後は放置では、子どもは育たないよ。

YouTubeのようなメディアを好きだけ見せ、その間に自分のことをする?

メディアへの暴露が子どもの脳神経の発達に影響するから、アメリカの小児科学会をはじめとして2歳以下の子どもへの制限があるくらい、メディアとの距離は保護者がコントロールせねばならないんだけど?

ママが楽ちん?
確かにそう。

だけど、都合のいい時だけ可愛がるのは無理だ。

だって、子どもはそんなに都合はよくない。かわいい時もあるし、かわいく思えない時もある。

でも、全部をまるごと受け止め、保護者として時には自分を抑えて、先に生まれて生活してきたものとして、教え導かねばならない、それが親だ。

そんなにうまくいかないから、ママも葛藤するのだけど、その葛藤があるから子どももママも人として成長する。

自分ファーストはいい。子育てに疲れて、自分ファーストでなくなっている時、一時的に羽を休めて自分を可愛がる時間を取ることは必要だ。

ママじゃなくても、自分の人生イニチアシブを自分が取ることはとても重要だ。

でも、それはあくまでも自分の人生においてだ。子どもは違う。

子どもは自分で決めたり判断するには体も脳も未熟で圧倒的に経験が少ない。だから、先に生まれたものとして、子どもを教え導く教育と保護の責任がある。

さらに、人の発達には一定の順番があって、その時期になされるべき課題やできることが様々な研究によって明らかにされ、日々知識は更新されている。

逆に言えば、そのセオリーに沿わせれば、個人差はあるけれど、だいたいのことはできるようになるし、無理がない

また、わたしたち、子育ての担い手の大人だって、自分というものは移ろいやすくて、不確かで、自分が全てではないことを知った上での覚悟が必要だ。

要するに、子育てってものは、己の感性だけで進めてればうまくいくものではないのだよ。それはいつか破綻する。

子どもをよく見て、その個性を伸ばすには何が最善か、子どもファーストのゴールでありながら、親として自分ファーストでいられるバランスを取る。そして、都度、修正してゆく。

無鉄砲に無計画に人は進むって、危険じゃない?なんのために、人を科学する学問データがわたしたち研究者が集めて来たのか。データをきちんと生活に還元したいなぁと、思う日曜日の朝。


論文や所見書き、心理面接にまみれているカシ丸の言葉の力で、読んだ人をほっとエンパワメントできたら嬉しく思います。