唐突にそう問い掛けると

唐突にそう問い掛けると、桜司郎は小首を傾げた。考える素振りをするが、全く分かっていなさそうで土方は笑みを深くする。
 
「江戸の廓──吉原なんかではな、張見世の女がそうするんだ。誰でも良いって訳じゃねえ、気に入った客がいれば煙管を差し出す。すると、」
 
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「後は床にしけこむって訳さ。つまり誘ってんだよ」
 
 
 それは艶めいた話しだった。桜司郎は眠そうな目をみるみる丸くし、顔を赤くする。
 
 その反応を見た土方はまだ生娘だな、と確信を得た。
 
「そ、そういう話しは私は……!それより副長、早く帰りましょう。副長が門限破りは良くないですよッ」
 
「おっと、もうそんな時間か。分かったよ」
 
 笑いながら煙草を捨てると煙管をしまう。土方は膝を立てて立ち上がった。 二人はこっそりと裏戸から屯所へ入る。いざという時の隠し戸であり、限られた幹部しか知らないと土方は言った。少し酔っているのか、まるで秘密基地を教える子どものように無邪気な笑みを口元に浮かべている。
 
「これで門限破りにゃならねえだろう」
 
「副長……、悪い顔をしていますよ」
 
「今回ばかりだ。お前さんが黙っときゃバレねえ」
 
 帰ってきたばかりで処罰も嫌だからと桜司郎も共犯になることを決めた。誰も周囲に居ないことを確認し、桜司郎は一番組の部屋へと戻っていく。
 
 
 部屋の戸板に触れようとした時、背に視線を感じた。ゆっくりと振り向くと、少し離れたところに伊東が佇んでいることに気付く。
 
 ばっちり視線がかち合ったと思えば、伊東が人当たりの良い笑みを浮かべて近付いてきた。
 
「鈴木君、お帰りなさい。よくぞ戻られましたね」
 
「伊東参謀。ご無沙汰しております。お怪我はありませんでしたか」
 
 同じように笑みを返せば、伊東は目を細める。
 
「ええ。貴殿のお陰で、この通りに。鈴木君とは一度、色々と話してみたいと思っていたのですよ。礼も兼ねて近々お付き合い下さいね」
 
 
 では、と踵を返した伊東の背を桜司郎は眺めた。そして一歩踏み出すとそれに向かって口を開く。
 
「あ、あの!」
 
 その声掛けに、伊東は振り向いた。
 
「私も、伊東参謀の講義に出たいと思っておりました。ぜひよろしくお願いします!」
 
 そう告げると、伊東は驚いたような表情を浮かべた後にすぐに嬉しそうに口角を上げる。
 
 
「勿論です。いつでもいらっしゃい、歓迎しますよ。……では、お休みなさい」
 
 伊東の姿が見えなくなると、桜司郎は空を見上げた。白い光を放つ月が浮かび、呼吸に合わせて霧が空に舞う。
 
 
「──世を知る覚悟、己を持つ覚悟……か。もっと向き合わなきゃいけないよね」
 
 ポツリと呟くが、無論誰からも返事はなかった。明日からの特別休暇をどのように使うかは既に決めている。
 
 早く寝ようと今度こそ部屋へ向かった。 翌日、澄み切った空の下を桜司郎は早朝から一人で歩いていた。もう一度、自身の覚えている限りの軌跡を辿ろうと思ったのである。高杉とそうしたように賀茂川沿いを歩く。人影は少なかった。
 
 東の空からはゆるりと朝陽が昇ってきており、桜司郎の横顔を照らす。
 
──そもそも私は何故高杉さんに拾われたのだろう。何故、雪が降るような日に山になんて居たのだろう。に居た記憶が無い桜司郎は、ぼんやりと考えるがやはり思い出せなかった。
 
 
──私の両親は生きているのだろうか。故郷は?友人は?何故、女子の身でありながら剣術を?
 
「……やっぱり思い出せない」
 
 その呟きは冷たい風に誘われて空へ消えていく。ふと、孤独だと思った。人とは厄介なもので、

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