入江はすみませんでしたと綺麗な

入江はすみませんでしたと綺麗な土下座を披露したが文は一言,
 
 
「許さんけぇ。」
 
 
と笑顔で告げた。これが地獄の始まりだと閻魔からの宣告だった。
 
 
朝餉を食べてから文は二人で散歩でもしておいでと言った。昨日散策した場所とは別,川を挟んで反対側へ行ってみれば?と提案した。
そちらには桂の実家がある。見に行ったついでに石でも投げたらいいと笑顔で言われたが流石にそれは出来ない。
 
 
「文ちゃんすげぇ根に持っとったんやな……。」 https://www.easycorp.com.hk/en/bank-account
 
 
「と言うかどんな嫌がらせしてきたんです?」
 
 
「あんま覚えとらんそっちゃ。その当時は文ちゃんが玄瑞の事が好きでよく私らについて回ってたのをからかっとって……。」
 
 
「やる側は覚えてないでしょうけどされた側はずっと忘れませんからね。」
 
 
「はい……。」
 
 
どんな報復を受けなければならないのか入江は戦々恐々とした。
 
 
 
 
 
一方で阿弥陀寺には幾松が訪ねて来ていた。
 
 
「桂さんなら出ちょるで?何時になるか分からんが一度はこっちに顔出すわ。」
 
 
訓練をしながら高杉はまた夕方に出直せと簡単にあしらった。側にいる伊藤は幾松と口を聞きたくなくて気不味そうに目をそらし口を一文字に結んだ。
 
 
「別に桂はんに用はないわ。桂はんへの用はここに来た初日に文句言うたんで終わったもん。お三津ちゃんが……帰ってこうへんって聞いたから……。」
 
 
「おう。九一が連れて逃げた。いつ戻るんかも戻って来るんかも分からん。」
 
 
『白石さん美人やからって余計な事言っちょらんやろな……。』
 
 
高杉は心の中であの助平親父と舌打ちをした。
 
 
「そう……。それで私何手伝えばいい?」
 
 
「は?」
 
 
高杉と伊藤は声を揃え,口も半開きで幾松を見た。
 
 
「お三津ちゃんここのお手伝いしとったんでしょ?私が出来る罪滅ぼしは今それしかないんやもん。」
 
 
ぽかんとする二人に幾松はイラッときた。
 
 
「何なん?私かて罪悪感ぐらいあるわ!ホンマにお三津ちゃんには聞かせる気なかったもん……。桂はんがお三津ちゃんは家守っとる言ってたし,壬生狼も目撃情報あるって探し回っとったからこっちに来てるやなんて思わんかった……。」
 
 
幾松は胸の前で腕を組んで深く息を吐いた。
 
 
「それに土方の件も……。私も女やし寒い暗いあんな河原で好きでもない男に凌辱されるやなんてどれだけ屈辱か分かるわ……。あの時訪ねて来た吉田はんに言われた言葉まだ引きずってんねんから。」
 
 
「稔麿?」
 
 
高杉と伊藤は顔を見合わせた。「お三津ちゃんが土方に襲われたの教えに来たの吉田はんやの。そん時言われたの。
一人で飛び出したのはお三津ちゃんの失態。お三津ちゃん引き止められんかったのは桂はんの失態。桂はんの気持ちを繋ぎ止めれんかったのは私の失態……。嫌な言い方しはるやろ?」
 
 
もう故人だから悪く言うつもりはないが幾松はふっと笑ってあの時の吉田の冷たい笑みを思い出していた。
 
 
「危ないのにお三津ちゃん飛び出させたのは結果的に私の責任……。あれからお三津ちゃんに会うのは叶わんかって謝りも出来んくて今度はこれ……。ホンマに……私嫌な女……。」
 
 
幾松は顔を隠すように俯いた。
 
 
「分かった。三津さん戻るまで頼むわ。来い,ここのお母紹介する。俊輔あと頼むわ。」
 
 
「おう。」
 
 
やっぱり気不味くて伊藤は幾松の顔を見れなかった。でも幾松の正直な気持ちを聞いて少し反省した。
 
 
 
 
 
 
「なぁ……高杉はん。ここの男共胃袋阿呆なん?」
 
 
夕餉の支度で汗水流して焚き上げた白飯が飲み物の如く男達の中へ消えていく。
 
 
「体が資本やけぇ。」
 
 
「それにしても限度ってもんが……。」
 
 
「姉ちゃん綺麗やけど入江の嫁ちゃん程の愛想ないな。」
 
 
突然目の前に現れてそう吐き捨てた山縣の頬を幾松はしゃもじで引っぱたいた。
 
 
「高杉はん隊士の躾ぐらいしたらどないなん?」
 
 
「す……すまん……。」
 
 
「幾松さんすみません,こいつ誰に対してもこうなんで……よく言って聞かせます……。」
 
 
この後始末はいつも赤禰だ。山縣の後頭部を押さえつけて一緒に頭を下げた。

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