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ケアと本-本の文化が作るコミュニティとケア-ケアまち座談会リターン

2021年5月7日、21:00〜22:20に開催した「ケアまち座談会リターン 本の文化が作るコミュニティとケア」のレポートをお届けします。

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当日のプログラム
21:00 イントロダクション(モデレーター:守本陽一)
21:10 チェックイン
21:15 登壇者ピッチ:土肥潤也、來住友美
21:30 ダイアローグセッション:土肥潤也、來住友美、守本陽一、吉田遼太(team TENT.)
22:00 参加者同士の座談会
22:10 質疑応答
22:20 クロージング


登壇者紹介

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土肥潤也
コミュニティファシリテーター
1995年、静岡県焼津市生まれ。早稲田大学社会科学研究科修士課程 都市・コミュニティデザイン論修了、修士(社会科学)。商店街の空き店舗を活用した完全民営・黒字経営の図書館「みんなの図書館さんかく」や、商店街を遊び場にする「みんなのアソビバプロジェクト」や起業家支援など、幅広くコミュニティのデザインに取り組んでいる。

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來住友美
真鶴出版・宿泊担当
1987年生まれ。大学卒業後、2年間青年海外協力隊でタイ南部へ日本語教師として派遣される。その後フィリピン・バギオの環境NGOにおいてゲストハウスの運営を行う。2015年4月より真鶴町へ移住し、「泊まれる出版社」をコンセプトに真鶴出版を立ち上げ宿泊を担当。宿泊ゲストには1〜2時間一緒にまちを案内する「町歩き」を行い、普通に来ただけではわからない真鶴の魅力を紹介している。


登壇者ピッチ

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みんなの図書館さんかく
土肥潤也

皆さんこんばんは。

静岡県の焼津市で「みんなの図書館さんかく」という図書館をやっている土肥といいます。

まさかケアというテーマで、医療関係者皆さんとこういうイベントでお話させていただくことになると思いませんでした。

今回のきっかけは守本さんからお誘いいただきました。

2020年の2月ぐらいですかね、さんかくは2020年3月3日にオープンしてまして。まだ開館してないのに、「突然さんかくを視察したい」とメールが守本さんから来まして。この人はどこで情報を見つけてきたんだろうっていう感じでした。笑

そこから気づいたら「だいかい文庫」という豊岡の図書館が始まっていました。アンテナが高いな!と思いました。

うちは全国で10館ぐらいに増えているんですけれども、本日お話しさせていただくのを楽しみにさせていただいています。

ちなみに「焼津に来たことがあるよ」って方いらっしゃいますか?
いないっすね、今のところ。笑

「焼津って聞いたことがある」ってって方いらっしゃいますか?
お〜、何人かいらっしゃいますね。

焼津は実は水揚げ額、カツオの漁獲量全国第一位の街になっております。

さんかくの場所は、JR焼津駅南口(JR静岡駅から電車で12分くらい)を降りて海側に行くとですね、こんな感じの駅前通り商店街っていうのが広がっております。

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ここが僕が普段活動しているフィールドになっています。まあご覧の通り、実は朝の6時ぐらいに撮った写真なので空がいい感じになっているんですけど。この時間そもそもお店やってないよっていうのもあるんですが、シャッター通り商店街でして、ここで空き店舗を活用した図書館を運営が僕の活動ですね。

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元々こんな感じの空き店舗がありました。おでん屋さんをやっていて、4、5年ぐらい空き店舗になってました。

商店街で活動されてる方だったらご存知かもしれないですけど、商店街の空き店舗って意外と借りれないっていう現状があるんですね。上に大家さんが住まれていたりとかして、あんまり貸したくないというのがあって。

僕らは大家さんとの関係づくりから、街づくりが始まったみたいなのはあるかなと思います。

空き店舗を借りて、今はこんな感じの図書館を運営しております。
こんな感じで賑わってます。

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別にコロナ禍を狙ってやったわけじゃないんですけど、去年の3月からだいたい1年と3ヶ月ぐらいですかね。

中に入りますと、静岡県の県産材を全て使った内装になっておりまして。
守本さんからご紹介頂きましたが、一箱本棚オーナー制度という仕組みを発案して、この仕組みで図書館を運営しています。

だいかい文庫は58箱本棚があるということで、うちは48箱です。これ以上スペースが増やせないという現状がありまして、どうにかして50箱にしたい感じがあるんですが。

月額2,000円は支払って本棚オーナーになっていただく、という形になっています。単純計算で月10万円の売り上げです。これで家賃や水道光熱費を払い運営をしています。

いわゆるコミュニティースペースっていうのは、誰かがちょっとお金持ち
の人がやったりとかですね、自分がたまたま出会ったいい空き家をタダで貸してくれるとか、そういうのが多かったりするんですけど。やっぱりきちんと稼いでいくコミュニティスペースって必要じゃないか、ということで、この仕組みを作って運営しております。

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中に入るとこんな感じになっていて、例えばどんな方が利用されているかというと、動物愛護の活動されている方や、

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一冊置きで利用されている方や、

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けん玉の先生がいて、こんな風におかれたりとか、

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交換日誌をこうやっておくっていう方がいらっしゃったりとか、

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これは石川県の加賀市の図書館ですけど、自分の作品を置いたり、

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お蕎麦屋さんも最近借りています。

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信用金庫とつくる図書館というのもやっていて。統廃合などで信用金庫の支店の跡地が増えていってますよね。そこを有効活用していこうということで、こんな図書館をつくったりとかもしています

全国6館が開館して、オーナー全国にも300名、5館が開館準備中という感じで広がっております。

最後にケアとのつながりみたいなことを話すと、僕はそんなにケアっていう
視点でやってなくて、コミュニティーづくりとか、先ほど守本さんがおっしゃっていたような、都市の空洞化、スポンジ化を市民の営みによって埋めていくかっていうことに取り組んでいるんですけれども。

ケアっていう視点は言われればあるなっていうふうに思っていて、栄養ドリンク的なケアというよりは、良いものを毎日食べるみたいなケアでありたいな、という風に思っています。

日常の中にちょっと誰かとしゃべったりとか、なんか仕事と関係ない人と出会ったりだとか、っていうようなコミュニティスペースがあることによって、ちょっとその人の人生が豊かになったりとか、新しい出会いがあったりとか、そんな場所がまちのいろんなところに増えていくことによって、その人が元気になっていくというか、そんな場所になってるんじゃないかなっ
ていうようなことを感じております。

今日は後半のディスカッションでそのあたり、もうちょっと深めていけたらなと思ったりしています。

以上です、ありがとうございます。


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真鶴出版
來住友美

真鶴出版の來住(きし)と申します。

私は神奈川県・真鶴というところで、夫と二人で「泊まれる出版社」というコンセプトで活動をしています。

最初に今回お声かけいただいたのは、その宿に守本さん泊まりに来ていただいたりとか、うちで出版している本をだいかい文庫さんでもお取り扱いいただいたりして、その縁でお声がけいただいています。

まず私の自己紹介なんですけど、神奈川県の横浜出身で、真鶴にはもう縁もゆかりもなかったんですけど、本当に移住してきました。大学卒業後に青年海外協力隊として、タイのトラン県っていうすごい南の地方に派遣されました。

その後、フィリピンの環境NGOで働きながらゲストハウスを運営して、そこで宿のノウハウを学び2015年、なので6年前ですかね、真鶴に移住して真鶴出版を始めました。

真鶴出版、泊まれる出版社っていうコンセプトでやってるんですけど、やっている場所っていうのが真鶴というまちで。どういうまちか知っていただくのが大事かなと思うので、真鶴の場所のご説明をします。

真鶴は東京から電車で1時間半くらいですかね。神奈川県の西の端っこの方にあって、ほぼとなりが湯河原、熱海です。すごい小さな半島です。

数十万年前の火山の噴火でできた、7平方キロメートルのすごい小さな半島です。

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こういう半島なんですけれど、火山の噴火でできているのですごいボコボコしていて、小さいながら高低差によって色んな要素がぎゅっと詰まった半島になってます。

上から見るとこれがの鶴が翼を広げているように見えるので、真鶴と呼ばれるようになったんじゃないかといわれています。

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まず上の方のエリアが小松山と言われるエリアなんですけれど、小松石っていう石がすごく取れるんですね。

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石材業がありまして、これが墓石なんかで使われていて、墓石の中では最高級で天皇家や徳川家も代々使っているような石です。

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半島の先のほうに行くとこのもりもりしているところ、半島の先ですね、三石と呼ばれる景勝地だったり、

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「お林」と呼ばれる森で真鶴の観光協会は、関東で唯一潮風を浴びながら森林浴ができるまちということで、それを推していたりします。

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このエリアが人が住んでいる場所なんですけど、真鶴は高い建物は建っていないんですけど、こういうすり鉢状のまちで家が密集して建っています。

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下から見るとこんな感じです。

魚市場があったりとか、お魚や干物が美味しかったりとか、いわゆる小さな港町の観光地なんですけど。今までの真鶴いうのは美味しいお魚食べて、海で遊んで帰る街っていう感じだったんですけど、私たちがすごく好きで、出版業でも宿業でもオススメしているのが、「真鶴の暮らし」ですね。

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こういう何気ない大根を干していたりとか、

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海苔をつくってたり、

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井戸がまだ残ってたりとか、

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これは漁師さんの網なんですけど、この網が直島にある草間彌生のかぼちゃっぽくて笑

こういう何気ない風景を写真スポットに勝手にしたりとか笑

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あとはこういう普通は観光客の人が行かないようなお肉屋のおばちゃんがすごいおしゃべりで面白かったりとか、

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この酒屋さんがいつもハイテンションで迎えてくれるんですけど、こういう人たちとか、真鶴の暮らしの中で出会う風景とか、人を紹介してます。

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こういうまちづくり条例があることで真鶴は高いものが建っていないんですけど、こういうのを紹介したりしてます。

私たちが具体的に何やってるかっていうと、まず出版業ですね。

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出版は夫が基本的にやっているんですけど、これは真鶴の干物が来た時めちゃめちゃ美味しくて!感動してちょっとみんなにぜひ干物を食べて欲しいとつくった本です。

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真鶴町に国民健康保険診療所があるんですけど、そこで働いている方からお声掛けいただいて、町の9ヵ年計画ができたので、それをまちの人たちにもっと分かりやすく伝えたいからダイジェスト版を作って欲しいとお声がけいただいて。当時はまだ真鶴住んでいたデザイナーの方と夫と一緒に作った冊子になります。

医療業界にいらっしゃる方は、医療系の専門用語を結構当たり前として、使っていらっしゃったりしたので、それをなるべく知らない人でも分かるように、そもそも福祉って何だろうとか。あと「フレール」って言葉をすごく使われてたんですけど、「フレール」って普通の人知らなかったりするので、「フレール」って何だろうとか、そういうのをなるべくわかりやすく説明するようにっていうのを心がけてつくりました。

あともイラストで楽しく見せたりとか、意識したのはそこで働いている人たちの顔がなるべく見えるようにっていうので、写真を沢山使ったりしています。

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真鶴文庫っていうのを最近つくりました。
真鶴に住んでる刺繍作家さんの中村節子さんが、旦那さんが亡くなられて旦那さんへの思いを詞にまとめたい、ということで、お声がけいただいて。
私たち普段は持ち込み作品を本にしたりしていないんですけれど、すごくご近所にいらして、共通の知人もたくさんて、亡くなった旦那さんのことも知っていたので、何とか形にしたいね、ということでデザイナーと考えました。

もしこれから町民が何か形に残したいっていう風に言ってもらったら、つくっていけるように、この真鶴文庫シリーズを立ち上げました。

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前髪ぱっつんなのが夫なんですけど、真ん中にいらっしゃるのが中村節子さんで、旦那さんの写真を持っていらっしゃいます。
ヒゲが生えている子は、真鶴に移住してきたデザイナーで、中村さんもデザインを喜んでくださいました。

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この細い瀬戸道と呼ばれると道を行った先に築60年の古民家をリノベーションした宿を営んでます。

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これはいろんなまちに落ちたもの、港の錨とか、郵便局解体で出たアルミサッシなど、落ちたものを拾い集めて、はめこんでいった建築です。

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部屋はこんな感じです。ここに本があるんですけど、これまだ販売とかはして、私たちの本を適当においていて。ここに泊まった方々が自由に見て頂けたりする場所になっています。

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2日間くらい泊まった方に、街のことをご紹介するツアーを行っています。町民の方に触れ合ってもらったりしています。

すみません、長く話しちゃって。ありがとうございます!


ダイアローグセッション

お二人にとって本ってどういうツール、立ち位置なんですか?

私たちも「出版」っていうのは狙ってつけた名前なんですけど、いきなり横文字でかっこよくやっちゃうと、おじいちゃん、おばあちゃんがびっくりしちゃうかな、というのもあって。
本とか出版っていうと、おじいちゃん、おばあちゃんも分かるんですよね。怪しいことしているんじゃないって分かってもらえた。
小さなお子さんも楽しめるので。
(來住)
言い訳になるものだと思ってて。
僕はスペースを運営している訳ですけど、本があるとそこに入る言い訳になれるっていうか。
普通入りにくいじゃないですか、個店って。
けど本があると、何かわからないけど、入っていいみたいな感じになれるっていうか。
老若男女っていう言葉が出ましたけど、誰からも愛されるっていうか。
本があることによって、誰もがそこに接触できるようになるものかなって気がします。
(土肥)
クッションになりますよね。
(來住)
そうそう!あと媒介するっていうのもあるなと思ってて。
僕が思うのは、コミュニティスペース、コミュニティカフェではなくて、図書館にしたのは図書館っていう言葉とか、出版っていうと、地元の方が信頼してくれるっていう話がありましたけど。図書館とかいう風に言うことによって、コミュニティカフェとかコミュニティスペースって行くと、なんか喋んなきゃいけないのかな、みたいな感じで、ちょっとハードル高いじゃないですか。だけど図書館だと、本見てればいいかなみたいな感じになれるので、そういう意味でもなんかこうすごいいい緩衝材みたいなってなってるなって感じます。
(土肥)
前回のケアまち座談会で、高円寺の銭湯小杉湯さんが、「中距離コミュニケーション」っていう話をしていて。銭湯はそこに来ても別にコミュニケーション取らなくてもいいし、同じような時間帯に来ている人と、あの人いつもの時間に来てるなっていうのが分かるようなコミュニケーションだという話をしてたんですけど。まさしく本も本と向き合っててもいいし、そこにいる人と話してもいいしっていう、なんか絶妙な距離感であったり、媒介物になるっていう感じはありますよね。
(守本)
その場所で何か選択肢があるっていうか、本読んでてもいいし、他の人と喋ってもいいし。
コミュニティスペースってやっぱ喋んなきゃいけないみたいなハードルとかあるかもしれないです。単純にその本を読んで帰る人も受け入れられるっていう、なんか、そういういろんな人が入れるような場所をつくれる装置になってるんじゃないかなって聞いてて思いました。
(吉田)
図書館とかじゃないんですけど、宿にも本棚があるのがすごく良くて。
本てその一つ一つに空間が広がっているので、ほとんどのお客さんが本を読んでいますね。
朝ごはん食べた後とか、夜寝る前のすごい静かな時間に本を読んでたりとか。
私は何もしてないんですけど、こんな本に出会えた!とか、宿泊の体験を豊かにしてくれていると感じました。
(來住)
昔は本屋があったりとか、大規模な公的な図書館があって、そこに行って本を買うとか、本を借りるとかっていうような、なんかこうやや一歩通行的コミュニケーションが多かった気がするんですけど、最近になって真鶴出版さんとかも福祉計画であったりとか、みんなの図書館もそうですけど、貸す側にもなりうるし、借りる側にもなりうるし、みたいなコミュニケーションのその促進剤にもなるし、みたいな、多様な使われ方がされてきたな、というのが印象的だなぁと思います。
(守本)
真鶴出版は本を貸してないんですけど、町民の人で「何かこれすごい借りたい!」という人がいて。この前もお母さんと小学生の娘さんが来て、冬の猫っていう絵本が娘さんのすごい気に入って、「絶対返すから!」って言って笑、いいよいいよ、って貸したんですけど。図書館をやってないのは管理がそこまでできないからですけど、その後、感想を一緒に持ってきてくれてすごいよかった。
その後も町民の知り合いの人が勝手に借りて行ってくれたりして。なんかこういうオフィシャルじゃないけど、自然な貸し借りがいいな〜、っていうのを思い出しました。
(來住)
人と人との関係をつなぎ止める役割にもなってるなって聞いてて思って。
普通だったらのその場所に行って、帰ってそれで終わりかもしれないけど、そこで借りたら必ずもう1回戻ってこないといけない。
無言で渡すわけにもいかないと思うんで笑。すごいよかったです、とか、ありがとうの気持ちを込めながらコミュニケーションをとる場がもう一回できるって、なんかすごい力強いなと聞いてて思いました。
(吉田)
僕も一箱本棚オーナー図書館をやってて、普段はそういった借りることを通じてのコミュニケーションだったのが、貸す側にも月2,000円ちょっと払うことによってなれるっていうところが、ちょっと人の役に立ってるんじゃないか、とか、先ほど土肥さんから「表現の場」として使ってる、みたいな話もあったのかなと思うんですけど、ちょっと役割を持ってたりとか、そこを自分の場だと意識できるみたいなところっていうのは、すごいあのケア的だなと思いながら話聞いてました。
(守本)


土肥さんの一箱本棚オーナーさんの中でこういう面白いオーナーさんいました、とかありますか?

例えばそういう使われ方があるんだ、と思ったのは、移住してきたばかりの
お母さんがいて、子供も一歳とかまだいってない乳幼児のお母さんで。旦那さんが焼津にいるから引っ越して来たばっかりなんですよ、みたいな感じで本棚を借りたいんですみたいな。
「どうしてですか?」って言ったら、「私焼津のどこにも居場所がないからこの本棚ぐらい私の居場所が欲しい」みたいなことを言われて、そういう考え方があるのかって思って。
それでいうと、やっぱなんかみんなどこかでつながりたいとか、なんかどっかに自分を表現したいみたいな欲求みたいなものを持ってるのかなっていうふうに思うんですよね。
それを本棚っていう形で、ちょっと積極的じゃない、なんかシャイな感じで表現する場として働いてんのかなという風に思ってて。
でも、なんか積極的に表現しようと思えば例えばインスタのアカウントつくってとか、交流会に出て、とかっていうふうにいろんな形であるんだけど、そこまでして出たくない、っていうか、そこまでして表現したくない、みたいなの多分あると思うんですよね。
本っていうのがちょうどいい形になっていて、かつ、図書館にきて本棚を見ていると、例えば、自分の読んでる本と同じ本が入ってる人の本棚とかあるわけですよね。
その本棚を見つけると「他に何読んでるんだろう?」みたいな感じで他の本も読みたくなって。それで初めてこの人ってどんな人だろう、みたいな感じで関心をもったりとかするっていうのがあったりとかして。
だからまさに本っていう名刺を通じて出会っていくみたいなものが、自然発生的に起こっていくというか、本がコーディネーター的な役割をしているって感じですよ。
(土肥)

他の本棚をやってる人から触発されて、自分はこうやってみたい!とか、本棚オーナー同士の関連性みたいなのがあったりするんですか?

例えば突っ張り棒つけてカーテンつける人や、本棚の中に本棚を作る人がいたりとか。
そういう使い方ありだったんだ、という感じでアップデートされていく感があります。
(土肥)
一箱本棚オーナー図書館をやっていて、いわゆる地域のイベントに来ない人が来られている、オーナーさんをやられている印象があって。
自分の場を持ちたいんだけど、数百万かけてじゃあお店つくるかっていわれたらそんなことはないんだけど。かといって、みんなでやるコミュニティカフェみたいなものには、肩肘張って行かないといけない感じがいけないんだけど、本がちょうどいい媒介物になってるっていうのところはあるのかなと思います。
(守本)


真鶴出版さんの福祉との関わり方について教えてください。

今度、真鶴のまちの紙媒体と診療所が、まちの保健室を始めます。医療者が外に出て行って、まちの人に気軽にきてもらえる場所をつくりたい、という目的で始めるそうです。そのパンフレットをつくります。
(來住)
ケアとか医療とってこう肩肘を張って話さないといけないっていう感じが
絶対あるのかなと思ってて。
屋台をやる前に医療教室をやっていたのですが、全然人が来ないっていう。正論で突き進んでいくっていうのだけでは巻き込みきれない人がすごく多いんだなって。
(守本)
全然周りにお医者さんもいないですし、知らなかったんですよね。真鶴に来て本当に診療所とも関わりがなかったんですけど、ある時飲み会であの診療所で働いてる事務の方と飲む機会があって、それからすごい個人的に仲良くしてもらって、そこから医療のことを教えてもらって。
今まちの保健室とかも、診療所と関わるとかっていうと、結構みんななんか、病気の時しか行かないでしょ、ってなっちゃうんですけど。真鶴は小さい街っていうのもあって、結構顔がみんな見えるんですよね。
診療所のあの人が今なんかやってるから、お手伝いにいこう、みたいな感じでちょっとずつ始まっていたりしてます。
場所によると思うんですけど、真鶴の場合は個人でつながってちょっとずつ
ケアとかそういう考えとかを広めていくのがいいのかなっていうのを思ってます。
(來住)
僕が大切にしているキーワードの中で、日常生と非日常性というものがあって。コロナ禍で非日常性がだんだんできなくなったんですよね。
非日常性って例えばイベント企画したりとか、お祭りとか、勉強会とか、ワークショップとか。
僕は普段のプロのファシリテーターをやっているので、ワークショップとかも三密創出業みたいな感じになっていて笑。オンラインでやったりはしているんですけど、リアルの場で出会うっていうことがだんだんできなくなってきているっていうのがあって。
もちろんそういうまちづくり的な活動も大事だと思うんですけど、どちらかというと真鶴出版さんのやっていることだったりとか、さんかくでやっていることというのは「日常性の活動」の方が多いんじゃないかなという気がしていて。
「日常性の活動」って何かっていうと、もうスタバみたいなものだと思う
んですよ。いつ行っても同じサービスがそこにあるというか。
まあスタバについて色々思う人いるので、スタバでいいのかは分からないんですけど、僕はスタバ好きなんですけどね笑
日常のまちづくりをしていくときに大切にしていることが、イベントを企画しないということで。イベント企画しすぎると正直な邪魔なんですよね。例えばさんかくで毎日のように講座や教室やってたりすると、なんかそんな図書館行きたくないじゃないですか笑
常に同じ日常を丁寧につくり続けるっていう事がとっても大事だと思っていて。
実は価値を伝えたかったりとか、何かをやろうとするときに僕は何かイベントを企画したりとか、なんとか教室を行ったりとかして伝えようとするんだけど、そういう直接的なアプローチじゃなくて、それを体現する場をどういう風に作るかということの方が実は近道だったりするということに、最近気づいたりするんですよね。
(土肥)
もう共感しか無いです。
私たちはイベントを意図的にやってないんじゃなくて、単純に苦手なんですけど笑企画して、みんなでイエイ!みたいなのがどうしてもできなくて笑
やった方がいいんじゃないかと思いながら、もう諦めたんですけど笑
私たちがずっと意識してるのって毎日出来る事。講座とかご飯会とかもやっぱりできないので。うちすごい地味なんですよ。いっぱい人が来る
っていうことも基本的ないですし、お客さんも一組だけですし、すごい静かな一日なんですけど。
確実に自分たちができる一日を積み重ねていくっていうのが、まちの人たちの安心になるし、なんかそれを6年やってきて、最近近所の仲良くしてたおばあちゃんも足が痛くなっちゃって全然動けなくなっちゃったんですけど、買い物をものすごい頼んでくれて、今その買い物サービスをやってるんですけど。なんかそれとかも多分その地味にやってたから、頼んでくれたと思うんですよね。そういう地味な日常重ねる大切さを感じました。
(來住)
そんな、地味って何回も言わなくたって笑
(土肥)
どっちかっていうと、僕とかは非日常が好きなんですよ。
そうするとさんかくに居続けると邪魔だということが分かってきて。
僕がいると毎回レイアウトを変えたり、イベントを企画しだすんで、日常ができる人に感謝して任せていくっていう風にしていて、そこだな、という風に最近は思ったりしています。
(土肥)
私は非日常は結構まちに投げちゃってて。
私たちがやっているのは日常を重ねていくだけなんですけど、お客さんとかは結構非日常を求めてきてたりするので、他の場所に来るいうだけで非日常ではあるんですけど、角打ちができるの酒屋さんとかがあって、店主がノってくるとギターとかとミラーボールとかがあって、みんなで踊っちゃう!みたいな場所があって。私はもう絶対そんなことはできないんですけど。まちでそういうことをしてくれてる人たちがいるので、非日常は真鶴のまちに頼っています。
(來住)

お二人ともまちの方と仲良くなられている印象があるんですけど、どうやって街に入っていったんですか?

あいさつするということじゃないですかね。
(土肥)
大事ですねー。いやもう暮らすことですよね。真鶴は一人介せば全員とつながるって言われていて。
一番最初に役場の方に繋いてもらって、そっこから「じゃあこの人紹介するよ」って感じで紹介していってもらって、自然にバーッと広がっていって。あとはまち歩きをすると、私がまちを歩いてるの常態化しているというか、当たり前の風景になっていて。毎日歩いていると見かけた顔だなぁってなって、知らないんですけど住んでる人なんだなって、安心感が多分生まれていて。まちを歩くのでもすごくオススメです。私タイでもやってたんですけど、ずーっと知らないまちを歩いてたらやっぱり覚えてもらって、友達が増えていったので世界規模で多分通じると思います
(來住)

コロナ禍での暮らしを再構築さするためのキーワード

変わらないことを大切にすること
コロナになってから私たちはあんまり変わらなかったんですよ。
もちろん緊急事態宣言が最初に出た時とか、マスクしなきゃとか、宿も止めたりとか変わったんですけど、普段が地味な日常を繰り返していたので、近所のおばあちゃんとコミュニケーションを取ったりとか、まちにご飯食べに行ったりとか買い物したり、変わらない事っていうのが結構私たちはあって。
前からまちでの暮らしにはコミュニティはすごく大切だなぁとは思ってたんですけど、それがコロナが起きても変わらなかったっていうのが凄く大切。変わらなかったことをこれからもより大切にしていきたいな、という風に思いました。
(來住)
遊び
なんかあんまかっこよくないんですけど。
さんかくも遊びだと思っていて、僕コロナはもうちょっとこうなんか遊べよっていうか、人間らしくあれよみたいな一つのメッセージだったんじゃないかなっていう気もしていて。遊びっていうのにはいろんなや意味が含まれていて、例えばそれこそ余白っていう意味もありますよね。人間生活の中に余白とか遊びを持つっていうことだったりとか。
あと僕らって常に生産的でないといけないっていう強迫観念みたいなのがどっかにあるんじゃないかな、という風に思っていて。
例えば一日だらっと過ごしたってなると、なんかすごい罪悪感にかられたりとか。
でも別にまあそういう生き方もいいじゃんって、というか、それでいうと多分さんかくで棚を借りるって生産的じゃないし、あの意味がないっていうか、遊びでしかないんですけど。
アピールすることで仕事につながるって人いるかもしれないけど。
なので、遊びっていうのはキーワードになるんじゃないかと思いました。
(土肥)
第二回のケアまち座談会の内容と通ずる部分もありそうですね(守本)

座談会報告

すでにだいかい文庫に行った事がある方とか、自分でコミュニティを開いている方っていうのが多くいらっしゃってですね、自分達がやっていることと、今日の話がつながることということで、日常の延長だとか、余白とか、目的がなくても行きやすい場所っていいよね、っていう話をしていました。
(小林遼)

Q&A

図書館、本棚に設備投資はどのくらいかかりますか?

話始めると4、5分で終わんないのでぜひうちに視察に来てください笑
まあいうても木の箱なんでね、数百万という単位ではないです。
(土肥)


何度も来てくれる場を意識して、コミュニケーションを設計してますか?

うちの場合は図書館なので、意識して作ってるかもしれないですね。
ある意味うちの事業モデルだと、あの一箱本棚オーナーが続けてくれない
限り存続できないので、よくあるスポーツジムの7割の来ない会員によって支えられている、ではなくて、10割の一箱本棚オーナーが月1回ぐらいはうちにきて本棚を入れ替えたりとか、コミュニケーションを取ったりとかっていうような場を作りたいなっていうふうに思っているので、それはかなり意図的にやってる部分あるなという風に思っています。
(土肥)
その第3回の都市計画の会のように、一番コミュニティの外側にいる人をケア重要ですよね、という話と通じるかなと思いながら聞いていました。
(守本)
真鶴出版にある本は、何回も来てもらえるような仕組み、と考えて置いているわけではないんですけれど、やっぱり宿としてまち歩きをしているのは、まちに何回も来てほしいっていうのはありますね。
一回私と一緒に歩いて、まちの人とつながってもらうと、もう一回来た時に別にうちに来なくても、お寿司屋さんの大将に会いに行こう、とか、酒屋のおばあちゃんに会いに行こうってなってくれるので。会いたい人をまち歩きでつくっておいて、また来てもらえるようにっていうのは考えてやってます。
(來住)


本以外に本のようなコミュニケーション機能を出せる方法ってありますか?

レコードとか?
(土肥)
映画とか?
(來住)
映画もいいですよね。盆栽とかもいいですね。
(土肥)
植物いいですね、うんうん。
(來住)
一回一箱本棚オーナー制度を別のモデルでやるとしたら何でできるかみたいな話で、ある人が盆栽は絶対にやれる!という人がいました。私は盆栽だったら月3,000円でも、4,000円でも払うみたいな人がいました。
盆栽好きにしか流行らないかな笑
(土肥)
畑とか。近くに畑があるんですけど、その畑に集まっているおじいちゃん、おばあちゃんとかも、普通だったら多分しゃべらないんですけど、畑を介してすごくしゃべるんですよね。
それは本っぽいなって思いました。コメントにありましたが、ニンニクも良さそう笑
(來住)
なんか人と人とが向かい合うというよりも、横に並んでを別のものを追いかけるみたいな形の方が、意外と共通の話題になったりとか、うまく場になっていくのかなーって思いました。
(守本)
土肥さんが言っていたオンラインコミュニティはこちらです
(守本)

ローカルコミュニティの実験室

お金は全部公開しています笑
解説相談は別にあのしたい方いらっしゃったらいつでも相談無料で乗ってます。
(土肥)


だいかい文庫でもあの取り扱いさせてもらってるんですけど、真鶴出版さんが新刊を出されまして日常っていう。

ありがとうございます。
発行元は一般社団法人日本まちやど協会ていう、私たちみたいな街の入り口になっているような宿たちが集まって作ってるんですけど、そこが発行元になってて、うちが編集をさせてもらっています。
それが宿だけじゃなくてカフェだったり、製本所などをインタビューしてるんですけど。地域の日常の再発見の入り口になるような雑誌を目指して作りました。
表紙は全部3000冊全部手刷りであって。全部ちょっとずつ違います。
(來住)


※初回開催、「ケアまち座談会 vol.0 なぜ「ケアとまちづくり」は必要なのか」は下記からアーカイブ動画をご覧頂けます。​

note
https://note.com/caremachi

facebook
https://www.facebook.com/caremachi/

#ケアまち座談会

(執筆・編集:小林弘典)



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