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サッカールーツを辿る旅のススメ【福島・後編】

【福島・前編】では尚志サッカーとの出会いや福島旅を決意した経緯を書いた。さて旅の予定を変更して初日に向かった先は、湯本駅から車で15分ほどの山あいにある

『いわきFCパーク』

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JFL所属いわきFCのホームであり商業施設併設型のクラブハウス。施設内にはアンダーアーマーのショップやスポーツドクターのクリニック、英会話スクールにカフェやレストランなど多彩で、サッカー以外の利用もできるように工夫されていた。例えば、子どもたちがサッカースクールに参加している間に英会話レッスンやカフェでくつろぐことも可能なのだろう。大阪にもこんなサッカー施設があると幅広い層の人が訪れそうだ

湯本駅で降りた時にはすでに夕方6時前。お昼前に空港で食べた定食から何も食べていなかったので、駅前の寿司店『海幸(かいこう)』で海の幸をいただこうとお店に聞いてみた。あいにく予約いっぱいで入れず。福島のお店は閉店時間が早いので今晩はコンビニのお弁当かな、と覚悟していわきFCパークに向けてタクシーに乗った

幸い、FCパーク内のレストランはまだ営業中だった。サッカーコートを運営しているだけあって、隣の席にはコーチたちが食事をしていた。『NISHI’S KITCHEN』サムライブルーの料理人西さんが作るハンバーグセットを地酒と一緒にいただく。お料理はもちろんのこと、白米と日本酒の美味さに福島に来たんだなあとようやく実感した。このレストランがさらに素敵なのはテラス席からサッカーフィールドが一望できる点だ。テラスで食事を楽しみながら地元選手の試合を観戦する。まるでヨーロッパのスタジアムを思わせるロケーション。東京にも大阪にもまだない、本当に魅力的な場所だった

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翌朝、わくわくはホテルの朝食から始まる。ふわとろのオムレツに新鮮な野菜、フルーツすべてがパーフェクトな食事だった。コロナの影響でビュッフェスタイルではなく、和食か洋食を申請してあらかじめ準備されていた。フリードリンク制で、朝食後もコーヒーを持ち運べるようにとテイクアウト用の耐熱紙コップとフタがコーヒーサーバーの横に用意されていた。これは機転のきいた嬉しい心配り。食事中、外したマスクを保管する小さなペーパーファイルなど、朝食に関わるサービスのクオリティの高さが素晴らしかった。福島をまた訪れることがあれば必ずこのホテルを選びたい

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いよいよ旅の本来の目的である尚志高校へ。正門前に着いてグランドを見つけられなかったので、校内にいたある女性に場所をたずねた。グランドの場所を知らないわたしは、分かりやすい部外者。場所を教えてくれた相手に安心してもらうために今回の旅の目的を少し話した

するとその女性はたずねた「その彼はどこの大学だったんですか」

「○○大学です」「もしかして、、、」

まさかの恩師との偶然の出会い。世間は意外と狭かった(笑)朗らかに話す先生とこのまま話していたかったが、キックオフの時間が近づいていたので「ありがとうございます」と伝えてサッカーグランドへ向かった

スーパープリンスリーグ。コロナの影響で今年限定の特別な大会。プリンスリーグにプレミアリーグが参入。さらに各地区内で戦う。尚志の対戦相手は青森山田セカンド。東北地区は会場ごとに無観客試合か否かの判断が分かれていた。尚志のサッカーグランドは入場前の検温とアルコール消毒、マスク着用で観戦可能だった。選手を外部の人に観てもらうチャンスであることには間違いない。観客がいるといないとでは選手たちのモチベーションも違ってくるだろう

ようやくここに来れた。ピッチを挟んで反対側には両チームのベンチ、大会本部が設置されていた。仲村監督にはすぐ気づいた。5年前選手権大会の3回戦敗退後のロッカールームで話す監督の動画を何度も見返した。尚志ファミリーの名のごとく、本当にお父さんのような温かい雰囲気をもつ監督だ。以前インタビューで東北みちのく大会の視察の時、出場していた青森山田中学の選手に「青森山田高校がもしだめだったらウチ(尚志)に来てね」と言ったが誰も来なかったと話していた(笑)お茶目な監督でもある

試合を観ながら運営の補助をしていた部員(おそらく1年生)に話しかけた。「いまのプレーはファウルなのかな」「ボールに対して相手の方が体を前に寄せてたから、僕はファウルじゃないと思いました」「そうだね、微妙なところでジャッジが難しいよね」先輩の試合を観るのは大事なこと。こんな風に誰かと仲間同士で話し合って共有できれば、観ているだけの90分がもっと楽しくなるだろうな

試合は青森山田ペース。前半0-2で折り返す。尚志はボールを失わないし、チャンスメイクもできるが決め手につながらない。わたしは戦術的なことは分からないので、直観と俯瞰の両方で観ている。青森山田セカンドはいいチームだけど、技術面で尚志との差は感じない。差があるのだとしたらコミュニケーションの量。試合中、青森山田はずっと話してる。味方のプレーへの評価、相手の動き出しへの注意喚起。ゴールしたら喜びをみんなで共有する。多少、演技がかっている部分はあるがそれが彼らの「スタイル」それを全員で全身で貫くことができている

5年前に見たあの瞳(め)を持つ選手たち。今の尚志にはいないのかな。あきらめかけた後半、交代で「7番」が入っていた。10番は左ウィング(おそらく)、7番が途中出場。このシチュエーションは5年前の選手権大会と似ていた。7番が流れを変えるキーマンなのは尚志の伝統なのかな。スコアは1-3。残り時間が少なくなっても彼は悔しさと「もっとやれるはず」と感情をあらわにしていた。その瞳に尚志サッカーの片鱗をみた

タオルマフラーやベンチに掲げられた『PRIDE OF SHOSHI』

君たちの先輩は今でも尚志の誇りを持ち続けてそれぞれのフィールドでサッカーに懸けている。もうじき選手権の冬がやって来る。今度は選手権でさらに成長した尚志の選手たちに会えるのを楽しみにしている

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