レトロTCG回顧録③~金色のガッシュベル!! カードバトル~
0.初めに
こんにちは、カードランドです。
過去二回に渡って書かせて頂いた「レトロTCG回顧録」ですが、ガッシュカードを触れなかったのは理由があります。
・当時は子供の遊び程度にしか遊んでおらず、かつ後半からの参入なので知識が浅いこと
・大型大会も数回しか参加しておらず、当時のガチ勢とは認識が大きく離れている可能性があること
こういった状態で記事を書いても、実態との齟齬が激しくツッコミの嵐になる可能性も高いため、ためらっていました。
しかし、この空前絶後のガッシュブームの中、書くなら今しかないだろう…!ということで筆を取った次第であります。
ですので…
※当時あくまで遊び程度にプレイしていた人間の感想です。大きくは離れてないと思いますが、環境考察等は間違っているところがあるかもしれないので予めご了承ください。
※そもそも15年以上前の記憶なので、所々記憶違いがあるかもしれません。予めご了承ください。
何卒宜しくお願いいたしますm(_ _)m
1.ルール改定前と改定後の違い
↑改定後のルールが書かれてます↑
まず前提としてガッシュカードはルール改定前(旧アイコン)とルール改定後(新アイコン)の2種類があります。
皆様が広く知っているのは左側のルール改定前(旧アイコン)のカードだと思います。
ルール改定前と改定後の大きな違いは、割り込み(MTGでいうスタック)が廃止されたことです。
これにより、改定前で猛威を振るっていた割り込み型のイベントカードは、ほぼ全て採用の意味がないカードに成り果てました。
プレイヤー数も大激減し、大型イベントにも人が目に見えて減っていき、その後終焉を迎える形となりました。
今でいうスタン落ち+ルール変更が同時に施行された、令和の時代ではまずお目にかかれない所業ですね。
尚これから数年後に、同じようなことが起きてユーザーが大激減したTCGがありますが、それはまたの機会に…
この記事では主に改定前のことについて話してまいります。
2.デッキも山札もない異端のカードゲーム
まずこのTCGは、デッキや山札という概念がありません。
デッキではなく、魔本と呼ばれる32ページあるファイルにカードを入れて戦います。
魔本をめくっていき、そのページにある魔物カードやパートナーカード、術カード、イベントカードを駆使していき、相手の32ページの魔本を閉じさせたら勝利となります。
まず各カード種類の紹介をいたします。
魔物カードです。
このゲームは主にこの魔物カードを駆使して戦うのが基本です。
まず見て頂きたいのがこの左下の魔力という数字。
この数字は基本的にインクの染みです。
もちろん絶対に使わない…というわけではありませんが、参照することはほとんどありません。
基本的魔物カードは「名称」と「効果」、特に「名称」はこのゲームにおいて重要な指針となります。
パートナーカードは割愛します。
魔物に付けられる装備品ぐらいの認識で大丈夫です。
続いて術カード。
ここでも同じく、左下の魔力と書かれた数値はインクの染みのようなものです。
というより、この術カード自体がこのゲームにおいて、非常に存在意義の薄いカード種類となります。
まず術カードは、対応する魔物が場にいる時に、右上のコストを支払って使用することができます。
上記の例だと、自分の場にゼオンがいる状態で、コストであるMPを2支払ってザケルをプレイすることができます。
この場合、魔力6000+1000で7000魔力、そして先頭に勝利すればザケルの右下にある2ページというアイコンの通り、相手の魔本を2枚めくることができます。
32ページのうちの4ページ分のダメージを与えられるので、一見すると勝利への正攻法に見えます。
しかし、このゲームはそんな単純な構造にはなっていません。
最強イベントカードの一角、プロフェッサー・ダルタニアン
このカードはイベントカードで、右上の数字がコスト、その下に「攻」「防」と書かれておりますが、「攻」は自分のターン、「防」は相手のターン、どちらもある場合はどちらのターンでも使用することができます。
そして、このゲームは特に記述がない限り、魔物の効果やイベントカードは全てのフリータイミングでプレイすることが可能です。
もちろん相手の行動に割り込み(スタック)することで、カウンターのような動きをすることができます。
「2コスト払ってザケルで攻撃!」
↓
「術の発動に割り込みでゼオンに0コストでプロフェッサー・ダルタニアン」
結果的に、払ったコストも戻ってこず、割り込みなのでプロフェッサー・ダルタニアンが先に解決されるため、このザケルは不発となります。
また、追い打ちをかけるように術カードが使えない理由があります。
それが「庇う」というルールです。
仮に、ザケルの攻撃が妨害されずに通ったとして、2ダメージを与えられる状況になったとします。
その後、相手はそのダメージを魔物に振り分けることで、「庇う」ことができます。
庇った場合、魔物は捨て札になる…わけではなく、負傷状態として横向きで場に残ることになります(負傷状態の魔物で庇ったら捨て札になります)
「2コスト払ってザケルで攻撃!」
↓
「魔物で庇います、負傷状態になりました」
ほぼ0コストで凌がれておしまいです。
まとめると
・イベントカードの割り込みが強すぎて術が通らない
・通ったとしても庇われて終わり
この二重苦によって、ゲーム中における術カードの存在意義は非常に怪しいものとなっています。
一応イベントカードで相手が庇えなくなるカードもあります。
ナオミちゃん+連続攻撃が出来る術を組み合わせることで、決まれば相手の魔本に大ダメージを与えることができます。
が、大体相手のイベントカードで凌がれます。
あまりにも術カードが使われなかったせいで、改定前後半には庇えない高出力術カードが出てきました。
相手のイベントによる妨害に対して、自分もイベントで対抗しつつ、相手にダメージを与えられるこの術は環境を制圧しました。
32ページ目(最終ページ)にある術はコストを支払わずプレイすることができるため、逆転の為の高火力呪文を入れていることが多いです。
お互い最終ページの場合、術の打ち合いで魔力計算をします。
この時だけは魔力がインクの染みではなくなります。
3.魔物カードを制したものがこのゲームを制す
これまでは主にイベントカードに関する説明でしたが、次は魔物カードの説明です。
まず、最初の1ページ目は魔物である必要があります。
そして、その魔物をお互い場に出してゲームが始まります。
このスタート魔物ですが、鉄板と呼ばれるカードが3種類あります。
まずはこのテッド、準備フェイズというのはゲームが始まる前の処理のことです。
つまりこの魔物がスタート魔物の場合、自分は確実に先行を取ることができます。
カードゲームにおいて、確実に先行を取れることがいかに強い効果であるかは、説明不要でしょう。
またそのターン中、魔物の効果を使うことができないオマケのような、オマケにしては強力すぎる効果も持ち合わせており、このテッドは一躍環境を支配しました。
大会参加者のほとんどがスタートにテッドを採用しており、大体テッド同士なので結局じゃんけんで先行後攻を決めるといったのは見慣れた光景でした。
しかし、このテッドの時代はそう長くなく…
このキースの登場で、テッドの時代は半分終了しました。
このキースはスタート魔物にしておくことで、1ターン目のお互いの動きを完全にシャットダウンすることができます。
テッドで先行を取られようがこのキースであれば先行も後攻もあまり関係ないため、テッドを使用していた人はほぼ全員キースに乗り換えてました。
改定前終盤に出てきたこのガッシュも非常に強力です。
このゲームはターンの初めのスタートフェイズに魔本をめくることでカードの使用に必要なMPを稼ぐことができます。
このガッシュがいる場合、それができなくなるため、MPが枯渇したり思ったように動けなくなります。
ただしもう一つの効果でスタートフェイズに解決される効果が無効になるため、お互いの場にこのガッシュがいる場合、お互い無効にし合います。
このガッシュはスタート魔物でなくとも効果を発動するため、改定前最終環境はこの伝導ガッシュを巡る攻防だったと言っても過言ではなかったかもしれません。
改定前最後の大型大会の優勝魔本です。
スタートにキース、途中に伝導ガッシュが採用されています。
次に除去についての説明です。
このゲームの除去はコストを度外視している物が多く、筆頭がこのデモルトです。
場に出して効果を宣言するだけで相手の魔物を捨て札にすることができます。
このデモルトは登場から長らく汎用除去として多くの魔本で採用されていました。
しかし改定前終盤になると、この性能でも除去としては心もとない部分があり、採用を見送られることもありました。
このゴーレンは自身を捨て札にすることで、相手の魔物1体を石板状態(裏向き)にすることができます。
裏向きになった魔物は全ての情報を失い、回復するまでその場にとどまり続けます。
任意で捨て札にすることもできません。まさに元祖カオスブレイカー・ドラゴンです。
ゴーレンの強さは、相手ターンにも使用できるため、魔物の効果に割り込みで使用することで、相手の効果の妨害も兼ねています。
普通に使っても強力なゴーレンですが、デモルトと違ってゲーム中に複数回使用できるため、ゾフィスで自分のキャンチョメをコストにしてゴーレン蘇生、ゴーレン使用してエンドフェイズにキャンチョメ復活といった俗にいう手駒ゾフィスコンボが強力でした。
そして、除去の大本命として、VS魔物があります。
VS魔物とは、自分か相手の場に対応する魔物を捨て札にして出すことのできる魔物です。
…相手の…?
そうです、何故か相手の魔物を捨て札にしつつ自分の場に強力なコンビ魔物を出すことができます。
このガッシュベルvsティオはVS魔物の代名詞と言えるような魔物で、上記の伝導ガッシュを巡る攻防の駆け引きとして、このガッシュベルvsティオはお互いの場のガッシュをとにかく狙い撃ちします。
もちろん、相手のガッシュベルvsティオを捨て札にしてガッシュベルvsティオを出すことも可能です。
このような捨て札蘇生のイベントも、VS魔物が捨て札にいれば汎用除去に早変わりです。
ガッシュ絡みのVS魔物としては、ガッシュvsブラゴがあります。
こちらも非常に強力ですが、同じく強力なVS魔物であるブラゴvsゾフィスの名称に引っかかってしまいます。
もちろん相手のブラゴvsゾフィスをこっちのブラゴvsゾフィスで潰す…といった流れも可能ですので、VS魔物を巡る攻防はとにかくVS魔物の枚数と読み合いでした。
スタート魔物の鉄板であるキースにもVS魔物が存在します。
それがこのバリーvsキースです。
このvs魔物も非常に強力な能力を持っていますが、それに加え強力なのはこのカードの名前です。
キースの他にバリーという名称が付いています。
そうです。先ほど強力な術として説明したギガノ・ゾニスを使用することができます!
改定前のバリーは魔物としては微妙なカードしかないのですが、キースを経由したバリーvsキースであれば、バリーを採用する必要はないため、バリー不在でギガノ・ゾニスを使用することができます。
このようにVS魔物は除去としても魔物としても非常に優れた性能を持っており、改定前環境を完全に支配していました。
4.必須すぎる連勝プロモーションカード達
当時のバンダイ製TCGは、公式大会予選の多くはガンスリンガー形式の大会でした。
そこで、3連勝or5連勝した時に貰える通称連勝プロモと言われるカードが複数ございます。
当時の必須カードこと、やさしい王様です。
2コストと軽めのMP消費で、魔本を2ページ戻す=回復の効果を持っています。
同じようなカードは後半になるまで現れず、まさしく超必須カードです。
尚こちらは公式大会5連勝でようやく手に入るカードなので、これを持っていない状態で5連勝するというハードルが非常に高く、やさしい王様を持っている人がやさしい王様を手に入れて帰るといった負のスパイラルにも突入してました。
最初期から配っていたので、流通量自体はそれなりにあるものの、当時は持ってる人=強者と言っても過言ではありませんでした。
こちらは改定前後期に配られた、やさしい王様と同じく5連勝プロモです。
やさしい王様と対をなすような2ダメージのイベントかつ、0コストです。
ターン終了時に敗北してしまいますが、このカードは終盤にしかプレイしないので、最後の切り札としてほとんどの上位入賞者に採用されました。
やさしい王様以上に強者の証のようなカードです。
当時のプロモカードのシステムは、今考えると本当に無情でしたね…
5.その他汎用カード達
VS魔物たちをサポートするカードとして、このフライング・ビートと新たなる戦いは鉄板の展開サポートカードです。
特にフライング・ビートは場に常駐させつつ、いつでも好きなページからVS魔物を出したり、ゴーレンを出しつつ更に割り込みで石板魔物に出来たりと、展開+除去として非常に強力なカードです。
もちろん割り込みもできるので、効果や術の発動で割り込んで、VS魔物で除去といったこともできます。
つまり最強の置物カウンターとして機能するということですね。
朧げな記憶ですが、確かコストの支払いにも割り込みができたはずなので、フライング・ビート宣言→フライング・ビートを対象に除去をすることで、防げたと思います。
新たなる戦いは比較的序盤に撃つことが多く、要らなくなったデモルトやスタートのキースなどを捨て札にしつつ、VS魔物を呼び出して相手の盤面を更地にしたりすることができます。
サーチ系の効果に対して、割り込める最強のイベントカードです。
対フライング・ビートの天敵のようなカードで、フライング・ビート宣言→割り込みマリ子はガッシュカードあるある選手権一位と言っても過言ではありません。
序盤最強の妨害イベントです。
序盤から中盤から終盤まで、最強の汎用イベントカード。
術以外の全ての効果を大体無効にできます。
当時の鉄板構成として
この2枚を同じ見開きに入れることで、術から何から全てに対応できるページを作り出すことが可能でした。
今見ても鉄板すぎて感慨深いですね。
5.そして伝説へ…
当時のガッシュカードは爆発的に売れており、当時ギネス記録に認定されるぐらい売れていた記憶があります。(1億枚発行だったかなんかだったか…あやふやです)
特に大型大会の開催規模も異常で、全国何か所かで大型大会をやり、代表者を決めて全国一位を決めるといった大型大会が開催されたり、東京ビックサイトでカードゲームのイベントを開催したりと、勢いだけで言うと当時の遊戯王に匹敵していたレベルで売れていた化け物TCGでした。
しかし、上記で述べた通り、あまりにも複雑な効果処理やゲーム環境。
子供では遊ぶことすら困難です。
そこで、大規模なルール改定と数百枚規模の大規模な過去カードのエラッタが施行されました。
プロフェッサー・ダルタニアンは【ステイ】というルールが追加され、割り込みでプレイすることができなくなりました。
つまり先にプレイしておかないと意味がないということですね。
先撃ちの縛りがあまりにもきつすぎたため、改定後ルールでは使われることはなかったと記憶しています。
このように、汎用イベントカードにはほぼ全て【ステイ】というルールが追加され、そのほとんどが先撃ちを強制される効果に代わってしまった為、日の目を見ることはなくなってしまいました。
代わりに「ジャマー」という割り込みのようなルールが整備され、汎用カードとしてこのイベントが登場しました。
しかし私の紳士をいじめるなと比べると性能は段違いで落ちており、またMP消費も3と多すぎるため、使われてはいたものの、微妙な性能と言わざるを得なかったです。
6.最後に
この時期、アニメの勢いも残念ながら落ちてしまっており、子供たちの間でガッシュ人気自体が落ち着きを見せつつある状況化での大規模改定だった為、引退者が続出しました。
やはり「割り込みがないガッシュカードはガッシュカードじゃない」という意見が主流で、改定後に開催された「第6回魔界王決定戦」は想定よりも人が集まらず、会場の半分も埋まっていないような状況でした。
こうして、TCGの世界で一時代を築いたと言っても過言ではないTCG、金色のガッシュベル!! カードバトルは終焉を迎えました。
当時私もサブTCGとして遊ばせて頂いており、それでいて後発組だった為、やり込むところまではいきませんでしたが、非常に高いゲーム性と独創的なルールは今でも懐かしく思えます。
長いTCGの歴史でも、最も異端であり、最大瞬間風速が凄かったTCGともいえるでしょう。
記録にも記憶にも残る素晴らしいTCGでした!
最近キレ麿さん(@Kire_maro)もTwitterで復活されていたり、ガッシュ2も盛り上がっているところですし、新しい動きに僅かな期待を持って待ち続けたいと思います。
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