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雑草だった

私の仕事はどうしたって三密を避けるのが難しい環境にあるので、2月後半あたりから少しずつキャンセルが出始めて、今月はまだ影響は少ないけれど5月の予定はゼロになってしまった。6月以降も状況によっては分からないね。

小学生の子どもたちもGW明けまでは自宅待機なので、毎日7時半~15時までは時間割を決めてお勉強の日々。私も急ぎの仕事が無い時には自宅で先生代わりになって勉強を教えていまして。

子どもたちはそれなりにこの日々を楽しんでいるみたいだけど、私は今までのペースで昼間に作業ができないのでプチストレス溜まり。今日は先生のお仕事を妻に任せて、庭の雑草を4時間ほどぼんやりと抜いておりました。


およそ縦横30mの庭も面積にすると1000㎡弱。バケツに7~8杯の雑草を抜いたけどまだ全然終わっていない。体感的にはこれだけやっても10分の1くらいかなあ。

アメリカのドラマに出てくるような芝生の庭に憧れてみたものの、待っていたのは雑草との果てなき戦いの日々。放っておくと芝生を枯らして水玉模様にしてしまう憎き雑草どもを、根からぶちぶちと引っこ抜く。

雑草を抜いている時って誰とも話さないし、周りは風の音しかしないのでいろんな事を考えるのね。


───この草を雑草と呼んで邪魔者扱いしているのは私で、芝生との違いはその見た目や生え方でしかない。そもそも自然界には一つの種類しか生えていないような場所は殆ど無く、むしろ様々な種類が混ざり合っているのが当たり前だ───

───抜いても抜いても生えてくるのは、それが自然な状態であるからなわけで、こんなにも苦労しながら不自然な状態を作って喜んでいる私がおかしいのではないだろうか───

───クローバーやタンポポって、昔は好きだったのになあ。芝生にとって良くないって理由だけでこんなにも扱いが変わってしまって可哀そうだよな───

───そういや、俺も中学生の頃、こいつらと同じような扱いをされたことがあった───



前に雑談で書きましたが、時代なのか環境なのか、私が中学生の頃は鞄の中に特殊警棒やナックルを忍ばせて、いざという時に備えているのが日常でした。マンガみたいな話だけど、私の周りでは普通だったんです。

先輩たちに呼び出されて集団で囲まれたり、帰り道に他の中学の奴らに因縁付けられたり、ゲームセンターで高校生に恐喝されたりということが度々ありましてね。対集団になると武器の一つでも持っていないと対抗できないからね。

理不尽に服従するのは嫌だから降りかかる火の粉を払い続けてきた結果、自然と周りに荒っぽい奴らが集まってきて仲良しこよし、楽しくやっていたわけです。別に私たちはヤンキーとかチーマーと呼ばれるような集団では無く、ただ負けん気が強いだけの普通の子供でした。

友達の中にY君というひときわ体が大きくて力が強く、何を考えているのかよく分からない奴がいました。ある日Y君と休み時間に連れションしてたら、彼が急に便器のパイプを思いっきり引き抜きましてね。水が噴き出して俺らも周りもびしょ濡れになって。彼が何でそんなことやったんだか未だに理由はよく分からないんですけどね。多分彼自身もよく分からないでやったんだと思います。

で、Y君と私だけが先生に呼び出しをくらうなら分かるんですが、何故かその仲良しグループ全員が呼び出されまして。部屋に入ったらゴツい体育教師やら学年主任やらが5人くらい腕組みして待ち構えていました。

便器を壊したことについて理由を聞かれたり、どうやって落とし前を付けるのかみたいなことを話した後に、一人のヤクザみたいなクソ教師が

「で、お前ら本当に他の中学校の奴らに勝てると思ってんのか?」
「あいつらアイスピックとか持ち歩いてんぞ。死ぬぞ」

みたいな話を始めまして。俺らはみんな「何言ってんの?」ってぽかーんとなりました。何かよく分からないテンションでヤクザがひとしきり話して、その場は終わりました。

その後しばらく、私たちの仲良しグループは事ある毎に先生に呼び出されました。先生たちは俺らを解体したかったみたいだけど、こっちにしてみればただの友達仲間だから気にせず卒業までつるみ続けてたんだけどね。


あれはいったい何だったんだろうか?とその後もモヤっていたのですが、今日雑草を抜いていた時に気付いたのです。

───ああ、俺らもこの雑草みたいに扱われたんだ───

言わば周りの子たちは綺麗に刈り揃えられた芝生のようなもので、俺たちはその中にちょびちょびと頭を出してくる雑草だったんだなと。何故俺たちのことを引っこ抜こうとするのかあの時は理由が分からなかったけれど、そういう事だったんだって。

綺麗な芝生を作ろうとしているのに、俺らがそこを穴ぼこだらけにするんじゃねえかって先生たちは心配してたんだろうね。こちとらそんなつもりは全然無かったけれど、穴ぼこ開けてたのかなあ。分からんね



理由も分からず迫害されてほんのり傷ついた頃のことを思い出しながら、それでも雑草を引き抜く手は止まらず。だって綺麗な芝生にしたいもんね。


そんな日のどうってことない話でした。とっぴんぱらりのぷう

幸せのおすそ分けを頂けたら嬉しさの極み。 新弾箱買いします