2024年春学期 研究書評


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ドイツ 共同経営法(Mitbestimmung Gesetz)
URL MitbestG - Gesetz über die Mitbestimmung der Arbeitnehmer (gesetze-im-internet.de)
 
 
12条 デリゲート(代表者)の候補者提案
(1) デリゲート(代表者)の選挙において、対象となる労働者は候補者を提案することができます。提案された各候補者は、第3条第1項第1号で指定された選挙権を持つ労働者の20分の1または50人、または企業の管理職からの署名が必要です。
(2) 各提案は、選出されるデリゲートの数の少なくとも2倍の候補者を含む必要があります。

13条 デリゲート(代表者)の任期
(1) デリゲート(代表者)は、彼らが選出する監査役の任期に対応する期間で選出されます。彼らは、この法律の規定に基づき、労働者の監査役の再選挙が開始されるまでの間、それらの職務と権限を行使します。
(2) 9条第1項の場合、デリゲート(代表者)の任期は以下の場合に終了します:

9条第1項に基づき、選挙権を持つ労働者が直接の選挙を決定した場合。
企業がもはや9条第1項の適用条件を満たしていない場合、ただし、選挙権を持つ労働者が第1項に記載された時点までの期間を延長することを決定した場合、9条第3項が適用されます。
(3) 9条第2項の場合、デリゲート(代表者)の任期は、選挙権を持つ労働者が直接の選挙を決定した場合に終了します。9条第3項が適用されます。
(4) 第1項と異なり、デリゲート(代表者)の任期は、置き換え対象のデリゲートが所属する提案の全ての代替デリゲートの後に、選出時に指定された企業のデリゲート数よりも少なくなった場合に終了します。

14条 デリゲート(代表者)の任期の早期終了または妨害
(1) デリゲート(代表者)の任期は、13条に記載された時間よりも前に以下の理由で終了します:

職務の辞任により。
デリゲートが所属する企業での雇用終了により。
選挙権の喪失により。
(2) デリゲートの任期が早期に終了した場合、またはデリゲートが就任を妨害された場合、そのデリゲートの代わりに代替デリゲートが就任します。代替デリゲートは、そのデリゲートが所属する提案から順に選出されます。

15条従業員監査役会員の選出
(1) デリゲートは、会社法または定款(社内規則)で定められた期間について、株主選任組織が選出する監査役会員に対応する期間で、会社の従業員である監査役会員を秘密投票および比例代表制に基づいて選出します。監査役会には管理職の一人が含まれなければなりません。
(2) 選挙は、候補者提案に基づいて行われます。以下の場合の各候補者提案:

第3条第1項第1号に基づく従業員監査役会員の候補者提案は、会社の選挙権を持つ従業員の1/5または100人以上の署名が必要です。
管理職の監査役会員の候補者提案は、管理職の選挙権を持つ者による投票提案に基づいて行われます。投票提案は、管理職の選挙権を持つ者の1/20または50人以上の署名が必要です。この決定は秘密投票で行われます。各管理職は、第3項第2文に基づいて指定された候補者数に応じた票数を持っています。候補者提案には、第3項第2文で指定された候補者数が、それぞれの得票数順に含まれていなければなりません。
(3) 第1項と異なり、1つの候補者提案のみがある場合は、過半数決が行われます。この場合、候補者提案には、第3条第1項第1号および管理職の監査役会員の数の2倍の候補者が含まれていなければなりません。

16条労働組合代表者の監査役会への選出
(1) デリゲートは、秘密投票および比例代表制に基づいて、労働組合代表者として選ばれる監査役会員を選出します。この選出は、第15条第1項で指定された期間に対応します。
(2) 選挙は、会社または他の会社で従業員が選挙権を持つ場合に、その労働組合からの候補者提案に基づいて行われます。1つの候補者提案のみがある場合、第1項と異なり過半数決が行われます。この場合、候補者提案には、労働組合代表者の監査役会員の数の2倍の候補者が含まれていなければなりません。

17条代替役員
(1) 各候補者提案には、その候補者と共に監査役の代替役員が提案されることがあります。第3条第1項第1号に該当する候補者の場合、監査役の代替役員としてはその項に該当する従業員のみが提案できます。管理職の場合、監査役の代替役員としてはその項に該当する管理職のみが提案できます。1人の候補者が同時に監査役の代替役員として提案されることはできません。
(2) 候補者が監査役会員として選ばれる場合、その候補者と共に提案された監査役の代替役員も選ばれたものとします。
(3) 株式会社法第96条第2項第3文の場合、労働者の監査役会員の性別割合が第7条第3項の規定に適合しなくなる場合、代替役員の後任が除外されます。株式会社法第18a条第2項第2文が準用されます。

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ドイツの共同決定法

システムとしては
労働者が代議員を選出→代議員が監査役員を選出(労働者間の権力闘争の存在は不明)
内部的なガバナンスの強化が起こる。

第八条
株主の取締役会のメンバーは、法律、定款、または社契約に基づく取締役会のメンバーの選出を行う権限を持つ機関(選出機関)によって、法律の規定に違反しない限り、定款または社契約に従って指名されます。
株式法第101条第2項は適用されます。

第九条
従業員数8,000人以上の会社の従業員の監査役会の委員(第7条第二項)は、選挙権を有する従業員が直接選挙を決定しない限り、原則として代議員によって選出される。
従業員数が8,000人以下の会社の従業員の監査役会のメンバー(第7条第二項)は、選挙権を有する従業員が代議員による選挙を決定しない限り、直接選挙で選出される。
代議員による選挙か直接選挙かについての投票には、企業の選挙権を持つ労働者のうちの1/20が署名した申し出が必要です。投票は秘密で行われます。第1項または第2項の決定は、選挙権を持つ労働者の半数以上の参加と、投票された票の過半数でのみ採択されます。

第十条
(1)会社の各事業所では、労働者は秘密投票と比例代表制の原則に従って代議員を選出します。
(2) 代議員の選挙権は、18歳以上の企業の労働者に与えられます。労働組合法第7条第2項が適用されます。
(3) 代議員に選出可能なのは、第2項第1文で指定された労働者であり、かつ労働組合法第8条の適格条件を満たしている者です。
(4) 1つの選挙手続きについて、1つの選挙提案しか行われない場合、その中に列挙された労働者は指定された順序で選出されたものとみなされます。労働組合法第11条第2項が適用されます。

第十一条
(1) 各事業所には、90人の選挙権を持つ労働者ごとに1人の代議員が割り当てられます。ただし、以下の条件により、1つの事業所に割り当てられる代議員の数が変更されます。計算結果が次の場合、次のように変更されます。

25人以上の代議員が算出された場合、選出される代議員の数が半分になります。これらの代議員はそれぞれ2票を得ます。
50人以上の代議員が算出された場合、選出される代議員の数が三分の一になります。これらの代議員はそれぞれ3票を得ます。
75人以上の代議員が算出された場合、選出される代議員の数が四分の一になります。これらの代議員はそれぞれ4票を得ます。
100人以上の代議員が算出された場合、選出される代議員の数が五分の一になります。これらの代議員はそれぞれ5票を得ます。
125人以上の代議員が算出された場合、選出される代議員の数が六分の一になります。これらの代議員はそれぞれ6票を得ます。
150人以上の代議員が算出された場合、選出される代議員の数が七分の一になります。これらの代議員はそれぞれ7票を得ます。
代議員の数の計算では、小数点以下の数値は、その半分以上の場合には切り上げて計算されます。

(2) 各事業所の代議員の中には、労働組合法第3条第1項第1号に規定された労働者および管理職員が、その数に応じて代表されなければなりません。ある事業所で少なくとも9人の代議員が選出される場合、労働組合法第3条第1項第1号に規定された労働者および管理職員には、それぞれ少なくとも1人の代議員が割り当てられます。ただし、当該事業所で労働組合法第3条第1項第1号に規定された労働者または管理職員が5人以下である場合は、この規定は適用されません。労働組合法第3条第1項第1号に規定された労働者および管理職員に対する代議員の割り当てが、第2文によってのみ行われる場合、当該事業所の代議員の数は、適用される。第1項に従って計算された数に応じて増加します。
もし、この法律によってその企業の取締役会メンバーの選挙に参加する企業や企業の従業員に代議員が割り当てられない場合、第3項が適用されます。

代議員の選挙には、その事業所の選挙権を持つ労働者が候補者を指名できます。各候補者についての提案は、労働組合法第3条第1項第1号に規定された労働者または管理職員のうち、選挙権を持つ者の1/20または50人によって署名される必要があります。


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研究書評

ドイツ共同決定法の条文に関して

労働評議会の設置
労働評議会は、投票権のある正規従業員が 5 人以上いる企業で選出され、そのうち 3 人が投票権を持つ。これは複数の企業による共同事業にも当てはまる。(コーポレーション)
複数の企業による共同運営が想定される場合には経営資源と従業員は、仕事関連の目的を追求するために企業によって共同で使用される。
会社を分割すると、当該会社の組織(労働評議会)を大きく変えることなく、会社の 1つまたは複数の部分がその分割に関与する別の会社に割り当てられる。

労働組合と経営者団体の立場
雇用主と労働評議会は、従業員と会社の利益のために、適用される労働協約に従い、会社に代表される労働組合や使用者団体と協力し、信頼の精神に基づいて協力する。
この法律に規定されている会社に代表される労働組合の任務と権限を遂行するには、雇用主またはその代表者に通知した後、その代表者が会社へのアクセスを許可されなければならない。(内部情報の開示)ただし、これが以下の規定に抵触しない限りである。
運用プロセス、強制的な安全規制、または企業秘密の保護における避けられないニーズ
また労働組合および使用者団体の任務、特に組合員の利益の代表は、この法律の影響を受けない。

規則
労働協約により次の事項を定めることができる。
複数の事業を展開している企業向けには全社的な労働評議会の設立、または企業の組み合わせ、これが労働評議会の設立を促進する場合、または従業員の利益を適切に代表するのに役立つ場合また企業および法人の場合、製品またはプロジェクトに関連する事業分野(部門)ごとに組織されており、参加が必要な事項については部門の経営陣も決定する限り、部門内に労働評議会(部門労働評議会)を設置する。
労働評議会の任務の適切な履行と一致している場合、その他の従業員代表構造、これが特に会社、会社またはグループ組織、または企業間のその他の形式の協力により、従業員の利益を効果的かつ適切に代表するのに役立つ場合に限ります。従業員代表間の会社横断的な協力に役立つ追加の事業構成委員会(作業グループ)。労働会憲法法に基づく従業員の追加代表。これにより、労働評議会と従業員の間の協力が促進されます。

第1項の 1、2、4 または 5 の場合、労働協約がなく、他の労働協約が適用されない場合には、労働協約を通じて規制を行うことができる。
第 1 項第 1 号 a の場合、労働協約がなく、社内に労働評議会が存在しない場合、従業員は過半数の票で全社労働評議会の選出を決定することができる。投票は、投票権のある会社の少なくとも 3 人の従業員、または会社に代表される労働組合によって開始できる。
労働協約または労働協約に別段の定めがない限り、第 1 項 1 から 3 に基づく規則は、労働評議会が存在しないか、新たな労働評議会が存在しない限り、次回の定例労働評議会選挙で初めて適用されるものとする。労働評議会の選挙は他の理由から必要である。労働協約または労働協約に別の選挙日が規定されている場合、既存の労働評議会の任期は、第 1 項 1 から 3 の規定により適用されなくなり、選挙結果の発表をもって終了する。
労働規約法に基づく組織単位は、第 1 項 1 から 3 に基づく労働協約または労働協約に基づいて形成され、この法律の意味においては会社とみなされる。労働評議会の権利と義務、およびそのメンバーの法的地位に関する規制は、労働評議会内で形成される従業員代表に適用される。

企業の一部、中小企業
事業の一部は、第 1 条第 1 項第 1 文および第 1 条の要件を満たしている場合、独立した事業とみなされる。
本社から空間的に遠く離れている、または責任分野と組織の観点から独立している。
独自の労働評議会を持たない企業の一部の従業員は、主要会社の労働評議会の選挙に参加するかどうかを過半数の投票によって非公式に決定することができる。第 3 条第 3 文第 2 条がそれに応じて適用される。投票は主要会社の労働評議会によって開始されることもある。この決定は、任期終了の 10 週間前までに主要会社の労働評議会に通知されなければならない。文 2 から文 4 は、決議の取り消しに準じて適用される。
第 1 条第 1 項第 1 号の要件を満たさない会社は、主たる会社に配属される。

従業員
この法律の意味における従業員とは、社内で雇用されているか、現場で雇用されているか、または在宅勤務で雇用されているかに関係なく、職業訓練のために雇用されている人々を含む労働者および従業員を指す。在宅勤務者や主に会社で働く人も従業員とみなされる。従業員には公務員(公務員)、軍人(兵士)、および私法に基づいて組織された企業で働く職業訓練のために雇用されている公務員も含まれる。
この法律の意味における従業員は従業員とは見なされない。
法人の場合、法人を法的に代表するために任命された団体のメンバー、ゼネラル・パートナーシップのパートナーまたは別のグループのメンバー。ただし、法律、法令またはパートナーシップ契約によって、個人グループを代表するか、会社の事業を管理するために任命されている場合に限る。雇用が主に収入のためではなく、主に慈善活動または宗教的動機によって決定される人、
雇用が主に収入に貢献しておらず、主に治癒、再調整、道徳的向上または教育を目的として雇用されている人をさす。

雇用主と同じ世帯に住む配偶者、生涯のパートナー、一親等の親族、義理の親
特に別段の定めがない限り、この法律は上級職員には適用されない。上級従業員とは、雇用契約および会社または社内での地位に従って、次のような人を指す。
会社または会社の部門で雇用されている従業員を独自に雇用および解雇する権利がある、または一般委任状または委任状を持っており、委任状は雇用主または雇用主との関係においても重要ではない。
会社または事業の存続と発展にとって重要であり、本質的に指示なしに意思決定を下す場合、または決定に重大な影響を与える場合、その遂行には特別な経験と知識が必要なその他の業務を定期的に実行する。これは、特に法的規制、計画、ガイドラインによる要件や、他の上級マネージャーと協力する場合にも当てはまる。文 1 と文 2 は、第 1 文の文 3 で指名された公務員および軍人に適宜適用される。疑義がある場合、第 3 項第 3 号に基づく上級従業員とは、労働評議会、スポークスパーソン委員会、従業員の監督委員会のメンバーの前回の選挙の機会に、または法的拘束力のある裁判所の決定によって、上級従業員に割り当てられている、または社内の上級従業員の大多数が代表を務める管理レベルに属している、または会社の上級従業員の慣例である定期的な年収を受け取っている、または、3 番を適用する際にまだ疑問が残る場合は、社会保障法第 4 編第 18 条に基づく基準額の 3 倍を超える通常の年間給与を受け取る。

投票資格
16 歳に達したすべての従業員に投票権がある。別の雇用主の従業員が仕事をするために雇われている場合、その会社に 3か月以上雇用されていれば投票する権利がある。

資格
18 歳に達し、入社 6 か月以内、または主に在宅従業員として会社で働いてきたすべての有権者に投票資格がある。この6か月の勤務期間には、同一会社又はグループ内の他の会社に直ちに勤務していた期間も含まれる(株式会社法第18条第1項)。有罪判決を受けて公選の権利を得る能力を持たない者には投票資格がない。
会社の存続期間が 6 か月未満の場合、勤続 6 か月に関する第 1 項の規定を逸脱し、労働評議会選挙の開始時に会社に雇用されており、その他の要件を満たす従業員は、当選資格がある方を指す。



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西剛広「法制度的枠組みとコーポレート・ガバナンス」(『商学研究論集』24、p129-148、2006-02-28)

「内容総括・選択理由」
前回に引き続き各国の法制度面からのコーポレートガバナンスに対する関わり方を参考にするため選択した。

「内容」
アメリカでは、21世紀に入り、アメリカでは大企業の粉飾決算などの不正経理などによる不祥事が多発し、大きな経済・社会問題となっている。2001年から2002年にかけて、不正会計問題などにより、エンロン社、ワールドコムなどの大企業が起こした不祥事がクローズ・アップされるようになってきた。エンロン社において、実体のない特別目的会社 (SPC) を複数設立し、資産などを売却して、見せかけ上の多額の利益を計上した。また、ワールドコムは、巨額の粉飾決算(総額 38億ドル)の発覚とCEOに対する相当額の不明朗な融資が発覚した。このような多発する企業不祥事に対して、2002年7月アメリカ議会は、企業の不正防止を目指す「企業改革法」をまとめ、サーベイズ・オクスレイ法 (Sarbanes-Oxley Act)が成立した。この法案は、法人としての企業の報告要件と説明責任を拡大し、株式公開企業の特定の行動を禁止し、取締役会の監査委員会の責任と権限を大幅に拡大することを狙いとする。
その内容は、監査法人への監視強化ならびに、企業経営者の罰則強化、取締役会の監視業務の強化から主に構成される。監視法人への監視強化については、独立確保のため、外部監査人の活動範囲の制限されることが目指される。すなわち、監査法人の経営コンサルタントなどの兼業禁止、監査法人を監督する独立監査機関の設置、アメリカ内で監査業務を行う海外監査法人も監督が含まれる。企業経営者への罰則強化に関しては、証券詐欺に対する禁固刑を最長25年CEO・CFOの署名が要求される財務報告書の違反は同20年証拠隠滅・改ざんは同20年などを設けておりまた、経営者の報告制度の拡充CEO, CFO は年次報告書及び四半期報告書に記載した諸点について保証する宣誓書の義務化などを目指している。
その他には、監査委員会の強化・拡充があげられる。公開会社には、監査法人を設置し、承認を受けることが義務付けられている。監査委員会がなければ、その業務は取締役会に任せられるとしている。その監査委員会には、監査委員会の構成を全て独立した社外取締役とすること。また、取締役会には、取締役が報酬以外当該会社から受け取らないことや、当該会社もしくはその子会社との関係がないことを求めている。つまり、取締役会(監査委員会)の経営者に対する監視業務の強化、取締役会の独立性を向上させることを狙いとしているのである。

「総括」
今回はコーポレートガバナンスが最初に提唱されたアメリカに着目した。当該論文ではイギリスについてもまとめられているため来週以降参照する。

4/25

・海野正「コーポレート・ガバナンスを巡る最近の動き」(『武蔵野大学経営研究所紀要』第5号,p.51-70, 2022-03)
「内容総括・選択理由」
ドイツの政策的なコーポレートガバナンスの関わり方を参照した際、日本の会社法による定義に課題があるのではと考察したため選択した。

「内容」
「企業の持続的成長と企業価値の向上」を目指した「コーポレート・ガバナンス改革」の背景を踏まえて、コーポレート・ガバナンスを巡る最近の動向に関して、会社法の改正に触れたい。2021年3月1日に施行された2019年の会社法の改正では、社外取締役の設置についての規定が充実した。これ以前にも、コーポレート・ガバナンスに関連する会社法の改正は行われており、株式会社の機関設計に関しては、例えば 2002 年の旧商法の改正 (2003年施行)の際に、現在の「指名委員会等設置会社」が「委員会等設置会社」として、2014年の会社法の改正 (2015年施行)では、「監査等委員会設置会社」が導入されている。今回の改正の対象である「社外取締役」は、取締役のうち会社の業務の執行を行わない、会社や経営陣からの一定の独立性を有する者をいう。コーポレート・ガバナンスの観点からは、経営陣から独立した立場で、会社の経営や業務の執行を監督することが期待される。つまり経営陣とのしがらみがないことにより、ステークホルダー(企業を取り巻く幅広い利害関係者、従業員や取引先、社会全体等)や世論、そして株主の意見を取締役会に反映することができ、ガバナンスの向上への貢献が期待できるのである。この2019年の会社法の改正により、「公開会社」かつ「大会社」である監査 役会設置会社でかつ、「金融商品取引法上の有価証券報告書の提出義務のある会社」は、社外取締役を最低1名置くことが義務付けられた。株式会社が「公開会社」かつ「大会社」の場合には、その機関設計は、「監査役会設置会社」・「指名委員会等設置会社」・「監査等委員会設置会社」の3種類の中から選ばなければならないこととされ、このうち、「指名委員会等設置会社」・ 「監査等委員会設置会社」では、既に最低2名の社外取締役を置くことが定められていたので、この改正により「公開会社」かつ「大会社」である株式会社は何れの機関設計の場合においても、社外取締役の設置が義務付けられたことになった。

「総括」
社外の立場の人材を主に重視しているのが日本の会社法の特徴として考えられることがわかった。被雇用者と消費者の立場の意見を吸収する組織体型になっているとは読み取れない。

4/18

・陳浩「ドイツのコーポレート・ガバナンスの変容と監査役会改革の課題」(『立命館国際研究 / 立命館大学国際関係学会 編』 24 (2), 547-574, 2011-10)

「内容総括、選択理由」
前回のドイツにおける、ステークホルダーの中でも労使関係を重視するガバナンスにおいて時代観による課題の変遷とその対処方法を分析するため選択した。

「内容」
ドイツのコーポレート・ガバナンスは、本来政府、金融機構、労働者からの代表によって構成され、構成員の多様化は企業の利害を多元化させていた。経営者は資本側からの圧力を受け、経営活動を行うと同時に、企業の長期的な発展や雇用の安定にも注意を支払わなくてはならなかった。さらに、ドイツ企業の主な株主である政府と大銀行も、短期的な配当より企業の長期的な存続と成長力、そして労働者の雇用安定と豊かな生活の保障を重視していた。資本市場が未発達の時期には、こうした株主、労働者、経営者が持続的で安定した同盟を形成することで、経営上の協力を行い、社会的安定にも貢献していた。しかし、1990年代に入ると、ドイツ企業を取り巻く国内外の経済環境が大きく変化する。公共企業の民営化、企業経営戦略の転換に伴い、ドイツのコーポレート・ガバナンスも変化してきた。企業は競争力を維持、また向上させるために、生産の再編を行いつつある。生産の再編は、工場の移転や労働者の解雇を発生させ、労使間の利害の対立を先鋭化させている。また、コーポレート・ガバナンスの違いによって企業収益の優先配分が異なる。アングロサクソン諸国の企業では、株主が利益配分で優位を占めている。それに対して、欧州大陸諸国における企業では、企業収益はかつて再生産投資や労働者報酬に優先に配分されていた。しかし、コーポレート・ガバナンスの変化により、ドイツでは収益の配分が株主に有利になりつつある(Höpner (2003), S.183-184)。さらに、経営者の経営意欲を高めるために、取締役の報酬額は業績・株式相場と連動するように設定される。こうした傾向は株主と経営者の所得を改善するが、労働者の賃金を低下させる。例えば、グローバルな金融危機に襲われた2008年に、フォルクスワーゲン社では、労働者の賃金は横這い状態であった一方で、同社の取締役 MartinWinterkorn の報酬額は前年より2.5倍増え、株主の配当金も9%伸びた(普通株主,優先株主は7%) (Volkswagen (2009), S.102&S.127)。ドイツでは、非中核部門の売却や取締役報酬の決定は、必ず監査役会で行われなければならないと法律で規定している。1976年共同決定法に従えば、監査役会は労働者の利益を十分に守り、非中核部門の売却や取締役報酬の高騰を阻止することができるはずである。にもかかわらず、1976年共同決定法の限界 や、フォルクスワーゲン社のような事例からも、監査役会は十分な機能を果たしていないことが示されている。

「総括」
労使関係上、下と表現される被雇用者が監査役員に含まれることでガバナンスの偏りが生まれないことが確認できた。ここに消費者の価値観を持った代表者の参画を法律上強制させることができれば全てのステークホルダーに対する平等な価値の提供を実現できるのではと言う新たな仮説を設定できた。

4/11

・海道ノブチカ「ドイツのコーポレート・ガバナンス改革」(『商学研究』133 1-15,2003年9月1日)

「内容総括、選択理由」
企業形態的に国内と似通っているドイツの法令的見解をもとに、コーポレートガバナンスコードの設定担当者などガバナンスの主導者に対する権力集中をどのような側面から解決を行なっているのか分析するため選択した。

「内容」
ドイツの株式会社の特徴は、周知のようにトップ・マネジメント組織が業務執行機関である取締役会 (Vorstand)と 統制機関である監査役会 (Aufsichtsrat)との二つに分かれており、重層構造になっている点にある。日本とは違いドイツでは株主総会においてまず監査役が選ばれ、そして監査役が取締役を選任する。このようにドイツのトップ・マネジメント組織は、機関の分化と権限の分配が法律上、厳密に規定されている。そして1976年の共同決定法によりこの監査役会に労働側代表が半数参加することになる。企業政策の決定に対し労働側はモニタリング機能を持つことになる。この労働者の共同決定を定めている法律には石炭・鉄鋼業に適用される1951年のモンタン共同決定法、1952年の経営体制法(1972年大幅改正) および1976年の共同決定法などがある。従業員2000人以上の資本会社にたいして適用される共同決定法においては、監査役会に労働側代表が半数参加することになる。それによって労働側は資本側と共に取締役の人事権や取締役の意思決定に対する同意権を留保することにより企業政策の決定に影響をおよぼす可能性を持っている。資本側監査役代表の中には、個人・法人の大株主以外にも寄託議決権制度にもとづく銀行の代表も参加している。株式所有の分散した公開株式会社の場合には寄託議決権制度にもとづき銀行が監査役会に役員を派遣し、場合によっては監査役議長のポストを占めることにより、産業企業に対して大きな影響力を行使することができる。したがってドイツでは、出資者、金融機関、労働組合、従業員といった各利害集団は、監査役会をとおして企業の政策決定、意思決定に影響をおよぼす可能性を持っているし、また企業を規制できる可能性を持っている。2002年2月26日に政府委員会より「ドイツ・コーポレート・ガバナンス規準」 (Deutscher Corporate Governance Kodex)が公表された。この規準の特徴は、つぎの3点にある。ます第1 は、企業経営の透明性を高めることによって内外の株主・投資家の権利の保護を拡充する点、さらに顧客、従業員、公共一般の信頼性を高めることにある。また第2は、監査役会の機能を拡充し明確化する点にある。さらに第3 は、監査役と決算監査人の独立性を確保する点にある。監査役会の機能の拡充と明確化についてみるとまず監査役の個人的資格要件として選任に際して専門知識、能力、経験、独立性確保に留意することが義務づけられ、年齢制限の設定が規定されている。監査役の機能の充実という面では、監査役会内に専門的知識を備えたメンバーから構成される委員会を設けるべきであると提言している。監査役の独立性の確保に関しては、取締役であった者は2名を超えて監査役として選任されてはならないという規定が設けられている。また重要な競合他社の役員に就任すること、あるいは顧問活動をおこなうことを禁止している。

「総括」
結果として起こり得る有権者への力の偏りに対する分析は行われておらず、未だ課題の解決は不透明なまま。いっそのこと会社法による規制を設けるのもありなのかと。

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