研究書評


12/7 


・豊島勉「ドイツにおけるコーポレート・ガバナンスと労使関係の変貌(上)」(209年 6 月 1 日) 

「内容総括、選択理由」 

投資家に対する利益割合が増加してきたドイツにおけるコーポレートガバナンスを例に取り、以前消費者に対する利益還元の割合が大きかった日本におけるコーポレートガバナンスと比較して論じていることから当該論文を選択した。 

「内容」 

株式所有の集中度が高い企業においては,企業の所有者が企業に永続的な利害を持つ傾向が強く,取締役会のメンバーか上級経営者となるかして,企業の内部者として,企業をモニターし,コントロールする。そして経営者と株主の安定的で緊密な関係が形成され,株式所有の安定性があることが敵対的買収に対する障壁となり,企業支配市場の存在は希薄である。従業員に対しても,長期的な関係を重視し,従業員による専門・技能能力向上のための投資を促し,経営戦略は長期的観点が重視される。取引相手に対しても長期的な関係を構築し,顧客に対しても長期的な信頼関係を構築すること重視する特徴を持つ。こうしたコーポレート・ガバナンスステムをインサイダー・システムという用語で表現し,株式所有の分散が高いガバナンスシステムをアウトサイダー・システムという用語を用いて,両者を区別している。インサイダー・システムはステークホルダーシステムとほぼ同じ意味で使用され,アウトサイダー・システムはシェアホルダー・システムとほぼ同じ意味で使用されているのが一般的である。アウトサイダー・システムでは,経営者と株主の関係は流動的で親密でなく,短期的である。分散して個別的には影響力を持たない株主の利益を重視させるためのメカニズムとして,ストック・オプションが利用され,株価重視と経営者の報酬を連動させている。さらに,株主の利益,株主価値を軽視する経営者を更迭して規律づけを行うメカニズムとして企業支配市場,つまり敵対的買収市場が不可欠であるとされ,その市場規模の拡大が歓迎されている。経営者は4半期毎に企業業績を報告することを求められ,経営成果判断の時間軸は短期主義であり,長期的な経営には適合しにくいと言われている。 アウトサイダー・システムついては,エイジェンシー理論と契約の束論が主要な理論として係わっているがそこでは,株主と株主のエイジェントである経営者の関係のみがガバナンス問題の考察の対象となっており,従業員や他のステークホルダーは自由な契約で定めた報酬か対価を得るのであり,株主のみは残余利益の配分を受けるという地位をあたえられている。従って,残余利益を大きくする最も強いインセンティブを株主のみが持っている,つまり企業価値を最大にする最も強いインセンティブを持つ地位に株主がいるから,企業価値から負債を引いた残りの株主のものとな る株主価値をいかに増加させるかが企業の効率性の尺度であり,ガバナンス問題の最大の問題であるという理論的アプローチを取っている。 


「総括」 

上記の内容を考慮して株の所持割合ごとによる残余利益配分、また株主のエイジェントとしての経営者が動かす企業が生み出す利益が消費者の契約による利益取得と割合的にどう優位性があるのか考察すべきだと考える。 

11/30 

・豊島勉「ドイツにおけるコーポレート・ガバナンスと労使関係の変貌(上)」(209年 6 月 1 日) 

「内容総括、選択理由」 

投資家に対する利益割合が増加してきたドイツにおけるコーポレートガバナンスを例に取り、以前消費者に対する利益還元の割合が大きかった日本におけるコーポレートガバナンスと比較して論じていることから当該論文を選択した。 


「内容」 

ドイツのコーポレート・ガバナンスは、過去には株主の利益と並び、労働者の利益を重視するステークホルダー型の一例と見なされていた。しかし、銀行の変革、コーポレート・ネットワークの綻び、外国の機関投資家の増加、企業支配市場の出現などにより、非典型的雇用の増加、雇用関係の後退、賃金格差の拡大、ワーキング・プア問題の発生が見られる。株主価値経営の浸透が進み、従来の高賃金・高生産性モデルが破綻しており、ドイツのコーポレート・ガバナンスは米型に収斂するかどうかが議論されている。特に労働協約システムの空洞化が重要な要因であり、これに伴い格差と貧困が拡大している。この転換期において、現代のドイツのコーポレート・ガバナンスシステムの変容とその課題、特に労働協約システムの空洞化とそれに伴う格差拡大と貧困の問題を当該文章では考察している。DeYongの研究とBeyer/Haselの共同研究によれば、株主価値の強化は、欧州の大企業において株主に有利な富の配分をもたらしている。DeYongの調査では、90年代初頭にはアングロ・アメリカ企業が労働への付加価値を62.2%とし、ドイツ企業が86.1%であり、配当への配分でも明確な差異があった。しかし、Beyer/Haselの研究によれば、90年代後半にはドイツ企業も配当への配分が増加し、労働への配分が減少している。これは、ドイツ企業がアングロ・アメリカ企業の株主利益に接近している兆候とされる。株主利益重視の傾向は近年ますます強まり、賃金や分配率の低下と株主利益の増加が明確になっている。例えば、局面IIでは一人当たりの実質賃金が低下し、賃金分配率も下がっている一方で、名目総利潤と実質分配利潤は増加しており、株主優先の傾向が顕著になっている。 

「総括」 

株主優先の傾向を数値的に示されているため設定した仮説の論拠となり得ることから、依然当該論文を読了していないためさらに精査する。 

11/23


・「コーポレート・ガバナンス・システムに関する実務指針 (CGS ガイドライン)」(平成29年3月31日 経済産業省)

「内容総括、選択理由」
社外取締役を採用した相互監視型のコーポレートガバナンスに関して以前までのメガバンクによるコーポレートガバナンスコードに乗かった手法とどう異なるのか、部門形成型のコーポレートガバナンスによる相互監視に応用できないかどうかを検討する上での参考とするため当該文献を選択した。
「内容」
当該論文における相互監視とは自身が提唱している各部門の相互監視ではなく、取締役と企業の相互監視であり、強制されたガバナンスが正しいモノであるかどうかを企業側にも権利を与え、取締役会に対する意見を出せるようにし、各ステークホルダーの権利をより平等にならすことが目的だと考える。それを踏まえた上で今回の文献の要点をまとめると以下の通りになる。企業が取締役会を実効的に機能させるためには、経営戦略決定や業績評価を中心に行い、経営陣に業務執行の決定を委任するガバナンス体制を採用することが一つの選択肢である。特に海外市場での活動が多い企業は、海外のステークホルダーからの信頼を得るためにモニタリング機能に重点を置いたガバナンス体制が求められる。欧米では、モニタリング機能が重視され、独立社外取締役比率が高く、指名委員会・報酬委員会が一般的である。国内企業が同様のガバナンス体制に移行する場合、独立社外取締役の数を増やし、取締役会の役割を監督機能に特化させることが考えられる。また、モニタリング機能の強化に伴い、取締役会の開催頻度や所要時間を見直すことも提案されている。最終的には、モニタリング機能を重視したガバナンス体制は社長・CEOの解職を念頭に置いているが、それは限定的であり、むしろ経営陣を支援する仕組みとして機能するとされている。
「総括」
上記の内容における最後に、社長の解雇を念頭においたガバナンスが相互監視的なモノであるといえるとまとめているが、当初この文章を読んだ時その理由、根拠に関して疑念を持たざるを得なかったがしかしこれはガバナンスの主体者が今までの経営者ではなく社外取締役に移り変わっているため結果として必要なくなるのであろうことが予測できた。

11/16 


・亀井克之「リスクマネジメントの組織化の研究 -理論と実例- 」(『損害保険研究』 66 (2), 45-85, 2004-08) 

「内容総括、選択理由」 

内容総括、選択理由は前回と同じ文章のためここでは省略する。 

「内容」 

以下には前回の続きの第二章の内容に関してまとめている。1978年に提起されたリスクマネジメントの3形態論は、グリコ・森永事件から阪神大震災までの事例を基に、危機管理型や災害管理型などを組み込み、1997年に4形態論に発展。最新の2004年の論文では、ビジネス・リスクマネジメントを業務管理型、経営管理型、経営戦略型の3形態に加え、緊急時の危機管理型を付加した4形態が提示されている。これらの形態は同時に組織内に存在・展開可能であり、リスクマネジメントの組織化に関するさまざまな理念と共通項がある。 

米国ではリスクマネジャーが専門職として設置され、従来は純粋リスクに焦点を当てた業務管理型リスクマネジメントが主流であった。しかし、その範囲は保険業務や防災業務に限られていた。さらに、米国のリスクマネジャーは通常、保険に付保可能なリスクに対する予防・軽減措置を講じ、法務リスクに焦点を当てる傾向があり、広義のリスク全体に対する管理責任者としての役割を果たしていた。 

一方で、日本では従来型リスクマネジメントに対する批判もあり、米国の組織の現状と問題点が指摘されている。リスクマネジャーは主に財務部門や経理部門に属しており、その位置づけや役割は限定的であるとされている。今日の組織が多様なリスクに対応する中で、米国型の従来型リスクマネジメントが求められる職務の拡大に対応できない可能性があり、全組織にまたがる統合型のリスクマネジメントに制約が生じていると指摘されている。 

「総括」 

各部門におけるリスクマネジメントの役割を担うリスクマネージャーのコミュニケーションの欠如が米国型のリスクマネジメントの問題点であり、日本の従来型のリスクマネジメントの欠点は総合的な視点から担う物であることから組織の末端にまで監視が行き届かない欠点も存在し、あらたなリスクマネジメントの形態が模索されていることが窺える。前者的なコーポレートガバナンス上における組織は課題が多く募っていることが抽象的に理解できた。

11/9 


・亀井克之「リスクマネジメントの組織化の研究 -理論と実例- 」(『損害保険研究』 66 (2), 45-85, 2004-08) 


 


 


「内容総括、選択理由」 


内容総括としては、リスクマネジメントの組織化を実例を用いその目的ごとに組織の設置の仕方を四つに分類している。選択理由としてはリスクマネジメントの担う仕事の範囲を調査することで他のコーポレートガバナンスにおける部門化の仕事の範囲を設定することに利用することを目的としている。 


 


「内容」 


当該論文における特に第一章に着目したとき、主にリスクマネジメントの形態的変化に関して時系列順に実例を用いて説明されている。まず第一に米国を中心に普及した保険管理型のリスクマネジメントの理論においては「他の経営管理との関係について, リスクマネジメントの位置づけが必ずしも明確ではなく, 各部門管理との管理領域の範囲を確定していない」 として、 亀井利明 (1978)は、リスクマネジメント部門 (RM) の経営組織上の位置付けとして3形態を提示し、それを明確にした。①「リスクマネジメントの対象となる企業リスクは純粋リスクに限定されたものであってはなく、リスク充満の時代に生き残るための 投機的リスクを含む)企業リスク全般に わたる管理でなければならない 」 とし、② 「全般管理 スタッフと部門管理スタッフの双方を担当するスタッフ部門として位置付けるのが妥当である 」とする先駆的な主張は、現代における統合リスクマネジメントの組織化論を先取りする内容であったとされている。上記二つの条件からリスクマネジメントの三形態は1 保健管理型リスクマネジメント、2 経営管理型リスクマネジメント、3 経営戦略型リスクマネジメントと位置付けられる。1978年に提起された3形態論は、グリコ・森永事件から阪神大震災に至 る事柄をふまえて危機管理の取り組みが進展してきたのを背景に、緊急事態に対応した「危機管理型」ないしは 「災害管理型」 と呼ばれる形態を新たに加えて4形態論へと進展した。下記にはそれぞれの形態における役割を示す。 


 


業務管理型 


目的 偶発事故からの保全管理、リスク処理費用の合理化 


対象リスク 純粋リスク 


内容 各部門における業務上のリスクの管理 


位置付け 部門管理の一部(保険管理の場合は財務管理の一部) 


活動 業務的意思決定 


 


経営管理型 


目的 企業リスクの克服 


対象リスク 純粋リスクと一部の投機的リスク 


内容 安全管理、防災管理、財務管理 


位置付け 独立した部門管理 


活動 管理的意思決定 


 


経営戦略型 


目的 ①経営戦略に伴うリスクの処理を目的とする企業のマネジメント ②ロス (損失) 要因を除去してゲイン (利得) への寄与を志向する経営戦略支援型のマネジメント 


対象リスク 投機的リスクを含む企業リスク全般 


内容 リスク処理に関してトップマネジメントと各部門の双方に対する助言、調整、監視 


位置付け スタッフ組織 


活動 トップの戦略的意思決定への助言 各部門の管理的意思決定への助言 


 


災害管理型 


目的 緊急事態における経営危機の打開と克服による正常な企業活動の続行 


対象リスク 偶発的、持続的な巨大事故・災害 政治・経済・社会的事件による経営危機 


内容 防災管理緊急事態に対応するための戦略業務 


位置付け 全般管理部門管理を含めた全社的な緊急組織 


活動 緊急事態に対するマニュアルの作成、周知 


 


「総括」 


法的な処理、突発的な災害の処理、経営的な処理と目的によって組織体系が異なっていることを踏まえ、他の組織化においても活用できるのではと考える。 

10/12

・麦島哲「経営者(取締役・監査役)の リスクマネジメントに関する考察 ~取締役・監査役の監督機能を実効あらしめるためには~」(『千葉経済論叢』 第68号 p157~p192) 


chibakeizaironso68_09.pdf  


 


「内容総括・選択理由」 


当該論文が前回の続きである第二章に関してであるため、選択理由に関しては前回と同様である。内容総括に関しては前回の経営者リスクとリスクマネジメントが部門として統括する分野の範囲を比較するため、経営者リスクに関する前提を調査したため、その延長としてそのリスクをどのようにマネジメントするのかを第二章において説明されている。 


 


「内容」 


リスクマネジメントはリスクの発見、処理手段の検討、選択・実行、監視の組織的なプロセス。経営者リスクにおいて、コーポレートガバナンスが重要で、株主と取締役が経営者を監督する。経営学ではコーポレートガバナンスに株主価値モデル、洗練された株主価値モデル、多元主義モデルの3つのアプローチがあり、株主価値モデルでは株主が主体。しかし、多元主義モデルでは株主以外のステークホルダーも関与し、リスクマネジメントの主体には株主とステークホルダーが含まれる。議論は監督機能の実効性に焦点が当たる。多元主義モデル採用時、株主価値モデルに比べリスクマネジメントの劣る理由を探るためにリスク処理手段とリスクコントロールの方法を検討する必要がある。リスクマネジメントにおいて、リスク処理手段は「リスクコントロール」と「リスクファイナンス」に分けられる。論文では「経営者リスク」に焦点を当て、リスクファイナンスは現実的でないと指摘される。したがって、経営者リスクのリスクマネジメントは主に「リスクコントロール」に依存する。リスクコントロールには「回避」「結合」「分離」「移転」「損失制御」の5つの方法が存在し、「経営者リスク」においては「回避」や「損失制御」が中心的なアプローチとされる。特に「損失制御」は「損失予防」と「損失軽減」の2つの側面を持ち、企業不祥事などのリスクに対処する手段として再生ファンドや産業再生機構の活動が挙げられる。「経営者リスク」のリスクコントロールには、損失予防が主要な焦点であり、「経営者をどう選ぶか」と「経営者をどう監督するか」という問題が重要である。例えば、カルロス・ゴーンは日産自動車の回復に成功した経営者で、「内部統制」や「取締役会」の機能がリスクコントロールに関与している。株主のコントロールには「内部統制」や株主権の行使、株主代表訴訟、情報開示などが含まれ、株主以外のステークホルダー(従業員、顧客、取引先、地域社会)によるコントロールは「CSR」や「労働組合」、日本的経営文化における従業員への影響力も考慮される。また、「コンプライアンス」や「企業倫理」もリスクマネジメントとコーポレートガバナンスと密接に関連し、重要な課題となっている。 


 


「総括」 


上記の内容においてリスクコントロールとリスクマネジメントの差異に関して学べた。特にリスクコントロールに関してはリスクテイクを行う経営者において特に着目される観点だと感じた。 


6/22

・亀井克之「リスクマネジメントの展開と組織」(『危機と管理』2005年 36巻 p239~257)

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jarms/36/0/36_239/_pdf/-char/ja


<内容総括・選択理由>

内容総括としては作者はリスクマネジメントにおける「リスク」の先行研究が進んでいるものの「マネジメント」の情報量の少なさに着目し、企業が対応するべき複数のリスクを種類ごとにマネジメント方法を変更するべきと作者はしており、リスクマネジメント統括者、リスクマネジメント部門、自治体における「危機管理部門の設置」が主なマネジメント方法のモデルケースとして挙げられている。選択理由としては前回の考察に引き続きリスクマネジメント部門のアウトサイダー的素質に着目しアウトサイダー的素養として主に考えられる所属企業に対する批判的視点を持つことと企業がどのようなリスクに向き合うかを予測することに関連性があるのかを調査するため選択した。

<内容>

まずリスクマネジメントを分類する上で、どのようなリスクにどのようなマネジメントが対応するのかを考察する必要性がある。その点で、リスクの分類は五種類存在し(1)企業リスク、家庭リスク、学校リスク、自治体リスク(2)純粋リスク、投機的リスク(3)災害リスク、業務リスク、管理リスク、戦略リスク(4)不注意、ミス、失敗、内部告発(5)事故、事件、危機、犯罪が挙げられ、それに対応するマネジメントの種類としては(1)業務の連続(2)マニュアルの運用(3)要素(過程)の循環(=計画→組織→指導→統制、PDSA)(4)意思決定の連続(情報→予測→決断)(5)対策(対応)の結合(導入対策→事前対策→渦中対策→事後対策)が存在する。

そしてマネジメント。ここでマネジメントの種類における(1)(3)(4)(5)に着目するとそれぞれに対応する組織体制が存在し、業務管理型リスクマネジメント、経営管理型リスクマネジメント、経営戦略型リスクマネジメント、危機管理型リスクマネジメントとなる。各々のリスクマネジメントの形によって組織の体系が異なり業務管理型リスクマネジメントにおいては各部門に一人リスクマネジメント担当者を置き、経営管理型リスクマネジメントにおいては独立したリスクマネジメント部門の設置、経営戦略型リスクマネジメント(別称統合型リスクマネジメント)においてはトップマネジメント層(取締役会など)にリスクマネジメント役員を置き、危機管理型リスクマネジメントでは日常的に防災管理を担当する専門集団と緊急事態に際して召集される全社的な緊急組織の二つを設置するべきとしている。上記のようなリスクごとにおけるコーディネート(調整)がリスクマネジメントにおいて最重要であるとしている。


<総評>

リスクマネジメントにおける組織の設定に関して述べている論文だったためリスクの設定部分に対する言及は存在しなかった。組織の特徴としてはそもそもリスクの種類ごとにリスクマネジメントを部門ごとで行う、組織として解決する、統括者を設定するなど傾向が異なったためリスクの分類における知見、またリスク発見の手順を重視して考察するべきだと感じた。



6/15

・吉川吉衛「コーポレートガバナンス、内部統制、リスクマネジメント(第五章)」(『経営研究』第53号 p1-23)

https://dlisv03.media.osaka-cu.ac.jp/contents/osakacu/kiyo/DB00010620.pdf


<内容総括、選択理由>

内容に関してリスクマネジメントのプロセスをCOSOの考えた経営者の活動における「リスクの評価」、「リスクの管理」と伝統的なリスクマネジメントにおけるマネジメントプロセスである計画-実行-統制の二つに分け、それぞれの関連性を示した上で最終的にリスクマネジメントげ内部統制の構成要素の一部を担い経営者の企業単位におけるマネジメントプロセスに含まれることを示していた。選択理由としては先々週の書評において飛ばした部分であると共に、近年いくつかの企業でリスクマネジメント部門が立ち上げられている背景を鑑みたときにコーポレートガバナンスのシステムとして今まで経営者が担っていた役割を一部門として果たしている事からアウトサイダー的要素を持つのではないかと予測し選択に至った。


<内容>

まず企業におけるマネジメントプロセスに関してこれ自体は経営の過程の上で必要不可欠なものであり計画、実行、監視という三段階の循環によって行われる行動であると簡潔にまとめられている。これが内部統制とどのように関わるのかという部分において、マネジメントプロセスである経営者の活動として①企業レベルでの目的の設定②経営戦略の立案③統制環境④活動レベルでの目的の設定⑤リスクの評価⑥リスクの管理⑦統制活動⑧情報と伝達⑨監視活動⑩是正措置、が挙げられる。この中で3,5,7,8,9は内部統制の構成要素になり、1,4は目的の設定、2は事業に関する意思決定、6,10は取引の実行や計画の進行を示すとしている。ここにおける5,6のみがリスクマネジメントに含まれるとされており、上述した計画-実行-監視における計画にリスクの評価が前例から同質なものとして割り当てられ、実行、監視にリスクの管理が割り当てられているという。すると、マネジメントプロセスにおける

リスクの管理、リスクの評価とリスクマネジメントにおける計画-実行-管理のぶぶんの部分が対応することで内部統制システムとリスクマネジメントにおける共通点が生まれ、最終的にマネジメントプロセスにリスクマネジメントが含まれることでコーポレートガバナンスの一要素としてリスクマネジメントを語れるとしている。


<総評>

リスクマネジメントのコーポレートガバナンス視点から見た関連性を主に論じており、実際の例などを推測するしかなかったので理解に手間取った。部門としてのリスクマネジメントの側面は経営者の仕事の一部を担っていると言えるのでそこにアウトサイダー的性質がないかさらに考察するべきという結論に至った。


6/8

・青木英孝「コーポレートガバナンスと企業不祥事の実証分析」(『経営学論集』第86号p67-77)

<選択理由・内容総括>

選択理由として前回の取締役会とコーポレートガバナンスの関連性において内部監査と外部取締役の代替可能性に関して論じたが、そのそれの延長として、外部取締役と企業内における不祥事の関連性に着目し検討するために当論文を選択した。

内容総括としては最初に内部監査と外部取締役が代替可能でないことに言及した上で、実際の事例を出し企業における不祥事と取締役の入れ替えの関連性を示した上で正の相関か負の相関かどちらになるのかを調査している。


<内容>

最初に当論文では不祥事の定義に関して論じている。不祥事を広辞苑で引くと「関係者にとって不名誉で好ましくない事柄・事件」 とあるが、つまり、当該企業、あるいはそのステ イクホルダーにとって不名誉な事件がいわゆる不祥事といえとまとめている。不祥事の定義に関する先行研究を見ると,例えば組織不祥事を研究対象とし た樋口(2012)は,「組織に重大な不利益をも たらす可能性がある業務上の事件または事故であって,1その発生が予見可能であったこと、2適当な防止対策(被害軽減対策を含む)が存在したこと,3当該組織による注意義務の違反が重要な原因となったことの 3 要件を満たすも の」と定義している。

1、3に該当する「意図的不祥事」に関しては企業が意図的に行ったと判断される不正行為であり,「粉飾決算」、「法令違反」、「隠蔽・偽装」の 3 種類を識別できる。2に関しては自己的不祥事が当てはまりこれは「製品不具合」、「オペレーション不具合」、「モラル ハザード」の 3 種類に分類できるとしている。取締役会に関しては以前の書評で論じた通りであり、ここで検証方法に関しては 2009 年度から 2012 年度までの 4 年間に発生 した企業不祥事が,2010 年度から 2013 年度ま での 4 年間の取締役会構成の変化に与える影響 を検証する。分析手法はパネル推計(Fixed Ef- fect Regression Model)であり、モデルは下記の通りとなっている。

 推計式中の添え字 i は企業,添え字 t は年度 を表す。被説明変数である BOARD は取締役 会構成を表す変数であり、具体的には社外取締 役比率と、公認会計士等の会計専門の社外取締 役人数および弁護士等の法律専門の社外取締役人数を採用している。

結果としては、企業不祥事の発生は社外取締役のウェイトを高める契機となることがわかった。したがって、不祥事の発生後,企業は再発防止策の一環として取締役会のモニタリング機能の強化を進めるといえるとまとめている。ただし、モラルハザードのような事故的 な不祥事が発生したからといって必ずしも社外取締役の比率が高まるわけではないとも作者は指摘している。


<総括>

内容としては前回矛盾が生じた経営上の問題(不祥事など)が取締役会の変更との相関を示すかということにおいて有力な情報が得られた。あくまで今後の自分の研究においてはコーポレートガバナンス上、不祥事と取締役の入れ替えは相関がないとして取り扱うことに決めた。



6/1

・吉川吉衛「コーポレートガバナンス、内部統制、リスクマネジメント」(『経営研究』第53号 p1-23)

https://dlisv03.media.osaka-cu.ac.jp/contents/osakacu/kiyo/DB00010620.pdf


<選択理由・内容総括>

前回の書評で外部からのコーポレートガバナンスつまり外部による企業統治に対して内部によるコーポレートガバナンスは内部統制により行われ、その内部統制を行う組織が企業内で設定されているのであればそれは果たしてアウトサイダーと言えるのではないかという予測を立てたがその上で内部統制がどのように行われているのかを学ぶとともにコーポレートガバナンスとの関連性を明らかにするため当論文を参考にした。内容総括としては内部統制をCOSOキューブを用い、目的を三点、構成要素を五点に細分化し各々の要素の相互関係を解説した上で内部統制を説明し、そののちにモニタリングシステムを運営する取締役とトップダウンによる内部監査の関連性を論じている。


<内容>

当該論文における仮定としては二点あげられる。まず第一として外部取締役と(内部)監査役制度は代替可能なものか、第二として主要債権者を重視した経営をするべきかステークホルダー全体を鑑みた経営を行うべきかまた第三の道、つまり前回の研究書評でも言及したESVの道を取るべきかを主に日本企業に対して提唱するような形で論述されている。次に内容構成として、内部統制、リスクマネジメント、コーポレートガバナンスの3点に言及している。今回は内部統制とコーポレートガバナンスの二点に関する記述を以下にまとめていく。第一として内部統制に関して、その評価を決めるため内容総括でも述べたようにCOSOキューブ(以下キューブ)を用い3点の目的と五点の構成要素に関して説明されている。3点の目的に関してキューブでは事業運営の実効性と効率性、財務報告の信頼性、コンプライアンス(法令などの遵守)としてまとめられており、五つの構成要素に関しては監視活動、情報と伝達、統制活動、リスク評価、統制環境としている。作者が述べるにはこの五つの構成要素の関連性、特にリスク評価(リスクマネジメント)の影響により内部統制が機能するかどうかが決定されており、それは企業の本質としてリスクテークを行う側面が存在するからだとしている。結果として内部統制の目的とその構成要素の関連性は大きくいうとこの構成要素を満たしたからといって企業の統制がとれていなければ機能しないとまとめている。

そしてコーポレートガバナンスと内部統制に関してここでは企業統治を行う内部組織としての取締役会のモニタリングシステム的性質に関して触れている。ここで内部統制の構成要素五つに関してこれらは全て企業内においてはトップダウンで行われる内容であることが分かるが、特に日本では外部取締役ではなく企業自身の中に取締役を内包し企業運営上の社長や部長などが役員を担う性質が強い。ここで仮定で言及されていたような外部取締役と内部監査(企業内部における取締役)が代替可能であるかが問題として浮かぶがモニタリングシステムが企業内部に対して深く関与する必要性がある場合もあるとされているためこれら二つの要素は別の役割を担っていると考えられ代替可能ではないと結論づけている。


<総括>

COSOキューブ、またCOSOシステムに関する論文の結論を外国語の文献から日本語に変換しただけの部分が見受けられ、実際に内部監査の要素がこれ以上存在しないのか根本的な内容に関して疑問に思った。またコーポレートガバナンスにおいて影響を与える内部組織が取締役会であると本論文からは読み取れたため、取締役会のアウトサイダーの程度はどの程度なのか、また取締役会を一例として他に同様の役割を果たす組織が存在しないのかを調べるという明確なビジョンが見えた。


5/23

・大杉健一「コーポレートガバナンスと日本経済:モニタリング・モデル、金融危機、日本的経営」(『金融研究』第32号 p105-202 2016)

https://www.imes.boj.or.jp/research/papers/japanese/kk32-4-4.pdf


<内容総括・選択理由>

選択理由として経営者交代を代表例とするオーガニゼーションイノベーション(組織改革)は主にコーポレートガバナンス(企業統治)の一環として考えられるが、欧米的な株主を重要視することによる外部監査(株主、メインバンクなど)によるコーポレートガバナンスではなく、日本型のステークホルダー全体を重要視した内部における監査役による企業統治によってイノベーションが行われる場合この内部監査役はアウトサイダー的素養を持つ集団なのではないかと思い立ったのが原因である。内容総括としては仮説としてコーポレートガバナンスの概要を整理すると共に、モニタリングモデル(取締役会を監督機関として位置付け、社外取締役に監督機能を担わせる実務)が日本企業の業績不振を改善し不祥事を防止することができるのかを検討することであり、外的要因によるコーポレートガバナンスの影響について主に取り上げている。

<内容>

当論文においては主に日欧米の三地域におけるコーポレートガバナンスの側面から ①地域ごとに企業が誰のために運営されているか ②会社はどのように運営されるべきかを論じている。まず第一としてアメリカにおけるコーポレートガバナンスにおいて①誰のために運営されているのかに関してアメリカの会社法に触れるべきである。アメリカの会社法の特徴として経営者に対する自由度が高い(下に向かっての競争)という側面に対して株主やメインバンクなど外部組織による企業へのエンフォースメントを強く認める傾向にある。これは経営者の自由を認めた結果、不祥事などへつながることへの予防策として考えられるが、その結果として米国企業は株主やメインバンクなど外的要因を重視し他のステークホルダーを考慮しない傾向にある。また②に関しては各地域においてまとめて後述する。次に欧州地域に関してだが、これらはEUの影響によって市場統合が行われたこともあり、初期段階ではステークホルダー全体を鑑みる体制だったものが徐々にアメリカ化が行われ結果として経営者の自由度が高まった。しかし欧州の特徴として外的要因によるエンフォースメントを推奨する法整備が行われたものの元々資金調達の方法として社債の発行があまり推奨されておらずM&Aが活発でなかったこともあり、株主などの力はそこまで強くなくエンフォースメントも強く行われる結果には至らなかった。そして日本においては支配株主の義務、親子会社の法規制が制定法上も判例上も未発達であったことや株式における第三者割当に関するルールが不透明であったこともあり外部組織の強さはあまりなくステークホルダーの重要性はどの立場においても横一線であったが法規制が厳しくなるにつれ株主の力が強まり外的要因の経営方針に対する影響も強まった。このような法改正の背景にはバブルの崩壊が主な原因として挙げられ、株主の権利を保護する制度の整備が加速度的に行われた。上記の結果から法制度的観点からはステークホルダー全体を重視する方針は合理性にそぐわず、株主を重視する方針がより正しいかのような傾向となった。しかし株主にとって企業の社会的役割、また責任という部分が会社の経営において重要視されるべきとなった近年において外的要因を重視することに変わりはないが結果としてステークホルダー全体を考慮するESVと呼ばれる体制が欧州では着目されている。筆者は上記の内容から株主など外的要因の視点を取り入れながらも社会的役割を果たし消費者などのステークホルダー全体を鑑みることで業績不振、不祥事から脱却できるとしている。

<総括>

本稿は外的要因としてのアウトサイダーに着目した内容であり、結果として外部組織としてのアウトサイダーを鑑みることで日本の経営の改善につながるとまとめられているが、以前の『戦後日本企業における状態依存的ガヴァナンスの進化と変容』宮島英昭 1998において外部組織と経営方針の変遷には相関が見つからないとまとめられていたことなので矛盾が存在し参考にならなかった。内部監査に関してはまとめられていた部分が少なく内的なアウトサイダーに関して知見を広げるには本稿では物足りない結果となった。




5/16

・三品和広「日本型起業モデルにおける戦略不全の構図」(組織科学Vol35 No4 p8-19 2002)


<内容総括・選択理由>

内容総括としては、一般的に日本の土着の文化や日本人独特に気質、また日本政府の特徴に対応した上で法律を遵守した企業モデルを日本型企業モデルと仮定した場合、その企業モデルは結果として日本国内において最良の形なのか、また既にその企業モデルは存在しており適切な形ではないのかどうかなどをサンプルとして大きな企業を30社取り上げどれほどの頻度で経営者の交代が行われているのかを事業経営者の経営のジャンルなどを鑑みた上で予測したものとなっている。選択理由としては現段階で自分の研究分野における日本人の先駆者である三品教授の過去の論文として日本型企業モデルを理解することもできるため知見を増やす目的で選択した。

<内容>

研究の中核をなすのは 30人の現役事業経営責任者の訪問聞き取り調査である。調査は旧通商産業研究所のプロジェクトの一環として,2000年度第3四半期に実施しものも参照している。調査の対象となった30人は,日本を代表する企業群の一角を形成する企業グループの一つに所属し,全体としては 6 万人超の従業員と2兆円を上回る売り上げに呼応する事業群を率いている経営者である。サンプルを一企業に限定することによる得失は多々あるが、人事面の制度や企業統治のあり方をサンプル内で固定できる利点をここでは重視しており、これにより例えば事業経営責任者の職歴が相互に比較可能となると作者はしている。

調査にあたっては、職場を訪問して本人から直接聞き取りを行う手順を基本としており、6人については一般応接室での聞き取りに終始したが、残りの24人とは職場や製造現場を垣間見た上でのコンテクストの共有を実施した。聞き取りにあたってはデータベース化を念頭に置いた標準設問を事前に用意し、これに対する自由回答と併せて実施した記名質問票(回収率 100 %)で本稿の基礎資料を構成している。訪問時には事業組織の人事責任者に対する補完的な聞き取りを行い、資料の信頼性を第三者の視点から確認することにした。また全ての聞き取りには筆者以外にもう一名が同行し、聞き取りの内容を事後確認する手続きを踏んでいる。まとめとして現場や実務レベルの技能蓄積を進めるための工夫が,事業経営責任者の育成を遅らせるとともに彼らが戦略的な経営を実践する余地を奪っている現実がそこでは浮き彫りになったとしており、これは一種の動態的不整合の問題であるとかかれていた。その結果は構造的とも言うべき戦略不全につながることも、聞き取り調査から明白になった。ただし問題の本質に論理的な必然性はなく、これが日本型企業モデルの致命的な欠陥というわけではないと結論づけられていた。

<総括>

内部昇格を行う際におけるノウハウを得る段階、つまり人材の教育段階で時間のロスが生まれてしまうことによって事業経営者になり得る人材が中途の段階で企業から離れたり、あまりに年齢を経てしまったことで能力が足りないなどの状況になることで欠陥につながるとここでは考えられた。

4/27

・宮島英昭「戦後日本企業における状態依存的ガヴァナンスの進化と変容 -Logitモデルいによる経営者交代分析からのアプローチ-」(『経済研究』Vol.49 No.2 Apr.1998)

https://hermes-ir.lib.hit-u.ac.jp/hermes/ir/re/20353/keizaikenkyu04902097.pdf


<内容総括・選択理由>

最初に研究方針を提示した際に「日本型企業モデル」に着目したことから、戦後から論文発表当時の企業モデル変遷を、メインバンクなどの外的要因と企業の関係が重要となるコーポレートガバナンス(企業統治)の観点から学び、国内の大企業が現在の企業モデルに辿り着いた主な要因を明らかにするためこの文献を選択した。内容総括としては戦後から現代までの間を、コーポレートガバナンスのモデルの変遷を参照した上で5分割し各局面における経営者の交代と企業パフォーマンスの関係の計量的分析を行うことで現代までにおける変遷を大まかに区分するものになっている。


<内容>

まず前提知識として戦後の企業は、コーポレートガバナンスにおけるメインバンクを主とした大型の債権者の安定や株式の持ち合いによる安定株主関係を重視する外的ガバナンスにとらわれることによる経営者のモラルハザードが存在するが上記のメインバンクの社内に対する介入(内的ガバナンス)によって経営者の交代が起こされることなど経営権が内部から外部へシステマティックに変換されることで保たれてきた。しかし近年メインバンクの役割が小さくなっていること(論文掲載時とは異なるがソフトバンクによるpaypayの導入など)によりガバナンスの様相は変化を見せており、その変遷をこの論文では経営者の交代や計量的分析から読み取っている。まず前述した区分に関しては1.神武景気後の不況と岩戸景気後の不況を含む1959-63年の経営者の交代(パフォーマンス(計量的分析)は57-62年)、2.証券不況を含む1965-69年の経営者の交代(同63-68年)、3.オイルショックを含む1974-78年の経営者の交代(同72-77年)、4.円高不況を挟む1984-88年の経営者の交代、5.バブル崩壊後の不況を含む1991-95年の経営者の交代(同89-94年)でありこの区間の同一のサンプルの企業に対して同一のスペックの回帰式を計測することで分析を行なっている。

次にサンプルとしては企業財務データベースにおける業種コード111〜20149において一定期間で総資産ベースで上位150社を占めたことのある企業102社をランダムに抽出したものを設定した。また計量的分析の対象としては質的変量モデルを採用しており、変数としてはガヴァナンス変数、パフォーマンス変数、コントロール変数を設定していた。以上の研究結果から作者がまとめていたこととして、1.内部における経営者の交代は企業内でのリストラなどの非雇用社における不満分子が影響を与えているわけではない、2.ふメインバンクへの借入額と外部による経営者交代には相関が存在しない、3.経営者の異例の交代は大恐慌の後、内部で行われていること等が確認されたとしている。


<総括>

題名通り主に経営者の交代というところに視点を置いていることから、コーポレートガバナンスによって経営者が変わったことをまとめており、経営者が後退をした後のことに特に着眼されておらず、結果としてなぜメインバンクに依存しない形での企業モデルになったのかなどが特に存在しなかったため、参考にするには難しかった。

4/20

<内容総括・選択理由>

今回取り上げた文献の内容として、以前の書評で言及した破壊的イノベーションに関してそれ自体に対する誤解と再定義、またその再定義に限らないイノベーションに関してUberなどの具体例を挙げた上で説明しさらにイノベーションの具体性を上げることを目的に説明されている。この文献を選択した理由として以前破壊的イノベーションを主導するものをアウトサイダーと仮定したが、破壊的イノベーションを起こす企業自体を市場に対するアウトサイダーと考え、社内企業に同様の経営方針を掲げているものがないかを参照するために選択した。

<内容>

第一に破壊的イノベーションの誤解に関して、イノベーションとブレークスルーを混同してしまう事がある。ブレークスルーとはもともと科学、スポーツ分野で使用されてきた言葉であり、拡大していく一つのニーズを満たし続けるという困難を解決するという意を表している。それと対比してイノベーションとは顧客の新たなニーズを開拓するという違いが存在する。また再定義に関しては当該記事においてイノベーションを、海外の研究者が言うような「既存の企業が躓き業績が下がっていく事」ではなく、技術革新によるメジャーなツールの変遷を原因とした市場の変動を指すディスラプション理論を基に、ある特定の業界での高級市場、ローエンド市場または以前とは全く異なる新市場の開拓による既存企業に対する打撃を与える事をイノベーションであると再定義している(そもそも学者によってイノベーションの定義が異なる場合がほとんどであり、当該記事でも「もっと洗練されるべき理論」であると述べられている)。しかしその定義に当てはまらないながらもイノベーションを起こした企業も含め具体的な企業例が3社挙げられている。第一にディスラプションによる新市場の開拓を起こした例としてuber (交通系アプリ)が挙げられている。しかしこのuberは一般人がタクシーのように料金をもらいながら目的地まで送り届けるというシステムにも関わらず、既存のタクシーの需要を減らしているとは限らない。しかし一般的にuber はイノベーションを起こした一例として挙げられる。またその他にはNetflix、AppleのiPhoneが挙げられるがこれらも提供当初、市場においてフリンジを起こすような影響力は存在せずカスタマーの要求に合わせていく形で最終的にマスを占めるようになっていった。以上のことから破壊的イノベーションはより段階的なものであり、更にいうのであれば市場に革命を起こすものを持続的イノベーションで改善することでフリンジを起こすのではないかとまとめられていた。

<総評>

破壊的イノベーションと持続的イノベーションを対立するものとして説明する事がほとんどだった文献に比べ少なくともサービス業、製造業に関しては各々のイノベーション関連性がより明確化されていた。企業のアウトサイダー的立ち位置に置いても参考になった。

・Clayton.M.Crystensen , Michael.E.Raynor , Rory MacDonald (2015,12)

“What Is Disruptive Innovation?”

4/13

<内容総括・選択理由>
今回取り上げた文献に関しての内容は、市場競争のルールを根底から破壊し、既存企業のシェアを奪い、業界の構造を劇的に変えるほどの革新的なイノベーションを指す破壊的イノベーションに関するものである。この文献を選択した理由として破壊的イノベーションを主導するものをアウトサイダーと仮定した時にそのイノベーションを起こすに至った経過の知見を得るためである

<内容>
まず破壊的イノベーションの必要性に関して、現在多くの業界において市場環境が変動する中、多くの既存企業は今までの事業を存続させるために多種多様な持続的イノベーション(顧客の満足のために、現在既に存在している製品に対する革新)を企画しているが、それによって市場が過剰供給(オーバーシューティング)を起こしている現状が存在する。この状況下では既存の企業が、他社に新たな技術や製品を生み出されることで、急激に成績が悪化してしまうという現状が存在する。そこで、企業を存続させるための施策の1つとして、破壊的イノベーションに注目が集まっている。破壊的イノベーションを通じて、既存の事業で培ってきた技術・知見を新たに参入する業界のビジネスに応用すれば、供給過多による顧客の喪失を防ぎつつ、新たな市場の開拓を目指せて、企業の存続につなげられる可能性がある。上記の持続的イノベーションによって起こる、顧客のニーズを満たすためでありながら結果として利益に繋がらないこと、また持続的イノベーションによりシェアを拡大するたびに、既存事業を脅かすような新事業にチャレンジしにくくなることを「イノベーションのジレンマ」といい、これを打破するための破壊的イノベーションは2種類存在する。第一としてローエンド型破壊的イノベーションが存在し概要としては既存の製品よりも主要な性能が劣るものの、安価であるモノを提供するイノベーションのことである。このタイプのイノベーションが起こる過程は、既存市場において大きなシェアを確保しながらも過剰供給の状態に陥った企業が提供する高価格かつ複雑な製品に対して、低価格かつ簡便性を実現する破壊的技術により開発された製品を用いて、これまで空白になりつつあったローエンド市場に参入することを指す。第二のおイノベーションは新市場型破壊的イノベーションと呼ばれておりこれまでと異なる新しい価値基準にもとづいた顧客層に対して新たな価値を提案することで、市場そのものを新たに創出していくイノベーションのことです。クリステンセンによって、「無消費(消費のなかった状況)」に対抗するイノベーション」と位置づけられている。

<総評>
破壊的イノベーションは主に製造業のサプライヤーを目的とした戦略である事が確認でき、既存の企業を救う手立てである事から主に組織としてのアウトサイダーとの関連性が存在するのではないかと考えられる。実際の企業例を確認しさらに知見を深めるべきと考えた。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?