推しが逮捕された日

1. はじめに

 ご無沙汰しております。たいちょーです。
 推しの作曲家である田中秀和氏がわいせつ未遂容疑で逮捕されてから早いものでもう半年が経ちました。
 この記事は逮捕直後に書き上げていたのですが、内容が内容なだけに投稿しようかすまいか悩んでいるうちに年を跨ぎ、第1回公判で余罪が発覚し、とうとう第2回公判が間近になってしまいました。

 かくいう僕はあの日からの半年間、一流作曲家の皆々様のおかげで音楽を愉しみ続けることができました。逮捕直後は不安や悲しさでいっぱいでしたが、素敵な楽曲たちに助けられまくったおかげで今は彼の逮捕をネタにできるくらいには落ち着いています。
 とはいえ、アニソン業界や作曲家界隈ではすごいコード進行を用いることで有名な作曲家で、その楽曲もいずれ劣らぬものばかりなので、このような事件で世間に名が知れたことは非常に残念ですし、ただただ悲しいことに変わりはありません。
 今回は、世間的にも精神的にも落ち着いているこのタイミングで、遅ればせながらお気持ちを表明いたしたく存じます。暇でしたら時間潰しにご一読ください。


2. 押しも押されもせぬ作曲家

 彼には自身や楽曲にファンがついているため、彼が楽曲を提供したことを売りにするアーティストやコンテンツも多いですし、田中秀和氏経由でそのコンテンツやアーティストを知ったという人も少なくありません。
 僕自身も、同氏がデビューシングル「はじめてのかくめい!」の編曲に携わっていることを知ったのがきっかけでDIALOGUE+にはまっていますし、「自分REST@RT」や「ラムネ色青春」を聴いてアイマスにはまっています。
 また、僕は「アイカツ!」への関心は薄いのですが、「田中秀和が作ってるんやったら……」と、「カレンダーガール」や「アイドル活動!」を聴いています。
 氏が作曲した楽曲を愛する者全員が楽曲派のオタクではないとは思いますが、彼の製作する楽曲にはコンテンツやアーティストの枠を超えて評価されるほどの価値と魅力と影響力があるのは事実です。

 また、先述のとおり、氏は作曲家界隈ではすごいコード進行を用いることで有名です。「灼熱スイッチ」はその最たる例といえるでしょう。

  「灼熱スイッチ」ではサビの冒頭にBlackadder Chordブラックアダー・コード(Gaug/F)を使用しすることで前のB7(ドミナント)をそのまま引き継いで解決を次のEm7まで先延ばしする手法が使用されているそうです。音楽理論やコード解釈などについて、詳しくは以下の動画・記事をご覧ください。

 とんでもないコードを違和感なく使用して楽曲を書き上げる彼の凄さがわかるかと思います。
 僕は音楽理論はさっぱりわからないので詳しく知りたい方は上記の動画および記事をご覧ください。


3. 作品への影響

 今回の影響は製作陣にとっても大きいようです。麻倉ももさんのライブでは氏の逮捕を受けてセットリストが変更になったそうです。

 また、わーすたにおいても、氏の作曲した「マッシュ・ド・アート」が例の一件を境に披露されなくなったようです。

 他にも、アニメのクレジットから氏の名前が消されるなど、業界全体で氏の名前や楽曲の使用を自粛する動きがみられます。DIALOGUE+でも、彼が編曲を担当した「はじめてのかくめい!」が再編曲され、それがライブで披露されました。

 Akkiさんが「はじめてのかくめい!」を再編曲してくれたのはすごく嬉しいですし、ライブで再び聴けるようにもなってありがたいと思う反面、DIALOGUE+にハマるきっかけになった田中秀和(MONACA)編曲の「はじめてのかくめい!」が忘却の彼方に押しやられようとしているのが寂しいし辛いし、自身のセンス(という表現が正しいのかな?)が否定されているようで悲しくもあります。
 さらに、ツアーの打ち上げ配信では総合Pの田淵さんから「人生イージー?」と「アイガッテ♡ランテ」に関する言及もありました。

 上記のツイートから読み取れるとおり、「アイガッテ♡ランテ」は彼が作曲を担当しているのでリアレンジできないため、「永久封印」だそうです。楽曲を歌うアーティストが悪事を犯した訳ではないのに、歌唱を自粛をせざるを得なくなるような事態を招いたことには憤りを覚えるばかりです。

 上記のツイートはDIALOGUE+のZeppツアー横浜公演の同時上映会で「はじめてのかくめい!2023」に差し掛かった際に投稿された飯塚麻結さんの実況ツイートです。アーティストに「もう歌えない」と思わせんのは本真に酷いし、このような理由で彼の楽曲が製作に携わった方々の熱意やアーティストのみなさんの努力ごと封印されているとなると本当に悔しいです。


4. 所詮は人間

 田中秀和氏の温厚な人柄と謙虚な姿勢には好感を持っていましたし、楽曲製作に傾ける情熱には尊敬の念を抱くほどでした。しかし、それは一夜にして猜疑に変わってしまいました。
 犯行に及んでいた10年間、事に及んでからの2ヶ月間、何事もなかったかのように普通に生活を営んでいたことには恐怖と怒りと悲しみを覚えますし、我々に見せていた「田中秀和」とは何だったのかとすら思います。
 数多の作曲家に「天才だ」と言わしめるような才能を持つ温厚篤実な聖人君子であっても罪は犯す。所詮は人間であるということを思い知らされました。


5. おわりに

 DIALOGUE+1が発売された際に次のようにコメントをしていました。

田中くんが作ったとわからない曲にしたい。アイガッテ♡ランテの打ち合わせの際に田淵さんがおっしゃったその一言が印象的でした。作者と作品を切り離すのは難しい。けれど、いつか僕らが価値を失ってしまった後も、ずっとあなたに愛してもらえる音楽になれたら、とても嬉しいです。アルバムの発売、おめでとうございます。

田中秀和「DIALOGUE+1 作り手コメント②」
※太字は筆者による

 僕は田中秀和氏の曲が大好きです。「アイガッテ♡ランテ」ももちろん愛しています。だからこそ、田中秀和氏の価値がこのようなことで失われるのは本真に残念やし悲しいし悔しい。楽曲で、作曲家として名を轟かしてほしかった。そう思うばかりです。
 とにもかくにも、まずは然るべき裁きを受け、罪を償い、被害者の方へも真摯に対応して、真っ当に生きてもらいたいです。
 傷ついているのは被害者の方だけではありません。これまで一緒に仕事をしてこられた方々や各方面のファンたちも傷ついていることかと思います。自分の犯した事の大きさを重く受け止めて、罪と向き合ってほしいです。
 今後、作曲家として戻って来られるかどうかはわかりませんが、どこでどのような生き方をするにしろ、十分に反省し、人倫に悖ることなく生きてくれるのであれば、今後も陰ながら応援するつもりです。

一七三 人若し先に悪業を作るも(後に)善を以て此を滅せば能く此の世間を照す、雲の出たる月の如く。

荻原雲来訳註『法句経』岩波書店(1935) p.51

 今回はこの辺で。お互い真っ当に生きような!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?