思い出の教材
1. はじめに
最近、高等学校の国語科が「文学国語」と「論理国語」に分かれて物議を醸しているらしいですね。
高等学校の国語科の授業がかくあるべきかについてはさておき、国語科の教材(学習材)って、結構印象に残るものがあったりしませんか?一例を挙げるとすれば、「困難は分割せよ」という名言があることで有名(らしい)「ルロイ修道士」ですかね?『握手』という作品、僕は学習したことないので知りませんが……。
他にも、エーミールの「そうか、そうか、つまり君はそんなやつなんだな。」という台詞が有名な、ヘルマン・ヘッセの『少年の日の思い出』はご存知の人も多いのではないでしょうか?
今回は、僕がこれまでに受けた国語の授業で印象に残っている教材について述べたいと思います。
2. 『文学のふるさと』
高校2年生のときの現代文の授業で取り扱われた教材です。こちらのエッセイは青空文庫で全文が読めますのでぜひ一度ご覧ください。
普通、物語はモラルのある終わり方(e.g. 勧懲小説)をします。みなさまもご存知であろう「プリキュア」とか「仮面ライダー」とか「戦姫絶唱シンフォギア」とか、どれもこれも最終的には主人公(正義)側が勝利を修めると思います。
しかし、坂口安吾氏は、シャルル・ペローの『赤頭巾』について、次のように述べています。
このエッセイに関しては、金太郎飴みたいな物語の結末に終わらない物語に衝撃を受ける理由を知れて感銘を受けたのを覚えています。僕は幼少の頃からひねくれた子どもだったので、「モラルのある」終わり方には冷めていました。これを読むことでその理由についてわかった気がしたので強く印象に残りました。
今もたまに読み返すエッセイですが、浅学非才の僕にとっては難解なので未だに坂口安吾の文学観を理解することはできていません……。
3. 『おくの細道』
中学校の古典で必ず取り扱うであろう、蕉翁の紀行文です。次の書き出しは記憶に残っている方も多いのでは?
僕はこの序文、中学生の頃と大学生の頃の2回、授業で覚えました。中学生の頃は暗唱テストで覚えたのですが、「漂泊の思ひやまず」がどうしても覚えられず、部活動の朝練中も馬鹿みたいに「漂泊の思ひやまず、漂泊の思ひやまず……」と呟き続けてなんとか覚えられました。
大学生の頃は教職の講義で古典的仮名遣いを覚えるために覚えました。中学生の頃に粗方覚えていたので完璧にするのに時間はかかりませんでしたが、今度は海浜にさすらへなかったり、やや年も暮れなかったりと、古典的仮名遣いよりも暗唱に苦労させられました。いつでも覚えられるよう、iPhoneのケースの中に『おくの細道』の序文を書いた紙を挟んでいました。暗唱に苦労させられたという意味では大変印象に残っている紀行文です。
教職も夢の跡になってしまいましたが……。
4. 『サラダでげんき』
小学1年生の頃に学習した教材です。主人公である「りっちゃん」が、病気になったお母さんを元気づけるためにサラダを作る話です。
学習したのがもう16年くらい前なので、動物がりっちゃんの元へアドバイスをしに来ることはすっかり忘れていましたが、「誰か(親)のために尽くすことの素晴らしさ」と「野菜を食べることの大切さ」が描かれていたのが印象的であったのと、タイトルがあまりにもストレートなので覚えていました。
5. 『初恋』
中学3年生の頃に学習した、島崎藤村の文語定型詩です。こちらの詩は『若菜集』に収録されています。青空文庫で全文が見られますので是非ご覧ください。
中学3年生の頃にこれの暗唱テストがあったのですが、「細道は」を「この道は」と勘違いして覚えていたため、1発で合格できずに悔しい思いをしました。本番で誤ったせいか、あれから未だに全文覚えています。
大学3回生の頃にはこれを教材にして模擬授業を行いました。近代の詩でありながら古典の文法知識が必要であったり、授業の展開的に深く読み込む必要があったりと、非常に苦戦させられた教材でした。
覚えるのも教えるのも非常に大変な教材でしたが、そのぶん愛着のある教材でもあります。
6. 『論語』
孔子とその弟子の言行をまとめた書物です。有名な一節が多く、座右の銘にもされがちです。僕が印象に残っているのは次の一節です。
先生が講話などで「人にやられて嫌なことは自分もやってはいけません」と言われたことのある方もいると思います。僕も小学生の頃から言われてきたことなので、この一節を読んで、普遍的な真理というものは、国境や時代を超えて伝わるんやなあと感動したとともに、「欲せざる所」を他人に施さないように気をつけなければと思わされました。
7. 『大鏡』
大宅世継と夏山繁樹が回顧した内容を記した、という設定の歴史物語です。「大今水増」というフレーズで、他3書とセットで覚えている方も多いのでは?
僕の高校では『花山院の出家』や『弓争ひ』などを学習しましたが、中でも忘れられないのが『道真左遷』です。
この歌、Instagramに投稿するくらいにはめちゃくちゃ好きなんですよね。太宰府に行かなければならない苦衷と、住み慣れた家や京を去らねばならない悲哀が伝わってきて……。
また、菅原道真は宇多天皇に宛てても歌を読んでいます。
さらに、道真は道中の山崎で出家をするのですが、その際にこのような歌を詠んでいます。
藤原氏の策略に抗おうと「君(宇多天皇)」に救いを求める歌と京を出たばかりの自身の行動を回顧した歌が、どうしようもない無力感と京を離れる悲哀を伝えるとともに、梅の花へ宛てた歌の苦衷を強めます。この悲哀がとても印象に残っているのか、未だに忘れられません。
8. おわりに
今、改めて読んでみると国語の教材って面白いなあと思いました。他にも『大根は大きな根?』とか『〈教養〉は何のために』とかも個人的には面白かったなあと思う教材なのですが、部分的にしか内容を覚えていないし、挙げまくっているとキリがないので今回はこの辺で……。
あ、そういえば、もうすぐnoteを投稿し始めて(「お気持ち表明宣言」を投稿して)から1年が経過するらしいです。これからも取るに足りない駄文をみなさまお届けいたします!